2014-07-29
住宅設計

「小さな家の玄関ドア選び」を玄関内部の収納と採光から考えてみる。

延床面積30坪以下の小さな家を設計する場合。
玄関ドア選びは、悩みどころだ。

小さな家の場合。
玄関内部は、下駄箱等の収納を優先するために、窓を設けられないことが多い。
分かりやすく言うと、窓の無い玄関となることがある。(というか多い。)

 

必要な下駄箱の面積を考えてみよう。
家族4人暮らしだと、下駄箱として最低でも幅1.2m×高さ2.2m程度の壁面積は欲しい。
奥行は45㎝程度取れると余裕があり、下駄箱に靴を入れた場合でも、前にモノが置けるのだ。
高さ2.2mは造作建具の高さで、建具(この場合は下駄箱のドア)が反らないギリギリの寸法から来ている。

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玄関扉内側に傘掛けを造った施工事例

 

 

この場合の下駄箱面積だとギッチリでスニーカー35足程度は納まる。
家族4人だと1人あたり約9足だ。
少し多めかと思われるが、訪問して下駄箱をのぞかせてもらうと、
様々な靴以外のモノも入っていてほぼギッチリ。
下駄箱に入らず、自室にも靴があることが多い。本当はもっと広くしたいところだ。

 

 

下駄箱には、靴以外の何が入っているのか?
下駄箱の中には、靴や自転車のメンテ用品、工具等、様々なモノが入っていることが多いので、
実際に下駄箱に入っている靴は、1人あたり、5~6足程度かもしれない。
ブーツを入れるとなると、もっと少なくなる。

 

2012_sg_house_012下駄箱扉に姿見。狭い玄関を広く感じさせる効果もある。

 

 

 

収納よりも窓を優先すると、玄関内部は明るくなるが、下駄箱は小さくなる。

窓を設けた場合は、収納は狭くなるので、自分の部屋や納戸等に靴を置いておき、必要なときに玄関まで持ってくる必要がある。

 

 

収納を優先した窓の無い玄関の場合。
当然、暗くなるから採光したい。
壁には窓を開けるスペースは無いから、
結果として、玄関ドアのガラス面を広いものにして、採光することになる。

 

 

しかし、現在の日本製の玄関ドアは、断熱性能と防犯性能を優先しているので、
ガラス面の大きな玄関ドアは、ほとんど無いのが現状だ。
近所の新築住宅を見て欲しい。
ガラス面のある玄関ドアはほとんど無いはずだ。

断熱性が高く、暖かい室内が実現できても、
玄関ドアを開けて、暗い玄関と廊下では気分まで暗くなってしまう。

 

 

これは非常に困る。
繰り返すが、国内メーカーの既製品には、ガラス面の大きな玄関ドアは無いのだ。
スウェーデンのガデリウス社の木製玄関ドアには、1種類だけ、ガラス面の大きな玄関ドアがある。

 

 

これが比較的予算がある場合の唯一の選択肢のような気がする。
断熱性も気密性も高く、採光も確保できるのでベストな選択だと思う。
玄関ドアを木製の造作で造る場合は、気密性と耐光性が問題となる。
断熱性の高い玄関ドアでガラス面積の広いものを増やしてほしい。
玄関ドアは、その家の顔となるので、デザインも重要なのだ。
94w16tガデリウス玄関ドア

 

 

 

 

 

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写真は、テラス用のドアを玄関ドアとして使った例。

 

外側アルミ、室内側樹脂の複合サッシで鍵付。
断熱性能はいまいちだが、採光は確保できる。
もう少し断熱性を上げたいが、採光を考えると良い選択肢かもしれない。

全面ガラスなので廊下まで明るい。

 

 

また、小さな家の場合は、玄関内部も狭くなるので、一気に人が玄関内部に入れない。
玄関の外部に大き目の屋根を付けて、大人2人が並んで
雨に濡れないスペースを作ることも重要だと考えている。
osaki_003大人2人が並べる庇のある玄関

 

 

現在は、経済状況の関係で、家が小さくなっている傾向があるから、
「小さな家の玄関ドア選び」はポイントの1つになっていると思う。

当社が考える玄関ドアについて。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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