FEATURE家づくりの特徴

02長く使える自然素材と造作建具

仕上げ材は「経年変化して、美しく表情を変えていく素材感」と「廃盤にならずに長く使えること」を基準に選んでいます。結果として新建材ではなく、風雪に耐えて長く生き残ってきた自然素材と造作建具・造作家具を使うことになります。

長持ちする家の条件として、戦後の家不足の時代に生まれた既製品の新建材、例えば木目調の塩ビシートが貼られた既製品建具と合板フロアは、使わないことが大切です。それらを使った内装は見た目が賃貸アパート並みに安っぽくなる上に、経年変化は塩ビシートが剥がれたりして、とにかく不格好になり、それが大規模リフォームや建替えの原因になります。かつ工業製品なので廃盤になるのが宿命で、廃盤になった建材は、部品も無くなるので交換ができません。そうなると、使える部分も大きく壊してリフォームすることになり、合理的ではありません。リフォームをしていると、よくそういう場面に立ち会います。

それに対して、無垢の木・和瓦・石等、風雪に耐えて生き残ってきた建材と、地域の大工や建具職人が造ったオリジナルの建具や家具は、基本的に廃盤になる可能性が低く、パーツごとに修理が効いて長く使えます。

造作建具と無垢フローリングを使うと、インテリアの統一感が出ます。美しく経年変化して長く使える建材を使うことで、アンティーク家具のように愛着が持てる家にすることが、私の目指すところです。

物事(モノとコト)には、良い面と悪い面が必ずあるものですが、建材についても例外ではありません。良い面ばかりの建材は無いことを理解して家づくりすることが、メンテしながら長く使える住まいに繋がると思います。

新建材の劣化状況。
大手ハウスメーカーの塩ビシート窓枠の劣化
02-1長く使える自然素材と造作建具

脱窯業系サイディング!

栃木県で建てられている新築住宅の外壁材の8割程度は、窯業系サイディングだと言われています。価格が安く、工程管理が楽な上に工期が短縮でき、初期クレームが少ないので、多くの造り手と住まい手に選ばれています。

しかし、窯業系サイディングは新築時のコストは安いものの、生涯コスト(メンテナンスコスト)は高額になる、矛盾の大きな外壁材であることは、住宅業界人以外にはあまり知られていません。窯業系サイディングのデメリットをお話ししましょう。

窯業系サイディングの素地は吸水性があり、水を吸うと凍害等でダメになるので、それを防ぐために表面に塗装をしてあります。塗装により品質を維持しているので、10~15年に1度、必ず足場を架けて、シーリングという防水工事を行った後に再塗装が必要になります。住宅ローンを抱えている人が、10~15年に1度、定期的に150~200万円くらいの外壁塗装リフォーム費用を捻出し続けるのは困難です。

また劣化したら、部分的に貼り替えが出来れば良いのですが、サイディングは工業製品なので商品サイクルが早く、10~15年後には、ほぼ全てが廃盤になるのが普通です。廃盤になった材料は部材が無くなるので、一部が傷んだからといって部分的に貼り替えることができません。一部分のみが傷んでいる場合でも、傷んでいない部分も全て解体撤去して、全面貼り替えして新商品を採用することになります。外壁材の全面貼り替えになると、既存外壁の撤去処分費用が掛かる上に、この時期には、屋根及び雨樋塗装とベランダ防水のやり替えと、床下の白蟻防除も一緒に行うのが普通です。それには高級国産乗用車1台分くらいのリフォーム費用が掛かります。何度か経験しています。

ですから、新築時のコストだけでなく、生涯コストを最小にするという選択で、窯業系サイディングではない、長く使えて素材感のある外壁材を選んでいます。窯業系サイディングを使うと、ハウスメーカーやローコストビルダーと変わらない、味気ないありふれた外観になってしまうので、デザイン面からも窯業系サイディングを使うことは避けています。

02-2長く使える自然素材と造作建具

杉板外壁

無垢の杉板外壁材は、工業製品ではないので廃盤になる心配が無く、経年しても部分交換がしやすい唯一の外壁材です。メンテナンスコストがあまり掛からず長く使えて、景観にも優れているということで、極めておススメの外壁材です。地元の杉板を外壁材として使用します。

しかし「木は腐る」という先入観があり、違和感を覚える人も多いと思います。木は雨が掛かれば、腐朽菌により朽ちていきますが、雨掛りにならなければ、非常に長持ちすることは、神社が証明しています。

当社の近くにも、50年以上経つ、無垢板外壁材の神社がありますが、メンテナンスしているのを見たことがありません。貴方のお宅の近くにも、板貼りの古い神社があるのではないでしょうか?木の外壁材の経年変化が好きで、かつ雨が掛かりにくい外観が造れれば、とても長持ちする外壁材です。

木の外壁材のデメリットは、雨や太陽光により、雨掛りしやすい部分やそうでない部分の、経年変化に違いが出ることかもしれません。経年変化は、味わいの出る材料が好きな人には最大の魅力になりますが、嫌いな人には、大きな不満になります。自然素材だということを充分理解して使用する必要があります。

杉板外壁材の塗装仕上げの種類

■ ウッドロングエコ(木材保護塗装)仕上

腐朽菌を発生しにくくすることで、耐久性が向上します。成分は企業秘密で非公開ですが、鉱物とハーブなどが入っているとのこと。おそらく、木に化学変化を起こして、色が付くのだと思います。ウッドロングエコを塗装すると、「経年したような自然な風合い」に仕上がります。雨掛りになる部分の色は薄くなりますが、基本的には再塗装の必要がない自然の木材保護塗装仕上げです。

■ 着色仕上げ

外部用の色の付いたオイルステインを塗装します。オイルステインは木に浸透する塗料です。茶色・グレー・黒など、好みの雰囲気の外壁にすることが可能。経年すると色はだんだんと薄くなってくるので、再塗装は必要です。ただし、窯業系サイディングと違い、塗膜に依存した外壁材ではないので、色が薄くなっても風合いを楽しめます。着色仕上げは、ウッドロングエコ仕上げに比べると塗装手間が掛かるので、値段は上がります。

■ 無塗装

以下の特徴を理解した施主なら、杉板外壁材の無塗装も「あり」だと思います。
杉板外壁材無塗装仕上げのデメリットは、特に雨の掛かりやすい部分の表面に、黒カビが生えるので、経年変化して色が濃くなるまでは、見栄えが悪いこと。それを知らないで無塗装にすると、「カビが生えた!」とビックリすると思います。また軒下の雨が掛かりにくい部分と、雨が掛かりやすい部分の、色の違いも出ます。また、塗装をしないと水分が染みやすくなるので反りやすくなります。
しかし7~8年経つと経年変化して色が付き、カビが目立たなくなり、かつ雨がかりとの差も自然な雰囲気になります。無塗装は、表面に黒カビが発生すること、雨による色の違いと、多少の反りを理解している施主向けの仕上げ方と言えます。
塗装の工程が無いので、一番安く仕上がります。住宅設計者の憧れ、吉村順三氏の「軽井沢の山荘」の外壁も、無塗装の杉板が使われています。当社ショールームの外壁も無塗装の木材です。

02-3長く使える自然素材と造作建具

ガルバリウム鋼板外壁

ガルバリウム鋼板は主に屋根材として使われている、雨に対して非常に耐久性が高い材料です。黒・シルバー・あずき色等、好みの雰囲気の外壁を作れます。基本は水キレが良い「縦貼り」で使用します。

当社では、土台から屋根まで、継ぎ目のない材料を縦張りすることを基本にしていますので、外壁中央に水平ラインが入らず、見た目もスッキリとします。シーリング箇所も、窓廻りの一部と配管廻り程度と、窯業系サイディングよりもかなり少なくできることも利点で、メンテナンス回数を少なく出来る要因です。

軽い材料なので、付加断熱にも適しています。1棟ごとに、鋼板を折って制作するので、原板が無くならない限り持続可能。廃盤になる可能性が極めて低い材料です。ガルバリウム鋼板外壁材のデメリットは、モノがぶつかると凹みやすいことです。

02-4長く使える自然素材と造作建具

屋根材と雨樋

雨の多い日本の気候風土で、最も酷使される部位が屋根です。雨・風・雪・熱・紫外線などが、容赦なく屋根に降りかかります。ヨシダクラフトの屋根材は、耐久性の高いガルバリウム鋼板と陶器瓦(和瓦)の2種類を、好みとデザインにより使い分けています。

■ ガルバリウム鋼板屋根

ガルバリウム鋼板屋根は、コロニアル屋根と比較すると耐久性が高くメンテナンス回数が減らせる上に、緩い勾配の屋根にも施工できるのが特徴です。
当社のガルバリウム鋼板屋根の葺き方は、緩い勾配にも対応できる、「立平葺き(たてひらぶき)」を基本仕様と致します。ガルバリウム鋼板屋根のデメリットは金属屋根特有の「雨音の響きやすさ」ですが、屋根下地に、セルローズファイバーもしくは高性能グラスウールを300㎜以上入れるので遮音効果もあり、雨音が気になると言われたことはありません。
ガルバリウム鋼板とは、鋼板を基材に「アルミニウム」と「亜鉛」で表面処理された鋼板です。アルミニウムの特徴である耐久性と、亜鉛の特徴である犠牲防食機能により錆が発生しにくくなり、従来のトタン屋根よりも3~6倍の寿命が期待できます。塗装は必要で、15年程度を目安とすると良いでしょう。

■ 和瓦

日本の伝統的家屋の雰囲気を造っているのは、和瓦屋根です。古墳から陶器が出土することを考えると、屋根材としての耐久性は陶器瓦が一番高いと思います。何百年も風雪に耐えて生き残ってきたことが、和瓦の耐久性の高さを証明しています。陶器瓦は遮熱性にも優れています。
陶器瓦の種類は、時が経っても部分交換できる可能性が高い「和瓦」を使います。和瓦(J形瓦)は、JIS規格で寸法や形状が規定されているため、瓦メーカーが違っても交換できます。
値段はガルバリウム鋼板よりも高めですが、屋根材の中で一番メンテナンス費用が掛からない素材です。メンテナンスは、15年程度に1度、棟瓦等の漆喰補修が必要になります。和瓦屋根と杉板外壁は、極めてメンテナンス費用の掛かりにくい組み合わせと言えます。

■ 雨樋

雨樋は、一般的に使われている塩化ビニールの雨樋でなく、耐久性の高いガルバリウム鋼板雨樋にしています。瓦屋根の場合も雨樋はガルバリウム鋼板です。タニタハウジングウェアの半丸を外壁の色と合わせて使うことが多いです。一般的な塩化ビニール雨樋より値段は高いですが高耐久。長く使えることを考えるとガルバリウム鋼板雨樋のほうがお得だと思います。屋根に付ける「雪止金物」もシンプルで耐久性が高いモノを選んでいます。

02-5長く使える自然素材と造作建具

無垢フローリング

一般的な住宅で使われているフローリングは、合板の上に0.2~0.3㎜の化粧板を貼った合板フローリング(別名:カラーフロア)ですが、当社では合板フローリングは使わずに、無垢フローリングを使います。

合板フローリングを使わない理由は4つ。
まず、薄い化粧板が劣化して、不格好な経年変化をすること。
次に化粧板が極薄なので傷が付くと直ぐに合板が露出してしまうこと。
3つ目は、合板フローリングの表面は樹脂の塗膜で覆われているので、夏に素足で歩くとベタベタして気持ちが悪い上に、無垢フローリングよりも熱伝導率が良いので冬は冷たく感じやすいこと。
最後に合板フローリングの芯材は文字通り合板なので、積層された合板の接着剤の寿命がフローリングの寿命になり、無垢フローリングと比べて耐久性も大きく劣るからです。

合板フローリングの表皮の剥がれ
レッドパインフローリング
杉フローリング
オークフローリング

無垢フローリングは素足でも足触りが良く、一生使える耐久性がある上に、住むほどに味わい深く経年変化していく素材です。
当社では、基本的にレッドパイン・杉・オークの3種類の中から、家の雰囲気・生活様式・予算に合わせてご提案いたします。

02-6長く使える自然素材と造作建具

造作建具・造作家具

室内ドアは既製品でなくオリジナルで造ります。造作建具(ぞうさくたてぐ)と言います。室内は、床と壁と天井のみで構成されているので、建具の占める面積は大きく、そのデザインと材料が与える印象も大きい。大切なのは、機能的で室内に違和感無く調和し、時間が経っても修理と交換ができる材料を使うことだと思います。そうなると、チープで廃盤になる既製品のドアは使えません。

室内を造作建具で揃えると、空間に統一感とオリジナリティが生まれ、修理も効きますから、持続性も獲得することになります。

大手建材メーカーの既製品の建具は、MDFの心材に木目がプリントされた塩ビシートを貼ってあるモノが多く、造作建具のように削ったりして調整が出来ません。建具のみをリフォームするのが難しいのです。木目の塩ビシート建具は、経年すると剥がれたり、変色したりするので使わないほうが良いでしょう。

2019年10月の台風19号の水害では、造作建具は水害にも強いことが分かりました。当社で管理させて頂いている、4軒のお宅が床上浸水して、リフォームを行いました。全てのお宅が造作建具だったので、建具職人による調整のみで、1本も建具を交換せずに済みました。水害に遭った造作建具が、調整のみで済んだ理由として考えられるのは2つです。1つ目は、造作建具の骨組みは無垢材であり、無垢材は水にも強く、骨組みの変形が少なかったためだと思います。2つ目は、造作建具は、多少変形しても大手や蝶番部分を削ったりして調整が出来ることも、水害に強いと感じました。反対に、他社の水害現場に行った建具職人によると、心材がMDF合板の既製品建具の場合、浸水すると合板の心材が水を吸って膨れてしまい、建具が変形して開閉が出来なくなり、かつ表皮が木目の塩ビシートなので、削って調整することも出来ず、使えなくなっていたとのことでした。

また、下駄箱・洗面化粧台・テレビボード・本棚等の家具も制作します。建具と家具をオリジナルで造ることで、統一感のある室内になります。床下エアコンをテレビボードに組み込んだり、犬小屋や猫のためのスペースを建築化したりと自由自在。家具もオリジナルに制作することで、「自分が欲しい空間」を造れます。

特に延床面積25坪前後の小さな家の場合は、収納家具を適切に配置して「片付く収納」を実現しないと、モノが散らかって部屋が狭くなってしまいます。小さな家では、収納と家具を適切に造り付けることが暮らしやすさに繋がります。

坪単価の安い家は、建具と造り付け家具の数が少なくて室内の密度が低く、ガランとしているのが共通点です。こういう家は暮らしにくいので気を付けましょう。

造作建具と造作家具をシンプルに違和感なく造るには、図面と共に大工・建具職人・家具職人への適切な指示が重要になります。ヨシダクラフトでは、多様なリフォームの経験から、無駄な空間を生じさせない造作建具・造作家具のアイデアと、それらをリーズナブルに実現するノウハウを蓄積しています。

建具職人の腕次第で建具の出来が大きく変わるだけでなく、建具が室内に与える影響も大きいため、経験豊富な建具職人に依頼しています。また、デザインや質感の話ばかりでなく、リフォーム工事では柱等の既存部分が垂直ではない場合も多いのですが、的確な採寸技術と、現場での微調整の繰り返しにより、違和感なく造作建具を納めます。このような現場に立ち会うと、修理しながら長く使えるのは、既製品建材ではなく、造作モノだと実感します。

02-7長く使える自然素材と造作建具

造作キッチン

キッチンは、リビングと同じ空間に造られることが多くなっている為、リビングと同じテイストで、インテリアに溶け込むように造りたくなるものです。そのような思いを実現できるのが、造作キッチン(オーダーメイドキッチン)です。

既製品のキッチンは、余分な装飾が付いていたり、面材に艶があったり、抽斗(ひきだし)の金物の質感が良くなかったりするので、インテリアの統一感を図るのが難しい。例えば、既製品のキッチンには、シンク下にゴミ箱を入れられるレイアウトは無いので、欲しければ造るしかありません。造作キッチンの場合は、デザイン、素材、金物、設備機器、収納、レイアウトを住まい手に合わせて造ります。デザイン性だけでなく、使い勝手も完全に自分仕様になるので満足度も高くなります。当社では、今まで数多くの造作キッチンを制作しています。

02-8長く使える自然素材と造作建具

自然塗料仕上げ

室内の木部塗料は、表面に塗膜を作るウレタン塗料でなく、木材に浸透する自然塗料のオイル仕上げの1択です。

その理由2つ。1つは木材の表情と風合いを活かすため。もう1つは将来のリフォームを考えてのことです。

例えば、新築時に無垢フローリングをウレタン塗装仕上げにしてしまうと、リフォーム時には、そのウレタン塗膜を機械で削り取り、全て剥がしてから再塗装しなくてはなりません。床のウレタン塗膜を全て剥がす場合、大量の埃が出ますから、家具の移動と養生が大変な上に、塗膜を作るウレタンを現場で上手に塗るのは、大変な技術が必要なのです。

ですから、室内の木部はウレタン塗装でなく、自然塗料のオイル仕上げの1択としています。浸透性のオイルなら上から重ね塗りが出来る。当社の自然塗料仕上げは、塗装職人が塗り慣れている「オスモカラー」を基本仕様にしています。

02-9長く使える自然素材と造作建具

内装塗り壁

内装塗り壁は、珪藻土もしくは漆喰を、壁と天井の仕上げ材として使用します。調湿及び消臭作用があり、間接照明を当てると柔らかな雰囲気が広がります。調湿と消臭効果がある上に、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドなどの揮発性有害化学物質を吸着分解します。塗り壁のデメリットは、汚れてもクロスのように貼り替えが出来ない事ですが、汚れても不自然さは無く、味として考えられるような許容範囲の広い材料なので、貼り替える必要がないという点と質感の良さも考えると、長い目で見ると、クロスよりもコスパが高いと考えられる内装材です。

02-10長く使える自然素材と造作建具

天井べニア仕上げ

室内を落ち着いた雰囲気に仕上げたい場合、天井にラワンべニアを使用します。

ラワンべニアは下地用の安価なべニアですが、透明の自然塗料で仕上げることで、経年すると色が濃くなって味わいが出ます。