基礎断熱を、スラブ(底版)全面断熱に変更した理由
猛暑日だった8/3(土)の午後は、Q1.0住宅 小幡の家の床下に潜りこんで、恒例の床下掃除をしていました。
床下掃除をする理由は、必ずゴミがあるからです。
もちろん職人達も、作業後に清掃することは理解していますが、施主に一番近い立場である私とは、掃除のレベルに「認識の違い」があります。
私は、最低でも木材の切り粉が無いくらいに、綺麗にしたいですが、そのレベルにするには、引き渡し前に管理者が床下を掃除する必要があります。
私も、狭くて暗く、夏は暑い床下に入って掃除するのは嫌なのですが、引き渡し前に「行わざるを得ない恒例行事」になっています。
しかし当社では、基礎断熱のスラブ上断熱材を、外周部のみでなく、全面に施工するようになってから、床下掃除が、かなり楽になりました。
かつ、スラブ上全面に断熱材を施工していることは、当社のように床下エアコンを採用して、床下空間を暖める暖房方式の場合は、効果的だと考えています。基礎スラブ面から熱が土中に逃げにくくなるためです。
このブログの後ろの方で「基礎断熱は底版全面が基本」と書かれている本のページを添付します。
今日のブログは、基礎断熱をスラブ(底版)全面断熱に変更した理由、基礎断熱のスラブ上全面断熱のメリット・デメリット、床下に設置している第一種換気システム「澄家」のメンテナンス等について書きます。
目次
床下清掃を行う時期
床下清掃を行う時期は、床面の穴あけなど、床下に作業ゴミが落ちる工事が完了した後で、かつ、クリーニング業者によるハウスクリーニングの前に行います。
当社の場合、具体的には、大工工事で行う床ガラリ設置完了後で、給排水設備配管の床面配管立ち上げと、第一種換気システム澄家の床面排気口の穴あけが終わり、排気ダクトと床ガラリを繋ぎ終わった後で、かつクリーニング業者によるハウスクリーニングの前の時期になります。
逆に、ハウスクリーニング後、室内が綺麗になったあとで、私が床下に入ってゴミや木くずを掃除すると、自分の身体で、床下のゴミや埃を室内に運ぶことになりますから、床下関連の各作業と床下清掃は、ハウスクリーニング前に完了させておきます。
今回は、クリーニングが8/19(月)だったので、少し余裕を持って、8/3(土)に床下清掃を行いました。
床下清掃を行う時の道具と、作業内容の具体例
8/3は猛暑日だったので、服装は、汚れても良い半袖Tシャツと、半ズボンで入りました。
衣類は、床下で汗を拭くタオル、全身の汗を拭くバスタオルと、作業後は下着から交換したいので着替えを準備します。
床下に入る時には、水に濡らしたタオルを首から掛けて、ヘッドライトを頭に付けて、右手に掃除機、左手にコンビニ袋を用意して、潜り込みます。コンビニ袋は、掃除機で吸えない大きめなゴミを入れます。
床下は、一番上の写真のように、アルミシート付の断熱材が床面に貼ってあり柔らかいです。そこにうつ伏せになり、ほふく前進しながら掃除機を掛けます。床面のアルミシート付の断熱材から、大引き下までの高さは385ミリなので、何とか身長178センチ、体重94キロの私も潜って移動できます。
切り粉などのゴミがあるのは、床面に穴あけをした場所です。コンビニ袋の写真の「木材のささくれ」のようなものは、多くはないですが、全体的に散らばっています。
写真の時刻をみたら、最初に撮ったヘッドライトの写真が15時33分で、最後の写真が17時45分でした。もちろん、2時間も床下に入りっぱなしだったわけではなく、床下に入っていたのは、1時間くらいだったと思います。
夏の完了後は、服のままプールに飛び込んだような状態になりますから、とても気持ちが悪く、早く服を脱いで、汗を拭いて着替えたいとしか思いません。
ちなみに、床下点検口は、Q1.0住宅昭和の家の施主からの要望以来、人が載ってもガタガタしない仕様の、城東テクノの高気密型床下点検口(標準型)にしています。床下点検口、仕様変更して良かったです。ガタつかなくなりました。
ちなみに、床下点検口の蓋にフローリングを貼る場合は、どの床下点検口メーカーも基本的には15ミリ厚さまでの床材しか貼れないようになっています。当社で使っている30ミリの杉フローリングは貼れませんから、床下点検口の蓋用に、幅の近い15ミリの杉フローリングを、わざわざ1束買って施工しています。
基礎断熱のスラブ上断熱材の範囲を、外周基礎立上り近傍のみから、底版全面断熱に変更した理由
スラブ上全面に断熱材を貼っていない、基礎断熱の家の床下清掃は大変です。
現在、当社では、基礎スラブ上全面に断熱材を施工しています。
しかし、初めて付加断熱と床下エアコンを採用した現場では、スラブ上断熱材は、全面に設置せず、基礎外周の立上りから910ミリの範囲のみ設置していました。
最初に基礎断熱したお宅は、床下面積が24坪くらいの家でしたが、床下清掃の作業時間は、はじめ30分くらい床下に入って掃除して、それでは終わらず、15分くらい床上で休憩してから、再度20分弱床下に入って清掃したと思います。
固いスラブコンクリートの上を這いつくばって掃除したところ、肘と肩が痛くなってしまいました。このままの状態では、床下掃除が嫌すぎて、次の現場からは、掃除が適当になってしまうと思いました。
床断熱を採用していた時も、引き渡し前、同じように床下清掃は行っていましたが、基礎断熱の場合は、床下全体がダクト(空気の通り道)となり、暖房と換気経路になります。分かりやすく言うと、基礎断熱の場合は、床下も室内の一部になるので、床断熱の床下よりも、綺麗に掃除したほうが良いだろうと考えました。
床下に入っていたのは、合計50分くらいでしたが、床下は暗くて狭い上に、コンクリート面をほふく前進して、作業着もコンクリートの粉だらけになってしまいました。
引き渡し前の1回のみの掃除であれば、床下のコンクリート上を這いつくばって、何とか掃除しますが、身体がきつい上に、コンクリート面は掃除機で吸っても綺麗にならない感じがして、次の現場をこの方法で行うのは、施主にとっても良くないと思いました。
素人の施主が、引き渡し後に、狭い床下に入って、固いコンクリートの上を這いつくばって掃除するのは、身体がしんどい上に、服も汚れて現実的ではないと感じたからです。
床下掃除を簡単にするために、一瞬だけ、床下を高くすることも考えました。しかし、施主が床下に入るのは、モノを落とした場合か、掃除したいと感じた時の、多くて年に1~2回程度。かつ、高齢になったら入らないと思います。
施工者として床下に入るのは、点検もしくは、床下で漏水や白蟻などの事故が発生した時のみです。なので、床下の高さを高くするのは、建築コストとランニングコストが高くなることから、勿体ないと思って辞めました。
そう感じていた時、真岡市のやなぎたハウジングさんが、スラブ上全面基礎断熱を、アルミシート付の断熱材で行っていたのを思い出しました。
掃除がしやすく、かつ基礎スラブ面から、土の中に熱も逃げにくくなる良い方法だと、おっしゃっていたなと。それを思い出して、真似をしたわけです。ちなみに、やなぎたさんとは、第一種換気システムも、床下に本体を設置する澄家で一緒です。澄家の採用理由も同じく、メンテナンスの簡単さだったと思います。
アルミシート貼りのスラブ上全面基礎断熱とすると、施主も床下に入って掃除などができる
具体的に、スラブ上全面基礎断熱とした、Q1.0住宅宇都宮の家と、Q1.0住宅小山の家の施主は、床下に入って、掃除などを行っています。
特に、小山の家の施主は、190センチを超える長身で、ガッチリとした体型ですが、引き渡し後1年の時点で、2回床下に入ったと言っていました。試しに1回は掃除で入り、もう1回は床ガラリからモノを落として、それを取るために床下に入ったとのことです。
なぜ、素人の施主でも床下に入って掃除などが出来るかと言うと、スラブ上全面に施工した基礎断熱材の表面が、アルミシート貼りになっており柔らかいので、ほふく前進で身体を滑らせて移動しやすい。その上、表面がつるつるしているので、コンクリート面と比較して、掃除機もかけ易いからです。
基礎断熱、スラブ上全面断熱のメリット・デメリット
私が感じている基礎断熱のスラブ上全面断熱のメリットは2つ。
- 上記したように、掃除などの床下に入って行うメンテナンスが「しやすく」なること。
- スラブ下の土の中に、床下の熱が逃げにくくなること。
基礎断熱のスラブ上全面断熱のデメリットは2つ
- シロアリが、スラブ上全面に設置した断熱材の下で出た場合は、発見が遅くなるかもしれないこと。シロアリは断熱材も食べます。
スラブ上全面とせずに、基礎外周立上りから910ミリだけに断熱材を施工しておくほうが、シロアリの発見と対策は、しやすいと思います。
そのためスラブ上全面断熱としている現在は、断熱材を食われても土台は食われないように、シロアリ返し付の断熱基礎パッキンを使っています。
2.もう1つの基礎断熱のスラブ上全面断熱のデメリットは、値段が高くなること。
断熱性能が上がり、室内環境が良くなることを、デメリットとは言いたくないのですが、材料費と手間代は高くなります。
広さ15坪程度の基礎を全面貼ると、外周基礎立上りの近傍のみ貼る場合と比較して、プラス2人工以上は掛かると思います。
基礎断熱は底版(スラブ上)全面が基本
ここで、「基礎断熱は、底版(スラブ上)全面が基本」と書いてある、本を紹介します。
P109とP121に、特に分かりやすく、「基礎断熱する場合は、底版(スラブ上)全面断熱が基本」と書かれています。
「(基礎断熱の場合)外周部のみと、底版全面では、倍近い性能差が発生します。特に床下エアコン(188項)のように、床下空間を暖める暖房方式を採用する場合は、基礎底版の全面に断熱を敷きましょう」とのことです。
イラストや表が多く分かりやすい本です。
基礎断熱仕様と床下高さは、メンテナンスのため
現在、当社の基礎断熱の仕様は、基礎外周立上りに厚さ75ミリのミラフォームラムダ、べた基礎スラブ上全面に、ミラフォームDDSボード厚50(片面アルミシート貼り)を施工しています。
各厚さに理由があり、基礎外周立上りに厚さ75ミリの断熱材にしている理由は、基礎コンクリート幅150ミリ+厚さ75ミリの断熱材にすると、合計225ミリとなり、シロアリ返し付き断熱気密パッキンを、シンプルな指定2部材プランで使えるからです。
基礎外周立上り断熱材を75ミリ厚さ以上にしてしまうと、シロアリ返し付基礎パッキンの部材が2つ増えて、指定4部材プランとなり、基礎断熱の性能は上がるけれども、部材と作業工程が増えてしまうからです。実は、基礎外周立上り断熱材は、より厚くしたいので、これもやってみたいのですが。
スラブ上断熱材を、ミラフォームDDSボード厚50ミリにしている理由は、基礎高さ450ミリと高い基礎にしなくても、人がほふく前進する部分の高さである、大引き下から、スラブ上断熱材までの高さが385ミリとなり、何とか床下メンテナンスが出来るからです。
第1種換気システムを「澄家」にした場合に、床下をメンテナンスできるようにするコツは、床下点検口を増やすこと
Q1.0住宅小幡の家で、澄家の採用は2軒目なのですが、他の換気システムと比べて、かなりメンテナンスが「しやすい」と思います。
私は当初、後述する理由で、澄家の採用は消極的でした。しかし、Q1.0住宅昭和の家と、Q1.0住宅小幡の家の施主の、「とにかくメンテナンスが、しやすい家にしたい」という、強い要望により採用したわけです。
結果として、採用して良かったと思っています。
これ以上簡単にメンテナンスできる換気システムは、今のところなさそうで、施主が高齢になっても使えそうです。
簡単にメンテナンス出来る理由は、多くの排気口が床面に設置されており、かつ本体も床下設置なので、施主がメンテンナンスを楽な下向きで行えること。脚立に乗らずに掃除できること。本体の掃除方法も一番楽だと思います。
また、給気が1か所のみで、床下吹き出しなので、床下エアコンとの相性も良さそうです。
他メーカーの換気システムは、壁や天井に給排気口を設置するため、給排気口の掃除は、脚立に乗ったりする可能性が高く、施主が高齢になった時に掃除「しずらく」なるだろうと想像できます。
採用前から、澄家の最大のメリットである「換気システムの掃除が楽にできる」ことは、理解していたのですが、不安だったのが、床下のメンテナンスが出来るかどうかでした。
というのも、澄家は、床下に換気本体が設置されるため、床下に直径150パイ1本程度、100パイ5~10本の配管が基礎スラブ上に転がるので、床下が多くの換気配管だらけとなり、床下で人が動きにくくなり、床下掃除などのメンテナンスが出来ないのではないか?と感じていたからです。
その懸念に対しては、床下点検口450×600を1か所程度プラスして設けることで、床下に多くの換気配管があっても、人が入ってメンテナンスできるようにしています。
結果として、床下点検口450×600を脱衣室とキッチンの2か所設置すると、床下掃除が出来ています。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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