将来リフォーム貧乏にならないためには、新築時に杉板外壁材を採用するのがマスト
3/14(木)、子供部屋の間仕切りを造るリフォーム工事で、芳賀町のお宅に行ってきました。
農家も営まれている広い敷地内には、簡素ですが美しいシルエットの「杉板貼り外壁」の平屋が建っていました。60年程前に馬小屋として建てられ、現在は倉庫として使われている木造の建物です。
施主に聞いてみると、その杉板外壁材の建物は、1度の塗装も、外壁の貼り替えもすることも無く、60年間維持されていました。
ノーメンテナンスで60年です。
今日のブログは、新築時の外壁材を杉板にした方が良い理由を、窯業系サイディングとの対比で語ります。
子供の教育費等にお金が掛るということで、外装メンテナンスが出来ない、窯業系サイディング外壁の問題
私が15年くらい前まで建てていた家は、窯業系サイディング外壁の家もあったのですが、現在、新築後15年くらい経過して、それらのお宅は外壁塗装の時期になってはいるものの、子供の教育費等にお金が掛るということで、外壁塗装リフォーム工事が出来ない方も出てきています。
窯業系サイディングを塗装しないまま経過させると、酷い場合は、外壁自体が劣化して、外壁全てが貼り替えになります。ですから築20年となる、あと5年くらいの間には外壁塗装を行いたいと考えているのですが、お金を払うのはお客さんなので、何ともできません。
また、窯業系サイディングは工業製品なので定期的に廃盤になります。廃盤になると部分交換出来ないので、一部が傷むと、全面貼り替えになります。私はネット経由で依頼を受けて、窯業系サイディングの全面貼り替えをしたことがあるので、外壁材が廃盤になると部分交換出来ずに、全て貼り替えになることをよく分かっています。
上記のグラフのように、日本に建つ8割の家の外壁材は、窯業系サイディングを採用しています。35坪程度の家の場合、15年ごとに200万円前後の外装メンテナンスが掛かり続けますから、平成が終わる現在、この繰り返し訪れるリフォーム費用を支払い続けられる人は、なかなかいません。
窯業系サイディングの、定期的な塗装リフォームのサイクルに、お金を支払い続けられたのは、景気の良かった「昭和の遺産」でもあります。
グラフには、木製サイディング(杉板を初めとした無垢の木の外壁材)も入っていますが、何と0.9%。100棟に1棟も無いレベル。新築住宅の8割で窯業系サイディングが採用され、木製サイディングの採用割合が低いのは、今日のブログに書かれている内容を知らないからです。特にこれから新築する人は、よく読んでくださいね!
以前にもブログを書いてました。
将来リフォーム貧乏にならないために、杉板外壁材がマストアイテム
窯業系サイディングとは対照的に、地元の杉板を使った塗装もしていない外壁材がノーメンテナンスで60年です。
将来リフォーム貧乏にならないために、かつ地産地消でカッコイイ住宅を造るには、窯業系サイディングは使わずに、杉板外壁だと思いました。
モルタル系外壁材にも長期使用できる「しらすそとん壁」がありますが、杉板なら地震がきてもヘアークラック(髪の毛のような外壁のひび割れ)さえ入りません。
割と簡単に貼り替えられるのもイイ。
次に、この杉板外壁材の建物を所有する施主との会話を書いてみます。
60年間ノーメンテナンス、杉板外壁材の建物を所有する施主との対話
▲私「倉庫として使われている、茶色い平屋の板貼り外壁の建物は、築何年くらいですか?」
●若奥様「私の生まれた時には、すでにあったのですよ。築何年くらいなのか、母に聞いてみますね」
※このお宅は若奥様のご実家であった。母屋にいらっしゃるお母さまにわざわざ聞いてくれて、お母様も外に出てきてくれた。
■お母様「築60年くらいだと思いますよ。」
▲私「外壁のリフォームは定期的にしているのですか?」
■お母さま「何でそんなこと聞くのですか? 屋根は1度葺き替えましたが、外壁は60年間何もしてませんよ。」
▲私「外壁は、60年間何もしてないのですね。実はそれ、凄いことなのです!」
■お母さま「そうなんですか?」
※昔は馬小屋として使い、今は倉庫で使用。住んでいたわけではないのでリフォーム費用に対する実感が乏しいらしい。
▲私「そうなんです。木造住宅の8割以上に使われている窯業系サイディングは、15年程度に1度、繰り返し足場を架けて外壁塗装などのリフォームが必要なので、例えば60年間だと4回程度のリフォームが必要です」
■お母さま「なるほど」
▲私「15年に1度の外装リフォームに、毎回200万円ずつ掛るとすると、60年間だと4回のメンテが必要で、4回×200万円=800万円のリフォーム費用が掛っていた計算になります。それがこの建物は全く外壁リフォームにお金が掛かっていない。」
■お母さま「は~。言われてみたらそうかもしれないですね」
▲私「この建物に興味あるので、見せて頂いていいですか?」
■お母さま「いいですよ」
▲私「ありがとうございます」
築60年、ノーメンテナンスの杉板外壁材の建物を見せてもらった
建物をよく見させてもらい、杉板外壁材の厚さ等の寸法と納まり、軒の出等を測らせて頂いた。
外壁材は幅140、厚さ9mmの杉板で縦貼り。実(さね)と言われるジョイント部は、相じゃくり(あいじゃくり)。
さすがに、相じゃくりには隙間が空いていたので、ジョイントの上に押縁(おしぶち)を打っておく、「杉板押縁貼り」が良いと思いました。
私がやるなら、杉板の幅は227.5mm、押縁巾は45で、押縁打つなら「しゃくり」はいらないだろう。
屋根の軒(のき)とケラバの出は600mmでした。平屋だと600mmあれば木の外壁材でも傷みにくそうです。
ちなみに軒の出とケラバの出は、外壁から屋根が出っ張っている部分の寸法を言います。
木の外壁材を使って長期使用されている代表的な建物は、地域の神社
木の外壁材を使って、メンテナンス回数の少ない建物の代表例は神社である。貴方の近所にも、古い板貼り外壁の神社があるはずだ。これはうちの近所の宇都宮市天神町の神社。私は51歳だが、物心ついた時には有った。
窯業系サイディングと杉板外壁材のメリットデメリット
新築時に窯業系サイディングがよく使われるのは、初期費用が安く、初期性能が高いからである。
窯業系サイディングは、新築時に、単体で防火性能が高く、大きな版で貼れるので手間も掛からないことから普及した。
要するに安くて、初期クレームが起こりにくいから普及したのだ。
しかし、窯業系サイディングは、繰り返しリフォーム費用が掛かるので、使うのは何としても辞めたほうが良い外壁材だ。
特に15年に1度の外壁リフォーム時に、屋根リフォームとベランダ防水と床下防蟻処理を同時にすると、35坪程度の家の場合は250万円くらいは掛る。
また窯業系サイディングは、建築・インテリア好きの間では、ダサい外壁材だと認識される。その証拠に、建築雑誌に窯業系サイディング外壁の家が、取材掲載されることは皆無だ。
ちなみに大手ハウスメーカーや建売業者等が造る量産型住宅は、ほぼ間違いなく窯業系サイディングである。初期費用が安く、初期性能が高く、初期クレームも少ないからだ。
先日、大手ハウスメーカーである〇イワハウスに23年住んでいる方に、住み心地やリフォームのことを聞いたところ、内外装の新建材は経年すると無残になるので最悪であり、断熱性も低くて、家については「後悔しかない!」とのことでした。
上記写真は、そのお宅の窓枠である。木目が印刷された塩ビシートが「しわ」になってしまい、まるでおじいちゃんの皮膚。これを見たら、死んだおじいちゃんを思い出すかもしれないw。大手ハウスメーカー様やローコストビルダー様で使われる写真のような新建材は、経年すると窓枠、ドア、フローリングも含めて、インテリア好きには耐えられないレベルになることがほとんど。本物の木ではなく、塩ビシートに木目が印刷されているので、経年すると「偽物っぽさ」が「露出しまくり」となる。
ちなみに最近、大手ハウスメーカー様で建てた方から、床を無垢材に貼り替えるリフォーム依頼が増えています。お宅にお邪魔すると、新建材の経年変化はやっぱり無残で、インテリア好きには耐えられないレベルです。
話がそれましたが、それに対して、杉板を初めとした板貼りの外壁材は、初期コストは窯業系サイディングよりも掛かるが、リフォーム費用が掛かりにくい外壁材である。
廃盤になることもないので、部材交換がいつまでも可能だ。ただし、写真のように木材特有の経年変化はするので、それを受け入れられる方でないと採用できない。
杉板外壁材は、設計者のデザインセンスと説明力が必要となる。造り手の誰もが使える材料ではない。
また杉板外壁材を使う場合は、設計者のデザインセンスと説明力が必要となる。
外観シルエットの悪い家に杉板貼りしても、大きな犬小屋に見えてしまう。そうならないために、外観のプロポーション(外観のシルエット)と開口部の調整(窓の数を最小限にした上で、配置と大きさを決めること)が必要なのは言うまでもありません。また自然素材である木材の経年変化を、事前によく説明しておかないと、大クレームになる可能性もあります。
杉板外壁材は、造り手の誰もが使える材料ではない。
新築時には家を小さくしておくのが吉
外壁は面積が大きいので、リフォーム費用も多く掛かる場所である。建築費用は、基本的に面積×単価で算出されるので、大きめの家はリフォームも当然高くなる。
だから、新築時になるべく小さな家にして、質を高めておいたほうが良い。新築時の坪単価を上げておくと、上質になるし、将来のリフォーム費用も掛かりにくい。
さらに新築時の断熱性能と屋根材の選択まで語ると
Q1.0住宅クラスの断熱性能にして快適性と省エネ性能を上げて住みやすくしたうえで、外壁は板貼り、屋根は和瓦がメンテナンス費用を最小限に出来ると、板貼りの小屋を見ながら、現場で大工と再認識しました。外観はシンプルな昔の家のイメージです。
例えば、断熱性能にトコトンこだわった一条工務店様や地域工務店、設計事務所で家を建てても、外壁材が窯業系サイディングで室内も新建材のドアや床なら、外装リフォーム費用にお金が掛かり続ける上に、インテリアも無残になるので、長く快適に暮らせる家だとはとても言えない。
新築時に杉板外壁材を採用すると、将来工務店の外装リフォーム受注が無くなってしまうことについて
しかし、新築時に板貼り外壁と和瓦屋根を提案すると、施主は生涯に渡ってリフォーム費用を最小に出来るが、逆に造り手にとっては、定期収入に近かった15年に1度の外装リフォームの仕事が、ほぼ無くなることを意味する。
正直これはかなり痛い。15年に1度計算できた、外装リフォームの200万円~250万円程度の売り上げがゴッソリ消えるからだ。
ただし、新築時に窯業系サイディングにして、お金が無くてメンテナンス出来ないご家族が増えていることを考えると、新築時、施主に杉板貼り外壁材を、強く勧めるべきだと思った。
外装リフォームの獲り方としては、他のハウスメーカーや工務店は、今も大量に窯業系サイディングの家を造り続けてくれているので、私はそれらの家の外装リフォームをすれば良いと考えることにする。
グレイテスト・ショーマン、今週日曜日までは100円で視聴できます。まだ観てないから日曜までに観ますよ。
あと、プライムに降りてきたので、これは観ました。日本の戦争前後の普通の人々の生活が描かれており、とても良かったです。「のん」の声が秀逸。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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はじめまして 楽しくブログ拝見させてもらいました。 しかーし、外壁材は杉板が良い! と言い切ってしまうのはいかがなもんでしょう…
通りすがりの建築家様、はじめまして。 コメントありがとうございます。 ガルバリウム鋼板外壁材は杉板外壁材に比べて、より塗装工事が必要だと思いますし、塗装の必要がないモルタル系外壁材である、しらすそとん壁も10年経つと環境によってはかなり汚れて、地震でクラックも入ります。 私は他に良いと思われる外壁材が思い浮かばないのですが、メンテナンスを少なくでき、割と楽に部分貼り替えも効き、かつ大手と差別化できる外壁材は何かと考えると、杉板外壁材以外にありますかね?
ためになりました!杉板外壁を検討したくなりました。
書き込みありがとうございます。 採用してください。