【断熱リフォームQ&A】既存壁を壊さずに、室内側に石膏ボード付断熱材を貼る方法は、断熱リフォームとしてコスパが高いのか?貴方に代わってお調べしました!
既存住宅の断熱リフォームのニーズが高まる中。通常、断熱リフォームを行う場合は、既存壁の室内側のクロスと石膏ボードを解体・撤去・処分して、室内側から柱間に厚さ10.5㎝もしくは12㎝の、柱と同じ厚さの高性能グラスウール等を設置して、気密シートを貼り、新築工事と同じように仕上げるのが一般的だと思います。
しかし一方、5年程前から既存壁を壊さずに、その上から石膏ボード付断熱材を貼るという商品が、日本の大手建材メーカーから出ています。20mm~30mmの厚さの発砲系断熱材に9.5mmの石膏ボードが接着されている建材です。
例えば旭化成建材の「ネオマ断熱ボード」という、内装断熱リフォーム専用の断熱ボードです。アキレスやウッドワンからも同じような商品が出ています。
その商品紹介のWEBには、既存の壁を壊さないので、短期間で安く施工できて、室内が暖かくなる上に、壁を壊さないことは住みながらのリフォームもしやすいという特徴が書かれています。
しかし今回私が調べた範囲では、既存壁を壊さずに、その上から石膏ボード付断熱材(内装断熱リフォーム専用の断熱ボード)を貼る方法は、あまり普及していないこと分かりました。
今日のブログは、既存壁を壊さずに、室内側に石膏ボード付断熱パネルを貼りたいという消費者からの問い合わせに答えたやりとりを、分かりやすくした上でブログにします。
結論から言うと、既存壁を壊さずに、室内側に石膏ボード付断熱パネルを貼るという方法はおススメしません。既存壁を解体して、柱間に柱と同じ厚さを確保できる高性能グラスウール断熱材を入れる断熱リフォームをおススメします。
既存壁を壊さずに、室内側から石膏ボード付断熱パネルを貼る断熱リフォームは、いくらネオマフォーム等の高性能断熱材を使っているとは言っても、断熱材が薄すぎて、壁を壊して行う従来型の高性能グラスウール断熱リフォームの、ザックリ半分程度の断熱性能しか確保できないからです。
【質問】
鹿沼市〇〇にすんでいるYと申します。築26年の木造在来工法2階建て、屋根スレート・外壁サイディングの家に住んでおります。
定年となった事を契機にリビングと水回り(脱衣・洗面所/トイレ/浴室)およびそれをつないでいる玄関ホールを暖かくしたいと考えています。
リビング/キッチンの床下は以前入った事がありますが、30mm程度のスタイロフォームが入っていますが、所々はがれて浮いたりしています。
また、リビング出窓の下の角の石膏ボードが結露で壊れたためDIYで補修した際に中を見ると、素人で見る限りグラスウール等が入っていない様子でした。
2年ほど前にリビングの窓ガラスだけはペアガラスに変えた事により、それまでの窓の結露状態よりはかなり改善され、気持ち温かくなった気がしています。
しかし、浴室等は何も手を入れておらず、今回思い切って
1)水回りの断熱のためにリフォーム
2)リビング/キッチンの断熱リフォーム
3)それをつなぐホールの断熱リフォーム
4)トイレ入り口を横からに変えるために間取り変更
5)1階和室を今後主寝室とするため、かつ、4)を実現するための間取り変更と断熱リフォーム
6)キッチンのコンロと換気扇の交換。しかし断熱リフォームのためには結局キッチン入れ替え
という優先順でリフォームを検討中です。
素人であるため当然情報収集にも手間取るなか、御社のHPをみて興味を持ちました。
しかし、すでに(1)〇〇不動産と3回程度、(2)地元大手建売住宅会社のリフォーム部門と2回の打ち合わせを実施しております。
御社HPでは「相見積もりにはお応えしません」とありましたが、勝手に「値段を落とすだけの」という言葉を頭に付けて理解して、「工法やデザイン、思想の違い」であれば他社に声をかけた後でも相談に乗っていただけるのではないかと考え相談する次第です。
床の断熱リフォームについては、〇〇不動産は床をはがしての断熱材施工、もう一方の会社は床下からのウレタン吹きつけ工法の提案を受けています。
壁の断熱リフォームについては、〇〇不動産が壁をはがしての施工か、石膏ボード重ね張り、もう一方の会社は重ね張りとのラフなアイデアをもらっている段階です。
ただし自分としては旭化成建材のリフォーム用断熱材である「ネオマ断熱ボード」をマニュアル通り施工していただける会社がないか探していました。
このような状況ですが、相談に乗っていただけるのであれば、一度打ち合わせをさせていただきたく、なお、予算の上限は800から1000万円程度で考えております。
ご検討のほどよろしくお願いいたします。
【回答】
ヨシダクラフトの吉田武志と申します。
お問い合わせ頂きましてありがとうございます。問い合わせ内容を読ませて頂きました。
既存壁を壊さずにその上から石膏ボード付断熱材(内装断熱リフォーム専用の断熱ボード)を貼る方法は、優れた断熱リフォームの方法なのか?ザックリ調べてみた
「ネオマ断熱ボード」で断熱リフォームすることが、ベストな選択なのかどうかは分かりません。使ったことがありませんし、建物の状態も分からないからです。
ですから「リフォーム用のネオマ断熱ボード」を、ザックリ調べてみました。
まず「ネオマ断熱ボード」の断熱材は一番厚いものでも30mmしかないため、断熱性能は最も一般的な壁の断熱材である高性能グラスウールの厚さ105mmに比べてかなり劣ります。
ネオマフォームは高性能とはいっても、30mm程度では厚さが全く足りないのです。
断熱性能を示す熱抵抗値は、「リフォーム用のネオマ断熱ボード」の一番厚い30mmのものでも1.54程度です。
高性能グラスウールの105mm(一般的柱の厚さと同じもの)は2.8です。
「ネオマ断熱ボード」は「高性能グラスウール」のザックリ約半分の性能です。熱抵抗値は、数値が高いほど高性能になります。
現在お住まいの既存住宅の壁に、断熱材が全く入っていないとすると、標準的な新築住宅並みの暖かさの家にするなら、「壁は内壁を剥がして高性能グラスウール105mm厚さのモノを入れて、気密シートを貼り、気密コンセントボックスを設置して気密性も同時に高める」のが無難だと思います。
例えば、既存壁に断熱材が入っておりある程度効いているが、それでも寒いので断熱補強として、「ネオマ断熱ボード」を室内側に貼るというなら分かります。
しかし、壁の断熱材が入っていない場合は、「ネオマ断熱ボード」を室内側に貼っても、現在一般的に建てられている新築建売住宅の、ザックリ半分程度の断熱性能なので、今までよりは良いですが「室内が、かなり暖かくなった」という実感は得られないと思います。
天井断熱については、2階天井裏なら普通は人が入れますが、1階天井は人が入れないので、既存天井を落として、高性能グラスウールを200mm以上入れて気密シートを貼るのが良いと思います。
床は現状の床材が使えるなら床下に潜って発砲ウレタン吹付でも良いですが、間取り変更するとなると、既存の床材が傷つくので、床も貼り替えが無難でしょう。
その場合は、80~100mm程度の厚さの発砲系断熱材、もしくはグラスウールなら150mm程度とするのが良いと思います。
上記の断熱仕様で、やっと現行の新築並みの断熱性能の家です。
より暖かい家にするなら、既存の窓の内側はペアガラスの樹脂内窓を付けるべきでしょう。既存のペアガラスを入れると、ガラスが4枚になり、躯体の断熱性能も現行基準並みなので、冬場どのくらいの採光があるかにもよりますが、今までの家より、かなり暖かいと思います。家の熱は、窓から過半数が出ていくので、建物を壊さずにできる内窓は合理的なのです。
既存壁を壊さずに室内側に石膏ボード付断熱材を貼る断熱リフォームを行った場合、室内が狭くなり、家具の配置もしずらくなりそう
既存壁を壊さずに、室内側に石膏ボード付断熱材を貼る断熱リフォーム方法は、断熱ゾーンを決めて部屋ごとに断熱リフォームできるのが利点ですが、室内の既存壁の4面を断熱する必要があり、室内が狭くなるのが欠点です。
例えば、LDKの既存壁を壊さずに、室内側に石膏ボード付断熱材を貼る断熱リフォームを行った場合、室内4面の壁すべてに断熱材を貼るので、各面が3センチから4センチ程度狭くなるので、違和感を感じる上に、室内の4面が狭くなると、既存の造り付け家具や置き家具も上手く配置できない可能性もあるのではないでしょうか?
既存壁を壊さずに、室内側に石膏ボード付断熱材を貼る方法が、普及しているのか調べてみた
断熱リフォームの一般的な方法である既存壁を解体撤去して、高性能グラスウールを入れる方法以外にコスト優先すると、Yさんのおっしゃるような既存壁の内側に薄い石膏ボード付断熱材を貼るという方法になると思います。
この方法は何社かの建材メーカーが採用していますが、私の知り合いの住宅会社で施工したという話を聞いたことがありません。
なので、Hという栃木県内最大手の建材屋と、Mという地場工務店を顧客とする材木屋に、「断熱リフォーム用の石膏ボード付断熱材」を出荷したことがあるかどうか聞いてみました。
結論からいうと、Hの担当者は、一度も問い合わせを受けたことが無く、Mの担当者はウッドワンのもので、1度だけ石膏ボード付断熱材の見積をしたことがあるが、結局は注文が来なかったとのことです。
また世間一般の評価はどうなのだろうと、「ネオマ断熱ボード リフォーム ブログ」でグーグル検索してみると、あまり施工例が出てきません。かつ数少ないブログをみても私が使いたいと思う内容ではありませんでした。
※質問者のYさんが、旭化成建材の担当部署に問い合わせたところ、栃木県内でネオマ断熱ボードを施工した住宅会社があるという情報は持っていないと言われたそうです。
まとめ
まとめると、リフォーム用の「ネオマ断熱ボード」を施工しても、現在よりは良いですが、暖かいと感じる家にはならないと思いました。それがどのくらいのレベルかと言うと、「リフォーム用のネオマ断熱ボード」の一番厚いものを使っても、現在一般的に建っている新築建売住宅の半分程度の断熱力です。
また内装断熱リフォーム専用の断熱ボードが、あまり普及していない理由は、断熱材が薄くて断熱性能が良くない上に、室内が狭くなって、暮らしにくくなることが想像できるからだと思います。
ですから、既存の壁に石膏ボード付の薄い断熱材を施工するのは辞めて(広く薄く断熱リフォームを行うのは辞めて)、予算が厳しいならリフォームする範囲を狭くするなどして対応し、既存の石膏ボードを解体して、高性能グラスウールを入れたほうが良いと思いました。
これを買って大胸筋を鍛え始まりました。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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