2015-02-07
リフォーム
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リノベーション雑誌を見てビンビン感じた、年配になったら健康問題があるので暖かい家は譲れないという話

 

新建築住宅特集

新建築 住宅特集の2月号を買った。住宅特集を買ったのは久しぶり。本屋で立ち読みして、気になった場合は買う感じの建築専門誌である。一般の方は、扶桑社の住まいの設計や、チルチンびとのほうが馴染ある雑誌でしょうが、意匠系住宅建築雑誌の中心は「新建築 住宅特集」だと思います。

 

専業の設計者は、この「新建築 住宅特集」に何度か掲載された上で、建築家と呼ばれる存在になる感じなのである。いわば、日本の住宅のトレンドを決めるサロン誌である。(間違ってるかな?)以前はこの住宅特集に掲載された後で、他の建築雑誌に載る感じでした。値段も2000円超えと高い。

 

大学時代にこの雑誌の原稿運びをやっていたので、とても親近感のある雑誌です。建報社という会社でバイトしていました。メールやバイク便が無かったので、この雑誌に載る広告原稿を運んでいたのです。ちなみに文系大学生だった私は、このバイトがきっかけで、建築に興味を持ち、住宅建築業界に入ることになりました。入社したのは佐藤秀。現場管理をしていました。

 

さて軽く自己紹介したところで、2月号の特集は、「なぜリノベーションなのか 新しい価値を創造する21のアイデア」というリノベーション特集。新築住宅の掲載が1軒もない「リノベーション特集」というところが時代を感じさせるし、最近は新築住宅が掲載される場合も殆どが木造住宅です。バブルの頃は世間にお金があったので、RC造(鉄筋コンクリート造)が殆どでした。住宅建築は経済状況を写す鏡です。

 

今回の特集に掲載されているリノベーションで目につくのは、古びた梁や垂木の表された勾配天井と新たに造った新しい壁との新旧の対比。古き良き既存部分を新設部分との対比で見せることも新築住宅との違いを分かりやすく伝えることになります。

 

また、木製引き戸の大きな窓。窓がでかい。普通の住宅に対して開口部の比率が多めで、特に性能の良い窓だという表記はない。視線の抜けを意識して広がり感はあるだろうが、これは寒い。

 

外観は既存とあまり変わらないものが多いです。やはりリノベーションの意匠の見せ場はインテリアなのだ。全体的に温熱環境は悪そうで、私が住めると感じたのは、北海道網走のリノベーション事例のみ。どの事例も見たことが無い室内意匠という点や仕上げきらない寸止めは体感したくなる住宅なのだが、性能の悪そうな大きな窓が沢山付いている室内の写真を見てしまうと、冬に体調が悪くなってしまいそう。断熱材のたっぷり入った安心感ある壁がもっと欲しい。でないと心臓の悪い私は住めそうもない。しかし、窓を取ってしまうと普通の住宅に近くなるから取れないのである。

 

素敵な住宅写真を見ても、やはり断熱性能と窓性能も両立していないと良い家とはならない。分かりやすく言うと、年配になったら健康問題があるので、やはり暖かい家は譲れないのだ。

 

当社にリノベーション(大規模リフォーム)を問い合わせてくるのは、50歳台であり断熱改修(断熱リフォーム)メインだから、掲載事例は現実とはかなり離れた意匠中心のリノベーションという印象である。年代と客層が全く違うのかもしれない。

 

巻頭に坂本一成さんの代田の町屋の改修事例が載っています。1976年竣工なので40年前の住宅です。扁平な外観、開口部、シンプルなインテリア、階段、建築材料、特に鋼板の外壁は当時でも珍しかっただろうし。とても魅力があります。しかし、どこに魅力があるのかよく分からない。なんとなくいいとしか言えない。2人の方がこの住宅について解説していますが、特有の言い回しで難しくて理解不能。だれかやさしく平易な言葉でこの住宅の魅力を解説してくれないですかね?

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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