施主支給がコストダウンになりにくい理由
質問 施主支給がコストダウンになりにくい理由
新築で工務店と話を進めています。
費用を抑えるべく、こちらでさまざまな施主支給材(床板、壁紙、などなど)の提案や、不要なドア削除などの提案をおこなっておりますが、工務店側からは、坪単価の計算なので、余り減額にはならないと言われます。
坪単価の仕組みを色々調べているのですが、よくわからないので質問しました。
たとえば、5万円するドアをつけなくて良いとした場合、単純に5万円減額とならないのはなぜでしょう?
コストダウンには建坪を少なくするしかないのでしょうか?
答え 施主支給がコストダウンになりにくい理由を説明します。
依頼先の工務店との進捗具合が、図面、見積書が出来て、減額打ち合わせの段階なら、坪単価の見積書でない普通の見積書(材料、工賃、設計料、管理費等がなるべく詳細に分かれた見積書)を出し直してもらうべきでしょう。
例えば、大工工事費などの項目で「坪いくら」という表示をすることはありますが、「全体で坪いくら」という見積書の表示は普通ではありえません。
その理由は、「工事全体で坪いくら」とやると、変更などが起きた場合に、お互いに納得して増額や減額ができなくなるからです。
ザックリした見積で契約すると、造り手と住まい手が揉める原因になります。
各項目、例えば「ドア1枚ずつの」詳細な見積が出来ていれば、計画段階で増額や減額があった場合に変更対応しやすくなります。
ですから、きちんとした見積書を出してもらうことをお勧めします。
それでも大雑把な見積もりを出してくるようなら、業者を変えることも考えたほうが良いでしょう。
施主支給にしても、必ずしも安くならない理由
また、施主支給品が多いのが気になります。
当社では施主支給品は、ほとんどありません。
施主支給品がほとんど無い理由は、施主支給の場合は、簡単な物を除いて、施主支給品の価格と取り付け費用とに応じた管理費を頂いているからです。
施主支給をしても見積価格は同じか、私の見積のほうが安いです。
当社の新築や大規模リフォームの場合、材料、工賃、設計料、管理費等という内訳なので、建材価格はお客様の仕入れ値よりも、当社の仕入れ値のほうが安い場合がほとんどなのです。
現在では、誰でもザックリとした建材価格をネットで調べることができるので、住宅会社が施主に提示する見積書も建材価格は原価か、それに近い価格で計上することが多くなっていると思います。
施主支給品だけが多くで、それに伴う管理費を計上できないとすると、工務店は適正な粗利が確保できないばかりか、その工事や建材に対して責任が取れません。
施主支給品に不具合が起きた場合の責任の面からも、施主支給品の価格や取り付け費用に応じた管理費を計上するのは必要なことだと思います。
私の廻りの工務店もそうしている所が多いです。
施主が「建材を施主支給します。管理費を計上されるのは嫌ですが、その建材に不具合が起きた場合の責任や修理、建材メーカーとの折衝も全て工務店でお願いします」
となったら、その施主とは契約できないでしょう。
ですから、施主支給にすると単純に安くなるというわけではないのです。
分離発注は、誰も責任がとれなくなるので危険
また、コストダウンの方法として、施主が直接職人に依頼するという方法(分離発注と言います)もありますが、これも辞めたほうが良いです。
その理由は、各職人は自分の仕事には責任は持てますが、各工事の取り合い部分には責任が持てません。
「取り合い」とは例えば、大工工事の木で造った下地と、左官工事の塗り壁との「取り合い」だったり、板金屋さんが造った外壁と大工工事の下地の「取り合い」だったりします。
瑕疵はその取り合い部分に発生することが多いです。その取り合い部分の管理をするのが工務店(現場管理者)の仕事になります。
直接職人に依頼して工務店を通さずにお金のやり取りをすると、誰も「取り合い部分の責任」が取れなくなります。
ですから、管理費用は生じても、各職人への直接発注でなく、工務店に一括して工事を請け負わせるほうが良いです。
最大のコストダウンの方法は、設計段階で建物を小さくすること
最大のコストダウンの方法は、設計段階で建物を小さくすることで、間違いありません。見積金額の各項目は、基本的に面積×単価なので、家を小さくすると建物は安くなります。
また、できるだけ小さな家にしておくと、将来必ず訪れる外壁塗装等のメンテナンス費用も安く済みます。
不必要に建物を大きくすると、将来メンテ費用にお金が掛かり大変ですし、高齢化すると掃除するのも大変なので、必要最小限の広さの家が良いのです。
その工務店も、施主支給品が多くて、それに伴う管理費用が計上できないことが原因で、大雑把な見積もりを出しているとは考えにくいですが、一応、上記のことも踏まえて話し合ってみたらどうでしょうか?
Q&Aから転載しました。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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