2024-09-21
Q1.0住宅 宇都宮小幡の家(宇都宮市)
建材・住宅設備・便利グッズ

ガルバリウム鋼板外壁材の、凹みや傷の修理・補修方法の具体例

今日のブログは、ガルバリウム鋼板外壁材が凹んでしまった場合の直し方について、具体例を書きます。

なぜ、修理・補修方法の具体例を書けるかと言うと、9月6日に引き渡しが完了した1.0住宅小幡の家で、引き渡し前の7月12日に、ガルバリウム鋼板外壁材を凹ませてしまい、その後、修理・補修したからです。

ガルバリウム鋼板外壁材が凹んでしまった場合の修理・補修方法には、3つの方法があります。

3つの方法のメリットとデメリット、どの方法で直したかを書きます。

まずは、ガルバリウム鋼板外壁材が凹んでしまった経緯を説明します。

ガルバリウム鋼板外壁材が凹んでしまった経緯

玄関ドアのレバーハンドルが、ガルバリウム鋼板外壁材に当たって凹んでしまった

7/12(金)、13時過ぎ。現場から事務所に戻り、お昼を食べてから仕事をしていると、左官の親方から電話がありました。

緊急連絡以外はLINEでやりとりしているので、電話が来るのは、トラブルもしくは緊急の用事です。

嫌な予感がして、電話に出てみると、開口一番「社長に謝らなくてはならないことがあります」と言われました。

予想的中だと思いながら「何ですか?」と聞くと、「職人がガルバリウム鋼板外壁材を凹ませてしまった」とのこと。

凹ませてしまった状況を聞いたところ、玄関外部の玄関ポーチの床タイル貼り作業中、玄関ドアのレバーハンドルが、外壁に当たり、凹んでしまったとのことでした。

現場に行った時に、タイル貼りしていたのは知っていました。通常、玄関タイルは室内で仕事をする職人が居ない場合か、少ない場合に行うのですが、小幡の家は、玄関以外にも掃き出しサッシから外に出られるので、室内作業の職人は掃き出しサッシから出入りして、玄関廻りのタイル貼りをしていたのです。

凹んでしまった原因は、外壁材を傷つけないように、仮設のドアストッパーとして使っていた木材を取って玄関タイルを貼っていたところ、間違えてドアを強く押してしまい、ドアハンドルがガルバリウム鋼板外壁材に当たって凹んでしまったとのことでした。

ガルバリウム鋼板外壁を傷付けないように、仮設のドアストッパーを使っていた

大工が造ってくれた、仮設のドアストッパーは一時的に取らないと、床のタイルは貼れません。その時に玄関ドアを、強く押してしまったようです。

ドアハンドル自体も養生してありましたが、ガルバリウム鋼板外壁材は凹んでしまいました。

ガルバリウム鋼板外壁材が凹んでしまうことは、必ず起こることで避けられない

もちろん、職人は間違えてやってしまったことなので、仕方ありません。また、今後起こらないようにと言う意味で、強く指摘したりすると、不具合を隠したりするのが人間です。事情をよく聞いて、落ち着いて対処しようと考えました。

とうとう、この時が来たかと思いました。

当社は、ガルバリウム鋼板外壁材が標準仕様ですが、今まで一度も外壁を凹ませてしまったことが無かったからです。

ガルバリウム鋼板の屋根と外壁の施工を依頼している、板金業者の社長からは、「気を付けていても、ガルバリウム鋼板外壁材の凹みは、必ず起こることで避けられない」ことであるし、また「直すのは大変だ」と言われていたからです。

ガルバリウム鋼板外壁材は、順番に重ね貼りして取付けていくので、凹んだ1枚だけ交換することはできない

ガルバリウム鋼板外壁材は、順番に重ね貼りして取付けていくので、凹んだ1枚だけ交換するというわけにはいきません。

貼り替えをするなら、重ね貼りした終わりの出隅(建物の角)もしくは入隅から、凹んだ場所まで、貼った外壁材を全て剥がして貼りかえる必要があります。

そうなると、貼り初めの外壁材が凹んだ場合などは、その部分まで剥がす必要があるため、大きな面積の貼り替えになる可能性があり、かつ剥がした外壁材は傷んでしまうため基本的に再利用できません。

ガルバリウム鋼板外壁材を長尺の1枚モノで1.2階を貼ると、さらに貼り替えはしずらくなる

かつ、当社のように1.2階を1枚モノで貼ることを基本仕様にしていると、1階部分が凹んだ場合、外壁材は1枚モノですから、2階の部分の外壁材も剥がすようになり、さらに貼り替えのハードルは高くなります。足場を撤去した後では、足場の再設置も必要になるかもしれません。

今回のQ1.0住宅小幡の家のように、地面と平行に外壁の中間水切りを設けた場合は、1.2階を別々に施工できますから、少しは張替えのハードルが下がります。

今回長尺の1枚モノにしなかった理由は、敷地が狭くてかつ、交通量が多く、1.2階を通して貼る、1枚モノの長尺のガルバリウム鋼板を、敷地内の作業スペースから貼る場所まで、移動させるのが難しかったからです。

ガルバリウム鋼板外壁材が凹んでしまったことを施主に報告

ガルバリウム鋼板外壁材が凹んでしまったことを、当日電話で施主に報告しました。

翌日7/13土曜日は、恒例の週一回の進捗確認で施主が現場に来ましたので、ガルバリウム鋼板外壁材が凹んでしまった箇所を見てもらい、直すことを報告しました。

ガルバリウム鋼板外壁材を凹ませてしまった場合などは、通常の場合、契約約款上でも施工者は、施主に対して、凹ませてしまったことと、どのように直すかの報告義務があります。

ガルバリウム鋼板外壁材の凹みの直し方は3種類

ガルバリウム鋼板外壁材の凹みの直し方は、以下の3種類あります。

  1. 建物の出隅もしくは入隅から、凹んだ部分まで、全て剥がしてやり直す
  2. 凹んだ部分の上から、同一のガルバリウム鋼板を被せて取り付ける
  3. 自動車の凹みを直すような、パテ処理+近似色塗装をする

それぞれの方法のメリットとデメリットを考えてみましょう。

建物の出隅もしくは入隅から、凹んだ部分まで、全て剥がしてやり直す方法

上記した3種類の方法の中では、この方法が、最初は一番お金と時間が掛かる可能性が高いかもしれません。

しかし、長い目で見ると、施主も私たち施工者側も、一番安心できる方法であり、かつ、結果として長い目で見ると、一番お金と時間が掛からないと考えて、この方法でガルバリウム鋼板外壁材を直しました。

まず板金業者の社長に、見積のための現調に来てもらって打ち合わせを行った。この時に貼り替えることは決めて相談した

今回は、1階部分の外壁であり、下屋の下で、全て剥がしてやり直すとしても、高さ×幅(面積)が少なくて済んだこと。

また、1階だったので、外部足場を架け直す必要が無かったこと。

撤去して貼り直す場合、新規施工と同じであり、変色や剥がれなどの、将来のクレーム要素が考えられないこと。以上がこの方法のメリットです。

この方法のデメリットは、例えば、2階の「貼り終い部分(一番最後に施工した部分)」から遠い、最初に貼った外壁材を凹ませてしまった場合などは、その部分までの、多くの面積を貼り直す必要があるうえに、足場の再設置の可能性もあるため、お金と時間が掛かることです。

貼り替えには、板金業者だけでなく、シーリングの打ち換えも必要だったので、写真を撮って防水業者に送った

しかし、初めて、ガルバリウム鋼板外壁材の凹みの修理・補修を経験して、個人的には、この貼り直す方法が、ベストだと感じました。

ガルバリウム鋼板の凹み部分まで、剥がして撤去したところ。ガルバリウム鋼板は重ね貼りなので、1枚のみの交換が出来ない
もうすぐ完了
ガルバリウム鋼板外壁材、貼り替え完了
玄関ポーチの床面にドアストッパーを付けて、外壁が玄関ドアのハンドルにより、傷まないようにした

凹んだ部分の上から、同一のガルバリウム鋼板を被せて取り付ける方法

この方法は、ガルバリウム鋼板外壁材の凹みの修繕方法を板金業者の社長に聞いた時に、教えてもらった方法です。

今回のような、凹凸差が14ミリあるガルバリウム鋼板外壁材を凹ませた場合は、凸部分が凹むことが多いので、凸部分に、上手くガルバリウム鋼板を被せて補修する方法です。部分的カバー工法と言う感じです。

手に持った部材のようなものを作り
上から被せて、ビスなどで留めて凹みを補修する方法

メリットは、比較的お金が掛からずに安く済むかもしれないこと。

デメリットは、矛盾するかもしれませんが、将来、1番目の貼り直しに発展する可能性があること。そうなると二度手間となり、最初から1番目の貼り直しを行うよりも、お金と時間が掛かる可能性があることです。

というのも、被せた部材をビスや釘などで留める必要があるので、よく見るとそれが目立ってしまいます。ビスや釘が目立つ上に、側面からよく見ると、被せているということは分かるからです。

凹ませてしまったことを施主に報告した後で、施主が、被せる方法を採用することを納得したとしても、後日、被せたところが目立ってしまって、造り手である私が自己嫌悪に陥ったり、施主の気が変わって、やっぱり貼り直してくれと言われる可能性もあります。

自動車の凹みや傷を直すような、パテ処理+近似色塗装をする方法

ガルバリウム鋼板外壁材を初めとした、金属サイディングを自動車の凹みを直すような、パテ処理+近似色塗装で直す方法です。

ユーチューブでも、ガルバリウム鋼板外壁材をパテ処理+近似色塗装で直す業者さんは出てきます。

また、ガルバリウム鋼板外壁材メーカーとして有名な、アイジー工業さんが、去年、宇都宮市でガルバリウム鋼板外装材のセミナーを行った時に、ガルバリウム鋼板外壁材の、パテ処理+近似色塗装補修を行う業者さんが、ブースを出していました。

その施工例写真には、アイジー工業さんのガルバ外壁材の凹みや穴空きを、その業者さんが、パテ処理+近似色塗装で直した写真があり、写真では見事に違和感なく直っていました。その写真は手元にあります。値段は分かりませんが、東京の業者さんでした。

ガルバリウム鋼板外壁材を修理・補修する方法としては、比較的多く採用されている方法かもしれません。ガルバリウム鋼板外壁材メーカーとして有名な、アイジー工業さんでも、紹介している方法であり、私もこの方法を採用しようかと、一瞬考えました。

この方法のメリットは、貼り替えや被せの方法でなく、凹みや傷のみ補修できることでしょう。

ガルバリウム鋼板外壁材を、パテ処理+近似色塗装した場合のデメリットとして考えられるのは、経年変化した時の変色や劣化です。特に太陽光の良く当たる部分などは、ガルバリウム鋼板が高温になるので、変色や劣化が早くなるように思います。

元々、ガルバリウム鋼板外壁材の厚さは0.4ミリしかなく、自動車のボディの鋼板と比べると、とても薄い材料です。

今回は、ガルバリウム鋼板外壁材が一番凹んだ部分で、約2ミリくらい凹みました。パテ処理+近似色塗装をしても、最大に厚塗りしても、パテ厚さ2ミリ近く+塗装厚さコンマ数ミリとなり、経年すると、補修部分が、変色や劣化をしてしまうと考えました。

補修した直後もしくは、1~2年後は良いかもしれませんが、変色してしまった場合、やっぱり貼り直すことになると、二度手間になってしまいます。

しかし、この方法で行ったことが無いので、経年しても変色や劣化することは無いのかもしれません。この方法でガルバリウム鋼板を補修して、10年くらい変色してない方が居たら、教えてください。

建設工事保険に入っている場合は、建物の出隅もしくは入隅から、凹んだ部分まで、全て剥がしてやり直す方法がベストだと思う

建設工事保険とは、工事現場において不測かつ突発的な事故により、保険対象物(この場合は工事中の家)ついて生じた損害に対して、支払われる保険金のこと。

当社では、建設工事保険に入っているため、全額ではありませんが、保険金が出ました。

今回、建物の出隅から、凹んだ部分まで、全て剥がしてやり直す方法で、見積して保険申請しました。

契約した住宅会社が、建設工事保険に加入していない場合は、全て剥がしてやり直す方法ではなく、比較的お金が掛からないと思われる方法を選択されがちになると思いますので、契約前に建設工事保険に入っているかは確認しておいた方が良いでしょう。

ただし昨今、建設工事保険の支払いが、何らかの理由で厳しくなっているように感じます。

ガルバリウム鋼板サイディングと窯業系サイディングのメリット・デメリット

今まで書いたように、ガルバリウム鋼板サイディング(外壁材)は、木造住宅の約8割に使われている窯業系サイディングと比較すると、凹みやすい上に、値段も高いです。

値段が高い理由は、主に3つあり、

1.耐火性が低いガルバリウム鋼板サイディングは、下地の耐力面材に耐火性のある、モイスかダイライトを使用する必要があり、そのモイスとダイライトの値段が、一般的な針葉樹合板やハイベストウッドなどの耐力面材よりも値段が高いこと。

2.耐火性のあるモイスとダイライトは、針葉樹合板やハイベストウッドと比較して重いため、施工に手間が掛かること。

3.当社で標準使用になっているガルバリウム鋼板サイディングの角スパンドレルは、働き幅152ミリと狭いので、施工手間が掛かること。

それに対して、窯業系サイディングは、セメントや繊維質などを原料として板状に加工された外壁材のため、それ自体に耐火性があり、外壁下地の耐力面材の選択肢が多いこと。

また、ガルバリウム鋼板サイディングと比較すると、部材自体が大きいので、施工が楽でかつ、シェアも大きいので競争も働いており比較的値段が安いです。

また、窯業系サイディングは、外壁業者がシーリング(昔はコーキングと言っていた)まで請け負うことが多いので、住宅会社にとっては管理が楽だというメリットもあります。

ガルバリウム鋼板サイディングのシーリング場合は、工務店が、板金業者とは別に防水業者を手配して、シーリングを行っていることが殆どだと思います。一括発注出来ない上に、外壁とシーリング業者が別なので、業者とのやり取りと施工管理回数も増えます。

窯業系サイディングは、下地の透湿防水シートの施工が悪くても10年くらいは漏水しずらい

かつ、窯業系サイディングの場合は、下地の透湿防水シートの施工が悪くても、窯業系サイディングが大判であり外壁材の繋ぎ目が少なくできる上に、厚さが15ミリ以上はあるので、シーリング厚さも最低15ミリは確保できるため、窯業系サイディング+シーリングの1次防水面で漏水が防げることが多い材料だと思います。

一方、ガルバリウム鋼板サイディングの場合は、部材自体の幅が比較的狭い上に、かつガルバリウム鋼板サイディング自体が0.4ミリの厚さしかありません。シーリング廻りの役物でシーリング厚さを確保しようとしても、厚くてもシーリングは10ミリ程度であり、鋼板は熱で伸縮しやすいこともあり、シーリングは切れやすいです。そのため、ガルバリウム鋼板サイディングの場合は雨対策を一次防水面である外壁とシーリングに任せることはできません。そのため、二次防水面の透湿防水シート面の施工を丁寧にする必要があります。

それでも、窯業系サイディングではなく、ガルバリウム鋼板サイディングを使う理由

窯業系サイディングは、初期性能はとても高い外壁材です。しかし、使わない理由は、既視感のある見た目が、安っぽいと感じること。また、塗膜に頼った外壁材なため、塗装リフォームの時期を過ぎてしまうと、外壁材自体がボロボロになって塗装リフォームでは、対応できなくなることです。

そうなると、透湿防水シートから上の下地を含めて、窯業系サイディングの全面張り替えになる可能性が極めて高いからです。また窯業系サイディングの最大の欠点は、廃盤になる可能性が極めて高い外壁材であること。廃盤になってしまうと、完成後に一部が傷んだからと、部分交換できる可能性も極めて低いため、全面貼り替えになる可能性が高くなります。当社では、リフォーム依頼による、窯業系サイディングの一部が傷んだことによる全面貼り替えを、何度か経験していますが、延床面積30坪くらいの住宅で、国産中級~高級乗用車くらいの金額が掛かります。

対して、ガルバリウム鋼板は、凹みやすい、比較的値段が高くなるなどの特徴はあるものの、屋根材として使われている材料でもあるため、特に雨に対して強く耐久性が高いこと。見た目がシンプルでプレーンなこと。また、廃盤になる可能性も低いので、完成後も部分交換できる可能性が高い外壁材です。(ガルバリウム鋼板外壁材は、雨に対して強いので、部分的に傷んでしまい、その部分だけ交換するという可能性は極めて低いのですが)

そのような理由から、ガルバリウム鋼板サイディングを標準仕様の外壁材としています。地元の杉板外壁材は、ガルバリウム鋼板より値段が高いので、オプション仕様の外壁材です。見た目も良く、こちらも廃盤にはなりませんから、部分交換できます。経年変化するので人は選びますが、好きな人には合う外壁材だと思います。

どちらも軽い外壁材なので、高性能グラスウール付加断熱合計210ミリの標準断熱仕様とも相性が良い外壁材です。

外壁材は面積が広く、重要な部材なので、いろいろとブログを書きました

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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