2024-11-24
A-house(上三川町)
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築15年の白洲そとん壁を洗浄メンテナンスして、メリットとデメリットを考えた

白洲そとん壁、東面。洗浄前。ベランダ手摺の下なので、外壁が濡れやすい場所であり、汚れが目立つ

白洲そとん壁という外壁材があります。左官職人が鏝(こて)を使って仕上げる、塗り壁の高級外壁材です。

一番の特徴は、他の外壁材のように、築10~15年ごとに、塗り替え(外壁塗装リフォーム)の必要がなく、ほぼノーメンテナンスで維持管理ができるという謳い文句であったこと。その他の特徴としては、デザイン性から採用する人が多かったと思います。目地の無い、ざっくりとした高級かつシンプルな質感で、他に無い見た目であるということです。

築15年の白洲そとん壁を洗浄メンテナンスして、果たして綺麗になったのか?

白洲そとん壁のメリット・デメリットを書きます。

築15年の白洲そとん壁を、洗浄メンテナンス試験した経緯

当社で設計施工した、築15年のお宅A-houseの白洲そとん壁が、かなり汚れが目立ってきた部分があるということで、施主と一緒に、外壁洗浄メンテナンス試験をしてみました。

この外壁洗浄試験により、綺麗になれば、そのお宅に足場を架けて、外壁全体の洗浄を行う予定でした。

そして完了後には、同時期くらいに建てた、他の白洲そとん壁のお宅の洗浄も、随時行っていくつもりでした。

結論から先に言うと、洗浄試験は、期間を空けて同じ個所を2回行いましたが、あまり綺麗にならなかったので、白洲そとん壁の洗浄メンテナンスは行わないという結論になりました。

ちなみに、洗浄結果は、外観計上による新築後の雨がかりの状況・築年数による汚れ具合・周辺環境・新築時の白洲そとん壁の仕上げ方によって、かなり差が出ると思いました。

新築後15年経過して感じた、白洲そとん壁のメリット・デメリット

〇白洲そとん壁のメリット

  1. 特に雨掛かりになる部分で、かつ日射が少ない箇所は汚れやすいが、汚れが我慢できるのであれば、メンテナンスしなくて良いことになるので、お金は掛かりにくい。メンテナンスコストが安く済む可能性がある。
  2. 防水性に優れており、一般的な外壁材よりも、メンテナンス費用が掛かりにくい。
  3. 色の劣化が、ほぼ無い。塗料で色を付けているのでなく、材料自体に色が付いているので、退色しずらい。シラスは無機質の天然セラミック素材。だから紫外線や風雨による退色・劣化がおきにくく防水性も劣化しにくいため、維持管理の費用と手間を大きく軽減します。
  4. 雨掛かりにならない部分は、汚れにくい。
  5. シンプルな質感の自然素材であり、目地もないので見た目が良い。
  6. 新築の約7割を占める、窯業系サイディングのような安っぽい既視感が無い
白洲そとん壁防水上のメリット

〇白洲そとん壁のデメリット

  1. ベランダ手摺の下や、軒の出の少ない1階外壁など、屋根の無い雨掛かりになる部分で、かつ北面や東面の日射の少ない場所は汚れやすい
  2. 外壁が汚れていると、訪問販売のリフォーム業者が訪ねてくるので、断るのが面倒
  3. 基本的に、塗装リフォームできる外壁材ではないので、塗装リフォームした外観のようにはならず、外壁色を変えることも出来ない
  4. 洗浄リフォームする外壁材であるが、洗浄しても汚れが落ちない場合がある

白洲そとん壁、掻き落とし仕上げのメリット・デメリット

この道具で、白洲そとん壁表面を掻き落とす

当社の白洲そとん壁は、「掻き落とし仕上げ」という仕上げ方です。白洲そとん壁を平らに仕上げた後で、華道で使う剣山のような道具で表面を掻き落として仕上げます。

このように、仕上がる

〇白洲そとん壁「掻き落とし仕上げ」のメリット

  1. クラック(細かいひび割れ)が、分かりにくい仕上げである。左官系外壁材にはクラックは必ず入るので、それが目立たないメリットは大きい。
  2. ざっくりとしたシンプルな質感になり、見た目が良い

〇白洲そとん壁「掻き落とし仕上げ」のデメリット

  1. 「掻き落とし仕上げ」表面は、細かな凹凸があるので、ゴミや汚れが溜まりやすく、落ちにくい
  2. 新築時に、掻き落とした材料は捨てることになり、掻き落として廃棄する材料はかなり多く、通常の仕上げよりも材料費が掛かる。また、掻き落とす作業とその掃除及び廃棄に費用が掛かるので、他の仕上げよりも高い
  3. 表面に、細かな凹凸があるので、人が触ったり、水洗いしたりすると、ポロポロと落ちやすい

白洲そとん壁の洗浄メンテナンス試験(お手入れ)方法と結果考察

白洲そとん壁の洗浄メンテナンスは、メーカーである高千穂さんの「スーパー白洲そとん壁Wのお手入れ方法」を参考に行いました。

  1. 除菌洗浄剤 サポートジアーナを水で希釈して置いておく
  2. 汚れている箇所に、ホースで十分水を掛ける(この段階で黒く汚れた水が流れた)
  3. 刷毛でやさしく、1の薬剤を塗布
施主のAさんが、除菌洗浄剤サポートジアーナを霧吹きで塗布しているところ

 4.薬剤散布して約30分後、ナイロンブラシでブラッシングしながら、水で洗い流す(この段階でも黒く汚れた水が流れた)

薬剤を塗布したあと、ナイロンブラシでブラッシング
施主が用意したナイロンブラシはこの2種類。私は水色のブラシで行いました
薬剤を用いて洗浄後、水で洗い流した。かなり黒い水が出たので、綺麗になっていることは確かなのだが・・・

 5. 自然乾燥

2024年4月26日に施主と私で、1~5を1日で完了させて、2か月後の6月に施主が再度、1~5を1日で行った結果が、AFTERの写真です。

白洲そとん壁、洗浄BEFORE・AFTER

BEFORE 洗浄前
AFTER 、1回目の洗浄後、2か月後に2回の洗浄を行った後

結果写真がこちら。

少しだけ綺麗になったようにも感じるが、洗浄メンテナンス試験前とあまり変わりがないという結論となった。

メーカーのお手入れ方法を見ると、「早めにお手入れを行うことで、汚れが落ちやすいです」とあります。逆に言うと「手入れが遅くなると、汚れが落ちにくい」ということになります。

汚れてから時間が、経ちすぎていたのかもしれません。

メーカーの言う通りで、洗浄リフォームは早めに行った方が良いというのは分かります。

しかし、低い位置の汚れであれば、脚立や足場を架けなくても、上記の洗浄メンテナンスが出来ますが、高い所だと、簡単には出来ないので、「早めにお手入れすること」を、「実際に行うのは難しい場合が多いのではないか?」と感じました。

白洲そとん壁の雨がかりになっていない所は、築15年でもメンテナンスするほど汚れていない

西面は雨掛かりになりやすい1階も汚れが目立たない。西日が当たりと通風が良いのが汚れにくい原因かも?

西側外壁など、雨掛かりでも西日が当たる場所や、南側のベランダ下など雨掛かりにならない場所は、ほとんど汚れが目立ちません。これは凄いと思いました。

軒を出して外壁に雨を当たりにくくすること、日当たり、通風、周辺環境などにより、ほぼ汚れない外装にも出来るのかもしれません。

南面のベランダ下も、雨が掛からず、通風や日当たりも良いためか?ほぼ汚れていない。

逆に、北面や東面の日が当たりにくい場所や、ベランダ手摺下など、雨掛かりになりやすい場所は汚れが目立ちます。

白洲そとん壁の家は、訪問販売リフォームに狙われるので注意

経年して、汚れが目立つ白洲そとん壁は、塗装リフォームするのでなく、汚れを洗浄リフォームするので、新築並みに、汚れが綺麗に落ちるという可能性は少なく、一般的なお宅の外壁塗装リフォームのようには、綺麗にリニューアル出来ません。今回の洗浄試験結果のように、あまり汚れが落ちない場合もあると思います。

そもそも、訪問販売リフォームの営業マンは歩合制で働いている人が多く、兎に角、仕事が欲しい。かつ建築が好きなわけでなく、お金が好きなので「白洲そとん壁」自体を知っている人が少ないようです。

加えて、施主も「白洲そとん壁」の特性やリフォーム方法を知らない場合は、訪問販売リフォームの巧みな営業トークに乗ってしまい、「白洲そとん壁」の上から、塗装リフォームしてしまうこともあり得ると思います。

例えば、掻き落とし仕上げの上から、通常のように塗装リフォームは出来ません。塗装リフォームしてしまうと、「白洲そとん壁」のメリットが無くなってしまいますから、塗装の訪問販売リフォームは、キッパリと断る必要があります。

どうしても「白洲そとん壁」の上に塗装をする場合は、下地が一般的なモルタル塗装外壁とは違いますから、何らかの特殊な下地処理をしないと、塗料が剥離してしまい、塗装リフォームは出来ないと思います。

白洲そとん壁は、建築が好きで、汚れが許容できて、かつ所得が高い、軒の出のある外観が好きな施主が使うべき材料

白洲そとん壁は、基本的には塗装リフォーム出来ない外壁材で、洗浄リフォームを行う外壁材です。

一般的な外壁材のように、塗装して新品のように綺麗になったり、色を変えることも出来ません。

また、今回のように洗浄メンテナンスしても、様々な状況により、綺麗にならない場合もあります。

ですから、白洲そとん壁は、新築前に、無垢のフローリングと同じように、経年変化する材料だと認識しておくことが大切だと思いました。無垢フローリングは、新建材のフローリングと比べて長持ちしますが、色や質感は変化して、新築時には戻りません。白洲そとん壁も一緒です。

建築が好きで、汚れが許容できる人のみが使える材料だと感じました。

かつ、イニシャルコストも塗り手間等が掛かることから、外壁材の中では、最高ランクに位置します。

デメリットを整理すると、値段が高い割に、リフォームしても綺麗にならないこともある外壁材です。

造り手側が、施主に白洲そとん壁を勧める場合は、まず、施主が建築好きで、かつ汚れが許容できて、所得が高い人に勧めるべき材料だと思いました。その上で、施主にメリットとデメリットを説明して、充分理解してもらった上で、使うべき材料です。

理解していない施主のお宅に施工してしまうと、大問題になる材料だと感じました。

また、外壁に雨が掛かりやすい家は、汚れやすくなるので、軒の出の少ないBOX型の外観にはしないことが重要です。

210mm付加断熱を採用したことで、白洲そとん壁の採用がなくなった

当社では、壁の断熱を210mm付加断熱としたことで、断熱・気密の材料費と施工費用が増えたことで、外壁仕上げ材である「白洲そとん壁」の採用が無くなりました。

今回のブログにも書いたように、「白洲そとん壁」は値段の高い材料なので、210mm付加断熱を採用すると、断熱・気密工事費に最優先で予算が行くので、外壁仕上げ材まで、お金が回らないと言うのが正直なところです。

210mm付加断熱にした上で、「白洲そとん壁」を採用している施工例は少ないはずです。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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