Q1.0住宅 宇都宮昭和の家が完成したので、住宅の概要をブログにしました
Q1.0住宅 宇都宮昭和の家が完成して、先週7/29(土)に引き渡しが完了。この住宅の概要をブログに書きます。
目次
外観
施主の要望から、平面プランは矩形の総二階が可能だったので、切り妻屋根が載ったシンプルな外観です。「矩形の総二階」の利点の1つは、吹抜けをプラスすることで、1.2階がワンルームに近い形状となり、エアコンによる冷暖房が効きやすくなること。下屋があったり、総二階でも凹凸があると、冷気と暖気は移動しにくくなります。※下屋の意味は1階の屋根という意味です。
矩形の総二階は、下屋のある住宅や凹凸のある総二階に比べると、外皮面積も少なくできるので、熱が逃げにくく、断熱的にも有利です。※矩形(くけい)の意味は真四角の平面プランという意味。
当社定番の軒と庇を出した外観は、外壁材に雨が掛かりにくくなるので、外壁材が傷みにくく、メンテナンス回数を最小にできる可能性が高くなります。流行りのキューブのような真四角な外観でなく、キチンと屋根にも勾配が付いているので、水はけも良く屋根も傷みにくい形状です。真四角に見える外観の住宅は、屋根勾配が少なくて、軒の出も少ないので、雨の影響を受けやすく、壁と屋根が傷みやすいという欠点があるので、これから新築する人は注意してください。
定番の切り妻屋根には、5.5kwの太陽光パネルを載せています。片流れ屋根は、より多くの太陽光パネルが載せられる利点はあります。しかし総二階の片流れ屋根は、外観デザインのバランスが取りにくい上に、水上側の軒天井が横殴りの雨に当たりやすく傷みやすいと考えているので、当社では、切り妻屋根が標準仕様です。最近は、台風並みの「横殴りの雨」が頻繁に起こるので、建物の形と下地をよく考える必要がありそうです。
外観の特徴として、昭和の家は、南面1階の庇に日射遮蔽材の外付ロールスクリーンを仕込んだので、それが総二階住宅の外観に陰影をプラスしています。エコキュートやエアコン室外機は北側の目立たないところにまとめています。
付加断熱住宅特有の平面プランの作り方について
矩形の総二階の2つ目の利点は、1階の屋根である下屋が無いことで、屋根を上棟時に一度に架けられるので、雨仕舞が良いことです。
普通の住宅なら、2階の屋根と下屋は上棟時に一緒に造るのが当たり前ですが、付加断熱の住宅で、下屋がある場合。下屋の屋根は、上棟時には架けられず、最低1か月程度、後から架けることになるので、雨仕舞が悪いのです。これが一般的な木造住宅との造り方の違いになります。
というのも、下屋のある付加断熱住宅の場合は、下屋と繋がる2階の壁の付加断熱まで完了させないと、下屋の屋根下地が造れません。下屋部分は、それと繋がる2階の付加断熱壁が完了するまでの間。上棟後、最低約1か月程度は、屋根下地までが全く造れないので、ブルーシートを張る程度しかできず木材や基礎は雨に濡れやすくなる欠点があります。
下屋のある付加断熱住宅は、上記の理由から、総二階と比べると雨仕舞が悪く、工程と養生が増えて、かつ気密も取りにくくなるため、何より大工と現場監督が大変なのです。また、木材や基礎が雨に濡れ続けていると施主も心配になりますから、施主に対する事前説明も重要になります。そのような理由から、Q1.0住宅に代表される付加断熱の住宅は、一般的な木造住宅よりも矩形の総二階が多いのです。
しかし、当社では下屋のある住宅の良さも理解しています。下屋のある住宅は、1階部分が2階よりも広くなることで、小さな家でも、1階部分に寝室と水廻りを配置しやすくなります。いわゆる「1階で完結する間取り」に「しやすい」ので、老年期に足腰が悪くなった時には便利です。逆に無理に総二階にすると、住みにくい平面プランになる可能性が出てくるばかりか、家全体が大きめになることもありえます。
ですから、「家全体を最小化すること」を大切にしている当社としては、付加断熱住宅を標準仕様にしていますが、下屋のある住宅も選択肢の1つです。
個人的には造りやすく気密も取りやすい総二階にしたいのですが、施主の要望をよく聞いて、下屋のある住宅が最適であれば、そうしています。
ガルバリウム鋼板外壁と窯業系サイディング外壁で、一番違うことは何なのか?
外壁材は、緑色のガルバリウム鋼板と玄関ドア廻りは杉板鎧張りで、落ち着いた雰囲気。
ガルバ外壁材は、いつものように中段で水切りを設けない1枚もので、スッキリと屋根まで貼っています。何とか作業スペースが取れたので、外壁ガルバは1枚モノで張れました。
既製品でない工場にオーダーして作るタイプのガルバリウム鋼板外壁と、窯業系サイディング外壁の一番の違いは、窯業系サイディングが全国で数多く施工されて、マニュアルが確立されているのに対して、既製品でないガルバリウム鋼板外壁材には、確立されたマニュアルがなく、特にシーリング工事のマニュアルも無いので、現場管理する側が戸惑うことだと思います。
多分、既製品でないガルバリウム鋼板外壁材を使っている住宅会社は、当社のように既製品ガルバリウム外壁材の施工マニュアルを参考にして、板金業者と相談しながら、施工しているのだと思います。
当社はガルバリウム鋼板外壁材の住宅を多数手がけています。ガルバ外壁材の施工ポイントはガルバ下の透湿防水シート面でキッチリ防水することです。窯業系サイディングならその厚さは通常16mm程度あるので、シーリングの厚さも最低16mm程度となるので、外壁材の厚さ分だけシーリングも切れにくくなります。ですからシーリングが切れるまでの一定期間は、確実に外壁材も防水層と考えられますが、既製品でないガルバの場合は、断熱材と一体化されていないので、外壁材の厚さが0.4mmとなります。シーリングとの取り合いは役物と呼ばれる「板金職人が造る専用部材」になるので、ガルバの切れ端ではありませんが、窯業系サイディングと比べると、シーリングの厚さが薄くなるので、シールは早めに切れるものと考えて、ガルバ下の透湿防水シート部で、キッチリ防水することが重要になります。
窯業系サイディングの場合は、万が一、透湿防水シート面の防水が不完全でも、一定期間は、壁面から漏水することはまずありませんから、割と職人任せにできます。窯業系サイディングばかり採用している住宅会社は、初めて既製品ではないガルバリウム鋼板外壁材を施工した時に、確立されたマニュアルが無いため、シーリング施工と下地の現場管理で面食らうと思います。
鎧張りとした玄関外部の杉板は地元八溝材、施主が茶色のオイルステインで仕上げました。屋根は黒。窓枠・雨樋・クーラースリーブは茶色で、なるべく外観の色を減らしています。
ちなみに当社では、以下のブログに書いた理由から窯業系サイディングは使わないようにしています。
外構
南側に収益用の駐車場を3台設けて、Lの字型に塀を造り、私的空間を造っています。外構は無垢板の塀、南側には落葉樹のアオダモを植えています。玄関前には、解体前のお宅に埋まっていた大谷石を再利用してアプローチを造り、解体したお宅の思い出を継承しました。
Q1.0住宅昭和の家の断熱性能と気密性能
引渡し前の7/20に気密測定をしたところ、隙間相当面積C値は0.2でした。C値が小さいほど、気密性の高い住宅になります。
C値は、住宅全体の隙間面積(昭和の家の場合は22cm²)をロフトまで入れた床面積の95.22㎡で割った数値。家全体の総相当隙間面積である22cm²とは、切手4枚分程度です。家全体で切手4枚の隙間ですから、かなり高気密な住宅と言えます。
気密性の高い住宅は、冬の冷たい外気や夏の高温多湿な外気の影響が少なく、暖冷房費の節約になりますし、漏気量が少なく、計画通りの換気計画・経路が作りやすいので、新鮮な空気を入れ、汚れた空気を計画通りに排出できる可能性が高くなります。
宇都宮昭和の家の断熱性能はQ値0.99、UA値0.3です。Q1.0住宅レベル3です。
日射遮蔽と断熱スクリーン
真南は、歩道を入れると幅20M近くの広い道路で、対面には日差しを遮る建物もない。冬は日射取得できる良い環境です。引き渡し日前の7/26、晴天の昼間にエアコンを点けて確認したところ、夏の外気温30度以上の時、1.2階の南窓を日射遮蔽しなくても、2階ロフトエアコン6畳用2.2kw1台を回せば、家全体の温度は下がり、設定温度である26度くらいになりました。
しかしキチンと日射遮蔽すると、エアコンがフル稼働しにくくなるので、より電気代が掛かりにくい。それがベターなので、1階は外付けスクリーン、2階は外付電動ブラインドを付けています。1階の外付けスクリーンを斜めに架けてその下に入ると、直射日光を浴びるよりかなり涼しくなり、日射遮蔽の効果を実感できます。日傘の効果と同じです。
外付の日射遮蔽材は南面のみですが、窓内側には、全てハニカムサーモスクリーンを付けています。これも当社の定番です。白いハニカムサーモスクリーンを降ろすと、窓の断熱性能が高まるばかりか、壁面全体が白くなるのでとても雰囲気が良いのです。
エアコンの選定
冷房用エアコンはロフトに設置した2.2kwの6畳用エアコン1台、暖房用は1階床面上に設置した床下暖房用の同じく2.2kwの6畳用エアコンで、家全体を賄う計画としました。
冷房が効くのは実証済。ロフトの最小エアコン1台のみで、30坪のこの住宅(吹抜とロフト含む)をしっかりと冷房出来ています。日射遮蔽しなくても設定温度まで下がりますが、日射遮蔽していると、より早く室温が下がる感じ。
Qpexで熱負荷計算をしてエアコンの容量を決めましたが、一番小さなエアコンにするのは、少し勇気が要りました。
暖房も平面プランが矩形で、間仕切りも少ないので、十分効くと思います。今まで、暖房用エアコンは、床置エアコンを半分床下に埋めて使っていましたが、家の性能に対して、容量が完全にオーバースペックだったので、小さなエアコンにしてみたかったのです。
今回は、総二階の矩形な建物で、2台共、良い位置にエアコンを設置できました。冷暖房1台ずつの最小容量のエアコンで効くと考えています。下記で計算した、冷房及び暖房設備容量以上のエアコンを入れているので、上手く冷気と暖気を各部屋に配れれば、効くという考えで計画しました。
インテリアと収納
施主の希望により、天井高さは2.2Mと低く設定。履き出しサッシの高さに、室内ドアと天井の高さを合わせてドア上と窓上の「下がり壁」を無くし、部屋同士が連続するようにして欲しいという施主からの要望でした。
低い天井のみだと狭く感じてしまうので、低い1階の天井→南側吹抜け→2階の勾配天井と、部屋を進むにつれて、徐々に空間のボリュームが大きくなるように計画しました。小さな住宅ですが、吹抜と勾配天井の効果で、嫌な窮屈さは感じません。ちなみに畳スペースの天井高さは2.1Mです。
いつものように、収納と家具を適切に配置して、片付く室内を目指しました。特に共用部分である玄関・LDK・脱衣室にキチンと収納と造り付け家具を設けているのが特徴。適切な位置に造作収納と造作家具を設けている上に、1.2階共に3畳のウォークインクロゼットを設けています。
設計契約した後のブログにも書きましたが、忙しい施主が、朝、できるだけストレスなく素早く出勤できて、帰宅後も朝の動線を逆回転すれば、自然に室内が片付くプランを目指して計画しました。
インテリア建材は、珪藻土の白壁に無垢フローリングと造作建具及び家具というしつらえ。長く使うには、間違っても、ハウスメーカーやローコストビルダーの定番建材である、木目がプリントされた既製品の新建材は使わないことが肝心です。※「しつらえ」の意味は、空間をふさわしく整えることです。
無垢の床材(パインか杉が多い)、無垢材のドア枠・窓枠・巾木、造作建具と造作家具で、経年しても長く使える室内としています。
超高断熱住宅にすると、自然と収納が少なめになってしまうのは本当なのか?
SNS上では、超高断熱住宅を建てた施主が自宅の温熱的快適性を語っています。写真を撮って投稿しているのですから、とても快適なのだと思います。しかし写真から違和感を感じていました。見る限り、LDK廻りに収納が少なく、室内が片付かないだろうと思われるお宅が、結構ありそうだと感じていたからです。
事実、私のところにも「超高断熱住宅にしたので温熱環境は快適であるが、LDKの収納が少なく室内が片付かない!」という方から連絡が来ました。
超高断熱住宅を建てると、収納が少なめになってしまう3つの理由
1. 1つ目は、高断熱住宅は南面からの日射取得を重視するので、南面は窓だらけになってしまい、南面には収納を設けにくくなります。
かつ、その窓は、大きな床までの履き出し窓やFIX窓となりがちなので、窓に隣接する東面や西面にも収納は設けにくい。だからLDKには、意図して収納や家具を造らないと、収納は少なめになり、室内が片付かない住宅になってしまう。
2. 2つ目は、付加断熱の住宅になると、開口部も含めた断熱気密の建材費用と手間が一般的な住宅よりも高くなり(いろいろありますが、外壁下地を全て2重に造ることになることが一番手間が掛かる点です)、造作収納や造作家具等の仕上げ材まで予算が廻りにくいこと。適切な箇所に使いやすい収納や家具があると室内は片付くようになるので、住みやすくなりますが、当然、住宅の価格は高くなります。
3. 3つ目は、そもそも造作収納や家具の打合せまで、しっかりと行われていない可能性があること。施主は断熱気密のことで一杯となり、収納や家具のことまで頭が回らない。造り手側も収納や家具まで打合せをして、それを実際に造るのは、設計及び施工管理で、かなりの手間と予算が掛かる。造り手側は、そこまで計画してしまうと、完全に予算オーバーとなり、計画自体も無くなってしまうかもしれない。と考えて十分な打合せが行われないまま契約している、のかもしれないし。もしくは、そもそも、全ての工務店や住宅会社が造作収納や造作家具を造った経験があるわけではないので、造るのが難しいのかもしれない。
あくまでも私の見立てです。
特に小さな家の場合は、室内が狭くなるので、収納計画は特に大切になります。
この住宅の雰囲気が一番良くなるのは夜
Q1.0住宅 宇都宮昭和の家には、印象的な照明がいくつかあります。特に吹抜けのペンダントは、長さや配置を設計時点でかなり検討したので、特に2階から見ると、夜は良い雰囲気になりそうです。足場を架けないと電球交換出来ないと考えていましたが、思いがけず何とか2階から電球交換出来そうなのは、ラッキーでした。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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