ベランダが水漏れ(漏水)している場合、どのような方法で水漏れ箇所見つけ、どう対処するのが良いのか?
外装リフォームをする場合は外装全てのリフォームを一気に行ったほうが「吉」
既存外壁サイディングの全面張り替えリフォームをしているHA-house。全面的に外装リフォームする場合は足場を架けるので、一度に外壁、屋根、軒天、雨樋、破風等、外装全てのメンテナンスをしてしまったほうが、何度も足場を架けずに済みますから、効率が良いのです。
今回も外壁張り替えの他に、屋根塗装、雨樋塗装、屋根の軒天(のきてん)とベランダの軒天のケイカル板も張り替えて、塗装も行うことになりました。軒天とは屋根の下の白い部分です。軒天のケイカル板は、鉄釘(てつくぎ)により留まっていたので錆が目立つ状態でした。鉄釘の上から塗装をしてもまた錆びてしまうので、軒天も張り替えることになりました。釘は当然ステンレス釘です。ちなみに、この建物は木造で防水の種類はFRP防水です。
軒天を剥がしたら、ベランダから水漏れしていた
ベランダの軒天とは、出っ張ったベランダ下の白い天井部分のことを言います。軒天を剥がすと、ベランダ排水口(ベランダのドレーンと言います)の裏側が見えて、排水口周囲のべニアに水漏れしたようなシミがありました。シミを指で押してみても乾いていますが、シミがあるということは、ベランダ排水口廻りから、水漏れしている可能性が高いです。このまま軒天を張って塗装してしまうと、また水漏れして、軒天にシミが出来てしまいます。ベランダの水漏れが疑われるこのような場合は、水漏れしている証拠を見つけて、対処方法を考え、お客さんに報告する必要があります。ちなみに、この建物は木造ツーバイフォーの構造でベランダ防水の種類はFRP防水です。
ベランダ水漏れを見つけるために、ホースで水を掛ける
ベランダの水漏れを確認する一番簡単な方法は、水漏れしていると思われる箇所に水を掛けて染みてくるのを見つけることです。
ホースで排水口廻りとベランダ全体に水を掛けてみました。15分くらいホースで水を掛け続けましたが、水漏れしません。15分間水を掛け続けるのは、実際やってみると結構長い時間に感じます。目に見えるようなひび割れがある場合は、ホースで水を掛けただけで水漏れ箇所が分かる場合もありますが、今回はホースで水を掛けただけでは、水漏れ箇所は見つかりませんでした。。
水を掛けてもダメなら、ベランダに水を張る
ホースで水を掛けてもわからない場合は、ベランダに水を張り、水漏れしていないかを確認します。お風呂に水を溜めたような状態にします。ただ、ベランダに水を張るのは難しい場合も多いです。排水口に穴が開いているだけなら、柔らかいゴムボールでも詰めてしまえば、水が溜められます。しかし、今回の既存ドレーンは鋳物であり、穴の上に障害物がありました。どうやって水を溜めるか考えたところ、綿のような断熱材を小さくちぎってコンビニのビニール袋に入れて、お風呂の栓の代わりにしました。上手く水が溜まりました。素人の方が行う場合は、柔らかいTシャツや新聞紙をコンビニ袋に入れて、排水口を塞いでも良いかもしれません。
ベランダに物を置かないほうが、防水が長持ちする理由
ベランダに水を溜めることが難しいもう1つの理由は、ベランダに植木鉢や椅子等の多数の物が置いてある場合、それらを移動してから水を張る必要があるからです。ベランダに物が多いと、移動するのが大変ですし、移動する場所が無いということもあります。また、物が多いと埃やゴミが溜まりやすくなり、「水はけ」が悪くなりますから、当然、防水は傷みやすくなります。また、ものが多いと防水が傷んでいても、隠れてしまい分かりにくい場合が多いです。防水を長持ちさせることだけを考えると、ベランダに物は置かないほうが良いです。もちろんベランダにはウッドデッキも置かないほうが良いということになります。ベランダに置くウッドデッキの話は、近いうちにブログに書きます。
シミがあるのに水漏れしない不思議
ベランダに水を溜めてから、30分くらい待ちましたが、ドレーン廻りはもとより、ベランダ下の他の箇所からも水漏れしてきませんでした。これは参りました。べニアにシミがハッキリと付いているのに、水漏れしてこないのです。鉄筋コンクリートのアスファルト防水ならともかく、木造のFRP防水なら、水漏れ箇所があれば、直ぐに水漏れしてくるはずです。ドレーンの下から、照明を当てて見ても、水漏れは全く確認できません。刑事ドラマに例えると、状況証拠は完全に「クロ」なのに、相手が自白しないので「シロ」だと認めるしかない状況です。全く水漏れの確認が出来ず、参ったと思いました。
シミを指で押して、ようやく水漏れが分かった。触ってみることも大事。
シミがあるのに、水を張っても水漏れしてこないなんて初めての経験です。さらに10分ほど経ったころ、もう一度確認しようと、今度はシミを指で押したら水が指に付きました。水をホースで掛け始めてから約1時間。水漏れ確定です。「目視だけ」していたら、水漏れを見逃していたかもしれません。見るだけではなくて、触ってみることが大事なのだと実感しました。普通の水漏れは、ポタポタ水が落ちてくるので分かりやすいのですが、非常に少量の水漏れだったので、かなりの時間が経たないと染み出してこなかったのです。分かりにくい水漏れでした。見つけられて良かったです。水漏れを発見できないまま、軒天を張ってたら、大変なことでした。
ベランダの床下地がモルタルだった
追加工事としてお客さんにベランダFRP防水工事の見積もりも提出しました。水漏れ箇所と思われる既存の鋳物排水口を、FRP一体型改修用ドレン(排水口)に変更する作業も入っています。漏水箇所と思われる、ベランダ排水口と防水の「取り合い」を異物でなく、FRPで一体化したほうが「より良い」のでそのような提案をしました。ベランダ防水工事も行うことになり、これで外装はすべてリニューアルです。
木造住宅のベランダFRP防水のリフォームは、既存のFRP防水を研磨機で剥がして、FRP防水を2層やり直します。FRP防水2プライと言います。2プライとは樹脂とガラスマットを2層に重ねることです。樹脂、ガラスマット、樹脂、ガラスマット、樹脂と2層に重ねることです。
FRP防水の材料や仕様については、こちらが分かりやすいです。→FRP防水材工業会
防水職人が研磨機で排水口廻りを研磨し始めると、木製下地だと思っていたFRP防水の下地はモルタルでした。現在の新築では、ベランダの防水下地は、削った木を等間隔に並べて勾配を取り、その上に12mmのべニアを2重張りして、その上にケイカル板を張りFRP防水の下地とすることが多いのですが、15年くらい前だと、モルタルで勾配を取ることも多かったのです。歩いた感覚は、木製下地と全く変わりがなかったので、モルタルだとは思いませんでした。モルタルに埋まった排水口を取ってしまうと、またモルタルで下地を造る必要があるので、モルタルの繋ぎ目がまた、防水の弱点になります。ですから、既存の鋳物ドレーンはそのままにして、FRP防水を施工しました。リフォームでは、剥がしたり壊したら、下地が予想と違っていたなんてことも多いです。臨機応変に適切な判断をすることが大切だと思います。
建築は水との闘い。どう雨水を処理するかがとても重要で、いつも苦労している部分です。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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