屋上庭園に対する3つの違和感。友人から屋上庭園を造りたいと相談されたらどう答えるか?
写真出典http://yakei.jp/japan/spot.php?i=fukuniwa
住宅業界の一部で、屋上庭園を盛り上げようという動きがあります。住宅展示場に行くと屋上庭園のあるモデルハウスがあり、地域工務店向けには、屋上庭園を提案して集客しようというFCもあるようです。屋上庭園に違和感を感じる点が3つあるので「友人から木造住宅に屋上庭園を造り屋上緑化したいと相談されたらどう答えるか?」という形で整理したいと思います。
金属防水が屋上庭園を可能にした
まず、屋上庭園を推奨する会社のwebを見ると、木造住宅で屋上庭園が可能になった背景として、防水の種類が今まで主流のFRP防水ではなく、金属防水にしていることが挙げられています。金属防水は、今まであるガルバリウム鋼板やステンレス鋼板等の勾配の付いた金属屋根と同じ仕組みで実績がある屋根です。屋上庭園の屋上=屋根ということです。FRP防水のような塗るタイプの防水と違い、金属屋根防水は建物の上から鉄板を被せる防水ですから、下地木材が地震等で動くことによる影響は受けにくい防水方法です。金属防水はとても耐久性のある防水工法だと思います。
ただし、屋上庭園には3つ問題がありそうです。
屋上庭園の1つ目の問題は緩い勾配による防水の傷みやすさ
1つ目は、人が歩いたり過ごせる屋上にする為、金属防水の屋根勾配は1/100になること。勾配が急だと人が歩きにくいし過ごせません。1mの距離で1㎝の勾配しか付かないメッチャ緩い平らな屋根になります。屋根勾配が緩いと、雨水の水キレが悪くなるのは当然です。屋根勾配を付ける意味は、降った雨水をなるべく早く建物の外に排出するためです。屋根が平らに近いと雨水が切れにくく、勾配の付いた屋根よりは傷みやすくなるでしょう。人が歩ける屋根を陸屋根(ろくやね)と言います。ヨシダクラフトの屋根材についての考え方はこちら。
2つ目の問題は、陸屋根による外壁の痛みやすさ
2つ目は、屋根庇の無い陸屋根(ろくやね)になるので、地上から見ると、屋根が平らで真四角な箱のような家になります。屋根の庇が出ていないと、雨が外壁に掛かりやすくなるので、庇の出ている普通の住宅より、外壁は傷みやすくなります。雨の多い日本での庇の有無は、外壁の耐久性を左右すると思います。上記シュミレーションを見ると、庇の出ていない住宅は雨が壁面全体にかかっていることが分かる。シュミレーションは陸屋根でなく勾配屋根です。
3つ目は、屋上に物があることによるゴミや埃の溜まりやすさ
3つ目は、屋上緑化等についてです。屋上で遊んだり、園芸をしたりしたいので屋上を設けたわけです。屋上庭園は屋根の上で過ごすライフスタイルですから、当然屋上に物が置かれることになります。しかし、平らな屋根に物を置くと、ゴミや埃が溜まりやすくなり、雨水が流れにくく屋根が傷みやすくなるのは、よく考えれば小学生にも分かることなのです。平らな屋根は、物が置きやすいので、下手をすると第二の物置のようになってしまいます。
屋上庭園という言葉の意味から是非を考えてみる
漢字は物事の内容をよく表している場合が多いので、「屋上庭園」という言葉からも、是非を考えてみたいと思います。
●「屋上」はとても開放感のある言葉である。空が近くお日様と四季も感じさせる。雨の多い日本の気候の為、屋上のある家は少ないから希少価値があり、ちょっとお金持ちな雰囲気を持つ言葉である。
●庭園(ていえん)とは、見て、歩いて楽しむために樹木を植えたり、噴水・花壇を作ったりなど、人工的に整備された施設。(ウィキペディアより)。英国庭園、フランス庭園、イタリア庭園という単語があるように、庭園はヨーロッパ貴族の屋敷と切ってもきれない間柄である。
●屋上庭園は、人が憧れる単語の組み合わせて出来た言葉である。しかし屋上に庭園があるのは、やはりすこし不自然ではないだろうか?。不自然なものにはリスクもある。メリットとデメリットを良く考えて採用する必要があるだろう。
私は、使う予定もないのに広すぎるベランダや屋上を勧めない。勾配の付いた屋根を架けて庇も出来るだけ出したい。勾配の付いた屋根で、かつ庇も出ていないと、外部メンテナンスコストがより多く掛かるからである。というわけで、親しい友人から、木造住宅に屋上庭園を造り屋上緑化したいと相談されたら、勧めない次第です。
「雨仕舞」の研究で有名ないしかわ・ひろぞう)さんのインタビュー。
“雨仕舞”、それは形と納まりで水対策をすることだそうです。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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初めまして。早川トキ子と申します。 平成10年に33坪の土地に3階建重量鉄骨の2世帯住宅に住んでいます。ご相談をしたいのは、 南側に後から3階建てが出来、西側の駐車場がロフト付の2階建ができ、東側はもとから3階建てがあり、南側の道路は道幅が3mほどあります。 何か全部囲まれてしまい、家の中が暗くなりましたので、今となっては、屋上を作っておけばと後悔しております。 唯一明るい所といえば屋上です。 その屋上に上がり日当たりを求めたいと思う今日この頃です。 私の住んでいるところは、名古屋市熱田区五番町です。準住宅地だそうです。なのでいっぱいに住宅を建ててもいいそうです。 私は今、68歳で夫は72歳です。後息子夫婦と孫2人います。 屋上を作ることが可能でしょうか、
はじめまして。コメントありがとうございます。私は、鉄骨造の屋根形状を変えた経験はありません。実際に屋上を造りかえることが可能かどうかは、地元の造り手(工務店や設計事務所)に、図面と現場を見てもらい判断するしかないと思います。勾配が付いた屋根を、フラットな人の歩ける屋根に造りかえるは大工事になります。構造を変えるので、できるのかどうか?設計段階で十分な検討が必要になると思います。現状の屋根を壊して造りかえるので、当然、現状の屋根の上まで、外部足場も必要になりますから、行うなら外壁のメンテも一緒に行うのが普通でしょう。雨の問題もあり、小さな屋根ならともかく、住みながら長期間、屋根を壊して造りかえるのは、難しい可能性が高いです。既存の屋根を解体すると、雨が入ってきてしまうので、構造体だけ残して、建物を全てリフォームするような形でないと難しいのではないでしょうか?私は住まいながらの工事で、木造平屋を一部増築して2階建てにした経験はあります。20年近く前なので、詳細は忘れてしまったのですが、雨養生が大変だった記憶があります。できれば鉄骨造を造った経験のある設計施工経験豊富な業者、もしくは設計事務所に聞くのが良いかと思います。その時は図面を用意してください。また、施工時の屋上写真もあると最高です。