2026-02-13
住宅探訪・地域探訪
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栃木県内で一般の人も見学できる歴史的住宅——登録文化財「小川家住宅」と小山市立車屋美術館を体感してきました

旧4号側から小山市車屋美術館(小川家住宅)を見る

栃木県小山市にある 小山市立車屋美術館 を訪れ、敷地内に残る 国登録文化財「小川家住宅」 を見学してきました。

実はこの施設、

  • 「住宅の敷地内に美術館がある」のではなく、先に2007年に「小川家住宅」が国登録文化財の認定を受け
  • その後、2009年に小川家の旧米蔵(こめぐら)を改修した建物が車屋美術館になった
    という、少し珍しい成り立ちをしています

私はもともと 歴史的住宅としての小川家住宅 を目当てに訪れましたが、結果的に、車屋美術館での絵画鑑賞も含めて、とても満足度の高い見学になりました。

観覧料は、美術館と住宅見学を含めて

  • 大人:100円
  • 高校生・大学生:50円
  • 中学生以下:無料

と、驚くほど良心的です。

通常、他人の家を自由に見ることはできません。

しかし、市町村などの公的機関が管理・保存している住宅であれば、
「なぜこの家は残されているのか?」
「どんな価値が評価されたのか?」
を考えながら見学することができます。

この記事は、

  • 栃木県内で新築もしくはリフォームなどの、家づくりを考えている方
  • 住宅・庭・インテリアが好きな方
  • 小山市の歴史や建築に興味がある方

に向けて書いています。

小川家住宅と車屋美術館の関係

表庭から母屋を見る

──「車屋」という名前の由来

小山市立車屋美術館がある一帯は、かつて 肥料問屋を営んでいた小川家の敷地 でした。

小川家は、屋号を「車屋」と称し、農業が盛んだったこの地域で、重要な役割を果たしてきた商家です。

現在、美術館として使われている建物は、もともと 小川家の「米蔵」 として建てられた平屋建ての蔵でした。

この米蔵を改修し、2009年に 小山市立車屋美術館 として開館しています。

一方、敷地の中心に残る 母屋とその西側の土蔵 が、国の登録文化財となっている 小川家住宅 です。

小川家住宅が登録文化財になった理由

  • 明治期の商家住宅としての 建築的完成度
  • 商家・住居・庭園・蔵が一体となった 屋敷構成
  • 地域の産業史(肥料流通)を今に伝える 歴史的価値

こうした点が評価され、2007年に国の登録有形文化財 となりました。

小川家住宅で案内して頂いたボランティアの方の話では、国登録文化財の認定を受ける前は、実際に小川家の方が住まわれていた そうです。「人が住み続けてきた住宅」であることも、この家の魅力だと感じました。

小川家住宅の見どころ

── 建物と庭がつくる心地よい関係

小川家住宅の一番の魅力は、建物と庭が一体で設計されていること だと思います。

建物構成

  • 主屋(母屋)
  • 主屋西側の土蔵(文書蔵)

この2棟が、住宅としての「小川家住宅」です。

母屋:商家住宅らしい落ち着いた構えの母屋。派手さはないが、軒・建具・外壁のバランスが美しい

玄関前の土蔵(文書蔵)

母屋の西側、玄関のすぐ前に土蔵があります。現在は内部に入ることはできませんが、

  • 火鉢の置かれた居間のような設え
  • 小さな床の間と掛け軸
  • 控えめな照明

が見え、とても居心地の良さそうな空間 であることが伝わってきます。

土蔵内部を外から見る:蔵とは思えない、居室のような設え。文書蔵としての用途と、住空間としての工夫が感じられる。襖に掛かった、車屋の袢纏が粋である

庭の構成がとても良い

  • 土蔵まわりの裏庭
  • 裏庭と表庭をつなぐ通路庭
  • 南東側に広がる表庭

この一連の庭のつながりが、とても美しく感じられました。

表庭:室内から見ても家の一部に見える庭
通路庭:裏庭と表庭を繋ぐ通路も庭として設計されている
表庭を見る

母屋内部の印象(撮影不可)

母屋内部は撮影禁止ですが、印象的だった点を挙げます。

  • トイレの手洗いに、瓶状の容器をひねって使う給水装置が吊ってある。今は無い設備の為、印象に残った
  • 2階に、なぜか 1室だけ完全な洋間(書斎で約6畳)

この書斎には、造作のソファベッドが置かれており、「ここで寝転んで本を読んだら気持ちいいだろうな」と想像してしまいました。

和の空間の中に突然現れる洋間の書斎は、当時は超モダンな部屋。主(あるじ)が使っていた部屋だと思われる。時代の変化をそのまま取り込んだ住宅 であることが伝わってきます。写真撮影不可は残念。SNS投稿させて人を呼び、市の財源にしたら良いのに。

歴史的住宅に使われている建材~無垢材と造作が、住宅を長持ちさせる~

門扉を玄関前から見る

これは小川家住宅に限った話ではありませんが、歴史的住宅では、内装建材には無垢材・造作建具・造作家具が使われており、いわゆる新建材は使われていません。

新建材が本格的に普及し始めたのは1960〜1970年代で、1980年頃には現在の新建材の原型がほぼ完成したと言われています。そのため、それ以前に建てられた歴史的住宅に新建材が使われていないのは当然とも言えます。

仮に、歴史的住宅に新建材が多用されていたとしたら、長期にわたって使い続けることが難しく、結果として歴史的住宅として残らなかった可能性が高いと思います。

内装で使われる新建材とは、

  • 木目調シートを貼ったドア
  • 表面がシート仕上げの合板フローリング
  • ビニールクロス

などを指します。

これらは価格が安い反面、耐久性が低く、廃番になりやすく、修理もしにくいという弱点があります。

一方、無垢材は表面だけでなく芯材まで同じ素材でできているため長持ちします。また、地域の職人が造った造作建具や造作家具は、修理しながら使い続けることができます。

そのため、歴史的住宅を大規模リフォームする場合でも、無垢材や造作建具・造作家具が、引き続き使われているケースが多いのです。

最近だと、下記の表にも掲載した「日光英国大使館別荘」の建物が、ほぼ新築と言って良いリフォームで生まれ変われりましたが、内装材として使われているのは、無垢材や造作建具・造作家具です。下のブログをご覧ください。

当社の住宅づくりでも、無垢材、造作建具、造作家具、塗り壁を基本としていますが、歴史的住宅を見学するたびに、その選択は間違っていなかったと確信します。

ちなみに、この小川家住宅では、外装も無垢の板張りでした。歴史的住宅は、外装材も普遍的で長期使用できる建材が使われています。

車屋美術館について── 旧米蔵・旧肥料蔵を活かした地域美術館

旧米蔵(現・車屋美術館)

車屋美術館(旧米蔵):白い漆喰壁の蔵を活かした外観。規模感が「地域美術館」にちょうど良い

旧米蔵は、

  • 小規模
  • 平屋
  • 旧4号線沿いという立地で地域の人が訪れやすい

といった条件がそろい、美術館への転用に適した建物 だったのだと思います。

車屋美術館内部:大規模美術館とは違い、作品と距離の近い展示空間

宇都宮美術館のような大規模・巡回型の美術館ではありませんが、
金〜日を中心に、小山市ゆかりの美術家の作品展示 が行われています。

このサイズ感だからこそ、

  • 作家本人
  • 友人・知人
  • 地域の人

が自然に集まる、良い場になっていると感じました。

旧肥料蔵

旧肥料蔵:美術館手前に建つ旧肥料蔵は、資料展示室として活用されている。
旧肥料蔵内部:蔵の構造をそのまま見せる展示。建物用途の変化を感じられる空間

地盤と震災の話

小山市は比較的 地盤が良い地域 で、東日本大震災の影響も周辺地域に比べると軽微でした。

そのことも、

  • 小川家住宅
  • 車屋美術館(旧米蔵・旧肥料蔵)

が、大きな被害なく現在まで残っている理由の一つだと思われます。

栃木県内で見学できる、公的機関が管理運営している住宅・旧邸宅一覧

栃木県内で見学ができる、公的機関が管理運営している住宅・旧邸宅をご紹介します。

名称種類見学可否住所
日光田母沢御用邸記念公園皇族の別邸(旧御用邸)栃木県日光市本町8-27
旧古田土雅堂邸小洋館・文化人住宅栃木県芳賀郡茂木町
日光イタリア大使館別荘記念公園外国公館別荘栃木県日光市中宮祠2482
日光英国大使館別荘記念公園外国公館別荘栃木県日光市中宮祠2482
入野家住宅江戸期の名主住宅栃木県芳賀郡市貝町大字赤羽
旧篠原家住宅江戸〜明治の豪商住宅栃木県宇都宮市今泉1丁目4-33
旧江連家住宅江戸〜明治期農家住宅栃木県日光市今市 杉並木公園内
瀧澤家住宅明治期旧家栃木県さくら市櫻野
岡本家住宅江戸中期農家住宅栃木県宇都宮市下岡本町

まとめ:歴史的住宅は、最高の家づくり教材

歴史的住宅は、単に「昔の家を見る場所」ではありません。これからの家づくり(新築・リフォーム)を考えるための、非常に優れた教材だと感じます。

見て頂きたい1つは、内外装建材です。どのような建材が長持ちしているのか?一目瞭然で分かります。

歴史的住宅の内装建材を確認すると、一般住宅に多く使われている新建材の内装材は、ほぼ使われていません。歴史的住宅と同じような無垢材・造作建具・造作家具を使うと長持ちしそうだと、素人でも感じるはずです。

また、素材の選び方はもちろん、家と庭の関係、時代に応じた改修の痕跡も見てください。分からなければ、現地に居る案内の人に聞いてみてください。詳しい人が居れば、喜んで教えてくれるでしょう。これらは、新築住宅でもリフォームでも必ず参考になります。

栃木県内で住宅を建てる、あるいは住まいを直すことを考えている方は、ぜひ一度、公的に保存されている歴史的住宅を見学してみてください。図面やカタログだけでは分からない発見が、きっとあるはずです。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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