外壁モルタルやタイルが浮いている場合の補修方法
外壁モルタルに浮きが生じた場合の剥離、落下を防止する工事をしました。たまにニュースで、古いビルの外壁が落下したとかやっているでしょう。それを防止する工事です。エポキシ樹脂とステンレスピンを併用して注入し、躯体と外壁モルタルの接着を行うアンカーピンニング工法という珍しい補修方法です。地震の時、浮いた外壁は落下しやすくなり危険ですから、地震が来る前に工事しておく必要があります。
この工法のメリットは、浮いたモルタルを撤去して、新たにモルタルを塗る工事と比較してゴミが出ませんから工期の短縮、工事費の節約になります。初めて行いましたので、施工方法も含めて忘備録的にレポートします。
このアンカーピンニング工法は、鉄筋コンクリート造(RC造)で行うことがほとんどで、木造住宅では行いません。ご自宅が鉄筋コンクリート造(RC造)の戸建やマンション方は、参考になると思いますのでご覧ください。
外壁モルタルの浮きが発覚した経緯
築45年の鉄筋コンクリート造(RC造)2階建て住宅、外壁塗装リフォーム工事。足場を架けて外壁をチェックすると、クラック(ひび割れ)が多数あり、ひび割れの補修工事をしたところまで、ブログを書きました。
こちらです。
雨漏りの原因となる、外壁クラック(ひび割れ)の具体的補修方法
外壁ひび割れの補修工事をしている時、職人からモルタルが広範囲で浮いているようだと報告を受けました。サンダーという電動工具で、ひび割れに工具を当てると、明らかにモルタルが浮いている箇所があるという話でした。
新築時の図面を見ると、躯体の外側の外壁全体に3㎝のモルタルが塗ってあります。モルタルが浮いているのは、そのモルタルを塗った部分です。
新築時に、壁全体にモルタルを塗った理由は、45年前はコンクリートで垂直な壁を造る技術が無く、モルタルを塗って垂直な壁にするように、下地調整したのだと想像しました。新築をしたのは当社ではないので、想像するしかありません。
外壁モルタルが浮いていると何が悪いのか?
外壁モルタルが浮いていると、剥落して壁が落下する危険があります。下に人が居ると危険です。モルタルが浮いている上に塗装しても、モルタルが落下してしまったら意味がありませんから、お客さんに状況を話して、塗装前にモルタルが落下しないようにする工事を行う必要が出来ました。
外壁モルタルの浮いている箇所を調べる
最初に外壁のどの部分が浮いているか確認します。これも足場を架けて初めてできることです。最初の見積では提案できません。モルタルが浮いている箇所は、金槌で外壁を軽く触ると、正常な壁と比べて、音と手に伝わる感触が全く違うので分かりやすいです。モルタルが浮いて剥がれている箇所は、軽い音を立てます。外壁の総面積は293㎡(畳だと177枚分)でした。外壁を金槌で触って、浮いている箇所にスプレーで印を付けて、図面に描き込むのに、1日半掛かりました。ザックリですが、壁全体の1/7程度が浮いているようでした。
図面で浮いている箇所の特徴を検討する
外壁モルタルの浮いている箇所を図面に記入して検討したところ、モルタルで造られた手摺笠木のひび割れが酷い箇所の下と外壁にクラックがある部分に浮いている部分が多いことが分かりました。外壁の浮いている箇所から室内に漏水はしていませんでしたが、コンクリート躯体とモルタルの隙間に水が入ったのかもしれません。西面のみ浮いている箇所が少なかったのですが、理由は分かりませんでした。モルタルの浮いた部分に穴を開けても雨水は出てきませんでしたが、何らかの関連があると思い、追加工事でモルタル笠木上から、アルミ笠木を取り付けることにしました。
モルタルが浮いてしまった理由
このように、外壁モルタルが浮いてしまった理由は、モルタル自体の乾燥収縮による浮き・地震・雨・風・気温変化などによって発生しそうです。そのため、経年によりどんな建物でも起こる状態だと思います。一番良いのは、モルタル下地を造らずに仕上げれば浮いてくる心配はありません。
モルタルの浮いている部分の施工方法を検討する
外壁モルタルの浮いている部分の補修方法は、浮いた箇所を剥がしてやり直すか、浮いているモルタルを剥落しないように密着させるかの2択です。浮いている箇所が少量なら、モルタルを剥がして塗り直すという選択肢もありました。しかし、浮いている箇所が多く面積も広い。窓廻りも絡んでいますから、漏水の心配もありモルタルを剥がすことは出来ません。
鉄筋コンクリート造の剥落防止工事の経験のある職人と相談し、アンカーピンニングという工法で、浮いたモルタルを密着させることにして、追加見積を提出して工事することになりました。
アンカーピンニング工法とは
アンカーピンニングとは、鉄筋コンクリート造(RC造)の外壁の浮きの補修を行う工法です。この動画のように施工しました。
アンカーピニング工法施工写真
今回行ったアンカーピニング工法施工写真です。完成後45年経っているので、非常にコンクリート躯体が固く、穴を開けるのに苦労したようです。
穴を開ける位置を25㎝ピッチで定規を使って出し、7㎝の深さの穴を開けました。
これが穴に差し込むステンレスピン長さ5㎝です。コンクリート躯体とモルタルをこのピンとエポキシ樹脂で繋ぎます。
エポキシ樹脂。
次にステンレスピンを差し込み、奥まで押し込みます。
穴をカチオンタイト(樹脂モルタル)で塞ぎます。これで塗装下地完了
塗装前に漏水していた箇所に水をかけて、漏水がないことを確認。ベランダの床にも水を貼って試験しました。
その後、2回の雨を経て漏水がないことを確認したので、これでやっと塗装工事に入れます。お客さんにきいたところ、新築直後から40年以上漏水していたようなので、今回完全に防水できて良かったです。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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