地面に置くだけで洪水から建物を守る、土嚢に代わる洪水対策商品「ボックスウォール(BOXWALL)」は戸建住宅に使えそうか?
去年10月の台風19号で、自宅兼事務所が床上浸水しました。近隣のお客様のお宅も多数床上浸水・床下浸水してしまい、未だリフォーム工事が完了しておらず、これから大規模な水害リフォームを行うお宅もあります。
自宅兼事務所が床上浸水した様子はこちらのブログをご覧ください。
台風19号で事務所兼ショールームが床上浸水した1日を写真で振り返る
今後も豪雨による洪水等の水害が予想される中、水害を受けたお客様からは、「土嚢でない、簡単に設置できる水害対策商品はないのか?」と問い合わせを受けています。
そんな中、建材業者から土嚢に代わって簡単に設置できる、緊急洪水防護システム「ボックスウォール(BOXWALL)」という「水害対策商品」の情報が流れてきました。
実際にこの「ボックスウォール(BOXWALL)」を戸建住宅で使えそうか、ザックリ調べてみました。
ちなみに、「ボックスウォール(BOXWALL)」で検索してみると、多数の建材商社やアマゾンのようなネット通販業者が、この商品を扱っています。そして今のところ、価格もほぼ同じで類似商品はありません。
緊急洪水防護システム「ボックスウォール(BOXWALL)」は、どこの国のメーカーが作ったモノなのか?
取り扱い建材商社の1つであるガデリウス・インダストリー株式会社の産業機材・災害対策機器部に問い合わせたところ、スウェーデンのメーカーである、NOAQ Flood Protection社が作っているとのことです。
「ボックスウォール(BOXWALL)」のメーカーホームページは下記となります。
ちなみにガデリウスもスウェーデンのメーカーであり、高断熱木製玄関ドアや高断熱木製トリプルガラスサッシ・換気システムなどを製造・販売している、高性能住宅を造る住宅会社にとっては、知らない人が居ない会社です。同じスウェーデンのメーカーということで、「ボックスウォール(BOXWALL)」を扱っているのかもしれません。
ガデリウス・インダストリー株式会社の「ボックスウォール(BOXWALL)」のページはこちら
https://www.gadelius.com/products/disaster_relief/03.html
洪水対策商品「ボックスウォール(BOXWALL)」の概要
材質:ABS樹脂
サイズ(幅W × 奥行D × 高さH)[mm]:705 × 680 × 528を連結して使用
最大堰き止め高さ[mm]:500
重量[kg]:3.4/個
付属品:バネクランプ(1枚に1個)
樹脂製なので軽く、持ち運びしやすく、重ねて収納できるのは良いと思いました。
「ボックスウォール(BOXWALL)」は、どのような仕様で水害を防ぐのか?
「ボックスウォール(BOXWALL)」は、樹脂製でL型をしており、水の自重によって地面に固定されます。地面との設置面には、多孔質ゴムが付いており、そのゴムが地面をしっかりとらえて水漏れを少なくし、固定されるようです。
ですから、地面はコンクリート・アスファルト・タイル・石のように硬く、段差がない場所でないと使えません。設置する地面が土とか砕石敷の場合は設置面と密着しにくく、基本的に使えないことになります。
「ボックスウォール(BOXWALL)」どのくらいの高さの洪水に対応できるか?
「ボックスウォール(BOXWALL)」1枚あたりのサイズは、幅W705 × 奥行D680 × 高さH528[mm]です。組み合わせて、塀のようにして洪水に対応します。
最大堰き止め高さが500mmなので、それ以上の高さの洪水では水の侵入があります。当社に来た洪水高さが約500mmなので、あと100mm高ければ使えたかもしれません。また、奥行が680mmありますから、例えば隣地との隙間が680mm以上でないと、そこには設置できません。
「ボックスウォール(BOXWALL)」は一戸建て住宅の洪水対策にも使えそうか?
「ボックスウォール(BOXWALL)」の設置面は、コンクリート・アスファルト・タイル・石のように硬く、段差がない場所でないと使えません。設置する地面が土とか砕石敷の場合は、設置面が密着しにくく、基本的に使えないことになります。
一戸建て住宅の場合、家の周囲の土間は通常、砕石や土である場合が多く、家の周りの土間4面全てを70㎝幅程度のコンクリートもしくはアスファルトで施工していることは少ないです。ですから、一戸建て住宅の外周全てに「ボックスウォール(BOXWALL)」を使うのは、難しいことになります。
建物周囲が水の侵入しない高めの塀で囲われており、道路側に「ボックスウォール(BOXWALL)」が設置できるお宅なら、効果的に使える可能性があります。
「ボックスウォール(BOXWALL)」の価格。2階建て延べ床面積30坪程度の家を囲うといくら位かかりそうか?
「ボックスウォール(BOXWALL)」1枚あたりの価格は、「げんばのどん」によると、41800円(税込み)となっています。
平面寸法4間×4間(7.28M×7.28M)の総2階30坪程度の家の場合、建物の4面をぐるりと「ボックスウォール(BOXWALL)」で囲うと、50枚程度必要になります。
41,800円(税込み)×50枚=2,090,000円。なんと200万円(税込み)以上かかるので、建物の4面をぐるりと囲うのは、金額的にも現実的ではありません。
やはり、建物周囲3面が水の入らない塀で囲まれており、道路側だけに「ボックスウォール(BOXWALL)」が設置できるような状況でないと、現実的ではなさそうです。ただし、囲ってしまうと水が抜けず水位が上がりますから、戸建住宅で上手く使うのは難しいのだと思います。家の前に設置して、家に迫ってくる高さ50㎝以下の洪水の流れを変えることは出来るかもしれません。
また、「ボックスウォール(BOXWALL)」は繰り返し使えるとのことですが、地面に設置する部分がゴム製なので、普通に考えると劣化しそうです。ゴムが劣化してしまうと使えません。
拝啓アイリスオーヤマ様。「ボックスウォール(BOXWALL)」に代わる、日本独自の水害対策商品を造って頂けないでしょうか?
ボックスウォールは値段が高く一般の家庭では購入が難しいです。かつコンクリートやアスファルト等、硬い土間面にしか設置できないので、一戸建て住宅には適していない場合が多い。ただし、需要はあるのでプラスチック商材に定評のあるアイリスオーヤマさんに日本向けにアレンジしてもらい、「ボックスウォール(BOXWALL)」に代わる、日本独自の水害対策商品を造ってほしいです。このブログを添付してメールで問い合わせしてみます。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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