なぜ既製品の洗面化粧台の水栓は交換しにくい仕様になっているのか?
水栓とは、キッチンや洗面化粧台に付いている、水やお湯の出る蛇口のこと。10年~15年くらい使うと壊れて交換になる可能性が高いです。特にハンドシャワータイプと言われる、ホースが引き出せるタイプは何かと便利ですが、引き出した時に水栓の根元に負荷が掛かるからなのか、壊れるのが早い気がします。
今日のブログは、既製品の洗面化粧台を採用すると、水栓が壊れただけで、ミラーキャビネットも含めて、洗面化粧台全てが交換になりがちになる、凄くもったいない話を書きます。
結論から先に書いておくと、新築やリフォームをする時に、初期コストは高くなりますが、既製品の洗面化粧台でなく、造作洗面化粧台にしておくと、水栓のみの交換がしやすく、インテリアにも馴染みやすくなります。
洗面化粧台の種類は2つ
洗面化粧台の種類は、大きく分けて2つあります。1つが「既製品の洗面化粧台」、もう1つが「造作洗面化粧台」です。
既製品の洗面化粧台は、出来ているモノを買ってきて取り付けたもの。通常は工務店が手配して、取付は給排水衛生設備業者のみが行います。
一方、造作洗面化粧台とは、その家に合わせたオリジナルの洗面化粧台のこと。造り方は、設計者が洗面化粧台の図面を描き→大工が箱を造って取付→キャビネット扉を建具屋が造り→塗装屋が塗装して→設備屋が洗面ボウルと水栓と給水給湯排水管を取付して→洗面ボール廻りは防水業者がシーリングして隙間を塞いで完了です。家具屋さんが塗装までを造る場合もあります。
既製品の洗面化粧台と比べると多くの職人が関与して、施工日数も長いので、値段も高くなります。ただし、造作洗面化粧台は家具化されるので、インテリアに馴染みやすいです。またパーツが分かれているので、壊れた場合も部材交換しやすいということになります。
このように洗面化粧台は「造り方の違い」で2つに分かれます。
既製品の洗面化粧台のメリットとデメリット
既製品の洗面化粧台とは、TOTO・リクシル・クリナップ・タカラ等の水廻りメーカーが、洗面ボールの付いたキャビネットと鏡の付いたミラーキャビネットを一体で売っています。
既製品で出来ているモノを現場で取り付けるだけなので、簡単に施工できます。大量生産部材なので安いことが最大の利点。沢山の数が市場に出ているので、使い勝手も改良が重ねられています。既製品の洗面化粧台を採用して、使い勝手が悪いと、施主から指摘を受けたことはありません。
しかし既製品の洗面化粧台のデメリットは2つあります。1つ目が、見た目が安っぽく感じられてしまうこと。ホームセンターで売られており、安い住宅にも付いているという既視感があるからだと思います。2つ目は、今日のブログで取り上げるように、水栓のみの交換が割高になるため、洗面台全ての交換になる可能性があること。
既製品の洗面化粧台の水栓を指定部材以外に交換できないのか?
ちなみに、水廻りメーカーの営業マンと設備業者に、既製品の洗面化粧台水栓をメーカー指定でないモノに交換できるのかを聞いたところ、取り付けることはできるが、後日不具合が出ることがあり、それは辞めたほうが良いとのことでした。指定部材以外を付けると、当然メーカー保証も付きません。
なぜ既製品の洗面化粧台の水栓は交換しにくい仕様になっているのか?
キッチンの場合は、既製品のキッチンでも、キッチン天板と水栓を取り付ける穴が、同じタイプの水栓なら、わりと簡単に交換できるようになっています。しかし、既製品の洗面化粧台は、特定の水栓しか交換できないようになっています。
かつ「既製品の洗面化粧台の交換用水栓」の実売価格が高く、既製品の洗面化粧台1式の実売価格が安く設定されており、安い洗面化粧台の場合は、交換用水栓よりも、洗面化粧台の価格のほうが安くなっているという、おかしな価格設定になっています。
ただし、洗面化粧台全ての交換になる場合、新規洗面台を取り付ける為の下地木材位置が、既存洗面台と違うことが普通なので、下地木材の位置を変えるために、大工が洗面台の背後の壁を壊して下地木材を入れ直し、かつ内装屋がクロスも貼り替えになる可能性もあるので、実際は、水栓のみの交換の方が安く済む場合が多いと思います。
洗面化粧台で壊れやすいのは、水栓と給水給湯配管です。「壊れやすい部分のみを交換をして長く使われてしまうと、洗面化粧台が売れなくなってしまうので、交換用水栓の値段を高く設定して、水栓のみでなく洗面化粧台全てを交換させる」という、水廻りメーカーの思惑があるのかもしれません。
既製品の洗面化粧台を交換する場合は、既存を全て取り外して、それがゴミになりますが、水栓のみの交換ができると、ゴミは既存の水栓だけになりますから、エコでもあります。
新築やリフォーム時に造作洗面化粧台にしておくのが良いと思う
当社では、新築やリフォーム時には、既製品の洗面化粧台を付けるのでなく、水栓のみの交換がしやすく、インテリアにも馴染みやすい造作洗面化粧台を基本仕様にしています。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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