宇都宮市の台風19号の被害レポートを読んで、科学的エビデンスに基づき、これから宇都宮市で土地を買って、家を建てる場合の注意点をまとめました
去年の台風19号で、床上浸水したお宅が636軒出た宇都宮市。私の事務所兼自宅もその中の1軒です。
今年の宇都宮の雨は、去年以上に勢いが増している印象で、梅雨入りしてから連日のようにスマホの豪雨警報が鳴り響き、去年の悪夢が近いうちに再現されそうな気配がします。
これだけの豪雨なのに、マスコミでも触れられません。人は自分の損得以外は意識しない生き物なのです。宇都宮市の世帯数は22.7万世帯なので、世帯数と軒数は違いますが、床上浸水した636軒は、総世帯数の0.2%となり砂丘の中の1粒程度と極少数。
雨が降る度に、去年氾濫した田川の増水状況を見ながら、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんを思い浮かべ、私もその瞬間だけ環境活動家気分になり、この近年続く異常な豪雨は、地球温暖化が原因に間違いないと確信しています。
今日のブログは、宇都宮市役所が出した、台風19号の被害状況のレポートから被害状況を整理し、これから宇都宮市で土地を買って家を建てる場合の注意点を書きます。
また、宇都宮市特有の「買わないほうが良い土地」と、私見ですが対応の早かった保険会社もご紹介します。
宇都宮市での台風19号の被害種類とその軒数から、地域特性を考える
宇都宮市の台風19号の被害状況は宇都宮市役所がレポートを出しています。
上記の表を整理すると、
1. 住宅の被害件数合計が1122軒。
2. 1122軒のうち、床上浸水が636軒。被害を受けたお宅の半数以上が床上浸水となっている。
3. 被害合計1122軒のうち約57%が床上浸水、約35%が床下浸水、約0.5%が土砂災害、約8%が風などによる災害ということになる。床上浸水と床下浸水を合わせると、被害合計の92%が河川氾濫等による洪水被害ということになる。
4. 河川氾濫対策に予算を掛けるべきだということが分かる。
5. 床上浸水636軒のうち、429軒が半壊である。床上浸水したお宅の67%が半壊ということ。後で説明しますが、半壊とは、損壊が甚だしいが、補修すれば元通りに再使用できる程度のもの。
6. あれだけの豪雨だったのに、土砂災害が全被害の5%というのは意外である。また、風による被害も、思ったより少なめの8%。風等の被害は、全て一部損壊程度に納まっている。
は公共施設の被害状況や農業の被害額等も完結にまとめられています。
半壊(はんかい)とは、どのような状態なのか?
半壊とは、どのような状態なのかというと、内閣府が「被害の程度」の区分とその状況を説明する文章を出しています。
Q3.「被害の程度」の区分にはどんなものがあるのですか。
A3.内閣府が定める「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」において、「被害の 程度」は、「全壊」、「大規模半壊」、「半壊」、「半壊に至らない」とされています。(実 施される支援策によっては、必要に応じて区分が増減する場合があります。)
Q4.全壊、大規模半壊、半壊とは、それぞれどんな被害なのですか。
A4.それぞれ、以下のような被害をいいます(「災害の被害認定基準」等から抜粋)。 全 壊:損壊が甚だしく、補修により再使用することが困難なもの 大規模半壊:半壊し、柱等の補修を含む大規模な補修を行わなければ当該住宅に 居住することが困難なもの 半 壊:損壊が甚だしいが、補修すれば元通りに再使用できる程度のもの なお、具体的な判定に当たっては、以下の表のとおり数値基準が定められています。
半壊の具体的状況としては、床上浸水してしまうと、壁の内部に水が入ってしまうので、水圧で壁の石膏ボードが室内側に膨らんだりしますし、外壁の中の断熱材も濡れてしまいます。また、床下や壁の中の泥は、カビとカビ由来の匂いの元になるので、最低でも床と壁は、壊して造り直すのが妥当です。これが一般的な半壊の状態。今回の台風では外壁材も壊して、造り替えというお宅は、私のお客さんには居なかった。
日本の総世帯の約23%が災害リスク地域に居住している
日本の総世帯の約23%が、津波浸水・河川浸水・土砂災害のいずれかの災害リスク地域に居住しているという衝撃の結果が出ました。災害リスク地域の居住者と居住予定者は、火災保険に水災も、確実に付けるように確認しておきましょう。水災の補償がないと、洪水にあって被害を被った時に全額自己負担となります。
下のリンクは国土交通省が作ったものですが、分かりやすく、とても面白いです。
台風19号の水災に関する保険の支払いが、被害者ファーストで早かった保険会社は、損保ジャパン
洪水等の被害に遭うと、住宅会社がリフォーム見積を作成して、お客様がその見積を保険会社に提出し、査定を経て工事開始という流れになります。私見ですが、今回の台風19号で群を抜いて、保険金支払いまでが早く、被害者ファーストだったのは、損保ジャパンだったと感じました。
これから土地を買う人は、ハザードマップを見て災害リスクの少ない土地を買う
宇都宮市役所のwebの中に、洪水と土砂災害の2種類のハザードマップが掲載されています。これから土地を買う人は、市町村のハザードマップを見て、災害リスクの少ない土地を買うのが必須事項です。
一度、床上浸水を体験すると、金銭的身体的負担がある上に、建物をリフォームした後も、強い雨が降る度に心配することになりますから、洪水の恐れのある地域は、買わないほうが良いと思います。
旧町名や旧地域名が災害に由来していない土地を買う
以前の町名が地域特性を表している場合も多いです。例えば私の自宅は宇都宮市三番町ですが、三番町の以前の町名は「押切町(おしきりちょう)」でした。
写真は、うちの町内に建っている町の歴史が書いてある案内板。「しばしば(田川の)土手が決壊したので、押切町とよばれるようになったと言われています」と書いてあります。度重なる河川氾濫が町の名前になりました。私の先祖も何度か、洪水に見舞われたのだと思います。
別のケースでは、以前、住宅を建てた今市市(いまいちし)で、ふるい地図の住所に「シツケ地」とあり、それは湿気のことで、山を背にした湿気の多い土地でした。
このように土地の気候風土が町名になっていることも多いので、土地を買おうと思ったら、その町の旧町名や、地域の昔の名前も確認して、買う買わないの判断をした方が良いです。
擁壁のある土地は買わないほうが良い
栃木県を主とした関東に多い大谷石擁壁は、大谷石自体が柔らかく劣化しやすい上に、地震に対しても弱いので、大谷石擁壁のある土地も買わないほうが無難です。
高台の土地は、緑が眺められる等、眺望が良く魅力的かもしれません。しかし、良い面があると、必ず悪い面もセットになっているので注意が必要です。隣地や道路と高低差があると、敷地には土留めの為に擁壁が設けられています。
その擁壁が頑強であると証明されていれば別ですが、頑強に見えるコンクリートの擁壁の場合でも、その素性は分からないことが多いです。地震時に、擁壁の脆弱性や擁壁自体の劣化が原因で擁壁が倒れると、家まで傾く可能性があります。擁壁を造り直すコストは家を建てるより高くなる可能性もあり、かつ傾いた家を直すのは大変高額になります。
ですから、隣地や道路と高低差のある土地は買わないほうが無難です。
特に、異なった素材を組み合わせて積み上げている二段擁壁(積み増し擁壁)は、下段の擁壁を造る際、その上に2段目擁壁部の土圧がかかることを想定していない事、また2段目は盛り土になっていること、最後に上と下の擁壁が一体化していないため、事故事例が数多く報告されています。
地震に強い耐震等級3の家を建てても、擁壁が倒れて家が傾いたら意味がありません。お客様に脆弱な既存擁壁のある土地を買われてしまうと、後々お互いに大変な目に遭う可能性があるので、なるべく擁壁のある土地は買わないようにしてもらっています。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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宇都宮市移住を希望しています。宇都宮市浸水被害が大変なことであったことがわかりそして吉田様の参考になるアドバイスをいただきこれから時間をかけて土地を探したいと思いました。ありがとうございました。
匿名様、書き込みありがとうございます。 私のブログが参考になって良かったです。