住宅屋にとって、区画整理の敷地が、工事しやすい3つの理由
Q1.0住宅 宇都宮小幡の家、着工しました。
Q1.0住宅 宇都宮小幡の家の敷地は、区画整理中の小幡(おばた)・清住(きよすみ)地区にあります。宇都宮市民には、清住通りが通っている「あの一帯」と言ったほうが、分かりやすいと思います。
清住通りは、宇都宮市の中心市街地の大通りから、戸祭(とまつり)方面に抜ける片側一車線の古い道で、周囲はお寺の多い、いわゆる寺町(てらまち)です。寺町とは、寺院や墓地を城(市街地)の少し外側にまとめ、敵の襲撃に対して防御できるように、侍などが集まれる寺院を近くに点在させた町のこと。
そのように歴史のある小幡・清住地区は、古くからの宇都宮市民が何代にも渡り住んでいる、いわゆる旧市街地です。
今日のブログは、住宅屋にとって、区画整理の敷地が工事しやすい3つの理由について書きます。
目次
敷地の地面がキチンと締め固めてあるから工事しやすい
1つ目の理由は単純で、解体後の地面がキチンと締め固められてあり、工事しやすいからです。具体的には、地面が締め固められていると、乗用車はもちろん、クレーン等の重機やトラックが敷地内に入っても、地面が沈まないので工事しやすいのです。キチンと締め固められているので、雨が降ってもぬかるみにくく、車が土を道路に運んでしまうことも少なく、掃除の手間が減り、敷地前の歩道や道路も綺麗に保たれることが多い。
対して、民間の解体業者が、建物を解体した後は、ユンボという重機で地表が平らにされる程度で、地面が柔らかいことが多いです。地面が柔らかいと、タイヤが空回りして、道路に出られないこともあり、土で道路も汚しやすい。地面が柔らかいと、とても工事が「しずらい」ことが普通で、かつ基礎工事で地面を掘ると、野球のボール大のコンリートガラや玉石が残っていることもあります。以前、別の現場でのことですが、施主が依頼した、いい加減な解体屋が、塩ビの排水管と浄化槽の一部を残していったこともありました。
宇都宮市が行う区画整理地域の場合は、旧宅の解体工事は、それぞれの家の持ち主が解体業者を決めて行いますが、地面より上物の解体処分のみ行えばOKで、基礎を残して解体しても良いことになっているので、上物だけ解体撤去されます。その後は、宇都宮市が業者に依頼して基礎を解体処分して、解体工事の完了後から敷地の引き渡しまでは、宇都宮市が管理しています。
市役所の区画整理担当者に、どのような整地をしているのか聞いてみた
住宅屋にとって、区画整理地域の地面は、状態がとても良く工事しやすいです。参考までに、宇都宮市市役所の区画整理担当者(技師という役職の方)に、どのような整地をしているのか聞いたところ、民間では簡単にはマネが出来ない仕様でした。
基礎の撤去後に、敷地内の地盤全てを表層から500mmすきとりして、基礎のコンクリートガラや玉石等の不用物を撤去。その後、地盤を高さ300mm以下ごとに締め固めているとのことです。最低2回は締め固めていることになります。
この基礎撤去後のすきとりと締め固め2回の作業は、手間(お金)が掛るので、通常の解体工事後の敷地では行われません。
区画整理の敷地が工事しやすい2つ目の理由は、市役所が協力してくれる場合もあること
この区画整理事業は宇都宮市が行っており、事業を進めるには、住民の理解と協力が不可欠です。例えば、区画整理地域以外の一般的な敷地の場合。敷地が狭くて、敷地内に職人の通勤車両や工事車両が駐車できず、路上駐車も出来ない場合は、工事用駐車場として、施主に近隣の駐車場を借りてもらったり、もしくは見積に駐車場代を計上して、近くのコインパーキングに駐車します。
しかし、区画整理地域の場合は、周囲が更地になっていたり、解体中だったりするので、近隣に駐車場が確保できない場合が多いです。そのような場合は、市役所に相談して、近くの宇都宮市で管理している敷地を一時的に借りたりするしかありません。
一般的に、民間業者に対しては「上から目線」的対応をされることがあり、それは住宅業者に対しても同じ
宇都宮市役所内の区画整理課以外の他の部署は、一般的に、民間業者からの依頼に対しては「上から目線」的対応をされることがあり、それは住宅業者に対しても同じです。
市役所側にとっては、予算も確保していないのに、いちいち、細かな要望を聞いていられないので、毅然とした態度で、民間業者や市民に臨むというのは、理解できます。
対して、区画整理事業の場合は、官民が歩み寄らないと進まないので、市役所が珍しく協力してくれるケースになります。
以前、区画整理地域の話ではありませんが、解体後の敷地でこんなことがありました。
敷地前の、市道である歩道の下地に不具合がある場合、車が載ると歩道が破損する可能性が高いので、戸建て住宅は非常に建てにくくなります。
当社にて請負い、旧宅を解体したところ、歩道のタイル下地に大谷石が何段にも渡り入っており、歩道下地に入っていた大谷石は、敷地側にも跨っており、何段にも突き出して入っていたことがありました。
歩道のタイル直下に大谷石が何段も積み重ねられており、下地が脆弱な為、既に歩道のタイルは凹んだり、割れたりして破損しているので、当社が行う新築工事の車が載って、これ以上破損しても、当社では責任が取れません。歩道のタイルが破損した場合は、市役所で直してください。と、宇都宮市役所に施主と一緒に説明に行ったことがあります。
私は資料に添付した写真で説明しながら、
「歩道のタイル下地に大谷石が何段も入っているのは、通常の歩道下地の仕様にはなく脆弱」であり、
「下地に大谷石が何段も入っていて、敷地側にも突き出していたのは、歩道を造った時の、市役所の監理ミスかもしれないので、新築工事の車が歩道に載って、今以上に破損しても、当社では責任が取れない」と言ったのですが、
対応した市役所職員いわく、
「歩道下地の状態はともかく、歩道を壊したら住宅業者の責任だから全て自分で直してください」また、「破損させないように、歩道の養生も自分達でしてください」と取り合ってもらえず、どう考えても理解できない負担を押し付けられたことがあります。
結果として、歩道の養生費用の敷鉄板は、住宅を建てる施主が支払うことになりました。木造戸建て住宅で、歩道に敷鉄板をしたのは初めてで、工事の完成間際までずっと敷きっぱなしでした。一般の歩道なら、少し重いトラックが載っても凹んだり破損したりすることはありません。
大規模マンション等の建物なら重い重機やトラックが何台も歩道に載るので、歩道は様々な方法で養生しますが、木造の戸建て住宅で歩道を敷鉄板養生するなんて、あまり無いケースだと思います。
大谷石下地の歩道は、普通乗用車が載ってもタイルが破損するほどだったので、工事は大変でした。
ちなみに大谷石は非常に柔らかく、水を吸いやすく劣化しやすい建材なので、私は大谷石を雨がかりになる箇所には使いません。内装と、外部ならアプローチから玄関ポーチまでの土間と軒が充分出た外壁に使うのが安全だと思います。
宇都宮市と隣接市町村には、劣化してボロボロになった大谷石の土留めや、住宅の基礎がたくさん点在しています。土留めの大谷石は土の水分を吸い、冬はその水分が凍結するので、経年劣化して世代を跨いで、負の遺産になります。私は「大谷石 負の土留め遺産」で困っている人を、私も含めて何人も知っています。
解体した家屋下に大谷石が入っていたこともあり、全て撤去したこともありました。
区画整理の敷地が工事しやすい3つ目の理由は、一般車両が入ってこない敷地であれば工事しやすい
区画整理地内の敷地で、一般車両が通る道路に面していなければ、工事車両しか入ってきません。そのような場合は、敷地周辺に駐車しやすく、クレーンなどの重機も停めやすいので、工事しやすい敷地になります。
Q1.0住宅 宇都宮小幡の家は、一般車両が通る交通要所の角地にあるので、工事のしやすさとは対極にある敷地になります。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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