新築注文住宅

Q1.0住宅宇都宮の家 SH-house

小さな家に暖かく暮らす24.5坪のQ1.0住宅

コンセプト

当社ホームページを見て依頼のご連絡を頂き、敷地購入のアドバイスから関わり、当社のコンセプト「コンパクトな超高断熱住宅を地域密着で造る!」どおりの家になりました。

1階で全ての生活が完結する、平屋のような2階建ての住宅は、宇都宮市の中心市街地から少しだけ離れた、落ち着いた住宅街に建っています。

特徴的なあずき色の外壁は、植栽の緑に合い、かつ施主が好きだという、軽井沢の観光施設タリアセンに移築された睡鳩荘(すいきゅうそう)「旧朝吹荘」を参考にして選びました。

延べ床面積24.5坪の小さな家ですが、超高断熱住宅にすることで、家中どこでも暖かくして自然に可動範囲を広げ、小さな家でも隅々まで使えるようになっています。かつ造作家具と収納を、適切に造り付けることで、小さな家でも片付く室内を実現しました。

小さな家と超高断熱住宅の関係と、小さな家こそ収納を充実させる理由を説明します。

北西より建物を見る。駐車場は一番駐車しやすい場所に設けるのが基本。T字路部に設けた。
玄関を見る。自転車置き場の上に、大きな庇下を設けて濡れにくくしている。壁の2段の木材は、自転車のハンドルで外壁を傷つけないように取り付けた。

敷地の特徴と配置計画

南北に細長い敷地は、幅員4Mに満たない西側道路に31M接しています。配置計画は、最初に敷地で唯一、西側道路にT字路がぶつかる、敷地北側に2台分の駐車場を設けることから始まりました。

ここは北関東。毎日車を使うので、「駐車場の出入りのしやすさ」は「生活のしやすさ」とイコールです。特に前面道路が狭い敷地や、往来の激しい道路に面した敷地の場合は、駐車しにくい場合が多いので、駐車場の配置には注意が必要です。

今回のように狭い道路に面した敷地でも、T字路部分に面して駐車スペースが配置できれば、何度も車を切り返す必要がなく駐車しやすい。いつもの順番通りに駐車場の位置を先に決めて、その南隣に建物を配置し、なるべく敷地の南側を空けて、冬の日射取得が出来る計画としました。

敷地の東西幅は狭く、建物の南側の面積が少なくなるため窓面積も小さくなり、冬に日射取得しにくい建物になりますが、Q1.0住宅レベル2です。敷地の特徴を生かし、「コンパクトな家で暖かく暮らす」こと、駐車場も含めて「生活しやすい動線」にすること、長期使用できる建材を使って「普遍的な内外観」にすることの3つをポイントに、「老後は1階のみで全ての生活がしたい」という施主の要望から、この内外観になりました。

南西側から建物を見る。庭には地元の大谷石が敷かれた通路があり、その両脇が植栽になっている。
夜景。
南東から建物を見る。
ガレージには引違戸の収納を設けている。
暖かい雰囲気のオレンジ色の灯り。

断熱性能と冷暖房

要望書には、冬暖かく夏涼しい家・暖房や冷房になるべく頼りたくない・ランニングコストの低い家という項目がありました。また長く使える家にしたいので長期優良住宅にしてほしいという要望もありました。

当社で施工したQ値1.35のSI-houseを見学して室内を体感してもらい、Q値は1.35以下、暖房は床下エアコンにすることに決まりました。冷房も2階の壁掛けエアコン1台です。設備はシンプルにすべきと考え、床下や階間の配管やダクトは極力少なくしています。

室内のほぼ全ての窓の内側にハニカムサーモスクリーンを付けて、断熱性と遮音性を上げて冬暖かく、夏は外付けスクリーン(日よけ)と室内のハニカムを併用し日射遮蔽することで、涼しい室内を実現しています。

高断熱住宅といっても「ピンキリ」なので、栃木県で快適と省エネを両立したいなら、Q値は1.35以下、C値は0.5くらいを目安に、温熱計算を行い、気密測定を実測している会社に依頼すべきだと思います。

長期優良住宅にすれば、長くメンテナンスコストが抑えられて暮らせるイメージがありますが、長期優良住宅には、内外装材の規定がないので、仕上げ材も廃盤になりにくく部分修理が効いて、長く使える仕上げ材を使う必要があります。そうなると、廃盤になり10~15年に1度塗装が必要となる外壁の窯業系サイディングと、同じく廃盤になって修理がしずらくなる新建材の内装材は使えません。

熱損失係数Q値
1.19w/㎡・K
外皮平均熱貫流率 UA値 
0.36 w/㎡・K
隙間相当面積 C値
0.5 cm2/m2
Qpex3.7.1で作成。
玄関方向を見る。丸い穴の内部は「下駄箱兼コート掛け+傘掛け」で玄関もスッキリ。丸穴は靴のカビ防止用の通気穴。階段も杉の無垢材とした。
玄関から廊下を見る。トイレのドア以外は全て引き戸。開き戸の場合は開けたら閉めるのが基本ですが、引き戸の場合は開けっ放しにしておくと、双方の部屋に連続性が生まれて広がりを感じる。小さな家こそ、引き戸を多用する。

小さな家と超高断熱Q1.0住宅は相性が良い

延床面積24.5坪と小さな家ですが、1~2階が吹抜けで繋がり寝室にもドアが無い、家中がワンルームの開放的な間取りは、7帖のウッドデッキと繋がりその先に庭があるので、より広がりを感じます。

冬でも暖かく、家全体の温度差がほぼ無いQ1.0住宅の性能は、室内のどこでも居場所にできるので、小さな家でも室内を広く使うための必然要素だと思います。例えば50坪の大きな家でも寒ければ、暖房の付いた20坪しか使えませんから、大きな家でも狭い家になってしまいます。実際、寒く大きなお宅は多いです。

ダイニングからキッチン方向を見る。奥行の深い収納と浅い収納、引違戸と開き戸、ガラス戸で見せる収納にするなど、用途に合わせて様々な仕様の収納を設けて、片付く室内としている。
キッチンからダイニング方向を見る。
ダイニング方向を見る。床下エアコンは格子の中に家具化した。
ダイニングから夕景を見る。
寝室的スペースを見る。シンプルに見せるため、なるべく天井に照明を付けないようにしている。間口の広い収納がある。

家は小さく、収納を多めに

施主のSHさんからは、最初のメールと共に「住宅に関する要望リスト」が送られてきました。整理された要望書は、優先順位の付いた、とても理解しやすいものでした。

その中で、一番現実的で計画を進めた要望は、「家は小さくて良いが、収納を多めに造りたい」という項目。小さな家でも収納が多ければ、コックピットのように使い易い家にすることも可能です。家の大きさは、建物の金額に直結します。一番効果のあるコストダウンは家を小さくすることなので、最初に仕様と予算から、家の大きさを想定するのが大切です。

逆に、施主の要望が「建物の広さ」である場合、そのまま計画が進むと、広めだけれど内容が薄い家になるばかりか、予算オーバーとなり最終的に仕様を落とすことでは足りず、ゲームオーバーに「なりがち」です。同じ金額を掛けるなら、家を小さくして坪単価を高くして造ったほうが、仕様が良くなるので、耐久性・デザイン性も上がります。 小さな家は、掃除する面積も、将来のメンテナンス費用も少なくなる利点があります。

洗面台を見る。側面壁にもキッチンパネルを貼り掃除しやすい。水廻り床はコルク。
トイレを見る。便器の奥が引違戸の収納になっている。カウンター兼手掛けの下に2連のペーパーホルダーを取付。1つの部材で用途兼用が出来ると小さな家でも機能的に暮らせる。
ダイニング。
吹抜け。

小さな家こそ、造り付け家具と収納を充実させる理由

しかし小さな家の場合、適切な場所に用途に合った造り付け家具と収納を造らないと、片付きにくく、住みにくい家になってしまいます。収納扉と家具は、オリジナルの造作(ぞうさく)にして、既製品の建材は避けるべきです。理由は2つ。

1つは、既製品のドアや家具は、市販のカラーボックス収納と同じ造りで、安っぽい見た目だから。表皮の木目調の塩ビシートは、経年劣化して塩ビシートにシワが出来たり、剥がれてくることが多いです。

2つ目は、既製品の建材は廃盤になる運命であり、パーツ交換が出来なくなるので持続性が無いこと。長く住むほどに修理が「しにくく」なります。

その点、造作建具と造作家具は、経年しても修理が効く可能性が高く、長く使えるのが良いのです。建具と家具とキッチンを同じ素材で統一したり出来るので、インテリアに違和感が無くなります。

「高性能住宅が欲しい施主は、性能だけで頭が一杯になり、内外装の仕上げ材と意匠を軽視しがち」ですが、内外装仕上げ材の見た目と性能も良くないと、格好の悪い家になるばかりか、部分修理できないことが追い打ちとなり、大規模リフォームに繋がることにもなるので、新築時の仕上げ材の仕様も、断熱性能と同じように重要だと認識すべきです。

戦後の高度成長期に作られた、新建材と呼ばれる仕上げ材は、家を大量生産しなければならない時期にできたものであり、基本的に長く使える仕様にはなっていません。当社では、長く使える建材を選んで、施主の暮らし方に合うように造作して採用しています。

結果として坪単価が高くなりますが、暖かく健康に暮らせて、廃盤になる既製品を減らすことで修理しながら長く使えることは、リフォーム回数が少なくなることに繋がるので、結局はお得だと考えています。これはハウスメーカー及び他社工務店の既製品の新建材住宅を、何度もリフォームしているので実感していること。完成すると施主の持ち込み家具や家財でたくさんの色が入るので、内外観の色をなるべく少なく、シンプルにしておくことも重要だと考えています。

小さな家の場合、玄関内部は下駄箱やコート掛け等の収納を優先するので、窓が付かないことが多いです。その場合、玄関内部の採光は、玄関ドアに付いたガラス面から採ります。日本の玄関ドアには、ガラスの付いたお値打ちな高性能ドアは無いので、北欧の玄関ドアを使っています。「下駄箱+コート掛け+傘掛けの玄関収納」を充実させて、多めの傘も玄関収納内部に掛けられるようにして、不要な靴や傘が出てこない、スッキリとした玄関にしています。

2畳の書斎。
シンプルな造作キッチン。施主の要望に合わせて造った。オーブンを組み込んでいる。

本棚は固定棚とするのが基本

当社の施主は、本が好きな方が多く、本棚を造ることが多いです。その時に注意しているのは、棚をなるべく可動棚にせず、固定棚にすること。可動棚にしてしまうと、棚の高さが揃わないので、室内が雑然とした印象になってしまうからです。今回も施主と打合せをして、文庫とCDを置く部分のみを可動棚としました。

2階のリビング的スペースを見る。
日光・鹿沼の杉フローリングの品質は、日本でもトップレベル。木目が美しい。

年間光熱費を大公開

お客様にご協力頂き、宇都宮市で建てたQ1.0住宅の年間光熱費を公開致します。

光熱費は電気と都市ガスです。水道料金は入っていません。光熱費の内訳は、給湯とキッチンコンロがガスで、その他が電気です。

冷暖房は床下エアコン1台と壁掛けエアコン1台の合計2台。

結論を先に言うと、このQ1.0住宅年間光熱費合計は、13万1142円。それを12ヵ月で割った1か月の平均光熱費は1万928円となりました。

概要

Q1.0住宅宇都宮の家 SH-house

小さな家に暖かく暮らす24.5坪のQ1.0住宅

所在地
栃木県宇都宮市
用途・構造
専用住宅 木造軸組構法2階建て
仕様
長期優良住宅  耐震等級3
設計施工
(有)ヨシダクラフト/ 設計協力: (有)枝川設計
敷地面積
269.17㎡(81.42坪)
延床面積
81.14㎡(24.54坪)ガレージを含まず
熱損失係数 Q値
1.02 W/m2K(温熱シュミレーションソフト Q-PEX3.7.1)
外皮平均熱貫流率 UA値
0.3 w/㎡・K(温熱シュミレーションソフト Q-PEX3.7.1)
隙間相当面積 C値
0.5 cm2/m2(実測)
制震装置
evoltz(エヴォルツ)制震ダンパー
屋根
ガルバリウム鋼板立ハゼ葺き
外壁
ガルバリウム鋼板スパンドレル、一部杉板キシラデコール塗装仕上げ
室内壁・天井
珪藻土
室内床
杉フローリング幅180厚30、コルクタイル
玄関ドア
木製高断熱玄関ドア
サッシ
樹脂サッシ LOW-Eトリプルガラス、真空ペアガラス、LOW-Eペアガラス
基礎内断熱
立上りA種押出法ポリスチレンフォーム3種100㎜+スラブ上同種全面50mm
壁断熱
高性能グラスウール断熱材16K厚105+付加断熱厚120 合計225㎜
天井断熱
セルローズファイバーブローイング300㎜
換気システム
第1種全熱交換型換気扇
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