2025-09-01
Q1.0住宅 宇都宮小幡の家(宇都宮市)
リフォーム

住宅建築とリフォームにおけるドローン活用―屋根点検・太陽光パネル・周辺環境まで

住宅の完成写真撮影で使ったドローン

7月22日、Q1.0住宅「小幡の家」の完成写真をカメラマンに依頼しました。撮影ではドローンを使用し、屋根に設置した太陽光パネルを上空から写すことが目的でした。

飛行中のドローンを間近で見たのは初めてでしたが、実際に出来上がった写真を確認すると、想像以上に鮮明で全体像がよく分かり驚きました。ズーム機能を使えば、屋根の点検にもある程度活用できそうだと感じ、当社で導入したほうが良いのか?考えてみました。

結論から言えば、ドローンは価格が高く(ある程度の性能のDJI製だと20万円程度)、さらに宇都宮市中心市街地で飛ばすには許可が必要なため、現状では購入までは必要ないと判断しました。

ドローンの資格取得と購入の必要がないと判断した理由をブログにします。

ドローンが外装リフォーム前点検で役立つ場所

ドローン離陸前
撮影中。モニターで確認しているところ

近年、ドローンは住宅建築やリフォームの現場でも利用が広がっています。特に外装リフォームを行う会社にとっては、高所を安全に確認できる点が大きな利点です。

屋根の塗装、瓦や板金の浮き、外壁のひび割れといった高所の劣化は、肉眼で確認するのが難しい部分です。ドローンで撮影すれば、足場や梯子を使わずに状態を共有でき、施主と施工者が同じ視点で工事の必要性を判断しやすくなります。

役立つのは主に次の3か所だと思います。

  • 屋根
  • 軒樋(樋に詰まりがある場合など)
  • 2階外壁の高所部分

屋根点検―ドローンを使う場合と梯子で登った場合のメリット・デメリット

Q1.0住宅小幡の家。ドローンで撮影

新築後15年ほど経ち、屋根塗装リフォームの時期を迎えたと仮定します。見積前に点検を行う際、ドローンと梯子ではそれぞれ次の特徴があります。

ドローン点検のメリット

  • 屋根に登らず安全に確認できる
  • 一人で点検が可能
  • 短時間で屋根全体を「ざっくり」把握できる

ドローン点検のデメリット

  • 手で触れないため塗膜の浮きなど詳細は不明
  • 概算見積になりやすい
  • 高性能機材は高額(約20万円)
  • 宇都宮中心部では飛行許可が必要
  • 専門業者でも導入事例はまだ少ない

梯子点検のメリット

  • 直接触れて塗膜の浮きや劣化を詳細に確認できる
  • 自分の目で直近の状態を把握できる

梯子点検のデメリット

  • 高所作業のため転落リスクがある
  • 足場がない状態での2階屋根は特に危険
  • 本来は2人必要(登る人+梯子を押さえる人)
  • 一人での点検は不可
方法メリットデメリット
ドローンで点検– 屋根に登らず安全に確認できる- 点検を1人で行える- 短時間で屋根全体を「ざっくり」把握できる– 触診ができないため詳細が分からない(塗膜の浮きなど)- 写真映像だけでは概算見積になりやすい- 高性能ドローンは20万円前後と初期投資が必要- 市街地(例:宇都宮中心部)では飛行許可が必要- 塗装業者でも導入事例はまだ少ない
梯子で目視点検– 屋根材に直接触れて状態を詳細に確認できる- 塗膜の浮き・劣化具合まで把握可能- 自分の目で直近で状態を確認できる– 高所作業のため転落リスクがある- 足場がない状態での2階屋根は特に危険- 本来は2人必要(登る人+梯子を押さえる人)- 1人では点検できない

太陽光パネル確認やメンテナンスにも有効

今回撮影したお宅のように、現在の住宅は太陽光パネルを設置するケースが増えています。しかし設置後の状況を確認するのは困難です。ドローンなら上空からパネルの配置や汚れ、破損の有無を撮影でき、施主の安心につながります。さらに、影のかかり方や落葉の影響を把握するのにも役立ちます。

敷地周辺環境の把握

ドローンは建物だけでなく敷地全体や周辺環境の確認にも有効です。隣家との距離、日射の入り方、樹木の位置などを空撮することで俯瞰でき、設計段階での検討材料を増やすことができます。特に新築計画においては、プランの妥当性を確かめる手段として有効なこともあると思いました。

ドローンで住宅の点検を行う場合、資格は必要か?

住宅点検で気になるのは「資格の有無」です。私が調べた範囲では、宇都宮市中心市街地はDID(人口集中地区)に該当し、飛行には許可が必要です。

  • 登録義務:重量100g以上は国交省登録とID表示が必要
  • 飛行許可:DID上空・高度150m以上・空港周辺は国交省の事前許可が必要
  • 私有地上空:所有者の同意が必要
  • 夜間飛行:許可が必要
  • 操縦方式:VLOS(目視範囲内)必須
  • 法令遵守:プライバシー・道路法などを遵守

さらに2022年12月からは「ドローンの国家資格制度(無人航空機操縦者技能証明)」が開始され、一定の条件下では資格が必要になる場合があります。

小型ドローンの市場シェア

今回撮影に使ったドローンは中国製です。調査によると、住宅撮影に使う小型ドローンのシェアは中国が約85%を占めています。

メーカー別では以下の通りです(推定・2024〜2025年時点)。

  • DJI(中国):約75%
  • Autel(中国):約10%
  • Skydio(米国)、Parrot(フランス)、Sony(日本):少数
  • その他:合算で約8%
吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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