外壁の合板気密(ボード気密)の気密部材を、気密パッキンから気密防水テープに変更した理由
Q1.0住宅宇都宮小幡の家は、現在、合板気密(ボード気密)と付加断熱工事を行っています。
当社が建てている住宅の外壁下地の気密の取り方は、外壁下地の耐力面材部で気密を確保する、合板気密(ボード気密)を採用しています。
外壁下地の気密の取り方は、合板気密(ボード気密)とシート気密の2つの方法があります。
合板気密工法(ボード気密工法)は、2002年に「高断熱・高気密」の生みの親である、室蘭工業大学 鎌田紀彦名誉教授、新木造住宅技術研究協議会(新住協)により生み出された技術です。
外壁の合板気密(ボード気密)の気密部材を、気密パッキンから気密防水テープに変更した理由は、より合理的に施工するためなのですが、今日のブログはその経緯を書きます。
目次
合板気密工法とシート気密工法の違いについて
外壁の気密工法は、合板気密工法とシート気密工法の2種類があります。
合板気密工法(ボード気密工法)は、モイスや構造用合板等の耐力面材部で気密を取る工法です。耐力面材は、大工であれば、ほぼ必ず扱ったことがある普及部材であることから、気密工事を行ったことが無い大工にも、わりと受け入れられやすい工法であると思います。
ちなみに合板気密工法の場合でも、室内側の壁には、防湿気密シート(水蒸気を通しにくいポリエチレンシート)を床合板から桁まで貼ってから、3Mの長尺の石膏ボードを桁まで貼り、火災に強く火災保険料も安い、省令準耐火仕様にしてます。耐力面材部で気密を確保しているため、合板気密工法の場合の防湿気密シートの意味は、主に、室内の湿気を壁内に入らないようにする防湿層です。かつ気密性をより確保する補強材と考えています。
一方、シート気密工法は、より室内側で気密を取る工法です。壁の石膏ボードを貼る前に、防湿気密シート(上記の合板気密のシートと同じもの)を貼り付け、シートの継ぎ目を十分重ねて、石膏ボードにより木部と留めたり、下地木材のない部分は、気密テープでしっかり貼り付けて、石膏ボードを貼って気密を取ります。 シート気密工法は、合板気密工法と比べると、窓の周囲・母屋と壁の取り合い・コンセントやスイッチ部分などの施工に技術と根気が必要になります。シート気密工法は、ボード気密工法に比べて、気密性を確保するのが難しいと思います。また、多くの住宅会社が、耐力面材を外壁下地に貼り箱型の住宅として、耐震性を上げるようになったことも、合板気密工法(ボード気密工法)が主流になっている理由だと思います。
合板気密工法(ボード気密工法)のやり方は2種類
合板気密工法(ボード気密工法)とは、耐力面材の目地を塞いで、気密処理をすることです。
合板気密工法(ボード気密工法)のやり方は、2種類あります。
1. 耐力面材を打ち付ける前に目地がくる柱や間柱に、あらかじめ気密パッキンを貼り付けてから、耐力面材を貼る方法
2. 耐力面材を貼ってから、目地部に気密防水テープを貼る方法
あらかじめ、気密パッキンを貼り付けてから面材を貼るよりも、耐力面材を貼ってから気密防水テープを貼る方法の方が合理的だと考えてはいたのですが、今まで、良さそうな気密防水テープが見つかりませんでした。
今回の現場では、合板気密(ボード気密)に使える気密防水テープを見つけたので、合板気密工法の気密部材を変えることにしました。
外壁の合板気密(ボード気密)の気密部材を、気密パッキンから気密防水テープに変更した理由
外壁の合板気密(ボード気密)の気密部材を、気密パッキンから気密防水テープに変更した主な理由は、より合理的だと思ったからです。大工の気密工事をする手間を少しでも減らして、時間を他の工事に振り分けたいと考えました。
当社では、今まで、気密パッキンを使って合板気密を行っていました。気密パッキンは、気密を確保するのに、とても良いもので、気密パッキン自体が耐力面材と柱に挟まれるので、耐久性も問題ありません。しかし、気密パッキンを貼る手間は、気密テープを貼る手間と比べると、少しだけ時間が余分に掛かるように感じており、耐力面材の目地に使える気密防水テープを探していたのです。「少しだけ時間が余分に」と書きましたが、1時間で完了するところが、10分程度余計に時間が掛かるようなイメージです。
分かりやすい合板気密の動画を貼り付けておきます。私も加盟している新住協 関東支部会長の夢・建築工房 岸野さんの解説動画です。
住宅業界も人手不足と高齢化が進んでいる上に、建材がより重くなっているので、合理化できる施工法が必要
建築業界でも高齢化が進んでおり、40代の大工は若手です。その上、高齢化と反比例して、建築部材は樹脂トリプルサッシや耐力面材モイスなど、大工1人ではとても持てないような、重い建材が標準化されていく流れになっています。
住まい手側も情報が多すぎて取捨選択が難しいと思いますが、造り手側も、仕事の手間が増え続けている上に、ますます重労働になっています。ですから、性能を維持したままで、少しでも合理化できる施工法を目指すのは、当然のこと。行わないと、工期も遅れがちになり、造り手側も重労働すぎて、ギブアップになりかねません。
合板気密の気密防水テープは、上から面材で押さえられないので、強い粘着性と、長持ちする耐久性が必要
話が少しそれましたが、外壁の合板気密の気密部材を気密防水テープにした場合、テープの上は付加断熱材となり、テープの上から面材で押さえる構成になりません。テープの上から面材で押さえられれば、テープが剥がれる可能性は低く、耐久性も確保できますが、耐力面材の上から気密防水テープにした場合は、そうなりませんから、十分な粘着力と耐久性のあるテープが良いと考えて、探していました。
気密防水テープのメーカー2社に来てもらい、いろいろと聞いた上で耐力面材に貼る気密防水テープを決めました
耐力面材の目地に使えそうな、候補となった気密防水テープは2種類ありました。両方のメーカーの担当者に来てもらい、話を伺った上で、結果としてユラソールテープ(ウルト社)を採用しました。どちらも、住宅の気密部材では有名な専門メーカーです。
ユラソールテープは、「ポリエチレン製で、耐紫外線性能3か月、屋内外で使用可能。6時間後に完全硬化して強力に接着し、長期に渡って気密性能を維持。施工直後は、貼剥がし可能なため、施工性にも優れる高機能気密テープ」と説明されています。
ユラソールテープの用途は、「透湿防水シート・屋外用シートの施工や補修・OSB合板の気密接合」とあり、メーカーの担当者に、「モイスや針葉樹合板のような耐力面材にも使えるかを確認したところ、使える」とのことでした。
ユラソールテープでないメーカーの方は、今後、耐力面材の気密防水テープとしても使える新商品として、発売予定とのことでした。今、そのメーカーのWEBを確認したら、私がサンプルで貰ったテープはありませんでした。まだ、オープンには発売されていないのかもしれません。
テープの裏紙を剥がして指先で触ったところ、どちらのテープも、一般的な気密防水テープよりも粘着性が高めで、表装材が強く伸縮性があり、手ではカットできませんのでカッターかハサミで切ることになります。一般的な気密防水テープは手で簡単にカット出来ますから、大きな違いがあります。
性能の高い気密防水テープの値段は、一般的な気密防水テープの3倍以上の値段
また価格も、気密防水テープとしてはかなり高価で、ユラソールテープは1巻きあたり、一般的な気密防水テープの約3倍以上の値段で、もう1つのテープは、4倍以上の値段でスタートしたいという話でした。発売前であり最初は大量には売れないので、そのような値段でスタートして、売れてきたら価格を少し下げたいという説明でした。
合板気密工法(ボード気密工法)のコツ
柱や梁に、ただ単純にモイス等の耐力面材を貼るのでなく、面材下に下地木材が無い部分、例えば妻壁の屋根垂木部は、あらかじめプレカット図の段階で下地木材を入れておき、面材が下地木材と確実に固定できていると、気密テープや気密パッキンをしっかりと貼れるようになります。
現場で木材を加工することは最小限として、プレカットされた木材を使うことが合理的で重要だと思います。大工に、断熱気密工事や、ドア枠の加工や家具製作等の造作工事等の現場仕事を、これ以上させるのは、限界に近いと感じているからです。
特に、母屋と屋根垂木の取り合う、三角形になる隙間の部分は、木材を入れたり、ウレタンを吹いたりして隙間を塞ぎます。配管・配線廻りは、耐力面材との隙間をシーリングしたりしています。その上で透湿防水シート部でドームパッキン等の貫通部材で、防水しています。
今回、合板気密工法で気密防水テープ(ユラソールテープ)を貼るのは初めてでしたが、大工にユラソールテープを貼る前に、耐力面材の切り粉を落として掃除してから、ユラソールテープを貼り、テープの上からローラーで押さえてもらいました。
ローラーはこれを買いました。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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