住宅業界の常識は通用しなかった!過失0の追突事故で知った自動車保険の現実と、そんぽADRセンターで解決した話

当社の車が赤信号で停車中、後方から追突される交通事故に遭いました。停車中の追突事故であり、当社側に過失は一切ない(過失割合0:100)事故です。
車は自走できない状態となり、相手方保険会社から代車が貸与されました。しかし、その後の補償内容や代車期間をめぐり、思わぬかたちで保険会社との話し合いが長期化しました。
今回の事故を通じて強く感じたのは、「自動車保険業界の常識」と「一般社会、特に住宅業界の常識」との大きなギャップです。
さらに、相手方の保険会社の対応に納得できず悩んだ末、そんぽADRセンターに相談したことで、相談後は、短時間で解決しました。
私のように交通事故に詳しくない一般の方に向けて、今回の経験を整理して共有したいと思います。
目次
交通事故の経緯
2025年11月8日夕方、当社の車が赤信号で停車中、後方から追突される事故が発生しました。
- 追突された車の運転者:当社会長(84歳)
- 追突した車の運転者:高齢の男性(85歳)
- 直後、警察に連絡し事故処理を実施
当社会長はその後、複数回通院し、2026年1月25日に通院終了しています。
交通事故後の流れ
事故で当社の車は動かせなくなり、そのままレッカー移動となりました。翌日(11月9日)から、相手方の保険会社より代車が貸与されました。
事故後のやり取りは、当初は、当社会長と相手方保険会社の担当者との間で行われ、その後、当社の自動車保険の弁護士特約を使って弁護士経由で話し合いを進めていました。進展が無いため、2026年1月7日に、会長から私に担当が代わり、弁護士経由で相手の保険会社と対話していました。
なぜ相手方の保険会社との話し合いが長引いたのか?
修理費用と「時価額補償」の壁
当方が修理依頼した自動車整備工場からは、修理費用は概算で150万円以上との説明を受けました。
当社側には過失が一切ない事故のため、当社の会長は「当然、元通りに修理してもらえる」と考えていたとのことです。
しかし相手方保険会社からは、
- 追突された車の時価額は約30万円(諸経費抜き)程度
- 修理費用が時価額を上回る場合は、時価額が補償の上限になる
という説明を受けました。
住宅業界に長く携わってきた当社会長にとって、この考え方は非常に理解しにくいものでした。
自動車保険業界で使う「車の時価額」とは、同じ年式・同じ走行距離くらいの同型車の市場価格のことです。
住宅業界と自動車保険業界で事故が起きた場合の補償の違い!
住宅業界では、工事中の事故で施主や近隣のお宅に損害を与えた場合、
- 建設工事保険を使う
- 保険が使えない場合でも、施工会社が負担し
- できる限り元の状態に復旧する
という対応が一般的です。
例えば、当社が工事中に間違って壊してしまったお宅が、築40年以上経っており、時価額が低い家だとしても、時価額を基準とした保険金しか出ないということはありません。通常、工事保険は出ます。保険が使えない場合は、施工会社が負担して、出来る限り元の状態に復旧するのが普通です。
一方、交通事故の自動車保険では、
- 過失割合が「0:100」であっても
- 修理費用が車の時価額を超えると
- 時価額までしか補償されない
というルールが、実務上は普通に使われています。
この違いが、今回の話し合いが長引いた最大の原因でした。
一般の人は、自動車保険業界の常識よりも、住宅業界の常識のほうが理解しやすいと思います。
後述しますが、そもそも相手方の保険会社の説明と対応も、良くなかったと思いました。
また、当社の会長も良くない点はありました。それは相手の保険会社とのやり取りが進まなければ、早めに私に相談していれば早期に解決したと思う点です。
自動車保険は車を「元通り」に直すのではなく、「時価額」を基準に買い替えが基本となる理由
理由1:自動車事故の件数が圧倒的に多く、制度として線を引く必要がある
自動車事故は、住宅工事中の事故と比べて件数が桁違いに多く、もし「過失0なら必ず現状復旧」というルールにしてしまうと、保険の支払いが多くなりすぎて、保険制度そのものが成り立たなくなります。
自動車保険は、どこかで線を引かないと回らない制度として設計されています。
理由2:車は年数とともに価値が下がり、法律は経済的価値を基準にする
車は毎年価値が下がります。また同じ車種・年式の中古車が多数流通しています。
そのため法律上は、「事故がなかった場合の経済的価値」を補償すれば足りるという考え方が基本になっているようです。
家も、毎年価値は下がりますが、同じ大きさ、同じ仕様の家は流通していませんし、車のように買い替え(住み替え)が難しい。
理由3:住宅は代替できないが、車は同等品への置き換えが前提
住宅や隣家の塀は、他のものと交換できません。一方、車は同等の中古車を探して置き換えることが可能です。
自動車保険は、元通りに修理することよりも、同等車への乗り換えを前提とした制度になっています。
当社から徒歩7分の距離にあった相手方の保険会社との“すれ違い”──相手方の保険会社から、情報が届かないため対話が停滞した理由
今回の交通事故対応が長期化した、もう1つの大きな理由は、相手方の保険会社からの重要な情報が、当事者である当社会長に十分に伝わっていなかったことです。
当社会長は84歳という年齢もあり、インターネットで中古車情報を検索したり、メールを受信することが、現実的に難しい状況でした。
一方、当社から、やり取りしていた相手方の保険会社の宇都宮支店までは、徒歩7分ほどの距離です。とても近い。もし、追突された車の時価額に近い中古車の資料を持参し、一度でも当社に直接説明に来て、当事者である当社会長に説明頂けていれば、話がこじれることはなかったと思います。また、会長に聞いたところによると、相手方の保険会社から、当社にメールを送るので、見てくださいという案内も一切無かったとのことです。
実際に私が事故の担当を引き継いだ後、弁護士経由で相手の保険会社からメールで受け取った資料には、時価額に近い車の資料がありました。
当社会長に確認したところ、その資料を見ておらず、具体的な代替案が提示されなかったので、30万円程度では、既存と同程度の中古車が買えるとは思っていなかったため、話が前に進まなかったということでした。
相手方の保険会社も交渉が進まないのであれば、「伝えたい情報が十分に伝わっていない可能性がある」わけですから、「別の担当者(私)に説明した方がよい良い」と判断し、早い段階で私に担当を代わるよう提案するという選択肢もあったはずです。
私が保険会社と直接話をして解決した後に、「御社と当社は近いのだから一度、当社に来て頂くか、もしくは当社が御社に伺って直接話をしていれば、直ぐに解決していましたね?」という話をしたところ、合意していました。
振り返ってみると、自動車保険業界の慣例にとらわれない、わずかな手間と配慮があれば、防げたはずのすれ違いだったと感じています。「自動車保険業界の慣例にとらわれない」の意味は、相手方がネットが出来ない高齢者であれば、資料を郵送したり、もしくは訪問したりして説明することを指します。
私は、自分の住宅建築の仕事に置き換えて「相手と合意できない場合は直接会うか、担当を代えて頂くことも大切である」と、改めて理解しました。
弁護士特約を使ったが、結果として遠回りになったと感じた理由
事故後、当社会長は、相手方の保険会社から「ご自身の自動車保険に弁護士特約が付いていれば、使ってはどうか?」という提案を受け、当社の自動車保険の弁護士特約を利用しました。相手方の保険会社は、弁護士に入ってもらったほうが、スムーズに解決すると判断したのだと思いますが、この判断も今回のケースでは間違いでした。間に入った弁護士の対応も保険会社と同じく、「ネットが使えない高齢者仕様」には、なっていなかったからです。
その後、私が2026年1月7日から本件を引き継ぎ、弁護士を通じて交渉する形になりました。
弁護士からは、
「今回の事故は、過失割合が0:100でありヨシダクラフトさん側に過失はありません。しかし、修理費用が時価額を上回る場合は、時価額補償が適用されるという判例があります」と説明を受けました。私自身も、そこで初めて、「修理費用>車の時価額」の場合は、車の時価額が補償金額として優先されるという自動車保険業界の常識を理解しました。私もそれまでは、停車中の車に追突されたのだから、「当社の車は、元通りの姿に修理されて戻ってくると考えていました」
私が担当になってからは、事態は素早く進んだのですが、弁護士を通したやり取りは、どうしても時間がかかり、結果的に解決が遅れた側面もあったと感じています。
代車返却日を理由とした、相手方の保険会社からの減額主張
話を戻します。
代車の貸与期間は、相手方の保険会社の都合で、2025年11月頃〜2026年1月22日までとされていました。
当社が手配した中古車の納車確定日は1月26日。
そのため、相手方から「代車を4日間使い過ぎた分を減額する」という主張を受けました。
当社側に過失がない事故であり、調整が長引いた原因も、当社側にあるのではなく、相手の保険会社にあると認識したため、相手方の減額主張に、正直、強い違和感を覚えました。
相手方の保険会社に意見書を送付した上で、そんぽADRセンターに相談した結果、本件は一件落着となりました
私は自分の考えを書いた「意見書」を作成し、弁護士経由で相手方保険会社に送付しました。今までの経緯と自分の思いをチャットGPTに入力すると、整理された意見書が出来ました。
あわせて、当社の保険代理店に、「弁護士特約を使って弁護士を入れて交渉しているが、なかなか事態が進展しない」を相談したところ、「そんぽADRセンターという機関に、相手方の保険会社との件を、苦情として相談してみてはどうか?」という助言を受け、すぐに相談しました。
その後、相手方の保険会社の上位担当者と思われる方から、弁護士を介さず電話があり、これまでの経緯を説明しました。
驚いたことに、その電話での1分程度の冷静な話し合いで、すべての問題が解決しました。
この結果を、当社の担当弁護士にも報告し、本件は一件落着となりました。合意した内容は、相手方は減額主張は取り下げる。車の購入代金として40万円(諸経費込み)を支払うということでした。
私の実感では、意見書とそんぽADRセンターへの相談が効きました。追突されて得したことは皆無ですが、どうにもならないことは早く終わらせたいと思いました。
当方では弁護士を入れてしまっていたので、弁護士経由でしか相手方の保険会社と話が出来なかったのですが、直接、相手の保険会社と話が出来れば、難しい話では無かったのかもしれません。
そんぽADRセンターとは?
そんぽADRセンターは、損害保険に関するトラブルについて、中立的な立場で相談・あっせんを行う第三者機関です。
そんぽADRセンターに相談すると、その相談内容が相手方の保険会社に連絡されることになります。
その後、各保険会社側から、そんぽADRセンターに、「その件について解決しました」「その件は解決出来ていません」などの報告をする必要があるようです。
今回の自動車事故の経験から感じたのは、
- 弁護士を入れることが有効な場面もあるが、入れないほうが良い場合もある
- 弁護士を入れる、入れないに関わらず、保険会社への苦情・対応姿勢の問題については、そんぽADRセンターに相談することが非常に有効な場合もある
ということです。
そんぽADRセンターはこちら
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/adr/index.html
まとめ:今回の交通事故から学んだこと
今回の交通事故を通じて、次のことを強く感じました
- 自動車保険業界の常識は、一般社会や住宅業界の常識とは大きく異なる
- 過失0の事故で追突されても、「自分の車は元通りに直る」とは限らない。実際は「元通りには直らないことの方が多い」と思われる
- 自動車保険の制度を知っている保険会社側と知らない一般消費者側で、認識に大きな差が出る
- 相手方の保険会社の対応に納得できない場合、そんぽADRセンターへの相談は非常に有効な選択肢である
停車中に追突され、過失が「0:100」の立場になった人でなければ、なかなか知る機会のない現実だと思います。
今回の件を振り返って感じたのは、
弁護士とADRは、どちらが優れているという話ではなく、役割が違うということ
弁護士は、
・法律上どう整理されるのか
・判例や制度上、どこが限界なのか
といった点を、冷静に整理して説明してくれる存在です。
実際、私も「過失割合が0:100で、自分が悪くなくても、修理費用が車の時価額を上回る場合は、時価額での補償が原則になる」という点については、弁護士からの説明を受けて、制度として理解・納得することができました。
一方で、今回の担当弁護士のように
・話がなかなか前に進まない
・対応や言動に違和感が残る
といった “対応姿勢や進め方の問題” については、担当弁護士との相性もあります。
担当が私に代わってからは、今回の交通事故についてチャットGPTに相談していました。相手方の保険会社に対して、意見書を書いて提出したらどうかとアドバイスをくれたのも、チャットGPTです。意見書も、チャットGPTで書いたので、時間の節約になりました。
そこで相談したのが、そんぽADRセンターです
制度として正しいかどうかとは別に、「被害者として納得できる対応だったか?」「相手方の保険会社の進め方に問題はなかったか?」という視点で話を聞いてもらえたことで、状況が大きく動きました。
結果として、相手方の保険会社の上位担当者と思われる方から連絡があり、これまでの経緯を説明したところ、1分程度の話し合いで合意に至ることができました。
今回の経験から、法律的な整理や制度の理解は弁護士、対応姿勢や苦情の相談はそんぽADRセンターという使い分けが、とても重要だと感じました。
同じような状況に置かれた方の参考になれば幸いです。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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