新築木造住宅の「ベタ基礎一体打ち工法」と床下エアコンに必須な基礎断熱との関係は?
建築中のQ1.0住宅 小山の家は、初めて「ベタ基礎を一体打ち工法」を採用している。ベタ基礎の一体打ち工法は、全国的にも非常に珍しい工法であり、特に栃木県内では、新築住宅基礎の1%にも満たない。
今日のブログは、ベタ基礎一体打ち工法は、普通のベタ基礎と何が違うのか?
ベタ基礎の一体打ち工法には、どのようなメリットがあるのか?
基礎断熱とベタ基礎一体打ちの関係についてなどを書きます。
目次
ベタ基礎一体打ち工法は、普通のベタ基礎と何が違うのか?
世の中のほぼ全ての、木造住宅のベタ基礎は、コンクリートを打設する場合、スラブ(ベースもしくは床版:しょうばんとも言う)と立ち上がりを2度に分けて別日に打設します。当然、2回に分けて打ちますので、その取り合いは「打ち継ぎ」が出来ます。
それに対して、ベタ基礎一体打ち工法は、床版と立ち上がりを、一度に(一体に)打設します。一度に打設しますから、床版と立ち上がりは一体化します。
ベタ基礎の一体打ち工法には、どのようなメリットがあるのか?
写真のように、ベタ基礎の一体打ち工法は、鉄筋を組んだ後、立ち上がり部分の型枠も一緒に設置して、床版部分と立ち上がり部分を一度に打設する施工法です。
コンクリートを一体打ちにすることで、床版と立ち上がりが一体化し、継ぎ目がなくなるため基礎の強度が増し、「打ち継ぎの隙間が無くなる」ので、シロアリや水の侵入を防ぎ、継ぎ目がないので、外周基礎表面の美観にも優れています。
ベタ基礎一体打ち工法と、床下エアコンに必須な基礎断熱との関係
当社では、床下にエアコンの暖気を送り込み、床下全体を温めて全館暖房する、床下エアコンを採用しています。
床下エアコンを採用する場合は、床の直ぐ下の、大引間に断熱材を設置する床断熱ではなく、発砲系断熱材を基礎立ち上がりの内側と床版の上、全面に設置する「基礎断熱(当社は基礎内側断熱)」を採用しています。
基礎断熱の場合、断熱材を白蟻の居る地面近くに設置するので、床断熱と比較すると、どうしても白蟻被害にあう可能性は高くなります。
白蟻が基礎内部に侵入しやすい場所が、「2回に分けてベタ基礎のコンクリートを打つ場合の打ち継ぎ部分」と「土中で基礎を貫通する配管廻り」の2箇所です。
だから床下エアコンに必須な、基礎断熱を採用している人は、ベタ基礎一体打ち工法にしたいはずです。
ヨシダクラフトでは、ベタ基礎一体打ち工法を採用することで、打ち継ぎを無くして白蟻の侵入を防ぎ、かつ基礎貫通配管を基礎の立ち上がり部とすることで、土中貫通しないようにして白蟻の侵入を防ぐことにしました。
メリットの多いベタ基礎の一体打ち工法だが、なぜ普及しなかったのか?
今回初めて、ベタ基礎の一体打ちを採用したわけですが、この工法が普及するのは難しいことが理解できました。まずは、型枠を浮かせる専用金物が必要で、この値段が高いようです。そして浮かし型枠の設置方法もコツが要り、慣れるまでは大変そう。
次にコンクリート打設方法が難しい。基礎型枠金物メーカーのマニュアルでは、まず全ての基礎立ち上がりの下(ベース部)を打設して、ある程度固まったら全ての立上りを打設して、その後は床版を打設するようになっている。コンクリートを打設するため、基礎の内部を、基礎職人とポンプ車の職人が3回も回らなくてはならない。マニュアル通りに行うと大変な労力が必要。
これでは疲れてしまうし、真夏では時間が掛りすぎて、コンクリートが固まってしまうかもしれない。コンクリートが固まったら、打ち継ぎになってしまう。そうなると、基礎職人の立場からすると、一体打ちせずに2回に分けて打設したほうが確実で楽である。実際にやってみたら、マニュアルよりも優れたコンクリート打設方法で行う必要があるということで、ハードルが高いのだ。
今日、見た基礎一体打ち工法のコンクリート打設方法は、コンリートがより短時間で打設できる良い方法でした。ただし本当に職人芸であり、慣れないと難しいことが見て分かった。
多くの基礎工事業者が基礎一体打ち工法に取り組んだが、少なくとも上記の2点が難しく、慣れる前に、その殆どは辞めてしまったようである。だからメリットが多い工法なのに、普及しなかったのだ。
栃木県内では基礎一体打ちを行う基礎業者が、ほぼおらず、仕事が集中しているようである。他社の基礎工事が遅れたあおりを受けて、今回は予定より2週間以上も基礎工事開始が遅れてしまった。私は工事開始が遅れてヒヤヒヤして、とてもストレスになったし、後工程の協力業者にも迷惑を掛けている。だから、同業の工務店から基礎の一体打ちの業者の紹介依頼をされても教えないつもりである。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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