窯業系サイディングと窯業系瓦のメリットとデメリットを経年変化写真で紹介します
窯業系サイディングは、新築戸建住宅の外壁材シェア80%近くを占める、日本一メジャーな外壁材です。比較的安価で施工に手間が掛らず初期性能が高いというメリットがある一方、殆どの住まい手は、新築時に窯業系サイディングのデメリットを知らないまま、家を建てています。
窯業系瓦は新築後初期には見た目に高級感があり、陶器瓦よりも軽いというメリットがありますが、窯業系サイディングと同じような断面構成なので、経年すると同じデメリットが発生します。
今日のブログは、窯業系サイディングと窯業系瓦のメリットとデメリットを経年変化写真で紹介します。
窯業(ようぎょう)は、粘土、ケイ砂、石灰岩などの非金属原料を高熱処理して、陶磁器、瓦、ガラス、セメントなどのセラミックス(セラミック、窯業製品とも呼ぶ。)を製造する工業。窯(かま)を使用するため、窯業と呼ばれる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AA%AF%E6%A5%AD
目次
窯業系サイディングとはどんな素材の外壁材なのか?
窯業系サイディングは、基材がセメント系の素材と繊維を固めて作られた外装材。セメント系基材の上の「塗膜(とまく:塗装の膜)」で、基材が保護されている外壁材なので定期的な塗装が必要不可欠。30年程前から数多くの木造戸建て住宅に採用されており、現在では新築戸建て住宅の外壁材シェア約80%を占める。
窯業系サイディングのメリット
窯業系サイディングは、基材がセメントで造られていることから、外壁材のみで火災に対して強い。無垢の木製外壁材やガルバリウム鋼板外壁材と比べると、外壁材単体で火に強いことが分かる。また工場で塗装されて現場に搬入されることから、現場では材料の一部をカットして貼るだけと施工に手間がかからないことがメリット。工程の少なさは、値段の安さにも直結している。
外壁材同士の繋ぎ目と窓廻りのシーリング目地に注意すれば、漏水しにくい外壁材であり、工程の少なさは施工管理のしやすさにもつながっている。
窯業系サイディングの2つのデメリット
1つ目は、塗膜(塗装の膜)で品質が維持されている外壁材なので、約10~15年に1度、再塗装が必要となる。外壁の面積は広い。外壁塗装リフォーム費用は外壁面積×単価になるので、かなりのリフォーム費用が定期的に掛かる。しかし新築時には、メンテナンス費用のことまで考えられない住まい手が多く、繰り返しの外装リフォーム費用は、建てた後の後悔の1つになることも多い。外壁塗装の前には、目地シーリングを撤去して打ち直すという工程があり、これはシーリング職人が施工するが、建物が大きいほどシーリングの施工費用も高くなる。
2つ目のデメリットは、窯業系サイディングは、工場で塗装まで行われる商品のため、定期的に廃盤になることだ。新築して15年後には、自宅に貼った窯業系サイディングは廃盤になっている可能性が極めて高い。廃盤になると、生産されなくなるので、1部分のみ交換するということが出来ない。だから、塗装で補修が効かないほどに傷んでしまった場合は、外壁材を全て撤去して貼り替えるということになる場合が多い。
これが、無垢の木材やガルバリウム鋼板等の、廃盤にならない、廃盤になりにくい外壁材ならば、塗装の時期を逃しても部分的に貼り替えが効く。
こちらのブログもご覧ください。
新築時の外壁材に窯業系サイディングを使わないほうが良い理由
窯業系サイディングの要点は目地シーリング
窯業サイディングには、外壁材同士の継ぎ目となる目地が出来る。目地に充填されているシーリング(コーキング)の打ち替えこそ、塗装と同等に重要な作業になります。
高耐久の塗料を塗っても、目地シーリングが劣化したままだと、外壁裏に雨水に侵入し、雨漏りに繋がることもあるからだ。また外壁材の小口から吸水してしまった場合、そこから劣化してしてサイディング自体の強度を落とすことにもなりかねないので、窯業系サイディングの要点は目地シーリングということになる。
目地シーリングの撤去と打ち替えは、基本的に塗装工事の前に行われて、シーリング打ち替えの後に、シーリングの上に塗装を載せることが基本となる。だから、シーリングの種類は、塗装が載る変成シリコンシーリング等のシーリングを打つ。
ただし例外もあり、既存下地の色を活かした、透明なクリア塗装の場合は、シーリングの上にクリア塗装を載せると、塗装が変色してしまうことから、塗装の後にシーリングを打ち換えます。
シーリングはシーリング専門の職人が行い、塗装職人はシーリングは行わないのが普通。
窯業系瓦のメリットとデメリット
住宅で「窯業系〇〇〇」と呼ばれる材料の場合は、基材がセメント系の素材と繊維を固めて作られた外装材であり、基材の上の「塗膜(とまく:塗装の膜)」で、基材が保護されているものである。
窯業系瓦も同じです。塗膜で基材が保護されているので、約10~15年に1度、塗装が必要になります。屋根は雨の降る方向に対して垂直に設置されており、紫外線も受けやすく、壁よりも過酷な環境的となるため、本当はもっと短期に塗装する方が良いと思われる。
写真は旭化成から発売されていたK15という屋根材ですが、雨水の溜まりやすい水下部分から、苔が生えているのが分かります。
K15の材料特性を施工する瓦屋に聞いたところ、見かけ厚さは25ミリほどですが、それは見える部分の厚みであり、平均厚みは6mm程度と薄く、経年劣化していると、歩いただけで割れてしまうとても繊細な屋根材であるとのこと。屋根材の薄さは、屋根の軽さというメリットになるが、それは、劣化すると割れやすいというデメリットになっている。
ちなみにこの旭化成K15も廃盤となっており、割れてしまった場合は、形状と色合いが近い大和スレートのY15という窯業瓦に交換するとするとのこと。
瓦にするなら陶器瓦が良いと思う。中でも 時が経っても部分交換できる可能性が高い和瓦(J形瓦)は、JIS規格で寸法や形状が規定されているため、瓦メーカーが違っても交換できます。 陶器瓦なら瓦自体には塗装の必要はなく、棟漆喰補修と谷板金の補修もしくは交換で済むので、屋根材の中で、一番メンテナンス費用が掛かりにくい。
屋根塗装完了後に「縁切り」という塗膜を切断する不思議な工程が必要になる場合がある
カラーベストコロニアルと窯業系瓦の一部の塗装完了後には「縁切り」という塗膜の一部をカットする、珍しい工程が必要になる。
屋根塗装の「縁切り」とは、屋根材の水下部分の屋根材同士の重なる部分に溜まった塗料を、塗装前に専用スペーサーを設置したり、もしくは塗装後にカッターなどで切って、屋根材同士が「塗料で密着することが無い」ようにする作業です。
屋根材の下に入った雨水が「縁切り」部分から排出されるのが正常。そこがくっついていると、屋根材の下に入った雨水が排出されにくくなり、雨漏りの原因になることがあります。
カラーベストコロニアルを塗装する場合は、「縁切り」ができるように専用スペーサーであるタスペーサーがありますが、窯業系瓦の場合は無いので、瓦の水下に隙間が無い場合は、塗装後にカッターなどで瓦の重なる部分に溜まった塗料を切る必要があります。
今回、初めて窯業系瓦K15の塗装リフォームをすることになり、材料特性を色々と調べました。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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