なぜ「気密性(C値)」が快適性を左右するのか?——高断熱でも寒い・暑い家になる理由と、気密試験の必要性

「最近、高断熱高気密住宅を建てたのに寒い!」もしくは「暑い!」という相談をメールで受けることがあります。
そこには「UA値はいくつです」と書いてありますが、「C値はいくつです」と書いてあることは少ない。
C値とは、隙間相当面積のことで、家の気密性を数字で表したものです。
UA値(断熱性)はソフトに入力すれば出せますが、C値は気密測定という現場での実測が必要なため、行っている会社は少ないからだと思います。
良いC値を出すには、職種を跨いだ膨大な工数の気密工事が必要で手間が掛かる上に、1棟ごとに気密測定器を設置して実測する必要があり、お金が掛かります。
また実測して数値が悪ければ、隙間だらけの住宅ということになるので、施主に報告出来ません。
これがC値を実測している会社が少ない理由です。
しかしC値は、住み心地はもちろん、家族の健康や家の寿命まで左右する重要な数値なので、無視はできません。
断熱材と気密材は密着しており、断熱と気密はセットで考えます。
いくら高性能で分厚い断熱材を入れても、気密性が悪ければ、隙間風により断熱材の効きが悪くなり、寒い家になる可能性が高いです。
ですから、「新築工事や性能にこだわった大規模リフォームで気密測定を行い、C値を実測して出す」のはとても大切です。
先日は、UA値(断熱性)についてブログを書いたので、今日は断熱性とセットとなるC値(気密性)について書きます。
先日のブログはこちらです。
https://yoshidacraft.net/blog/35697/
目次
住まいの不満の1位は「気密性・断熱性が低く、暑さ寒さが気になる」こと

住まいの不満・不便の上位に「気密性・断熱性が低く、暑さ寒さが気になる」が挙がる、という調査があります。実際に、子育て世帯を対象にした調査では不満理由の最多がこれで、67.2%でした。
また、これから家を選ぶ際に最も重視したい点でも、
「夏は涼しく、冬は暖かい室内環境(36.8%)」が1位で、2位以下を大きく上回っています。
暑い・寒いは、結局「断熱」と「気密」が大きく関係します。
特に、身近に“冬も暖かく夏も涼しい家”があると、比べてしまって不満が強くなるのも自然なことだと思います。
断熱と気密は「セーター+ウィンドブレーカー」で考えると分かりやすい

上記のイラストは、セーターを着ることで高い断熱性、その上にウィンドブレーカーを羽織ることで高い気密性を確保できることを書いたもの。
いくら高価で高性能なセーター(高性能断熱材)を着ても、ウィンドブレーカー(気密シート)を羽織らないと暖かくならないということが、実感として分かると思います。
低気密住宅とは、セーター(断熱材)上のウィンドブレーカー(気密シート)に穴が空いていたり、きちんとファスナーが閉まっていない、隙間風が入る状態だと考えると、分かりやすいと思います。
セーター(断熱性)とウィンドブレーカー(気密性)の2つを組み合わせたような、ダウンジャケット(高断熱高気密住宅)なら、断熱性と気密性の両方が確保されて暖かい。
住まいの断熱と気密の関係(気密性C値が必要な理由)は、セーターとウィンドブレーカーに置き換えると分かりやすい。
気密試験が必要な3つの理由
1)「高気密になっているか」を確認する、唯一の客観的な実測だから
気密は“現場品質そのもの”です。
丁寧にやったつもりでも、出来上がりは測らないと分かりません。
高断熱だけでは、快適性・省エネ性・耐久性が安定しません。
気密が担保されて初めて、設計が狙った性能に近づきます。
だから気密試験は、やる・やらないではなく、性能にこだわるなら「やって当然の検査」だと思っています。
2)人の感覚では、気密性能は判断できない
- 「丁寧に気密工事をしたつもり」
- 「いつもこのやり方でやっている」
これだけでは、C値がいくつなのか分かりません。
“つもり”を“実測”に変えるのが気密試験です。
3)C値は、設計・現場・職人・施主の共通言語になる
C値は、関係者全員が同じ数字を見られます。
そして私の経験上、気密測定の結果が良い現場は、内装など仕上げの品質も良いことが多いです。
断熱・気密に本気な現場の空気感は、仕上げ職人さんにも伝わるのだと思います。
当社が「C値0.5前後」を目安にしている理由

当社では、設計時のC値の目安を0.5前後にしています。
理屈だけなら、C値は0に近いほど理想です。
ただ実務では、C値が1.0を切ると
- 隙間風の体感が減る
- 計画換気が安定しやすい
といった効果がはっきり出てきます。
一方、0.5を下回る領域は、0に近くなるほど良いのですが、体感差や省エネ効果の“伸び”が緩やかになっていきます。
施工手間とのバランスまで含めて考えると、0.5前後が「合理的な高気密の目安」になりやすい、という考えです。
そして、断熱気密“だけ”を簡単に良くするなら、形を単純にするのが一番です。
例えば、下屋のない総二階、真四角に近い平面、屋根も素直な構成…そういう家は気密が取りやすい。
ただ現実には、下屋があることで間取りの自由度が増したり、勾配天井と水平天井の両立で空間が良くなったり、意匠として大事な要素もあります。
性能とデザインの両立を狙う中で、当社としてはC値0.5前後を目安にしています。

気密を良くする第一歩は「設計時に断熱・気密ラインを決める」こと

C値を良くする上で一番大切なのは、設計の段階で、断熱・気密ラインを決めておくことだと思います。
難しくなりやすいのは、例えば
- 下屋がある家
- 2階天井で、屋根断熱と天井断熱の取り合いが出る家
など、“断熱気密のラインが複雑になりやすい形”です。
こういう家ほど、設計時に
- 断熱・気密ラインをどこに通すか
- どんな順番で施工するか
を図面化して、現場監督が職人さんに手順を説明できる状態にしておく必要があります。
ここを飛ばすと、現場で「あれ、どこに断熱材を入れて、どっちが先に気密シートを貼るの?」となりやすく、結果として気密が落ちます。
どちらにしても、断熱・気密ラインが難しくなりそうな場所は、設計時に「断熱気密の詳細図」を描いた上で、現場監督が職人達に断熱・気密工事の手順を説明する必要があります。


また、天井断熱する場合、野縁より先に間柱を設置してしまうと、間柱部分全てで、天井気密シートをカットすることになり、気密性を十分確保できません。
その場合は、間仕切り部の「天井先張りシート」部分を造ってから、間柱を建てる前に、天井断熱部の野縁を全て先に組んでしまいます。その後、「天井の防湿気密シート」を貼って、最後に間柱を建てるという、普通の家とは全く違う工程で、天井断熱部の防湿気密シート施工を行う必要があります。
職人達を指導する現場監督の経験とやる気が2番目に大切だと思います。

住宅の気密が悪くなる施工箇所4選

結論から言うと、気密が悪くなる施工箇所の多くは次の4つです。
- 配線・配管が気密層を貫通する部分
- 開口部まわり(サッシ・玄関など)
- 天井・壁・床の取り合い
- 先張りシートの施工忘れで、気密層が連続しない
ここで強調しておきたいのは、気密が悪い住宅の多くは「手抜き工事」ではありません。普通の木造住宅と同じように造ってしまうと、気密性は悪くなるのです。
そもそも、前の項で書いたように、高断熱高気密住宅は、普通の木造住宅とは違い、「先張りシート」など、特に気密シートの貼り方などが、普通の木造住宅とは違います。
C値を0.5くらいにするのは、気密シートの施工手順や貼り方に、普通の住宅とは違う知見とコツが要ります。
また、普通の木造住宅建築では使わない、多種類の気密部材を使う必要があり、それらを使い、丁寧に隙間をなくしていく気密工事が必要です。高気密にするには、どうしても工数が多くなります。
- 配線・配管まわりの気密処理不足

どんな状況?
- 電気配線を通した穴の周りを、専用気密部材を使わずに気密テープ処理してしまい、隙間がある
- エアコン冷媒管・ドレン配管が束で通っており、気密処理しても隙間が生じる
- コンセント・スイッチ専用の気密部材を使っていないので、コンセント裏から隙間風
なぜ起きる?
- 専用の気密部材を使わず気密テープのみで施工
- 専用の気密部材を使っていても施工が粗い
- 「どうせボード貼るから大丈夫」
- 電気屋さんと大工さんの施工順が良くない
など
結果
1ヶ所の隙間は小さくても、配管と配線は数が多くてC値を一気に悪化させる
2.開口部廻り
どんな状況?
- 外部、ボード気密不良。サッシと耐力面材の気密テープ不良
- 内部、サッシと防湿気密シートに隙間がある
- 発泡ウレタン任せ
なぜ起きる?
- 丁寧に気密工事しても、サッシ・玄関ドアの開口部は広く数も多い為、漏気しやすい
結果
開口部は面積が大きいので、丁寧に施工しても多少の隙間はできる。丁寧な施工が必要
3.天井・壁・床の取り合い

どんな状況?
- 壁と床の防湿気密シートの取り合いに隙間
- 壁と天井の防湿気密シートの取り合いに隙間
なぜ起きる?
- 図面に「気密ライン」が描かれていない
- 防湿気密シートの折り返し不足
結果
全体にじわっと効く“厄介な漏気”
4.先張りシートの施工忘れで気密層が連続していない

どんな状況?
- 壁の気密シート。先に貼っておきべき先張りシートを忘れて防湿気密層が連続せず
なぜ起きる?
- 気密工事の施工手順が曖昧
結果
・広い面積で先張りシートを忘れると、気密が悪くなる
「新築で気密試験をしている家は何割?」について
「新築木造住宅のうち、気密試験をしている割合は何割?」についてネット検索したところ、資料は見つかりませんでした。
ただし私の体感として、気密試験を行っている住宅会社は、とても少ないと思います。
今後、高断熱高気密住宅を建てる予定であれば、住宅会社に「気密試験はしてもらえますか?C値はいくつくらいですか?」と質問して、普通に気密試験を行っている会社であれば、候補に残して良いと思います。
ウレタン吹付断熱の落とし穴(“ウレタン吹付断熱=高気密”ではない)
「ウレタン吹付断熱をすれば勝手に気密が上がる」と思われがちですが、ここは注意点があります。
ウレタン吹付はあくまで断熱材で、気密部材ではありません。
もちろん、ウレタン吹付断熱の性格上“ある程度は隙間を塞げるため、気密に効くこと”もありますが、吹付断熱材と別部材の取り合いに隙間が出ることがあります。
例えば
- 吹付断熱材と木部との取り合い
- 吹付断熱材とコンセント・配線まわり
- 吹付断熱材開口部の端部
などです。
そしてウレタン吹付業者さんは、基本的に“気密工事の専門業者”ではありません。
高気密にするなら、ウレタン吹付断熱の有無にかかわらず、気密ラインの設計施工と、貫通部・取り合いの処理が必要です。
また、ウレタン吹付断熱は、現場で発砲させて吹付を行うため、断熱材が密実に吹けていない部分が発生することがあります。
私はサラリーマン時代の30年以上前、鉄筋コンクリートの住宅の現場監督をしており、全ての住宅がウレタン吹付断熱でした。ウレタン吹付断熱材の厚さは、当時30mm程度で、薄かったと思います。その薄さでも、内部には5mm程度の気泡が発生している部分があり、現場発泡で密実に吹付断熱するのは難しいと感じていました。
現在の木造住宅のように柱寸法105mm程度吹ければ良いと思いますが、「ウレタン吹付断熱をすれば勝手に気密が上がる」というのは、ある意味正しくないと思います。
まとめ 断熱性能と気密性能は、具体的にどれくらいの数値が良いのか?
断熱性能と気密性能は、具体的にどれくらいが良いのか?
- UA値0.3前後、C値0.5前後で、
- 冬の日射取得と夏の日射遮蔽が出来ている家で、
- かつエアコン計画が適切であれば
温熱性能面では、快適な家になるはずです。
断熱と気密はセット。
性能にこだわった新築や大規模リフォームを検討している方ほど、候補の住宅会社に、「C値はいくつですか?気密試験はしますか?」を、最初に確認してみてください。
気密試験でC値を実測することは、単なる検査ではなく、その家が「設計どおりの性能になっているか」を証明する作業だと思っています。
見えない部分ほど、家の快適性や耐久性を左右します。
だからこそ、断熱気密にこだわる会社は、手間と費用をかけて断熱工事と気密工事を行い、気密試験で数字を出し、その結果を正直に共有します。
UA値(断熱性能)だけでは、住んでからの「寒い・暑い」を防ぎきれません。
気密についての関連ブログ
気密については以下のブログも書いています。
防水テープ圧着専用具「ウォータープルーフスムーサー」―気密テープ施工にも活用できる優れた道具
ブローイング断熱厚さ450mmまで対応する「高断熱・高気密型天井点検口」は2重蓋のパッキンを締めて気密性も確保できる
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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