2026-01-21
住宅設計
高断熱・高気密住宅
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高断熱高気密住宅、「UA値が良ければ安心」ではない理由

UA値の数値だけで家を判断してしまう危うさ

「去年、高断熱高気密住宅を建てたのに寒い!」もしくは「暑い!」という相談をメールで受けることがあります。

そこには、「UA値はいくつです」と書いてあります。

UA値(ユーエー値)は、住宅全体の断熱性能を表す、とても重要な指標です。


ただし、UA値の数値だけで家の快適さは判断できません。

なぜなら、UA値が良い=必ず快適な家とは限らないからです。

その理由を分かりやすく説明します。

UA値とは何を示す数値か?

UA値は、外皮平均熱貫流率と呼ばれ、数値で表されます。

単位はW/㎡・Kで意味は室内外の温度差が1℃あるとき、1㎡あたり何ワットの熱が逃げるかです。

UA値とは、住宅の外皮(外壁・屋根・床・窓など)から、どれだけ熱が逃げやすいか?を示す数値です。

UA値とは?

  • 数値が小さいほど断熱性能が高い
  • 家全体の「断熱の目安」のような数値

です。

これから高断熱高気密住宅を建てる施主家族にとって、UA値が低いことは、快適性の土台になります。

ここまでは、間違いありません。

しかし――
UA値は「外皮の断熱性能しか評価していない」という点を、忘れてはいけません。

UA値は良いのに家が寒い理由

UA値を簡単に良くする方法があります。

  • 窓を無くす
  • もしくは、窓を極力小さくして数を極端に減らす

これだけで断熱性能は上がりますから、UA値は一気に良くなります。

窓の断熱性能よりも、外壁部の断熱性能のほうが高いので、窓を無くす、または極端に少なくすると、UA値は良くなります。

しかし、窓を無くしたり、少なくするとどうなるか?

窓からの日射熱が入らない家になります。

つまり、

UA値は良いのに、冬に室温が上がらない寒い家になってしまうのです。

実際に聞いたUA値は良いのに寒い家の事例

断熱材を厚くしてUA値を良くしたのに、寒い住宅の実例です。

  • 南面にコの字型の凹みがある平面形状で
  • かつ、プライバシー配慮で、窓は凹み部分のみに設置

したという住宅です。

この場合、

南からの直達日射がほとんど室内に入らないため、

  • 日中でも室温が上がりにくい
  • 暖房に頼る時間が長くなる

という結果になりがちです。

結果として、UA値が良い住宅でも、日射取得しづらい平面形状のため、「寒く・快適でない住宅」になりました。冬暖かく、快適に過ごせると思い込んでいた施主から、寒いというクレームになったと聞いた気がします。

これは、新住協の研修会で聞いた話ですが、決して珍しい話ではありません。

少し余談になりますが、このような凹型の平面形状の住宅は、矩形(四角形)の平面の家と比較すると、空気(暖気と冷気)も移動させにくくなりますから、寒いところと暖かいところが出来やすくなります。かつ、矩形の平面と比べて、外皮面積も増えるので熱の出入りは多くなり、温熱環境のみで考えると、良くない平面形状と言えます。また、外壁面積も広くなるので、新築時の施工費も高くなりますし、リフォーム時の外壁塗装費用も高くなります。

UA値が良くても寒くなる、もう一つの理由

日射熱取得の他に、もう一つ大切なのが、C値(隙間相当面積:気密性能)です。

UA値がどれだけ良くても、C値が極端に悪く、隙間が多い家であれば、

  • 隙間風が入る
  • 暖房した空気が逃げる

結果として、寒い家になります。

UA値だけで家を判断するのは間違いと言える理由が、ここにもあります。

C値は、大工・電気職人・設備職人の3者が、施工する度に隙間を無くし続けるような、丁寧な気密工事をしないと、良い数値になりません。

気密試験結果の良い住宅は、大概、仕上げ工事も良く出来ています。現場の熱意が仕上げ工事の職人達にも伝わるからだと思います。

工事中に気密試験を行いC値を確認することは、住宅の断熱性能を確実なものにするのはもちろん、仕上げ工事の品質にも少なからず影響するような気がするので、必ず実施した方が良いと考えています。

UA値と必ずセットで考えるべきこと

UA値はとても重要です。ただし、これだけで快適さは決まりません。

私が必ずセットで考えるべきだと考えているのは、次の5点です。

  1. C値(気密性能)
     丁寧に気密工事を行い、必ず気密試験を実施
  2. 窓の性能と配置
     断熱性能の高い窓を使い、日射取得できる位置に配置
  3. 日射取得・日射遮蔽
     夏は日射を遮り、冬は取り入れる
     新築時に外付ロールスクリーン・電動外付ブラインド・ハニカムサーモスクリーン等を前提に、 冬と夏の日射熱の操作を計画
  4. 換気・エアコン計画
     ・第一種換気で掃除しやすいもの
     ・延床30坪程度なら、エアコンは家全体で壁掛け2〜3台。1台のみだと壊れた時に大変。台数を少し多くすると、室内を快適にしやすいまた、高断熱住宅のエアコンは、24時間連続運転になりやすいため、想定よりも長時間運転になりやすく、6年程度で壊れる(寿命となる)こともあるので、現在のところ、比較的安く買い替えしやすい壁掛けエアコンが良いと考えている
  5. 住宅形状 外観はできるだけ矩形・総二階とする→シンプルな形状にしたほうが、外皮面積が小さくなり熱が逃げにくい。また外壁面積も小さくなるので、施工費も安くなる。シンプルな形状の住宅は、比較的暖気と冷気を動かしやすい

本当に重要なのは、「実績ある断熱等の仕様」→「工事中の気密試験」→「完成後の温湿度の実測」

設計段階でどれだけ理論を積み上げても、完成後に実測しなければ、住宅の現実は分かりません。

  • 断熱仕様
  • 換気・空調計画
  • 施工精度

このバランスが取れているかどうかは、完成後の温湿度実測で初めて確認できます。

実測することで、

  • 何が良かったのか
  • どこを次は改善すべきか

が、はっきり見えてきます。

以下は、実際に完成後の温湿度を実測している施工例です。

ヨシダクラフトはUA値をどう使っているか?

当社でも、設計完了時にUA値は必ず計算します。ただし、UA値は「確認用の数字」という位置付けです。

  • 断熱仕様(基礎・外壁・屋根・天井の断熱材種類と厚さ)は、ほぼ固定
  • その仕様で計画すると、UA値は概ね0.3前後

そして完成後に温湿度を実測すると、ほぼ快適と言える状態になっています。

そのため、性能とコストは、ベストバランスに近い状態だと考えています。

なにより、住んでからの「掃除のしやすさ」と「リフォーム費用がなるべく安く済む」ことを重視して、換気システム・エアコン・仕上げ材・形状を選んでいます。

断熱材の仕様(種類と厚さ)を、どのように決めているのか?

例えば、外壁断熱材の種類と厚さをどのように決めているか?については、

外壁の断熱材は、厚さを

  • 充填断熱:高性能グラスウール105mm
  • 付加断熱:高性能グラスウール105mm
  • 合計:210mm

としています。

外壁断熱材の種類を高性能グラスウールにしている理由は明確です。

  • ガルバリウム鋼板もしくは杉板仕上げが多い→シンプルで比較的安く、長持ちするため
  • 外壁防火構造の認定が取れる(ガルバリウム鋼板もしくは杉板仕上げと高性能グラスウールの組み合わせで認定が取れている。外壁がガルバの場合は高性能グラスウールが多いはずです)
  • 万一の近隣火災時も延焼リスクが低い(高性能グラスウールは比較的燃えにくい)
  • コストバランスが良い

上記した断熱材の厚さと種類であれば、完成した住宅を実測しており、ほぼ快適であると言えるので、私もお客様も安心です。

性能だけでなく、安全性と現実性を含めた判断です。

例えば、付加断熱をしないとなると、断熱性能が下がるため、かなり快適性も下がります。

まとめ:UA値は断熱性を示す重要な目安だが、目的ではない

UA値は、とても大切な数字です。しかし、UA値が良いこと自体が目的ではありません。

本当の目的は、

  • 冬に寒くない
  • 夏に暑くなりにくい
  • 光熱費が抑えられ
  • 長く安心して暮らせること

です。

そのために、
UA値・C値・窓・日射・換気・空調・建物形状・施工精度。すべてをセットで考える必要があります。

数字は、あくまで道具。

暮らしの快適さが、最終的な答えだと私は考えています。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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