一条工務店様で新築中の方に「断熱性能だけでなく、仕上げ材の性能も重要」だということをブログのコメント欄で説明してみた
先日、私の書いたブログに、一条工務店様で新築中の方からコメントがありました。
頂いたコメントの内容は、私が書いたフローリングについてのブログの内容が、「施主(消費者)をミスリードする」という「ご意見」でした。
ちなみにミスリードの意味を検索してみると・・・
ミスリード – 読者を誤った解釈に誘導するような文章のこと。wiki
私の書いたブログは、「施主(消費者)を誤った方向に誘導する」ものでなく事実であり、私のブログの「どの記述がミスリードしているのか?」全く分かりませんので、ブログのコメント欄で、ご説明しました。
今日のブログは、コメント内容をより詳しく写真付で説明したいと思います。
私のブログの内容はミスリードではないので、ちゃんと説明しておこう
コメントを頂いた一条工務店様のお施主さんに対しては、その方がお使いになっているシートフローリングというフローリングが、合板フローリングの中でも、安めの仕様であると思われる件等、言いにくいこともありましたが、ブログのコメント欄で詳しく説明しました。
コメントを頂いたブログはこちらで、コメント欄は一番下です。
「家は性能by一条工務店様」は正しいけど、合板フローリングを使うと、みすぼらしく劣化するので、結局メンテナンスコストは高くなるという実例。
私のブログの内容を要約すると「家を建てる時は、断熱性能だけでなく、仕上げ材の性能も重要だ」という当たり前の話
私が書いた上記ブログの内容をザックリ要約すると、一条工務店様のおっしゃる「家は性能」は正しいが、「家を建てる時は、断熱性能だけでなく、仕上げ材の性能も重要だ」という当たり前の話です。
「家」を構成する要素には、「構造」「断熱」「仕上げ材」「住宅設備」等がありますが、私の経験から言うと、割と簡単に交換できるのは「住宅設備」のみで、他の3要素は交換しにくく、劣化して交換となると、それが大規模リフォームや建て替えの原因になります。
「仕上げ材」については、合板フローリング等、新建材の内装仕上げ材を使うと、みすぼらしく経年変化することもある上に、工業製品なので廃盤になり修理が効かなくなる可能性が高いです。
だから、インテリアの質を高めて長く使いたければ、新建材の内装材でなく、無垢材と造作建具で内装を仕上げる必要があるとブログに書きました。
一条工務店様で建築中の方に頂いたコメントはこちら
一条工務店様で新築中のKano様という方からコメント頂きました。
一条工務店で建築中の者です。いつの情報で記載されているのかわかりませんが、一条工務店はシートフロアであって合板フローリングではありません。
シートフロアは味気ない・・・という場合は朝日WTの突き板フローリングをオプションで選べます(高額ですが)
本ブログでミスリードされる施主が出てこないように、コメントさせていただいたことご容赦くださいませ。
一条工務店様で建築中の方への説明はこちら
ブログのコメント欄では写真が使えなかったので、写真を交えて詳しく説明します。
kanoさん、書き込みありがとうございます。
私が書いたブログの合板フローリングの劣化の部分の記述は、施主(消費者)をミスリードするようなものではなく事実だと考えているので、少し長くなりますが説明したいと思います。
無垢フローリングと合板フローリングの違い
私が合板フローリングと書いた意味は、「フローリングの基材が合板なので」合板フローリングと書きました。基材が合板の意味は、ブログに掲載したフローリングの断面写真を見ると分かります。
合板フローリングの表面仕上げには、何種類かあるのは知っていますが、住宅建築業界では、通常、無垢フローリング以外を「合板フローリング」か「カラーフロア」「複合フローリング」と呼んで区別しています。
コメントにあった朝日ウッドデックの突き板フローリング/ライブナチュラルも基材が合板なので、「合板フローリング」です。
一条工務店様の標準仕様がシートフローリングだとすると、合板フローリングの中でもランクは低いと思われる
Kanoさんのコメントの中に、「一条工務店はシートフロアであって合板フローリングではありません。・・・」とありました。
kanoさんのおっしゃっているシートフロアは、シートフローリングのことではないでしょうか?
シートフローリングだとすると、kanoさんには言いにくいですが、合板フローリングの中でもランクが低く、できれは使わないほうが良い材料かもしれません。
シートフローリングについては、以前ブログを書きました。シートフローリングのある種類は、フロアコーティング業界では、使い捨ての床材とも言われています。
シートフローリングについてのブログはこちら。
どんどん変形するフローリングがあるという実話!家のフローリング仕様を今すぐチェックしよう!
一条工務店様のオプション仕様、朝日ウッドデックの突き板フローリング/ライブナチュラルは、まさに「合板フローリング」
朝日ウッドデック様のウェブで、突き板フローリング/ライブナチュラルの断面を見たところ、基材が合板なので、これは分かり易く「合板フローリング」です。
朝日ウッドデックの突き板フローリング/ライブナチュラルの断面
無垢フローリングと合板フローリングの「経年変化の違い」は「断面構成の違い」から起こる当たり前の結果
無垢フローリングと合板フローリングを区別するのは、断面構成の違いから由来する「経年変化に違い」が起こるからです。
無垢フローリングであれば、当然芯材まで無垢材なので、人が頻繁に歩いて、摩擦で経年変化しても、重いモノを落として凹んでしまったような劣化であっても、不自然な変化はせず、味わいを増す経年美化と言えるような変化をします。
しかし無垢材なので、湿度により反ったり隙間が開いたりはあります。また、経年美化も人によっては、経年劣化と捉える方がいますので、施主の憧れだけで、無垢フローリング等の自然素材を使ってしまうと、ハードクレームになることもあり、施主も住宅会社も大変なことになります。
対して、「合板フローリング」は表層しか仕上げ材を貼っていないので、よく歩く部分は摩耗して下地が見えたりして、不格好に劣化してしまったり、重いモノを落としたりすると凹んで合板が見えてしまったり、経年劣化と言えるような安っぽい変化をしてしまうことがあります。しかし、合板フローリングは基材が合板なので、反ったり隙間が開いたりは「しずらい」ので、初期クレームは起こりにくいと思います。
シートフローリングの場合は、基材が合板やMDFな上に表面仕上げ材が、オレフィンシートという薄いプラスチックシートに木の模様が印刷されたものを貼ったものだとすると、経年劣化を起こしやすいのではないでしょうか?
これらは、フローリングの断面構成の差による結果であり、よく考えてみれば当たり前のことだと思います。
無垢フローリングと合板フローリングの違いとメリット・デメリットについては、以前ブログに書きました。
無垢フローリングと合板フローリングの違いとメリット・デメリットは、カットサンプルの断面から分かる。
内装建材は無垢材と造作建具が長持ちして、新建材は短命になりやすい理由
ここからが更に重要な説明になります。
無垢材と、新建材(合板)の断面の違いによる経年変化の違いは、フローリング以外にも、ドア本体、窓枠、ドア枠、巾木、廻り縁と室内の木部すべてに及びます。
既製品の、特に新建材の内装材を使ってしまうと、ドアや窓枠の表層の木目シートは、接着剤で貼ってあるので劣化して剥がれてしまったり、傷がついて表層シートが破れたりして、みすぼらしくなることがあります。
対して、無垢材の窓枠やドア枠を使っていれば、そもそも本物の木材であり、「表層だけの木目シート」では無いので、経年してもみすぼらしい劣化でなく、傷も味わいと感じるような経年変化をします。
ただし、何度も書きますが、無垢材同士の「合わせ目」等は、少し隙間が開いたりしますし、木材自体が多少反ったりします。生活に支障があるほど変形はしませんが、隙間や反りが気になる神経質な人は、何としても無垢材を使ってはいけません。
だから、多くの方を相手にするハウスメーカー様では、初期クレームが起こるかもしれない無垢材や造作建具は使いにくいのかもしれません。その代り、無垢材や造作建具は、味が出て長く使えるという性質を持っています。
既製品の建材は、廃盤になるので修理が効かなくなる可能性が高い事例
また、合板フローリングを含む既製品の建材は工業製品であり、定期的に廃盤になるので、部品が無くなると、修理も「しずらくなる」のが実情です。
建材が廃盤になると、どういうことが起こるかというと、例えば室内ドアのレバーハンドル金物が壊れて、調べたら廃盤になっていたとすると、レバーハンドルの交換が出来ない可能性が高くなると思います。
レバーハンドルの交換が出来ないと、ドアの交換ということになりますが、既製品のドアはドアとドア枠が一体なので、ドアだけの交換だけでは済まず、ドア枠廻りの壁も壊して、ドア自体を交換という、大がかりでお金が掛かることになる可能性もあります。
対して、室内ドアを造作建具(ぞうさくたてぐ)で造っていれば、工業製品ではないので廃盤になることはありません。基本的には地域の建具職人や大工が修理したり削ったりして、長く使うことが可能です。
値段は当然、造作建具のほうが高いですが、インテリアに馴染んで、長く使えることを考えると、私は造作建具をおススメします。
既成品建具(ドア)と造作建具のメリットデメリットは、以下のブログをご覧ください。既成品建具(ドア)と造作建具の値段についてもザックリ触れていますし、既製品の新建材が一般的にダサいと言われている背景も書いています。
造作ドア(造作建具)にすると決めた理由は「吉田さんの造る住宅はダサイ!」と言われたからでした。
既製品の工業製品のドアで家を造ると、ドアのみの修理は効かなくなる可能性が高いというのは以下のブログをご覧ください。
【会話】建具職人が造った造作ドアは、時を経ても別の建具職人が修理出来る!しかし既成品ドア (既製品建具)は古くなると修理が効かない可能性が高い!という職人との会話
最後に、合板フローリングと床暖房について書きます。
実は床下エアコンのほうが床暖房より快適
一条工務店様を含むハウスメーカー様では、床暖房が「ウリ」の会社が多く、必然的に合板フローリングなのだと思います。
床暖房は、床を暖めて30度前後とかなり高温にする必要があるので、無垢のフローリングが変形してしまい使えません。
また一般には知られていないことですが、床暖房より床下エアコンのほうが快適性が高いです。無垢フローリングも使えるので、持続性が高い上に足ざわりも良いです。
床下エアコンにするには、断熱性能が高いことが必要事項で、Q1(キューワン)クラスの断熱性能と、床断熱でなく基礎断熱にすることが必要です。
床下エアコンの施工事例ブログはこちら
私が設計施工した断熱性能Q値1.35、C値1のお客さんのお宅に宿泊した感想と室内温度
最後に、一条工務店様で新築中のkanoさんに質問
「ハウスメーカー様はどの会社も(ハウスメーカー様に限らず多くの工務店様も)、基本的に既製品の工業製品の仕上げ建材を使って家を造るのが普通です。
既製品の建材は、今回ブログに書いたような経年変化をして、廃盤になると修理できない可能性も高くなります。
経年変化や廃盤の件は、無垢材や造作建具を造って家づくりをしている工務店には常識ですが、知らない消費者が多いと感じます。
断熱性能が高くても、工業製品の仕上げ建材を使った場合の良くない経年変化は、建て替えの原因になることがあるので、依頼先を決める時には「住宅会社が仕上げ材に何を使っているか?」を把握するのも重要な、依頼先選択の要素だと思います。
kanoさんは既製品の工業製品の仕上げ建材の、良くない経年変化や廃盤になることは、依頼先を検討していた時点で知っていましたか?それとも今回、初めて知りましたか?」
まとめ
一条工務店様のおっしゃる「家は性能」は正しいと思いますが、「断熱性能」だけでなく「仕上げ材の性能」にもこだわらないとダメだというブログを書きました。
家をメンテナンスしながら長く使いだければ、内装仕上げ材の基本仕様は無垢フローリングと造作建具(ドア)で間違いはないと思います。
室内を見渡すと、床とドア等の木部の面積が大きいのが分かります。目立つし、直接肌に触れるので、その部分の質や持続性が低いと、長く住めないのではないでしょうか?
外壁材も基本的な考え方は同じです。外壁材を廃盤になりやすく、10~15年に1度外装リフォームが必要な窯業系サイディングにすると、ローンを抱えたままメンテナンス費用が多めになるので、窯業系サイディングは止めたほうが良いと思います。
外壁材のメリット・デメリットはこちらに書きました。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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吉田さんこんにちは。 今回の記事、とても考えさせられました。 家の取得を思い立つと、建売りか、まず住宅展示場へ行って営業マンから夢みたいな説明を受けてスタートする方が多いと思います。営業マンは契約までが仕事ですし。 この時点でおおよそ工業化されたものの一択という思考になるのではないでしょうか?ハウスメーカーは、無垢についてはデメリットしか話さないので。 またハウスメーカーは転勤等があるので、個人個人が長い付き合いにはならないから、リフォーム時期のことまで、アドバイスはしないですよね。 最終的には好み、考え方になるのでしょうが 、一条さんから施主さんに正しく情報が伝わっていないのはどうかな?と考えさせられました。
猫好きさん、コメントありがとうございます。 このブログは私の考えを書いたものなので、当然反対意見もあると思います。 ただ、雑誌等に登場する「築年数が古く趣きのある建物」に、ハウスメーカー様やローコストビルダー様の住宅は無く、ほぼ全ての住宅が「自然素材+造作建具の住宅」であることを考えると、 間違いではないと思います。
吉田さんのブログにミスリードされるような部分は無いと思います。むしろ一般の施主さんはおろかHMの営業さんも無垢フローリングに対して「メンテナンスが大変」という勘違いをされていると思います。 私の家の床材は40mm厚の杉無垢ですが、オイルですら塗っておりません。施工した工務店から不要といわれています。最初は不安でしたが1年半経過してメンテナンスフリーの状態で特に問題は起きていません。毎日、拭き掃除ロボットのブラーバ君が乾拭きをしてくれています(掃除機もかけていますが)。非常に快適です。 外壁に関しては残念ながら窯業系サイディングなので10年後のメンテナンス・コーキング直しのために貯金しようと思います。
渡邉さん、私のブログが消費者をミスリードしていないという、一般消費者としてのコメントありがとうございます。 ハウスメーカーの営業さんは、無垢フローリングに対して「メンテナンスが大変」という勘違いをされているのですね。 営業さんに、渡邉さんのコメントを読んでもらいたいですね。 杉無垢フローリングの「オイル塗装さえも無し仕上げ」。おおらかな感じで良いですね。
かつて一条工務店は、マホガニーを用いた内装(キッチン・ドア・腰壁・出窓収納)の豪華さで 差別化していましたが、会長の鶴の一言で そういったコストはすべて「性能」につぎ込み特化しました。 ちょうど南洋材の乱伐が問題になっていたので 次の差別化が必要だったんでしょう。 そして 今の内装は、量産住宅会社のそれと何ら変わらない状態になったわけです。
>かつて一条工務店は、マホガニーを用いた内装(キッチン・ドア・腰壁・出窓収納)の豪華さで 差別化していましたが、会長の鶴の一言で そういったコストはすべて「性能」につぎ込み特化しました。 相模さん、コメントありがとうございます。 一条工務店さんが「家は性能」に至った裏事情、興味深い。 「内装での差別化」→「温熱性能での差別化」に至ったのですね。 知りませんでした。