「床下エアコンが効かない」というご相談に対して、実例を交えてお答えしました~その1~

先日、WEBの問い合わせフォームに、関西在住の方から「床下エアコンが効かないので相談したい?」という連絡が入りました。
その方は関西の●●県にお住まいで面識もなく、しかも昨年新築されたばかりとのことでした。
正直なところ「仕事に繋がらない面倒なメール」だと思いながら読み始めました。
しかし読み進めると、文面から礼儀正しい人柄が伝わってきました。かつ状況説明も具体的で、よく理解できました。
お困りの様子から、私でもお役に立てるかもしれないと感じたため、やり取りをブログに掲載する可能性があることを前提に、お返事をさせていただきました。
目次
「床下エアコンが効かない」という、お問い合わせ内容を整理すると…
相談者M様の状況は、以下の通りでした
- 昨年春、地域工務店の設計施工で建てた高断熱・高気密の二階建て注文住宅(約110㎡≒33坪)が完成
- すでに冬を1シーズン体験済み
- 暖房は「床下エアコン」を採用
- 昨シーズンは、床下エアコンを付けっぱなしでも暖かくならず、休日は床下エアコン+電気毛布にくるまって過ごした
- 先週の寒波で冷え込みが厳しく、床下エアコンの風量・風向設定変更を試したが、依然として暖かくならない
- 当社の床下エアコンに関するブログ記事を見て問い合わせ
- 当社の床下エアコンで使用している、ワイヤードリモコンのエアコン機種を知りたい
- その床下エアコンを使っているお客様は、「快適になったと、おっしゃっているか?」教えて欲しい
という内容でした。
【お問い合わせ内容1】高断熱高気密住宅に住み、床下エアコン暖房しています。しかし、電気毛布に包まって過ごすほど寒い!
はじめまして。
床下エアコンを検索する中で、御社のホームページを拝見し、床下エアコンについてご相談したくて、メールをお送りしました。
私の住まいは●●県にあります。
旧宅を解体し、新たに木造2階建て・延べ床面積約110㎡の高断熱・高気密住宅を建てました。C値は0.2です。
2024年の春に引き渡しを受け、今冬で2シーズン目を迎えています。
施工をお願いしたのは、高気密住宅に精通した工務店で、担当の建築士さんも非常に詳しい方だったのですが、・・・。
そのため、床下エアコンについて相談にのっていただければと存じます。
旧宅で使っていた200Vの壁掛けエアコンを、そのまま床下エアコンとして、移設して使用しています。しかし、昨年の冬はとても寒く感じました。高気密住宅なので、室内で息が白くなるようなことはありませんが、それでも暖かい室内には、ほど遠い状態でした。
エアコンは一日中つけっぱなしにしていたにもかかわらず、朝の室温は16℃、夜は18℃程度です。これ以上電気代をかけたくないこともあり、休日は電気毛布にくるまって過ごしていました。
今冬に入り、今週の寒波でさらに冷え込みが厳しくなったため、「昨年はエアコンの設定が悪かったのかも?」と考え、床下エアコンの風の向きや風量を変えて試してみました。
その結果、無垢フローリングの冷たさは多少は和らぎました。しかし、ガラリから出る弱い風では部屋全体を20℃以上に暖めるには力不足のようで、今朝の室温は15℃まで下がっていました。
私は一人暮らしで、普段は仕事のため日中は不在です。平日は寒ければ、帰宅後運動して体を温めて寝れば済みますが、くつろぎたい休日になると、暖かくない室内に落胆しています。
御社のブログの中で、2023年に公開された「ワイヤードリモコンを使った床下エアコン」についての記事を拝見しました。
その内容がとても参考になり、ぜひ詳しくお聞きしたくなりました。
以下の点について教えていただけますでしょうか?
- 現在、御社で採用している床下エアコンの機種はどのようなものですか?
- そのエアコンを使用されているお客様は、冬の室内環境に満足されているのでしょうか?
- おすすめの床下エアコンの機種を教えてください。また、床下エアコンの施工時に、電気業者と、どのように相談すれば良いか?など、具体的なアドバイスがあれば、ぜひお教えください?
どうぞよろしくお願いいたします。
【私からの返答1】床下エアコンがショートサーキットしており、エアコン容量も大きすぎるため、暖房が効かないのでは?
M様
ヨシダクラフトの吉田武志です。お問い合わせ内容を拝読しました。
質問にお答えした上で、床下エアコンを計画する際に、私が大切だと考えているポイントについて、できるだけ分かりやすく、ご説明いたします。
床下エアコンが効かない原因は、その中にあるかもしれません。
また、お問い合わせ内容と私の返答を、M様のプライバシーに配慮した上で、ブログに書くかもしれません。ご了承ください。
- 現在、御社で採用されている床下エアコンの機種はどのようなものですか?
→当社の床下エアコンは現在、下記仕様の壁掛けエアコンを使っています。1~3がセットです。
- 三菱ルームエアコン本体壁掛け型 MSZ-GV2822-W(100V)など。容量は家ごとに計算して決定す
- 三菱スマートリモコン PAR-44MA(室内の壁に付けるワイヤードリモコン:有線リモコン)
- 三菱中継基盤 MAC-333IF(エアコンとスマートリモコンを中継する基盤)
エアコン容量(大きさ)は、設計時にその家の断熱性能などを加味して、負荷計算してから決める必要があります。後述しますが、エアコン容量は大きくても小さくても良くありません。
2.そのエアコンを使用されているお客様は、冬の室内環境に満足されているのでしょうか?
→冬も快適だとおっしゃっています。下記の当社WEBのお客様の声をご覧ください。
また、そのお宅の施工例には、冬と夏の各部屋の温湿度の実測データと、光熱費のデータを載せています。参考までにご覧ください。
3.おすすめの床下エアコンの機種と、施工時に電気業者とどのように相談すれば良いかなど、具体的なアドバイスがあればぜひお教えください?

→私のおすすめの床下エアコンの機種は、上記1の三菱のワイヤードリモコンの機種です。パナソニックにもワイヤードリモコンが付けられる、壁掛けエアコンがあるようですが使ったことはありません。
現時点では、一般的な壁掛けエアコンを、床下エアコンとして使うのが良いと考えています。

その理由として、エアコンを長時間連続運転すると、普通に使うよりも早めに壊れることが多いので、特殊なエアコンではなく、一般的な壁掛けエアコンを使った方が、価格的に交換しやすいと思うからです。
高断熱住宅では、従来の家と違い各部屋にエアコンは設置せず、1つの家で冷暖房合わせて1~2台程度のエアコンを設置して、長時間連続運転させることが多くなっています。
そのため高断熱住宅のエアコンは、長時間連続運転することになり、結果として壊れやすくなります。従来の家の場合は、エアコンを各部屋に設置していたため、エアコンは比較的短時間運転となっていたので、10年くらいは使えました。
しかし、高断熱住宅で1~2台程度のエアコンを、長時間連続運転させると5~6年で壊れるということが多くなっているようです。私も、当社で設計施工した高断熱住宅で、長時間連続運転したエアコンの寿命の短さを体験しています。
ですから現在のところ、高断熱住宅に付けるエアコンは、1台のエアコンから各部屋に配管して冷気と暖気を供給できるアメニティエアコンのような高価なエアコンでなく、一般的な壁掛けエアコンの方が、故障した場合にも比較的に買い替えがしやすく、ベターであると考えています。
床下エアコンの施工方法は、重要ではありません。エアコン業者であれば誰でも施工はできます。
それよりも以下に書く、それ以前の計画のほうが大切です。
4.家の断熱性能の重要性
断熱性能(Q値)や気密性能(C値)は暖房計画の根幹です。
延床面積が約110㎡(33坪)で、気密性能は0.2とのことですが、断熱性能が分かりません。
関東の場合だと、33坪の総二階もしくは総二階に近い家に、床下エアコンを1台のみ付ける場合、断熱性能を表すQ値(熱損失係数)は、最低でも1.5W/㎡Kくらいは欲しいところです。
5.エアコン容量を設計時に決めておくことが重要
エアコン容量は「大きすぎても小さすぎても良くない」です。
設計時にソフト(Qpex等)を使って計算し、家の断熱性能や日射熱取得に合った容量のエアコンを決める必要があります。
その理由として、エアコン容量が小さすぎると効きが悪くなりますし、逆に容量が大きすぎると、大容量で吹き出すため、比較的すぐにエアコン周りの温度が上昇してしまい、オンオフを繰り返して、床下エアコン周りしか暖まらない可能性があります。
下記ブログの一番最後に、「Q1.0住宅小幡の家の断熱気密性能と冷暖房容量」という、見出しの文章があります。
そこに冷暖房容量を想定できる、「設備容量計算シート」が掲載されています。文章を読んで頂くと、計算結果より少し容量が大きなエアコンを選んでいるのが分かります。
6.床下エアコンに壁掛けエアコンを使う場合、ワイヤードリモコン(有線リモコン)付きのエアコンが必要な理由
壁掛けエアコンの温度センサー(エアコンが室温を感知してオンオフする部分)は、エアコン本体に付いています。
吹き出した温風を、室内に循環する前にエアコン本体が感知してしまうと、温度が上がったと勘違いしてしまい、暖房運転が止まってしまうことがあります。
これをショートサーキット現象と言います。
床下エアコンに、ワイヤードリモコン付きの機種を使う理由は、シュートサーキットをさせないようにするためです。
ワイヤードリモコン付き床下エアコンの利点は、
- ショートサーキットさせないようにするため、温度センサーの付いたワイヤードリモコン(有線の壁付けリモコン)を、エアコン本体と結んで、エアコンから離れた室内の壁に設置する
- エアコン本体でなく、壁付けリモコン部の温度を感知をできるようにすると、ショートサーキット現象は起きにくくなるため、室温は上がりやすくなります
上記の三菱エアコン+ワイヤードリモコンを選んだ場合、温度を感知する場所は、エアコン本体かワイヤードリモコン(壁付けリモコン)のどちらかに、現場で設定できます。床下エアコン発注時もしくは施工時に、エアコン本体でなく、壁付けリモコン部で温度感知設定するように、エアコン屋さんに指示します。
7.エアコン本体の排気と給気(リターン)の分離が大切
床下エアコンを設置後、大切なことがあります。
それは、温風の吹き出し口と、空気を吸い込むリターン口(吸込み口)をしっかり分けることです。
壁掛けエアコンは、エアコン下部の吹き出し口から温冷風が出て、室内を循環してエアコン上部のリターン(吸込み口)に空気が戻ってくることで、効率よく部屋を暖めたり冷やしたりします。
しかし、吹き出し口から出た温かい空気が部屋を回る前に、すぐにエアコン上部のエアコンの吸込み口に戻ってしまうと、エアコンのセンサーが「部屋がもう暖まった」と勘違いして(ショートサーキットして)、エアコンは停まってしまい、部屋全体がなかなか暖まらなかったり、時間とエネルギーが無駄になってしまいます。
ですから、
- 床下エアコンから出た温風が、きちんと床下へ送られるようにする
- 吹き出し口から出た温風が、すぐ戻ってこないように、エアコン周りの吹き出しと吸込みの経路をしっかり仕切る(エアコン周りの床下から暖気が上がって来ないように、エアコンと床面の取り合い部の気密を取る)
この2点がとても重要です。
こうすることで、エアコンの性能をしっかり引き出し、家全体がムラなく暖まり、快適に過ごせるようになります。
8.当社の床下エアコン(壁掛けエアコン)の設置高さと、床下エアコン廻りの気密カバー

当社では、壁掛けエアコンを床下には入れていません。
エアコン本体の下端をFL+55mm(1階の床面+55mmがエアコン下端)で設置しています。当社の巾木高さは45mmなので、巾木の10mm上がエアコン下端になるように設定しています。
エアコンを床下に埋め込むことも考えましたが、床上設置のほうがメンテナンスしやすいと考えました。また、エアコンを床下に入れてしまうと、室外機と結ぶ配管を設置するために、主要構造部である土台や大引き、もしくは基礎のいずれかに穴を開けることになります。しかし床上設置すると、壁に穴を開けることになりますが、主要構造部に穴を開けるのを避けられます。
当社では床下エアコン廻りに、木製の気密カバーを設置することで、エアコン周囲から暖気が漏れないようにしています。エアコン廻りで気密性が取れることで、床下にエアコン暖気の圧力が掛かって、暖気は遠くに行きやすくなると思います。
床下エアコンの設置高さと、エアコン廻りの気密カバーについては、以下のブログをご覧ください。
ワイヤードリモコンについても書いています。
9.床下エアコンと基礎立上りについて
床下エアコンを設置する場合、暖気をできるだけ基礎全体に行き渡らせるため、基礎立ち上がりは最小限にして、エアコンの暖気の流れを確保する必要があります。
極端な話になりますが、床下エアコンのすぐ前に基礎立上りが配置されていたり、床下エアコンの周囲が、狭い範囲で基礎の立上りで囲われていたら、暖気が基礎の隅々まで流れにくくなります。
基礎立上りを最小限にした場合でも、床下エアコンから個室までが遠い場合などは、個室の床下まで暖気が届きにくくなります。
そのような場合は、個室の床にブースターファンを付けて、床下の暖気を個室床上に引っ張って移動させています。ただし、基礎立上りが多いと、個室床にファンを設置しても暖気は移動させにくいです。
ブースターファンを設置して、「床下エアコンから遠い個室も暖かくした実例」は、以下のブログに書きました。
10.床下エアコンと基礎断熱
床下エアコンにする場合は、床断熱でなく基礎断熱にする必要があります。
Mさんのお宅では、床下エアコンを設置しているため、基礎断熱にはなっていると思いますが、一応ご確認ください。
当社では、基礎底版全面に断熱材を設置しています。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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