2025-12-22
MI-house(宇都宮市 鶴田町)
建材・住宅設備・便利グッズ
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【実例】玄関ドアの鍵が回らない原因と対処法|シリコンスプレーとCRC556はNG?

MI-house

先月、MI-houseのお客様から、次のようなご相談をいただきました。

「最近、玄関ドアの鍵が回らないことが増えてきました。同じような問い合わせはありますか?」

電話をして詳しくお話を伺うと、「帰宅時や外出時に鍵を差して回そうとすると引っかかり、スムーズに回らないことがある」とのこと。


すでに「シリコンスプレーを鍵穴に使ってみたが、改善しなかった」という状況でした。

連絡をいただいた当日、たまたまお宅の近くで打ち合わせがあったため、帰りに立ち寄って実際の状態を確認することにしました。

玄関ドアはスウェーデン製・木製断熱玄関ドア/ドリア(dollia)社・「OSLO」

お客様のご希望で玄関ドアをフェラーリレッドに塗装しています。 MI-house

このお宅は、2013年完成、築12年のお住まいです。

玄関ドアは、当時よく採用していたスウェーデン製・木製断熱玄関ドア/ドリア(dollia)社・仕様OSLO:オスロ。

木製断熱玄関ドアで、ドア本体に明り取りガラスが組み込まれた仕様は、当時も今も珍しく、かつシンプルで美しいデザインが気に入っていました。

残念ながら、現在はドリア社がなくなってしまい、日本への輸入もされていません。そのため、万一部品が壊れると簡単には交換できません。

そのような理由から「できるだけ大切に使って頂きたい玄関ドア」でもあります。

これもoslo玄関ドア シンプルで美しい Q1.0住宅宇都宮三番町の家 SI-house

小さな家ほど、玄関ドア自体の「ガラスによる採光」が効いてくる

玄関は窓の設置よりも収納量を重視して、玄関ドア本体から採光する Q1.0住宅 小山の家

30坪以下の小さな家では、玄関スペースも最小限になることが多く、土間(タイル部分)と玄関ホールを合わせて2畳以下というケースも珍しくありません。

小さな家ほど重要なのが、収納量です。特に玄関は、LDKと同等に収納量を確保したい場所になります。なぜなら、玄関が靴や傘があふれてしまうと、いくらリビングや個室が整っていても、「だらしない家」という印象に「なりがち」だからです。

当社では、下駄箱・コート掛け・傘掛けを兼ねた造作玄関収納家具を設け、玄関を「片付く空間」にすることを重視しています。

ただし狭い玄関の場合、収納量をしっかり確保すると、玄関内部に窓を設けるのが難しくなります。

そこで有効なのが、玄関ドア本体にガラスが入ったタイプを選び、ドアから採光を確保する方法です。

収納量を確保しながら、明るく気持ちの良い玄関をつくるために、「ガラス入り木製断熱玄関ドア」を採用してきました。

SH-house 小さな家はドア本体で採光確保

小さな家の玄関収納と採光ついては、過去にも何度かブログを書いています。

https://yoshidacraft.net/blog/18803/
https://yoshidacraft.net/blog/22992/

https://yoshidacraft.net/blog/12804/

玄関ドアの鍵が回らない原因は「潤滑剤の選択ミス」だった

鍵穴専用スプレー

話を鍵に戻します。

お宅に伺ってお客様から鍵をお借りして鍵穴に差し込み、実際に回してみると、確かに引っかかりがあり、スムーズに回りません。

そこで、次の手順で対応しました。

  1. まず、鍵穴専用スプレーを鍵穴に噴射し、2〜3分ほど待ってから鍵を差し込んで回してみました
  2. 鍵を抜いて確認すると、鍵の溝が真っ黒になっていました。鍵穴の内部に、長年溜まったゴミや埃があったのだと思われます。今までより明らかに回りやすくなりました
  3. 鍵に付着した汚れを乾いた雑巾で拭き取り、再度スプレー→数分待つ→回す→汚れを拭き取るを繰り返します。言わばスプレーした後、鍵で鍵穴のゴミを掻き出しているような印象です
  4. この作業を何度か行うと、鍵に汚れが付かなくなり、同時に鍵の動きも非常にスムーズになりました。

※今回は忘れてしまいましたが、本来は最初のスプレー前に、掃除機で鍵穴内部のゴミを吸い出すと、鍵穴スプレーの説明書に書いてありました。

このとき改めて感じたのが、鍵穴には、鍵穴専用スプレーを使うべきということでした。

お客様には、鍵穴専用スプレーを買って頂いて、定期的に上記した鍵穴掃除をしていただくようお願いしました。以下の4枚の写真が、その後お客様から送られてきた写真です。

Before
After
Before デッドボルトとは鍵を回してかけるカンヌキです。
After

CRC556やシリコンスプレーを鍵穴に使うとどうなる?

シリコンスプレー

「鍵穴専用スプレー」という存在を、知らない方がほとんどだと思います。

そのため、鍵が回らないときにCRC556やシリコンスプレーを使ってしまうケースが多いのですが、実は逆効果になることがあります。

CRC556やシリコンスプレーは、油分やシリコン成分によって一時的に滑りを良くしますが、鍵穴内部では次のような問題が起きやすくなります。

・油分に埃やゴミが付着しやすい
・時間が経つと汚れが固まり、動きが悪化する
・精密なシリンダー内部の動作を阻害する

結果として、
「一時的に良くなったが、しばらくすると余計に回らなくなる」という状態になりがちです。

CRC556、シリコンスプレー、鍵穴専用スプレーの比較

種類主な用途成分の特徴鍵穴への使用
CRC556金属部品の防錆・固着防止油分が多い❌ 不向き
シリコンスプレー樹脂・金属の滑り向上シリコン被膜❌ 不向き
鍵穴専用スプレー鍵穴・シリンダー内部速乾性・粉末系⭕ 適している
CRC556、シリコンスプレー、鍵穴専用スプレーの比較

「鍵穴専用スプレー」は、油分をほとんど残さず、ゴミを吸着しにくいのが最大の特徴です。鍵穴には、「鍵穴専用スプレー」がマストアイテムです。

まとめ

玄関ドアの鍵が回らなくなったとき、原因は「鍵の劣化」ではなく、鍵穴内部に溜まったゴミや、間違った潤滑剤の使用であることが少なくありません。

CRC556やシリコンスプレーは便利な道具ですが、鍵穴には適していません。

・掃除機でゴミを吸い出す
・鍵穴専用スプレーを使う
・定期的に簡単なメンテナンスをする

この3点を意識するだけで、鍵の動きは驚くほど改善します。

特に、輸入の木製断熱玄関ドアや部品交換が難しいドアほど、正しいメンテナンスが必要であり、長持ちの秘訣だと感じた事例でした。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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