2019-09-23
Q1.0住宅宇都宮の家 SH-house(宇都宮市)
自然素材

左官職人と珪藻土のメーカーを変えた理由

施主のSHさんが、珪藻土下地のパテを見ているところ。

宇都宮市で建築中の24.5坪の小さなQ1.0住宅。

 

窓枠やドア枠や家具の塗装が完了すると、次は左官工事の珪藻土塗りとなります。

 

珪藻土と取り合う(密着する)木部は、珪藻土より先に完了させておくのが鉄則である。順番が逆になると、珪藻土に塗料が染みこんでしまうからだ。

 

というわけで、SH-houseでは、本日9/23から内装の珪藻土塗りが始まった。

 

今回の現場から、左官工事を若い左官職人集団に依頼しており、今日が初日でした。左官工事とは、主に内装の珪藻土や外装のモルタル塗り、内外装のタイル工事のことです。

 

また、今まで16年間以上、浮気もせずに使い続けてきた珪藻土のメーカーを「けいそうくん」から「KEISOUDO」に変更した。

「KEISOUDO」

 

職人と材料が変わったので心配もありましたが、左官職人の施工と対応が素晴らしく、新しい珪藻土も材料として良さそうなので上手く行くと確信しました。

 

今日のブログは、左官職人と珪藻土を変えた理由のブログを書きます。

 

今回の現場から若い左官職人に依頼することにした

珪藻土下地のパテ。石膏ボードのジョイントやビス穴に石膏パテをかけて平らな下地を造る。

今回から依頼している左官の親方は何と30代である。

 

全国の左官職人の平均年齢が51歳なようなので、とても若い。私の実感的に左官職人の平均年齢は、60歳をゆうに超えているので、51歳はとても若い印象だ。

 

左官職人の平均年齢

 

左官や大工は職人の中でも、修業期間が長い職種である。

 

というのも、左官と大工は、下地から仕上げまでを担う職種なので、他の業種と関連することも多く、色々な機会が想定されるので広範囲な知識を必要とし、一人前になるため、短くても5~10年くらいは親方について修行してから独立するというパターンが普通である。

 

今まで依頼していた左官職人もとても上手い職人であった。しかし、私の父親のような年代の、75歳を過ぎた左官職人だったので、若返りを図った。

 

珪藻土塗りにも様々な鏝(こて)を使う。これはその一部。

私が52歳なので、これからは自分より若い職人に依頼していくことになる。

 

人口減と共に、良い職人も減少していく中、若い有能な職人を手配できる能力は、住宅会社の重要な実力の1つだからである。

 

ちなみに、飛鳥奈良時代までは右官(大工)と左官の2業種で家が建つと言われていたようです。

 

今日は、左官工事の初日だったので、午前9時に施主のSHさんと現場で待ち合わせして、左官下地を見学してもらうことになっていた。

 

1時間程見学して頂き帰ったのだが、1時間後、左官の親方から連絡があり、新しい珪藻土を開けてみたら、当社のショールームで見た珪藻土(けいそうくん)よりも、多少骨材(砂)が多めで、ザックリした仕上がりになる印象なので、「施主さんに、もう一度現場に来てもらって、試し塗りをしてパターンを決めたほうが良いのではないか?」

 

珪藻土のパターンを見るSHさんご夫妻。2パターン提案し、なるべく平滑に仕上げることにした。

と提案を受け、「全くその通り!」なので、再度午後一番で、施主に現場に来て頂いて、パターンを決めた。

 

施主にも左官にも、事前に当社ショールームの珪藻土を見学してもらっており、出来るだけ同じ仕上がりにするという共通認識があったのだが、材料に微妙な違いがあったのだ。

 

微妙な施工の違いは、現場で実際に施主に見てもらうのが間違いない。

 

塗った後で、施主の印象と違ってしまうと、住まい手も造り手側も、お互いに気まずくなる。

 

さすが30代で親方をやるだけある。経験から導かれたナイスな提案でした。

 

「けいそうくん」から「KEISOUDO」に材料を変えた理由

左官職人にも塗りやすいと好評だった「KEISOUDO」

また、16年以上、新築でもリフォームでも使い続けた「けいそうくん」から「KEISOUDO」に、珪藻土の材料を変えた。

 

珪藻土のメリットは大きく分けると「意匠」「調湿」「脱臭」の3つである。

 

珪藻土は漆喰のような塗り壁材とは違い、それ単体では固まりません。そのため凝固剤(セメント、せっこう、ドロマイトプラスター、合成樹脂)を混ぜて施工します。

 

混ぜる凝固剤には「合成樹脂系」と「その他」」の2種類に大きく分けられます。合成樹脂をつなぎに使うと、割れにくくなるが、樹脂が珪藻土特有の無数の穴をふさいでしまいます。

 

「珪藻土を塗ったぞ!」と喜んでも、期待していた調湿・消臭効果が得られないケースがあるのはこれが原因。また、樹脂が入るとビニールクロスのようなテカリがでることが多いので安っぽく見える。

 

樹脂をつなぎとして使うと、割れにくくなるが、調質性能と意匠が劣る。

 

「けいそうくん」は「樹脂系」の繋ぎ材を使っていなかったので、16年前は多少ひび割れを起こしたのでした。

 

それでもお客さんに「この珪藻土は、意匠・調湿・脱臭の性能が良いから」とお話しをして使い続けました。最初は割れの説明するのが大変だったのです。

 

当社ショールームも「けいそうくん」を施工しており、少し割れも入っていますが、おかしなひび割れでなく、愛着もあります。

 

今回「けいそうくん」から「KEISOUDO」に材料を変えた理由は、「けいそうくん」を製造販売していた、ワンウィルの営業担当の石塚さんが技術の責任者と一緒に独立して「KEISOUDO」を造り始めたからである。

 

「けいそうくん」の流通は、1.製造販売の「ワンウィル」石塚さん→2.代理店であるオストコーポレーション北関東の吉田さん→3.当社「ヨシダクラフト」という流れである。

 

この3社には16年の信頼関係がある。

 

オスト吉田さんの、「石塚さんが独立した、けいそうくんよりも良いものを造っている」という説明に、使ってもいないのに私は同意したのだ。

 

私は施主のSHさんに対して責任がある。

 

今日使ってみて、「けいそうくん」よりも「モノが落ちる」ようなら、オスト吉田さんと私の信頼関係は無くなるところだった。

 

少なくとも「けいそうくん」と同等以上の珪藻土で良かった。

 

ちなみに、珪藻土は、樹脂を繋ぎに使っているものでない商品を選ぶといいでしょう。

 

珪藻土の壁の場合は、天井はクロスにしてはいけない

珪藻土の壁(塗り壁)にした場合、減額するために天井をクロスにしてはいけない。珪藻土とクロスの対比で、より室内が安っぽく、チグハグに見えるからである。

 

天井に珪藻土を塗っても落ちてくることは無いので、珪藻土にしても良いし、板貼りにしても良いが壁が珪藻土で天井クロスだけは辞めるべきである。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

この記事をシェアする
コメント