床下エアコンを標準仕様とする工務店が、マーベックス社の床下エアコンシステム「涼暖(りょうだん)」のマニュアルを読んで感じたこと

高性能な24時間全熱交換型換気システム「澄家(すみか)」で知られるマーベックス社が、2023年から新たに、高断熱・高気密住宅に特化した「涼暖(りょうだん)」という空調システムを販売しています。
「涼暖」は、
- 各階の床下エアコンで冷暖房(特定メーカーの壁掛けエアコンを使用)
- 換気システム「澄家」
- 床下からの送風ファン「lala fan」
の3つを組み合わせて、家中に冷暖房された快適な空気を届けるシステムです。
一定の断熱性能以上の高断熱住宅は、家全体で1~2台のエアコンだけでも過ごせることが特徴です。そのため、一般的な木造住宅のように、各部屋に個別のエアコンを設置するのは、性能的にもコスト的にも過剰になってしまいます。
とはいえ、実際の住宅には部屋が複数あり、多数の間仕切り壁や床があるため、冷暖気が個室までは届きにくいのが現実です。間仕切り壁が無い状態であれば、1台のエアコンで足りるとは言っても、部屋が複数あるので、全室に冷暖房を届けるのは簡単ではありません。
こうした課題に対して、高断熱住宅を専門に設計施工している工務店や設計事務所では、「少ないエアコンの冷暖気を各部屋に配って、快適に生活する方法」がいろいろと模索されています。「マーベックス社の涼暖」は、そうした空調システムの1つであり、高断熱住宅の空調の新しい提案といえます。
当社は、床下エアコンとマーベックス社の24時間全熱交換型換気システム「澄家(すみか)」を標準仕様としているため、「涼暖」にも興味を持ち、ブログを書いています。
今回のブログでは、「マーベックス涼暖」の設計・施工マニュアル等を読んで、参考になった点や疑問に思ったことを、箇条書きにして、整理してみたいと思います。「涼暖」を体感したことが無いので、早めに体感したいと考えています。
目次
「マーベックス涼暖」の3つの特徴
1. 床下エアコンに保証が付いていること
一般的に壁掛けエアコンは、壁の高い位置(床から1.8m〜2.4mの間くらい)に取り付けるのが、エアコンメーカーの推奨です。床下エアコンのように、床面付近にエアコンを取付けて、床下に向けて風を送るような使い方は想定されていません。
そのため、一般的に「床下エアコン」のように使用すると、壊れた場合にメーカー保証の対象外となる可能性があります。
しかし「マーベックス涼暖」は、ある1社のエアコンメーカーと協力し、対応機種や施工方法を定めることで、床下エアコンとして使っても、メーカー保証が受けられるようになっています。
床面付近にエアコンを付けたからと言って、エアコンが壊れやすくなることは無いのですが、床下エアコンに保証を付けたことは、他のメーカーには無い特徴です。
2. 床下に送った冷気を、床下からファンで床上に送風する仕組み

2つ目の特徴は、各階の床下に冷気を送り込み、床に設置された大風量のファン(送風機)「lala fan」で、その冷気を床上に吹き上げるという仕組みが珍しいため、それが特徴になります。
一般的な高断熱住宅では、冷気が自然に下に降りる性質を利用して、2階のホールやロフトの壁など、家の高い位置に冷房用エアコンを設置するケースが多く見られます。高い位置に付けたエアコンから出た冷気は重いため、吹き抜けなどを通じて1階へと自然に下がっていきます。
もしくは、2階床下エアコンで2階床下(1階の天井裏)冷房して、冷気が自然に下に降りる性質を利用して、1階の各部屋を冷房。冬は、同じ2階床下エアコンで暖房して、暖気が自然に上昇するのを利用して、2階の各部屋を暖房するというのは、何度か聞いたことがあります。
上記は、冷たい空気は重くなって下降し、暖かい空気は軽くなって上昇する「物理の法則に従った」方法です。
それに対して「涼暖」は、冷気をいったん各階床下に送り、重たい空気をファンの力で床上に持ち上げて冷房するという、いわば「物理の法則に逆らう」方法を採っています。非常に珍しいアプローチです。
また、次のような心配になる点もあります。
夏の暖かい空気は大量の水蒸気を含み、かつ床下は目に触れにくくなります。床下に冷気を送ると結露のリスクや、ドレーン管の詰まりによる漏水事故が起きた場合、発見が遅れるというデメリットがあります。
それでもこのシステムを採用する理由が何なのか――高断熱住宅の冷房として、このような方法が選ばれている背景に、とても興味を持ちました。
「涼暖」の設計施工マニュアルを見ると、このシステムの導入条件として、断熱仕様がG1レベル以上、隙間相当面積C値1.0以上となっています。
高断熱住宅の定義や性能基準は、明確に定められていません。しかし今日現在では、一般的にG1レベルは高断熱住宅とは言わず、G2レベル程度以上が高断熱住宅だと認識しています。
あまり断熱性能の高くないG1レベルでも、床下の大容量送風機「lala fan」を多数設けた「涼暖」であれば、なんとか快適に暮らせるのだと思います。
ちなみに宇都宮市の断熱地域区分は5になります。断熱地域区分5のHEAT20の断熱等級G1、G2、G3のUa値の目安は以下の通りです。数字が小さい程、断熱性は高くなります。
- G1:0.48w/㎡k
- G2:0.34 w/㎡k
- G3:0.23 w/㎡k
断熱性能と、暖房時のみの送風機台数の関係性を考えると、G2レベル以上の断熱性能にすると、送風機「lala fan」の設置台数は、大幅に減らせるのだと思います。冷房時は重く冷たい空気を上昇させるので、断熱性能を良くしても、送風機はあまり減らせないのだと思います。
これが「涼暖」の2つ目の特徴です。
3. 暖気も、床下からファンで床上に送風する仕組み
3つ目の特徴は、暖気は軽くなり自然対流で上昇するにも関わらず、全ての床ガラリにファンを付けて、床上に上げる仕組みであることです。
床下に送った暖気は軽くなり、自然に上昇するので、床ガラリ(床開口)があれば、床上に自然と上昇します。強いて言えば、エアコンから遠い部屋の床ガラリのみに、ファンが付けば良いと思います。
しかし、2つ目の特徴のように、床下冷気を上昇させるために、全ての床ガラリにはファンが付いています。そうなると、床ガラリとファンには隙間が無く、ファン本体が、暖気の自然対流を邪魔する形になっているので、ファンで送風するしかないのだと思います。
「マーベックス涼暖」の設計施工マニュアル等は、床下エアコンを標準仕様とする工務店にとって、非常に参考になる資料

当社では、床下エアコンを標準的な暖房方式として採用しています。その立場から、「マーベックス涼暖」の設計施工マニュアル、取扱説明書、施主向けカタログ、専用エアコンのカタログを熟読したところ、非常に有益な情報が詰まっていると感じました。
特に、エアコン廻りの施工方法と、メンテナンスに関する記載が具体的で、これはもう「床下エアコンのマニュアル」と言っても良い内容です。
当社の施主にも配りたいと思いました。ただし、当社では涼暖を採用していません。このまま渡すわけには行かないので、このマニュアルを参考にして、当社の「冷暖房取扱説明書&メンテナンスマニュアル」を作りたいと思います。
このような優れたマニュアルが作られた背景には、いくつかの理由が考えられます。まず、マーベックス社の主力商品である全熱交換型換気システム「澄家」は、床下エアコンとの相性が良く、全国の多くの工務店で「澄家」と共に床下エアコンが採用されています。そのため、マーベックス社には、床下エアコンに関する実践的なノウハウや、全国の施工事例が自然と蓄積されているのだと思います。
さらに、同社が自社で運営している研究施設「快適住宅研究館」では、「マーベックス涼暖」を実際に設置し、各種のデータ計測が行われています。こうした継続的な研究開発と実地検証が、具体的で精度の高いマニュアル作りに活かされているのでしょう。
床下エアコンと換気システム「澄家(すみか)」の相性が良い理由

床下エアコンと、24時間全熱交換型換気システム「澄家」の相性が良い理由は、換気システムの給気と、床下エアコンの暖気を混ぜられるからです。
換気本体が1階の床下に設置され、換気本体から出ている給気口を、床下エアコンの吹出口付近に設けることが出来ます。
澄家は「第1種熱交換換気システム」と呼ばれる仕組みを採用しています。これは、外の新鮮で冷たい空気をそのまま室内に入れるのではなく、いったん室内の空気と熱を交換し、ある程度あたためた状態にしてから床下へ送り込むものです。
さらに、このあたためられた外気は、床下エアコンの暖かい空気が出る場所近くの、1か所から給気されます。そのため、新鮮である程度暖かくなった外気は、エアコンの暖気と混ざり合い、より暖かくなってから家中の各部屋へと送り届けられる仕組みになっています。
この一連の流れにより、冬場でも効率的に暖かい空気を、室内に循環させることができるため、澄家と床下エアコンの組み合わせは非常に相性が良いと言えます。
他の多くの第1種熱交換換気システムの給気は、室内の複数個所で給気されます。「澄家」のように床下1か所のみで給気される仕様は、比較的、床下エアコンと相性が良いと言うことになります。
高断熱住宅における冷暖房の考え方
高断熱・高気密の住宅になると、従来のように各部屋にエアコンを設置する必要はなくなります。断熱性能が高いことで、家全体の温熱環境が安定し、少ないエネルギーで冷暖房が可能になるからです。
例えば、当社で建てている高断熱住宅の性能は、Q値が1.0W/㎡・K前後、UA値が0.3W/㎡・K前後になります。このような性能の、延床面積30坪程度の家を、冷暖房負荷計算すると、間仕切りのない間取りであれば、冬用の暖房エアコン1台(6〜10畳用)、夏用の冷房エアコン1台(同じく6〜10畳用)の、合計2台ほどで十分だという結果になります。
とはいえ、容量としては夏冬1台ずつでも足りるのですが、実際には冷気や暖気を家全体に届けるのは簡単ではありません。特に間仕切りで区切られた個室やトイレ、脱衣室などの小さな部屋には、空気がうまく届きにくいのです。
暖房に関しては、暖気は軽く上昇しやすい性質があること、さらに南向きの窓からの日射熱も活用できるため、南側の部屋は上昇気流が発生しやすく、暖気は南側の部屋を経由して、家全体を暖めやすくなります。
一方、夏はエアコンで冷気を作るしかなくて、しかも冷気は重くて床面付近にたまりやすい性質があるため、暖気よりも、家の隅々まで行き渡らせるのが難しくなります。
だからといって、一般住宅のように各部屋にエアコンを設置するのは、設備が過剰になり費用の面でも無駄が多く、合理的ではありません。エアコンは10~15年で壊れて交換するので、台数も少ないほうがベターです。
高断熱住宅は、いわば「高性能な容器」です。この器の良さを活かして、できるだけシンプルな冷暖房設備を導入し、10〜15年ごとにやってくるエアコン等の設備の更新時のコストを抑える――それはごく自然で合理的な考え方ではないでしょうか。
当社の冷暖房の考え方は「シンプルで、メンテナンスと交換がしやすいこと」

当社では、冷暖房設備において「シンプルで誰でも扱える仕組み」にこだわっています。具体的には、特別な設備や高価な機器ではなく、市販されている一般的な壁掛けエアコンを活用する方法です。
全館空調システムや、天井埋め込み型の高額なエアコンは採用していません。普及型の壁掛けエアコンを用いることで、万が一の故障時でも交換が容易で、値段も安く、特定の業者や専門技術に依存しない冷暖房計画を目指しています。これはとても大切なことです。
エアコンは10〜15年ほどで寿命を迎えることの多い、交換が前提の設備です。そのため、将来のメンテナンスや交換コストを考えると、特殊な機器よりも、いつでも買えてすぐに取り替えられる機種のほうが合理的です。加えて1台が故障しても、もう1台で少しの間はカバーできるように、家全体を2台のエアコンでまかなう設計にしています。
ちなみに「全館空調」とは、家中の冷暖房や換気を1つのシステムで管理し、すべての部屋の温度を均一に保つ仕組みのこと。各部屋にエアコンを設置せず、ダクトなどを通して空気を各部屋に循環させる方式です。「全館空調」のように、複数の機能が1つになっている設備は、1つの機能が壊れると、全てが使えない可能性が出るばかりか、イニシャルコストや交換コスト面の負担が大きいものもあります。中には専門的過ぎて一般的にならず高額なモノもあります。
その点、当社の方法はシンプルです。冷暖房を行う際には、家の各部屋のドアをなるべく開放し、ワンルームのような空間構成にすることを基本としています。
冬の暖房時には、南面の窓から日射熱を取り込みながら、床面より少し高い位置に設置した「床下エアコン」1台を使用します。温風は床下へ送り込まれ、暖かい空気が自然に床上に上昇する、自然の摂理を利用して、1階全体に広がっていきます。床下エアコンから遠い部屋には、暖気が届きにくいため、床ガラリには、デルタ電子のブースターファンを付けて、床下の暖気を床上に送風することもあります。
1階床上の暖気は、窓からの日射熱と共に、吹き抜けや階段を通って2階へと上がり、各所に設けた換気システムの排気口に引っ張られて家全体に広がります。2階の吹き抜けから遠い部屋には、壁や天井に小型のパイプファンを設置し、空気を循環させる工夫も行っています。
冷房時には、窓の外側に外付けスクリーンや電動ブラインドを設置し、日差しを遮ることを基本としています。そのうえで、ロフトや2階のホールなど、家の中の高い壁に取り付けたエアコンを使って冷房を行います。
冷たい空気は重いので、家の中の高い位置から、吹き抜けや階段を通って、自然に1階へと下りていきます。1階の、吹抜けから遠い部屋には、冷気を運びにくいため、必要に応じて、もう1台小さなエアコンを設置したり、各個室の壁や天井に小型のファンを設置したりなど、冷気を届ける工夫もしています。
このように、当社の冷暖房計画は「誰でも分かりやすく・扱いやすく・長く安心して使えること」を重視しながら、家全体を効率よく快適に保つ仕組みを取り入れています。
当社の暖房は以下のブログをご覧ください。
次の見出しからは、マーベックス涼暖の設計施工マニュアル等の、参考になった内容を箇条書きにします。
夏のエアコン室内機からの水漏れ対策(ドレーン管つまりによるオーバーフロー対策)

エアコンメーカーの指定通りに、エアコンの排水管(ドレーン)の勾配をとっても、排水がスムーズに行われない場合があります。このマーベックス涼暖のシステムに限ったことではありませんが、住宅性能が上がると、エアコン設置台数が減り、1台当たりの稼働時間が長くなるので、埃やゴミがドレーン配管に詰まりやすくなります。ホームセンター等で販売している手動ポンプで、定期的なメンテナンスを行い、配管つまりの掃除を行ってください。(設計施工マニュアルP6)
→夏に連続運転するエアコンのドレーン管が詰まり、エアコン室内機から漏水することは珍しくありません。なので、ドレーンホースの清掃の重要性が繰り返し書いてあります。夏に、連続運転するエアコンの最重要メンテナンスポイントです。
床下エアコンの具体的なメンテナンス方法が書いてある
エアコンは連続運転していると、間歇運転(かんけつうんてん)よりも水分を排出するドレーンホースにホコリが溜まりやすくなります。そのホコリでドレーンホースが詰まるとオーバーフローして、エアコン室内機の吹き出し部あたりからの、水漏れの原因になります。連続運転するエアコンは特に、ドレーンホースの掃除が必要です。(取り扱い説明書P4~5)
→私も施主のお宅で、冷房時の、この水漏れは経験しています。水漏れ箇所は、取説通り、エアコン室内機の吹き出し部あたりからでした。施主に、ドレーンホースの定期的な掃除を行ってもらうことの重要性は実感しています。ちなみにドレーンホースの掃除は、とても簡単です。
※間歇運転(かんけつうんてん)とは、連続運転するのではなく、点けたり消したりを行う運転方法です。
床下エアコンのドレーンホースの掃除は2週間に1回
エアコンのドレーンホースのお手入れは、2週間に1度、ドレーン掃除用ポンプなどで、定期的にお掃除しましょう。(取り扱い説明書P5)
→ドレーンホースの清掃時期まで書いてあります。2週間に1度の清掃回数は、マメすぎる気もしますが、エアコンメーカーとマーベックスの知見から、2週間に1度、清掃を行えば、漏水する可能性は少ないのだと思います。
エアコンフィルターの掃除と、ダクトボックスのゴミ捨てが必要
2週間に1度程度、エアコンフィルターの清掃とダクトボックスのゴミ捨てを定期的に行うのが良い。エアコンフィルターにホコリが溜まっているとエアコンの効きが悪くなります。エアコンを部屋ごとに設置する使い方と比べて、エアコンの台数が少ない為、空気がそのエアコンに集約されるので、埃が溜まりやすくなります。そのため各部屋にエアコンを設置する場合と比べて、こまめな清掃が重要になります。こまめなメンテナンスは、省エネにも繋がります。(取り扱い説明書P4・11)
夏の設定その1 夏は窓からの太陽熱をシャットアウト

2m×2mの大きさの窓からは、約1600wの熱が入ってきます。これは電気ストーブ約2台分。特に東西の太陽は、低い位置にあるので、家の奥まで入ってきます。日差しを防ぐために、アウターシェードや植栽などで太陽熱を遮るのが効果的。日差しは、アウターシェード等で、窓の外側でカットするのが効果的ですが、窓の外側で日射遮蔽することが難しい場合は、窓の室内側にハニカムブラインド(断熱ブラインド)を設置することでも、遮熱効果は期待できます。(取り扱い説明書P6)
→夏に涼しく暮らす智恵である、日射遮蔽の重要性を知っている消費者は少ないのが現実だと思います。工務店が、引き渡し前に窓の外側の日射遮蔽材を、取付けてしまうのが良いと思いますので、当社では、そうしています。室内側のハニカムブラインド(断熱ブラインド)は、完成後でも取り付けられますが、当社では見積に入れて、引き渡し前に付けてしまいます。
夏の設定その2 扇風機を合わせ技で上手に利用
外から帰ってくると、キンと冷えた室内はとても気持ちが良く快適です。しかし、しばらくすると体の代謝が下がり、体から出る熱が減ることで、肌寒さを感じてしまいます。ですから、室温を極端に下げるのではなく、扇風機を併用するなどして、気流で体温を放熱させることが、健康的で省エネにも繋がります。(取り扱い説明書P6)
冬の設定その1 太陽熱は積極的に取り入れて、逃がさない

2m×2mの大きさの窓から、電気ストーブ約2台分、約1600wの熱が入ってきます。窓のカーテンやブラインドを開けて、太陽熱を積極的に取り入れるのが大切です。(太陽熱を暖房機代わりに使う)
雨や曇りの日は、取り入れる熱よりも、逃げる熱が多くなるので、窓の内側のハニカムブラインドを閉めるなどの対策を行います。(取り扱い説明書P8)
→当社でも、施主に日射取得の重要性は説明しています。絵になっていると、日射取得の重要性が、より理解しやすいと思いました。
冬の設定その2 夜は窓から熱を逃がさない
昼間は熱を取り入れられる窓ですが、高性能な窓であっても、夜は熱を逃がす弱点になります。夜、熱を逃がさないようにするために、(太陽が沈んだ後、なるべく早く)断熱性の高いハニカムブラインドなどを降ろして、熱が逃げない対策をすると効果的です。(取り扱い説明書P8)
エアコンのリモコン温度と、換気システム「澄家」のリモコン温度が違っても故障ではない

エアコンのリモコン温度は、室温ではありません。(エアコンリモコンに付いている)センサー付近の温度を目安にして設定温度に近づけようとエアコンは運転しています。温度計の表示と、エアコンリモコン、換気システム「澄家」リモコンの温度が違ったりしても故障ではありません。(取り扱い説明書P14)
各部屋のドアを閉め切って、プライバシーをしっかり確保したい場合や、個別に温度調整したい場合は、各個室にエアコンを取付るのが良い
空気を循環させるため、このシステムは、ドアや壁にガラリ(開口部)を設置したり、ドアを開閉したりする必要があります。ドアを閉めきるなど、プライバシーをしっかり確保したい場合は、個別にエアコンを設置されることをお勧めします。 (取り扱い説明書P14)
→エアコンは各個室に設置しないまでも、小さなエアコンを1台程度増やすと、快適になり効果的です。各個室もプライバシーを確保しやすいと思います。特に夏の温度を、ほぼ均一にするのは難しく、かつ人によって温度の感じ方が違うので、高断熱住宅と言えど、エアコンを増やすのは間違いでは無いと思います。
猛暑時のエアコン故障対策のため、エアコンは2台設置

夏季のエアコン故障は、修理や交換の判断が遅れると、熱中症のリスクが高まります。効果的にエアコンを効かせるためだけでなく、いつかは壊れるエアコンの、故障時の対応まで考え、エアコンは2台設置にしています。(カタログP2)
→今後は、より労働人口が少なくなるため、エアコン故障時に、なかなか来てもらえないこともあり得ます。エアコンは最低でも2台設置が良いと思います。
マーベックス涼暖の床下エアコン設置箇所

1.1.2階共に共用部であること
2.冷暖気を床下に広げるため、エアコンの前面3m以内に基礎の立上りが無いこと(エアコン前面に人通口がある場合を除く)
3.床下エアコンからlala fanまでの間には、エアコンの冷暖気が届くように、人通口は2つ以内
4.エアコンの両側に基礎立上りがある場合、その内法寸法は1100mm以上。メンテナンスのため。
5.エアコン位置は、なるべく建物の中心とする。(冷暖気が均一に広がりやすい)
(設計施工マニュアルP3~4)
→暖房専用の「床下エアコン」の設置方法にも通じる内容だと思いました。
lala fan(床ファン)の設置箇所
1.2階建ての場合は、各階5台以上で、6畳未満につき1台設置
2.エアコンの吹き出し口から、3m以内には床下ファンは設けない。床下に冷暖気が広がる前に、床上に上がって、温度ムラ発生の可能性があるため。
3.エアコンと床下ファンのライン上には、別の床下ファンは設けない。奥のファンまで届きにくくなるため。
4.1階床下。エアコンから、床下ファンまでに人通口は2つ以内。なるべく基礎の立上りを無くしたほうが良いため。(設計施工マニュアルP3~4)
→目安としてG2レベル以上の断熱性能の家の場合、1階に暖房用の床下エアコン1台+2階共用部の壁に冷房用の壁掛けエアコン1台を基本にすれば、自然対流が活かせるため、床ファンは必要が無くなるか、もしくは最小限にできるので、それが良いと感じています。間取りを真四角にすると、冷暖気は室内の各所に届きやすくなります。
換気システム澄家の設置条件
1.換気システムの床下吹き出し給気ダクトを、エアコン吹き出し口まで延長させる。エアコンから吹き出す空気と、換気システムから出る給気をしっかりと混ぜる。
2.換気システムの熱交換機(四角いBOX)とチャンバー(亀の子みたいなダクトの分岐BOX)は、エアコン吹き出し口から3m以上離す。冷房時の結露防止
3.ダクト配管は、エアコン吹き出し口から3m以上離す。冷房時の結露防止(設計施工マニュアルP3~4)
→当社は、床下冷房していないので、2.3は関係が無い。1は重要。
エアコンへ空気を戻す、リターン経路の確保が重要

エアコンに空気を戻す経路を確保して、エアコンの効きを良くする
床下ファン2つあたり、ドアのアンダカット(上下合わせて)、幅700×高さ30以上を1か所。(設計施工マニュアルP5)
→エアコンを効かせるには、リターン経路の確保が重要
エアコン室内機廻りの断熱被覆(効率よく冷暖気を送る&結露対策)

1階床下のエアコン廻りの基礎スラブ(基礎の床面)は、エアコン吹き出し風が当たる範囲、1.82×1.82くらいに基礎断熱と同等の断熱材を敷いておく。

2階床下のエアコン廻りの床下は、エアコン吹き出し空間(半間)の構造材や2階床裏面は、アルミ遮熱シートで被覆する。断熱材で被覆したほうが良い。2階床下の胴差部は断熱材を室内側から貼る。梁下の隙間は、エアコン設置周辺で80mm以上、それ以外ぱ50mm以上確保して、冷暖気が広がるようにする。(設計施工マニュアルP7)
→当社では、基礎スラブ全面に断熱材を取り付けているので関係が無いが、床下エアコンのエアコン吹き出し風が当たる範囲、1.82×1.82くらいに基礎断熱と同等の断熱材を敷いている会社は少ない気がします。特に冷気を床下に送るなら、結露しずらくするために、必須事項だと思われます。
※胴差(どうさし)とは、木造建築で2階の床下の建物外周の梁材。
キチンと「気流止め」をして、計画した場所から暖気を上げる

1階床面を貫通する、上下水道・2階への換気配管廻りをシーリングやウレタンを充填して塞ぎ、計画した床ガラリ以外の床からの抜けを防止する。(設計施工マニュアルP9)
※壁内部の気流止めは、現在では剛床工法(ごうゆかこうほう:根太レス工法)が一般的なため、各階の全ての壁下には、24mmや28mmの厚床合板が貼られており、その合板が気流止めの役割をする。
→基礎断熱を行う場合。家全体の気密性には関係が無いが、1階床面を貫通する配管廻りの気密性を確保しないと、計画した床ガラリ以外の床から空気の抜けが発生します。
エアコン周り施工仕様標準

エアコンは指定メーカー1社のみで、仕様も決められています。また、エアコン廻りのメンテナンス用開口(点検口)寸法や仕様も決められています。
→特に、エアコンの吹き出し開口とは別に、点検用床開口として、エアコン前面から200mm以上×幅798mm以上とかなり広めに設定されています。なぜそんなに広い奥行き開口が必要なのか?理由を聞きたいです。夏の床下冷房による結露やドレーン管詰まりによるメンテナンス対策で、点検用床開口として、エアコン前面から200mm以上×幅798mm以上が必要とされているのかもしれません。

エアコンを家具の中に入れた場合の周囲寸法も、指定エアコンのメンテナンス仕様により決められています。
エアコンの基礎貫通部の配管廻りの気密処理は、配管を交換する場合等も考えて、ウレタンを吹くのではなく、「パテ」で行う(設計施工マニュアルP13.15)
エアコン廻りの気密

エアコン周りを密閉することで、「室内空気取り込み部」と「床下への吹き出し部」が完全に別れて、床下空間にしっかりと吹き出すようになります。
エアコン吹き出し部の周囲に隙間があると、エアコン周囲のみで空気循環が起こり(ショートサーキット)、エアコンが効かなくなるため、床下に冷暖気が広がりにくくなります。(設計施工マニュアルP17)
エアコン目隠し造作の開口寸法は、エアコンの吸い込み口以上の開口面積が必要

エアコンに入るリターンの空気を確保します。
エアコンを造作家具で囲う場合。エアコンへの空気のリターン用に、エアコン上部の吸い込み口以上の開口面積を、家具に設ける必要があります。(設計施工マニュアルP18)
床下ファンの比較:デルタ電子のブースターファンと、マーベックス「lala fan」

1. デルタ電子のブースターファン
私が設計・施工したQ1.0住宅「小幡の家」では、デルタ電子のブースターファンを使って、床下の暖かい空気を床上へ送る仕組みを採用しました。設置場所は、床下エアコンから距離のある個室2部屋です。床ガラリは各部屋1か所ずつで、その2か所のガラリにブースターファンを付けました。床下エアコンは暖房のみ使用しています。
このブースターファンには風量調整が4段階(微風・弱・中・強)ありますが、「弱モード」(風量50㎥/h、消費電力1.8W)で運転しました。音が静かで気にならず、それでいてしっかり暖気を床上へ送ることができ、非常にバランスが良かったと感じています。試しに「中モード」にしてみたところ、ファンの音が気になったため、「弱モード」が最適という判断になりました。
下記のブログでは、ブースターファンを付けた部屋を含んだ、冬の各部屋の温度変化をグラフにしています。
2. マーベックス「lala fan」
一方、マーベックスの「lala fan」の冬の基本設定では、「風量3モード」=150㎥/h(消費電力4W)、もしくは「風量4モード」=180㎥/h(消費電力6W)とされています。
夏場の基本設定も「風量4モード(180㎥/h)」になっており、冬と夏は、比較的大風量での運転が前提となっているようです。
さらに、春秋は、「風量2モード」=120㎥/h(消費電力3W)となっており、春秋でも、100㎥/hと、かなりな風量です。
ここで気になるのは、この大風量で運転した場合のファンの音です。実際に生活する空間で、風量に比例して音が大きくなるようであれば、快適性に影響が出る可能性もあるのではないでしょうか?
また、床ガラリから自然対流させずに、1年中床ファンを運転させることにも違和感があります。
マーベックス涼暖の疑問点
1.自然の流れに逆らう冷暖房方式について
マーベックス「涼暖」の取扱説明書によると、床ガラリに設置する送風機「lala fan」は、冬や夏だけでなく、一年中ずっと運転する仕様になっています。
この送風機「lala fan」は、設置される床ガラリと同じサイズで作られているため、周囲に隙間がありません。そのため、lala fanを停止してしまうと、床下の空気は、自然対流することが出来なくなるのだと思います。
また、床下エアコンに空気を戻して、床下を冷暖房するためには、lala fanを常に動かし続ける必要があるのだと考えられます。
これは、空気が自然に流れるのではなく、床の送風機lala fanに頼って冷暖房を行う方式です。重く冷たい空気を大容量の送風機で床上に送り、暖気も機械で送風する方法は、自然の摂理に反しており、個人的には違和感を覚えます。
2.床下冷房で床が冷たくなると、不快に感じないのか?
床下に冷気を送り、そこからファンで床上に冷風を吹き上げる――こうした冷房方式は、私自身、まだ実際に体験したことがありません。そのため想像にはなりますが、気になるのは「床が冷たくなって不快に感じないのか?」という点です。
本来、人が快適と感じる状態は「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」、つまり頭が涼しく足元が温かい状態です。しかしこの床下冷房は、それとは真逆。足元が冷たくなると考えられるため、快適性や身体への影響に疑問が残ります。

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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