2023-09-19
リフォーム
家づくりの初めに

少子高齢化が進むと、新築の依頼先は、ますます近くの会社が良い理由

昨日、雨漏りリフォームの相談を受けたブログを書きました。

杉板外壁材からの雨漏り、原因と解決策

ブログを読んで頂くと分かるのですが、2軒の雨漏りは、新築直後ではなく築20年と15年くらいから始まっています。だから新築時の設計・施工に問題があった可能性は低く、経年劣化と近年の大雨が、雨漏りの原因である可能性が高いです。

「新築した工務店に不満があるわけではないのに、何で私にリフォームの問い合わせをしたのか?」を両者に聞いたところ、距離的に遠い工務店に依頼していました。それが新築した工務店にリフォームの依頼がしにくくなった、原因の1つでした。

新築時に遠くの工務店に依頼したのは、様々な理由があったと思います。

とは言え、住宅は地面に密着しています。ほぼ全ての工事は敷地で行われますから、遠くの工務店に依頼するのは、どう考えてもデメリットが多いのを自覚すべきです。少子高齢化が進んで、職人も少なくなっていますから、今後は遠くの工務店に依頼することが、よりデメリットになります。

よく探せば、同じ地域に自分達に合った、優れた工務店はあります。一時的な勉強や感情で、遠くの工務店に依頼すると、10~15年後に必ず訪れるリフォーム時に面倒なことになります。だから敷地から遠くても1時間以内のエリア(出来れば30分以内で近いほど良い)にある、工務店から探すのが良いと思います。

今日のブログは、「少子高齢化が進むと、新築の依頼先は、ますます近くの会社が良い理由」を書きます。

築20年の住宅の施主が、「新築を遠くの工務店に依頼した理由」

①「勤務地に近い県南の敷地に家を建てることになったが、生まれ育った県北に、知り合いの業者があった。その会社は当時、好みの手作り感のある外観の住宅を建てていたので、その会社に新築を依頼した」

②「新築工事中、工務店の所在地から敷地までは、高速を使っても1時間以上掛かるので、大工達は敷地近くにアパートを借りて、泊り掛けで工事をしてくれた」

③「大工以外の職人も、主に県北の職人であり、現場まで通ってくれた」

④「完成した住宅には満足していた」

⑤「外装リフォームを考えた時に、新築した工務店に現場まで来てもらうのは、高速で1時間以上掛かるので依頼しにくいと感じた」

⑥「かつ近年、新築してくれた会社の経営者が変わったらしく、webの施工事例には、魅力的だった新築当時のような手作り系の住宅は少なく、新建材を使った量産型住宅と施設建築が多く掲載されており、無垢材を使った、手作り感のあるリフォーム工事を依頼するのに不安があった」

⑦「自分のイメージに合ったヨシダクラフトに、リフォームの相談がしたいと感じた」

とのことでした。

築15年の住宅の施主が、「新築を他県の工務店に依頼した理由」

15年前に、有名住宅建築家が設計を担当した住宅です。

当時のweb情報では、その建築家が栃木県内の、ある地域で設計を担当すると書いてありました。文章のみで、施工写真や完成写真等を見た記憶はありません。

たまたまwebを見た、ほんの一部の住宅業界関係者と、ごく少数の、一般の住宅好きの方には、「完成したら見てみたい」という程度に、ひっそりと認知されていたと思いますが、今回、私に雨漏りリフォームの問い合わせが来て、15年ぶりにその記憶が蘇ったわけです。

ストリートビューで外観を確認して、設計者名を聞いたところ、私の予想は当たっていました。

設計事務所に依頼した場合、施工する工務店は、設計事務所が力量や施工費用を判断して決めるのが普通です。ですから、この施主の場合は新築時に、自分で施工する工務店を決める必要が無かった、もしくは自分で決める選択肢は無かったわけです。

そのような住宅をリフォームする場合は、設計事務所経由で新築した工務店に依頼するので普通です。

なぜ当社にリフォームを依頼の相談をするのですか?と聞いたところ

①「ご指摘の通り、設計事務所経由で施工した工務店に依頼するのが自然だと思いますが、設計事務所の担当さんはすでに独立されている」

②「施工した工務店も10年点検以来、特にお付き合いもなく、工務店の担当さんも退職したと聞いていたので、どうしようかなと思っていた」

③「そうしたところ、吉田さんのブログを拝見し、杉板張り外壁の知見が豊富でしたので、連絡させていただいた。」

とのことでした。

新築工事を担当したのは、所在地は忘れましたが、他県の工務店で、敷地の近くでは無かったと記憶しています。

私は現在、担当している仕事が忙しくて、請け負えないことを最初のメールでお話しして、雨漏りに対して、自分ならどう対応するかという、アドバイスを送りました。

また、リフォームの問い合わせ先で優先すべきなのは、設計事務所経由で、新築した工務店であると、私見をお伝えしました。

理由は、新築を担当した工務店は、その住宅を誰よりも知っており、かつ築10年目までの経過も確認しているからです。

ただし、専業の設計事務所の経営者も、新築時に、敷地により近い施工者を選ばないと、将来のリフォームの時期には、施工する工務店が居ないということに直面するかもしれません。少子高齢化で施工者側も近くの現場しか、割に合わないと感じ始めているからです。

新築(リフォームも)は、近くの住宅会社工務店に依頼したほうが良い4つの理由

新築の依頼先は、敷地から住宅会社まで、遠くても一般道で1時間以内のエリア、新築後のリフォームを考えると、30分以内をエリアとするより近くの会社に依頼するのが良いと思います。新規にリフォームを依頼する場合は、自宅から一般道で30分以内が当然で、できれば車で10分以内が良いです。

理由は、

1.造り手側は、移動時間が長すぎると、他の仕事が受注できない

敷地から遠い工務店に依頼すると、造り手側は移動時間とガソリン代が掛かります。片道1時間以上掛かると、移動だけで往復2時間以上となり、現場管理の時間も含めると、少なくとも半日以上~丸1日、時間が掛る可能性が高いです。そのような日が1か月のうち半分以上になると、工務店は他の仕事が出来なくなったり、新規案件を断らざるをえないので、効率が悪くなることはもちろん、会社経営も上手く行かなくなります。

特に高断熱高気密で気密試験を必ず行う工務店の場合、大工に細かい気密施工を依頼+指導し、その確認もする必要があります。ちなみに気密試験結果の良い住宅は、構造と仕上げ工事の品質も高いことが殆どです。気密試験を必ず行う工務店は、構造や仕上げ工事でも間違のいない施工をしている可能性が高いので、気密試験を行っている会社に依頼すべきです。

かつ、造作建具と造作家具で室内を造る工務店の工程は、大工→塗装職人→建具職人→塗装職人→左官職人と、多くの職方が関わることになります。工程ごとに間違いのない施工をしているかを確認するため、新建材を使った量産型住宅を建てている会社と比べると、桁違いに現場管理に行く回数は増えます。

当社は、気密試験と造作建具等の両方を行うので、遠くの仕事を請けた場合、移動時間を含めてその仕事に時間を取られてしまい、他の仕事が出来ない、及び新規受注できない可能性が高くなります。

自分の話が長くなりましたが、一般論として、新築の場合は、会社から敷地までを遠くも一般道で1時間以内、できれば30分以内がベターだと思います。新規でリフォーム依頼する場合は、なるべく近い依頼先が良いですが、30分以内できれば10分以内を施工エリアとしている工務店が良いと思います。

2.職人と建材会社から敷地が遠いと、経費が掛かる

通常、工務店は所在地から遠く離れていない所に住む職人や、建材会社と取引していることが多いです。

職人の自宅から敷地までが遠いと、上記の移動時間の項と同じことになりますから、請け負うのが難しいです。また、建材会社もドライバー不足になっているので、遠くに建材を運びにくくなっている現実があります。

3.職人が少子高齢化で少なくなっているので、近くの工務店に依頼するのがベター

さらに少子高齢化で職人が少なく、層も薄くなって、特定の腕の良い職人に仕事が集中しています。

基本的に、職人にとって遠い現場の場合は、移動経費として、移動時間費用とガソリン代の実費を見積に入れてくることが多いですが、あくまでも実費です。遠くの現場に行っても、職人の手間賃が増えるわけではありません。

木造住宅やリフォームの現場も、全盛時の体力のない、50歳以上の年配の職人が殆どです。地元で仕事が確保できるなら、翌日の仕事に支障が出やすい遠くの現場に、わざわざ何度も行きたいと思うはずがありません。

施主の立場に立っても、移動経費の掛からない、なるべく直ぐに来てくれる、近くの工務店に依頼するが良いのです。

8年前のデータでも建設業界の少子高齢化が分かる。

上記の表は、2016年(8年前)の建設業就業者の年齢構成です。8年前の時点で55歳以上が33.9%。34歳以下は、19.1%と少子高齢化しているのが分かります。

驚いたのは、34歳以下の割合が、平成15年から平成25年までの10年間で10.8%も減少しています。木造住宅の建築現場でも、30歳以下は、ほぼ居なくて、40歳台は若手という印象です。現場は、50歳以上のおじさんばかりなのですが、この表を見て納得しました。

最近のデータは見つかりませんでした。2023年現在は、建設業界の少子高齢化は、より進んでいるはずです。

4.リフォーム時の依頼先は近くの工務店に限る

今日のブログにも書きましたが、新築時に遠い工務店に依頼した場合、施主も遠いと建築コストが高くなることは分かっています。ですから、リフォームの時期が訪れた時に、新築した工務店に依頼が「しにくく」なります。

緊急時には現場に近いほうが直ぐに対応できます。特に見積金額の低い、小工事の場合は、近ければ、私が見に行ったりしやすく、職人も手配しやすいのです。逆に小工事の場合で、遠い現場の場合は、とても利益が出にくくなるので、造り手側は仕事が引き受けにくくなります。逆に住まい手側も、小工事の場合は、利益が出にくいのを分かっている方が多いので、依頼しずらくなります。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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