樹脂サッシが経年劣化して隙間風が入ってきたので、内窓を付けた話
去年の9月の話です。2000年に新築した施主から、「2年前(2020年)くらいから、樹脂サッシから隙間風が入るので見て欲しい」と連絡があり、サッシ屋さんと一緒に訪問しました。
確認したところ、リビングと隣の和室の2箇所の引違いサッシから、隙間風が入るので、2年程前から施主自ら、隙間にテープを貼ったりして生活していました。
約20年前の新築時に採用した樹脂サッシが経年劣化して、隙間風が入るようになったので、内窓を付けた話をブログにします。
目次
隙間風が入るようになった樹脂サッシの特徴
サッシの種類は2000年製のオール樹脂サッシ、YKKプラマードⅢ。現行のYKKの樹脂サッシは、APWシリーズですが、それ以前の樹脂サッシがプラマードⅢです。
新築時の和室サッシ寸法は25618、W2600×H1830の4枚建。リビングサッシの寸法は、25620、W2600×H2030の2枚建でした。
経年劣化して隙間風が入るようになった樹脂サッシの特徴は、履き出しの大きな引違いサッシであったことです。
このお宅は、当時加盟していた高断熱高気密住宅「FPの家」。当社がFP工法で初めて建てた家で、完成時の気密試験結果、C値は0.3くらいの高気密住宅だったと思います。「FPの家」では気密試験も義務付けられていました。
「FPの家」では、サッシは樹脂サッシと決まっており、シャノンとYKKから選べました。23年前、樹脂サッシを始めて使った時の感想は、アルミ樹脂複合サッシと比べて、重くて剛性も高く、気密性も良いようだと感じました。
樹脂サッシの隙間風はどこから入っていたのか?
9月で内外部の温度差が殆ど無い為、手を当てても、隙間風は、ほぼ分かりませんでした。
施主に、隙間風の箇所を聞いたところ、自分で気密部材で補修したところから入ってくるとのことでした。施主自らが隙間を埋めた箇所は、両方のサッシ共に、かなり長い部分になっていたので、色々な気密部材が劣化していることが想像できました。
また、引違戸を動かして、床面のレールを見たところ、レール溝にある、白っぽい部材の1部が、両方のサッシで破損して取れていました。どのような用途の部材なのか分からず、後日調べてもらったところ、「防虫ブロック」という部材で、廃盤になっており、代替品もありませんでした。
隙間が、目視で確認できるのは、この「防虫ブロック」が外れているところだけですが、施主が隙間を塞いでいる箇所が長いことを考えると、サッシ全体が経年劣化しているのは確実で、殆どの気密部材も劣化していると考えたほうが良いと判断しました。
隙間相当面積C値の高い家ほど、樹脂サッシが劣化すると隙間風を感じやすい
新築完成当時のC値0.3は、かなり高気密住宅と言えます。
気密性の高い家の場合は、家全体の気密性が高いことになるので、このサッシのように、一部に小さな隙間があると、冬は特に隙間風を感じやすくなります。
逆に、新築時から隙間だらけの家であれば、家中どこでも隙間だらけで、長年過ごしてきたことになるので、この程度のサッシの隙間なら、隙間風に気が付かなかったと思います。
なぜ、樹脂サッシから隙間風が入るようになったのか?
23年前の新築時、この家の窓は、FPの家の標準仕様で、全てペアガラスの樹脂サッシを付けました。ちなみに当時はまだ、樹脂のトリプルガラスサッシは販売されていなかったと思います。
引違いサッシは、樹脂サッシの場合でも、他の「縦すべり出し窓」等と比べて、新築時から気密性は確保しずらいです。
その理由は、大きく窓が開くこと。また引違い窓はレール上を滑らせて開閉するので、形状的にも気密性が取りにくいのです。比較的気密性が取りやすい「縦すべり出し窓」などは、履き出し窓と比べると小さめな上に、窓を閉めた時に、気密部材がキチンと潰れて隙間を無くすので気密性が取りやすいのです。
また、履き出しの引違サッシは、大きいので他の窓と比べて重く、かつ大きく動くため、床面のレール廻りの部材が、障子の戸車を筆頭に、経年劣化と破損をしやすいです。しかし、履き出しの引違いサッシは、ガラス面が大きいので日射取得しやすく、外に出やすいメリットもあります。
2階個室のベランダに出る引違いサッシからは、現在のところ隙間風は入っていません。気密性が悪くなったリビングのサッシは、使用頻度が高かったので、劣化しやすかったのだと思います。他の「縦すべり出し窓」のような、気密性の取りやすい、小さめな樹脂サッシにも隙間風は入っていません。
気密の低い住宅は、隙間風が入っても分かりにくい
樹脂サッシも、アルミ樹脂複合サッシやアルミサッシと同じく、サッシ全体が経年劣化すると、隙間風が入りやすくなります。
一般的に、樹脂サッシを採用するような家は、高断熱高気密住宅である場合が多く、特に、この住宅のようにC値0.3くらいになると、家全体の気密性が高いので、サッシに隙間が出来ると、より分かりやすいのだと思います。
逆に、アルミ樹脂複合サッシやアルミサッシを採用する住宅は、高断熱高気密住宅ではないので、気密試験をすることもなく、家全体の気密性も低いことがほとんどです。そのため、サッシが劣化して隙間風が入ってきても、元々、家の至る所に隙間があり、新築時から隙間風は入っているので、サッシの隙間風も気が付きにくいのだと思います。
隙間風が入るようになった樹脂サッシの内側に内窓を付けて、隙間風を防ぐ
この隙間風を感じるようになった引違いの樹脂サッシの場合、サッシ全体の気密部材が経年劣化していると考えました。かつ「防虫ブロック」も廃盤になっており、代替品も無いので、どちらのサッシも新築時の樹脂サッシはそのままとして、樹脂内窓を付けるのが良いと判断しました。
樹脂内窓は、YKKプラマードU。LOW-Eペアガラスを取り付けました。どちらの内窓も、1枚当たりが軽くなる4枚建てとしました。
同行したサッシ屋さんに聞いたところ、関東地方で初めて新築住宅に樹脂サッシが採用され始めたのが、1998~1999年頃であり、その樹脂サッシは25年くらい経過しています。そのため近年、樹脂サッシが経年劣化して、隙間風が入ってくるケースが珍しくなく、その場合は「部材が廃盤になっていることがあるので、樹脂内窓を取付けています。」とのことでした。
経年劣化して隙間風が入るようになった樹脂サッシに、内窓を付けたリフォームの結果
実は、内窓を付けたのは、去年の9月の話です。一冬経過して、今年の4月に住み心地を確認したところ、隙間風もなく、暖かく快適だったとのこと。
既存の樹脂サッシはペアガラス、そこにペアガラスの樹脂内窓を付けました。合計4枚のガラスになったので、気密性はもちろん、断熱性も高くなったのです。
玄関ドアの隙間風対策
玄関ドアからも、隙間風が入ると言うので見てみると、玄関ドアを閉めた時に効く、ゴムパッキンが経年劣化して変形しており、隙間がある状態でした。
このパッキンは、廃盤になっていなかったので、4方向の黒いゴムパッキンを交換して、隙間を無くしました。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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