2025-03-22
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樹脂窓の廃盤問題!樹脂窓のガラスが割れてから、ガラス交換に7か月も掛かった理由

防犯ペアガラスの割れた樹脂窓

昨年8月29日に、築17年目の施主から「勝手口ドアのガラスを割ってしまったので交換して欲しい」と連絡を頂きました。しかし、実際にガラス交換が完了したのは昨日3月21日。

なんと、樹脂窓のガラス交換に約7か月もかかってしまいました。時間が掛かった理由は2つあります。

まず1つ目の理由は、樹脂窓が約13年前の2012年頃に廃盤になっていたことです。建材は、廃盤になると部品も作られなくなるため、交換が必要になった時に修理できない可能性があります。廃盤(はいばん)とは、製造が中止された商品や、販売カタログから削除された商品を指します。

今回は幸運なことに、約13年前に廃盤になった樹脂窓の、部品が残っていたので交換が出来ました。しかし、部品が手に入らなくなると交換ができません。その場合、壊れたままにするというわけには行きませんから、結果として、窓の周囲の壁を壊し、窓全体を交換しなければならない可能性もあります。

窓は室内と室外を繋ぐ、家造りで最も重要な建材の1つです。窓交換する場合は、工事は大掛かりになり、費用も時間もかかります。大がかりになる理由は、窓を交換する場合は、窓の周囲を壊して、既存の窓を撤去してから、新しい窓を付けた後に、窓廻りの外装・内装の下地材と仕上げ材も新しくする必要があるからです。

2つ目の理由は、製造販売メーカーとOEM製造先の関係が薄くなったことです。

この樹脂サッシの製造販売メーカーは、三協アルミだったのですが、新築当時はOEM製造により、実際はエクセルシャノンが造っていました。13年前の2012年頃に両社の関係が解消されて廃盤となり、三協アルミは樹脂サッシのOEM製造先を、エクセルシャノンからリクシルに変更したので、三協アルミとエクセルシャノンの関係が薄くなりました。

OEM契約が解消され、両社の関係が薄くなったことが、部品の入手まで時間が掛かった、2つ目の理由だと思います。

ただし、廃盤になってから約13年経過した、窓の部品が手に入ったのはラッキーでした。

今日のブログは、建材が廃盤になるとリフォームするのに手間取ったり、通常よりお金が掛かる可能性が高いこと。だから廃盤になりそうな建材は、極力使わないほうが良いこと。三協アルミの樹脂窓「アルペンPL」のOEM製造についてなど。私の知っていることを書きます。

新築時に外壁材も、廃盤になりにくいものにしておく必要がある

廃盤になり窓の部品が手に入らない場合、そのままにすると言うわけには行きませんから、窓廻りの外壁材を壊して、窓全てを交換するのが一般的だと思います。そして、窓の部品が廃盤になる頃には、外壁材も廃盤になっている可能性が高くなります。

そうなると、窓と同じように外壁材も無いということになりますから、外壁材全てを交換すると言う可能性が出てきます。もしくは、外壁材全てを張り替えない場合は、継ぎはぎした衣類のように、壊した窓廻りだけ別の新しい外壁材として、壊さない外壁は、そのままとすることもできると思います。

外壁材全てを交換する場合、既存外壁材を解体して廃棄処分し、下地木材から外壁材を新設します。その場合は、家の大きさや外壁材の仕様にもよりますが、高級日本車1台分以上のお金が掛かるかもしれません。

ガラス交換が完了するまでの7か月は、テープ養生しておいた。ガラスが割れたのは外側のみ。防犯ガラスなので室内側のガラスは割れにくい

例えば、窯業系サイディングという外壁材は、発売後10年も経たずに廃盤になる可能性が高い、代表選手です。

窯業系サイディングが廃盤になりやすい理由は、材料の特徴として、色や形状を多彩に造りやすいので、メーカーは常に新しいデザインのサイディングを開発・販売しやすいためです。新商品が増えると、製品ラインナップを絞り込む必要もあり、売れ行きの悪い窯業系サイディングは、廃盤となる傾向があります。

ですから、窯業系サイディングは、新築戸建て住宅の外壁材シェア8割を占め多くのデザインがあり、値段も安めなので採用しやすいのですが、極力使わないほうが良いと思います。

一方、廃盤にならずに長く使える外壁材も存在します。杉板外壁材は自然素材であり、廃盤になることはないので、劣化したらいつでも交換できます。また、ガルバリウム鋼板外壁材は、色や種類は少ないですが、廃盤になる可能性が低く、屋根材と同じ素材で雨に強いこともあり、比較的長く使える傾向があります。

新築時に値段が高くても、将来的なメンテナンスや修理のことも考慮し、廃盤になりにくい建材を選ぶことが、長い目で見た場合、結果として費用が掛かりにくく、家を長持ちさせると言えるでしょう。これは内装材にも言えることです。

建材の廃盤は避けられない問題ですが、廃盤になりにくい部材を選ぶことで、将来的なリスクを減らすことができます。

今回の事例を参考に、家を建てる際には、将来を見据えた賢い選択をしてください。

新築時の外壁材に窯業系サイディングを使わないほうが良い理由

樹脂窓のガラス交換をするには、ガラス以外にも、押縁(おしぶち)という、ガラスを固定する樹脂部材の交換も必要

指差ししているのが、押縁(おしぶち)

樹脂窓のガラス交換をする場合は、室内でなく、外側から行います。

まず押縁(おしぶち)という、ガラス廻りの4方向の、ガラスを固定している樹脂部材をヘラのようなもので外します。

この時、押縁と框(かまち)の隙間に、ヘラを入れて押縁を外すので、押縁には傷がついてしまい、時には押縁が割れてしまう可能性もあるので、押縁は交換する部材として見積し、用意しておきます。

4方向の押縁を外してから、ガラスの外れ留め金物を外しますが、この金物も、外す時に曲がってしまうので、「押縁関連金物」として、交換する部材として用意しておきます。

今回、防犯ペアガラスは直ぐに手配できたのですが、三協アルミの樹脂窓「アルペンPL」が2012年くらいに廃盤になっており、部品も造られていないので、押縁という樹脂部品の入手に時間が掛かったわけです。

押縁は、押して固定する細長い部材のため、押縁と言います。

防犯ペアガラスのガラス構成は?

防犯ペアガラス断面構成

防犯ペアガラスの場合、外側のガラスは普通のガラスと一緒なので割れますが、上のイラストのように、室内側のガラスは割れにくい構造になっています。

その理由として

  • 室内側に防犯ガラスを使用することで、ガラス片が飛び散らず、ガラスにヒビが入るだけになるため、怪我をする心配が少なく安全なガラスです。
  • 室内側に防犯ガラスを使用することで、お子様が誤って物をぶつけても、ガラス片が飛び散らず、ガラスにヒビ入るだけです。

防犯ペアガラスの構成は、通常の板ガラス(室外側)+乾燥空気層+防犯ガラス(室内側)の構造になっています。

世界の標準窓は、アルミ窓でなく、断熱性能が高い樹脂窓(樹脂サッシ)です

今回のブログは、樹脂窓について書いていますが、アルミ窓(アルミ樹脂複合窓を含む)が廃盤になり、部品が無くなった場合も同じことになります。

樹脂窓が廃盤になるから、昔のようにアルミ窓にするなどということは、考えないようにしてください。

そもそも、アルミ窓は断熱性能が悪く、結露もしやすいため、世界的には、ほとんど使われていません。外国では、樹脂窓は人間用で、アルミ窓は家畜用建物に使うと聞いたことがあります。

上記の棒グラフの黄色が樹脂サッシなので、世界標準窓は樹脂サッシであることが分かります。北欧は木製サッシが52%と過半数、アルミと木の複合が37%。お隣の韓国でも樹脂サッシのシェアは80%です。

日本の窓だけ、アルミサッシ62%、アルミ樹脂複合サッシ30%で合計90%がアルミサッシと特殊であることが分かります。他国では、アルミサッシのシェアは小さく、アルミ樹脂複合サッシは製品として存在していないようです。

住宅建材が廃盤になった場合、建材メーカーは何年間くらい部品を保管しておくのか?

住宅建材が廃盤になった場合の部品保管期間は、メーカーや製品によって異なりますが、一般的には以下のようになっています。

■一般的な部品保管期間

  • 多くの住宅建材メーカーでは、廃盤後10年程度を部品保管期間としています。これは、製品の耐用年数や、修理・メンテナンスの需要などを考慮したものです。
  • ただし、部品の種類や在庫状況によっては、10年よりも短い期間で供給が終了する場合や、逆に10年を超えて供給される場合もあります。
  • 今回のようにOEMで、会社同士の関係が薄くなっていると、入手に時間が掛かります。

■メーカーによる違い

  • ちなみに大手建材メーカーであるリクシルでは、修理用部品(商品の機能維持には問題ない範囲内で色やデザインが異なる代替部品も含みます。)の最低保有期間は、製造打切り後10年と公式に記載されています。
  • 電装系部品については製造打切り後7年、室内建具などの扉・引出しなどの面材については、製造打切り後2年と記載されています。→室内建具も修理が効きやすい、造作建具のほうが、値段は高いですが、長く使える可能性が高いことがわかります。
  • メーカーによっては、部品の保管期間を公表していない場合もあります。

■注意点:

  • 部品の保管期間内であっても、在庫状況によっては供給できない場合があります。
  • 古い製品の場合、部品の劣化や摩耗が進んでいるため、交換しても、他の部品等が、すぐに故障する可能性があります。

住宅建材の部品について確認したい場合は、各メーカーの公式サイトやお客様相談窓口に問い合わせることをお勧めします。

当社の樹脂窓遍歴

1.私が会社を継いだ1998年当時は、三協アルミのアルミサッシを使っていました。

2.その後、1999年から2004年くらいまでは、高断熱高気密ボランタリーチェーンのFPグループ(FPの家)に加盟しており、指定部材の1つであったYKKの樹脂窓「プラマード」を使用していました。もう1つの指定部材窓は現エクセルシャノンのシャノンウィンドでした。

3. FPグループを退会した2004年から2015年くらいまでは、主に、三協アルミの樹脂サッシ「アルペンPL」と、アルミ樹脂複合サッシ「マディオJ」を使っていました。父親の代から三協アルミの販売代理店と取引があったからです。

4. 2015年くらいに新住協(しんじゅうきょう)に加盟しました。指定部材等はありませんが、2016年以降は、YKKの樹脂窓APWを使っています。新住協は、木造住宅の性能向上を目指す民間の研究機関です。

樹脂窓「アルペンPL」が廃盤になっており、新たに部品を作っていないので、交換に時間が掛かった

三協アルミの樹脂窓「アルペンPL」は、かつて同社が販売していた住宅用の樹脂窓です。

樹脂窓「アルペンPL」の実際の製造は、樹脂窓の専業メーカーである、現エクセルシャノン社が行い、完成した商品を三協アルミに卸して、三協アルミの樹脂窓「アルペンPL」として販売していました。

三協アルミのオール樹脂窓「アルペンPL」は、エクセルシャノン社がOEM製造していたということです。OEM製造は、どの業界でも行われており、おかしなことではありません。

現在WEB上に、2011~2012年の「アルペンPL」のカタログがあります。

当社で、三協アルミの樹脂窓「アルペンPL」を最後に使ったのは、2013年4月に引き渡しをした新築住宅です。

これらの情報から「アルペンPL」は2008年頃に発売され、2012年以降に廃盤になったと考えられます。

三協アルミの樹脂窓OEMについて

現在でも、三協アルミは、樹脂窓の製造においては、自社で製造せずOEMを活用しています。

過去には、エクセルシャノンとOEM契約を結び、同社の工場で製造された樹脂サッシを「アルペンPL」ブランドで販売していました。

エクセルシャノンとのOEM契約が終わった後は、リクシルから樹脂窓のOEM供給を受けるなど、外部の製造資源を有効活用しています。

現在、三協アルミがリクシルからOEMを受けている樹脂サッシはスマージュII・トリプルスマージュIIです。

スマージュIIとトリプルスマージュIIの特徴

  • 高い断熱性能が特徴の樹脂窓です。
  • トリプルスマージュIIは、トリプルガラスを採用し、さらに高い断熱性能を実現しています。

逆に三協アルミからリクシルへは、内装アルミ引戸やエクステリア部材などが供給されているようです。

三協アルミが樹脂窓を自社製造せずに、OEMを活用する背景には、住宅市場の変化や、自社の得意分野に経営資源を集中させたい思惑があります。

三協アルミは、社名どおりアルミを使った建材に強みを持つ会社です。窓ではビル用も含めたアルミ樹脂複合窓、カーポートなどのアルミを使ったエクステリア事業、アルミ製内装間仕切り建具、アルミ階段建材などに、経営資源を集中させる狙いがあると考えられます。

OEMの主な特徴

OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、他社ブランド製品を製造する企業、またはその形態を指します。日本語では「相手先ブランド製造」や「受託製造」と訳されます。

  • OEM企業(今回の場合はエクセルシャノン)は、自社ブランドではなく、他社(委託元)のブランド名で製品を製造します。
  • 委託元(今回の場合は三協アルミのこと)の仕様に基づいた製造
    • 製品の設計や仕様は、基本的に委託元が決定し、OEM企業はそれに従って製造を行います。
  • 幅広い業界で利用
    • 自動車、家電、パソコン、食品など、様々な業界でOEMが行われています。
  • 委託元のメリット
    • 自社で製造設備を持たずに製品を製造できるため、コスト削減や生産能力の調整が可能です。
    • 自社で製造ノウハウを持たない製品を製造できる場合があります。
  • OEM企業のメリット
    • 自社ブランドがなくても、製造技術や設備を活用して収益を上げることができます。
    • 委託元からの安定した受注が見込める場合があります。

樹脂窓「アルペンPL」が廃盤になった後の三協アルミとエクセルシャノンの関係

三協アルミの樹脂窓「アルペンPL」は、2012年くらいまでは、エクセルシャノン社がOEM製造していました。

2012年以降くらいに三協アルミ社が、エクセルシャノン社に、OEM製造依頼をしなくなったため、三協アルミの樹脂窓「アルペンPL」が廃盤となり、両者の関係が薄くなりました。

エクセルシャノンの立場からすると、三協アルミからは、10年以上前にOEM依頼が無くなっています。そのため、三協アルミの部品を在庫しておくのは、コストも掛かるので、やりたくないのが本音だと思います。

ただし、7か月も掛かり遅くなったとは言え、13年前に廃盤になった樹脂サッシ「アルペンPL」の部品が、まだ在庫されていたのはラッキーでした。

部材が無ければ、ガラスが割れたままというわけにはいかず、かといって、わざわざ同じ形状の押縁は造れないので、部材が取れない場合は、窓の周囲の壁を壊して、窓を入れ替えるなど、大規模なリフォームになったことも考えられます。

専業メーカーか、それに近いメーカーの部材を使うのが良いかもしれない

現在、日本の樹脂窓の専業メーカーで、大手と言えるのはエクセルシャノン1社のみです。

大手の中では、樹脂窓にシフトしていると言われているYKKも、2028年にアルミ窓を辞めて、樹脂窓・木製窓・アルミ樹脂複合窓の3種類にする予定ですが、樹脂窓専業ではありません。

樹脂の型材をカナダ等の外国から輸入して、日本で組み立てている地場系の樹脂窓メーカーは2社くらいあります。

現在、別の現場のサッシ交換リフォームで、アメリカ製木製窓から、地場系樹脂窓に交換しているお宅があります。完成したらブログで報告します。

樹脂窓のガラス交換は、日射の少ない寒い冬には適していない

新しい押縁を裏面から見たところ。黒いゴムの隙間に、防犯ペアガラスが納まる

今回の樹脂窓のガラス交換は、9時半から職人2人で行い、12時まで掛かりました。

入荷が遅れたので、私も施主に挨拶するために、朝から立ち会いました。

もう少し早く終わると考えていたのですが、ガラス交換が手間取った理由は、朝のうちは日射が少なく外気温が低いため、既存の押縁の樹脂が固くて、上手く外れなかったからです。

気温が上がって樹脂が柔らかくなり、押縁が外しやすくなった、10時半以降に作業が進みました。

樹脂窓のガラス交換は、寒い日には向いていないようです。

樹脂窓のガラス交換手順

  1. ガラス廻り、縦方向の長い押縁2本を、中央からヘラで外します
防犯ペアガラスの割れた樹脂窓。防犯ペアガラスは、外側が割れやすい構造、室内側は割れていない。
押縁(おしぶち)と框(かまち)の隙間にヘラを入れて、既存押縁を外そうとしているところ。

 2.押縁を外すヘラは、厚いもの、薄いもの、樹脂製のものなど、数種類使いました

既存押縁を撤去しているところ。寒いので樹脂が固くて、なかなか外れない。

 3.外した押縁は傷になるので使用できません。外す時に割れることもあるとのことです。

 4.横方向の短い押縁2本を外します。

 5.ガラスを抑えている金物を外して、既存の割れたガラスを撤去します。金物は曲がってしまうので使えません

既存ガラスを押さえていた金物を撤去してから、割れたガラスを外します
既存ガラス撤去完了

6.新しいガラスを設置して、ガラスを抑える新しい金物を設置

新しい防犯ペアガラス設置

7.短い上下の押縁と、長い左右の押縁を設置

新しい押縁を設置して、ガラスを固定しているところ

 8.新設ガラス設置完了

樹脂サッシの防犯ペアガラス交換完了
吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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