暖冷房エネルギー計算プログラムQpexで暖房負荷と冷房負荷を算出し、最適だと思われるエアコン容量と機種を選定してみた
Qpexを使って、12月初めから基礎工事が始まるQ1.0住宅小山の家の、暖房負荷と冷房負荷を算出し、最適だと思われるエアコン容量と機種を選定しました。
Q1.0住宅小山の家は、暖房用の床下エアコン1台と、冷房用の2階ホールに設置する壁掛け1台の合計2台で、吹抜等を含んだ施工床面積31.5坪の家を全館冷暖房します。
小さな家で床下エアコンにする場合はのエアコン選びは、容量の選定や掃除のしやすさだけではなく、市販品を使って修理や買い替えがしやすいこと、省スペースで家具化しやすいことも重要だと考えています。
今日のブログは、小さなQ1.0住宅造ることが多い私が、Qpex使ったエアコン容量の選定と、
どのように機種を選んだかについて書きます。
目次
Qpexによる温熱シュミレーションデータ
Qpex4.01による温熱シュミレーションデータです。換気システムによる熱損失も、カタログ上の最良交換効率を入力するのでなく、現実に本体に設定される交換効率を入力しました。より具体に近づいたデータだと思います。
6畳用エアコン1台のみで家全体を暖房できる住宅
Qpexで入力していくと、暖冷房設備容量が出るので、最適な容量のエアコン(もしくはFF式ファンヒーターなどの暖房設備など)を選ぶことが出来ます。
このQ1.0住宅小山の家の暖房設備容量は1746.1W(1.75KW)と出ました。市販されている一番小さな、6畳用壁掛けエアコンは、暖房の中間的能力が2.2KW。
1.75KW≦2.2KWとなり、一番小さな6畳用エアコン1台で、上手く熱を各部屋に配れれば、家全体を暖房できるということになります。 実際には、Qpexでエアコンの設備容量を確認してから機種選定したのではなく、今までの経験から、最初にこの機種と容量が、様々な点から最適だろうと「あたり」を付けておいて、Qpexを使ってエアコン容量を確認しました。
床下エアコンが家具化される理由
床下エアコンが家具化される理由は、人が長く過ごす居室でエアコンの下半分を床下に入れて、そのままエアコンだけがフローリングから出ているのはあまりにも殺風景なので、エアコンの上は木質建材で覆って集成材のカウンターにしたり、収納の一部として設置されることが多いです。
当社では、吹抜も含めた1~2階の施工床面積が24~31坪程度の小さな家が多く、1階に設置される場所は、熱の広がりの点からリビングの一部に設置することが多い。
逆に広めな家の場合は、人目に付かない納戸等に設置できることもあるので、わざわざエアコンの上に「囲い」を設ける必要はありません。
小さなQ1.0住宅の場合の床下エアコンは、床置きエアコンを使うと家具化しやすい
小さな家の場合、大きな家のように室内に余分なスペースはありません。コックピットのように小さめな空間に収納等が密度高く配置されます。余分なスペースが無いので、床下エアコン本体も人目に付く室内に設置されることが多く、家具化されることになります。
そうなると、容量の選定だけでなく、所定の小さめな造作家具の中に入るかという奥行寸法と、見た目も機種選定の要素になります。
現在の壁掛けエアコンの奥行寸法は、400mm近くあるものが多く、高性能なモノほどその傾向が高いようです。エアコンの奥行が400mm近くあると、収納奥行は最低でも550mm程度は必要になります。
小さな家を造ることが多い当社では、エアコンに奥行があると、家具の中にエアコンを入れにくいという理由で、奥行設置寸法が230mm(本体奥行は151mm)で済む、日立の床置きエアコンを使うことが多いです。
この奥行寸法ならキッチン裏のLDK側など、300mm程度の奥行の家具内部に設置できるので、小さな家の家具でも設置がしやすく、もともと床に設置するエアコンなので、床面から出ていてもおかしく見えない外観となっているメリットがあります。
日立の床置きエアコン廻りは、比較的気密性が取りやすくショートサーキットしにくい
また、日立の床置きエアコンはエアコン廻りの気密性が比較的取りやすい。それは床下の暖気が床上に漏れにくいのでショートサーキットもしにくく、確実にエアコンが動きやすいというメリットにも繋がります。
具体的には、日立の床置きエアコンの場合は、エアコンの吸い込み口と温度センサー位置が本体上部にあり、エアコン吹き出し口が下部にあるので、中間となる床面の本体廻りで、ある程度気密を取れば、床下にエアコン吹き出しの圧力が掛かり、キチンとエアコン暖房が効きます。
かつ第1種換気の給気は床下として、エアコンの暖気をなるべく拡散するようにしました。
今回もダイキンの床置きエアコンは設置しないことにしました
毎回検討しているような気がしますが、今回もダイキンの床置きエアコンも検討しました。ダイキンの床置きエアコンは暖房の定格能力が2.8KWと小さめで、幅も日立製より小さく、床上に冷気も送れるという夢のようなエアコン。
しかし、技術窓口の方が本体の温度センサー位置を教えてくれないばかりが、故障の原因となるからエアコン廻りも絶対に塞がないでくれと言われてしまいます。本体のどこに温度センサーが付いているのかが分からないと、エアコン本体のどの高さに床面を設定するのか分からないし、かつエアコン廻りで気密性が取れないと、床下に送りたい暖気が床上に漏れて、床下の暖気をエアコンが感知してエアコンが停止してしまいそうで、今回も設置対象から消えました。ホンネを言うと、一度使ってみたいのですが。
日立の床置きエアコンはQ1.0住宅には容量過多
ただし、床下エアコンとしての基本性能は発揮しやすい、日立の床置きエアコンの暖房容量は、寒冷地用のため一番小さな機種で定格暖房能力が4.8KWあります。Q1.0住宅小山の家の1軒あたりの暖房設備容量は1.75KWなので、4.8KWのエアコンは容量が大きい。
Q1.0住宅の場合、エアコンは、熱を上手く各個室に運べれば、30坪程度の家なら一番小さな6畳用の暖房定格能力2.2KWエアコン1台で、充分家全体を暖房できると思います。
30坪以下の小さな家で、壁掛けエアコンを、収納容量を減らさずに見た目よく床下に納めるのは難しいのですが、上手に家具化できる間取りと収納が計画できれば、小さな容量の壁掛けエアコンを床下エアコンにするのがベストだと考えている。
私は小さな高断熱住宅を造り続けるので、出来れば日立さんが暖房定格能力2.2KWもしくは2.8KWの床置きエアコンを造ってくれると、小さな空間でも床下エアコンを家具化しやすく、かつ効率的なのだが・・・
無暖房でも室温が19度程度になる、Q1.0住宅の冬の暖かい暮らし方
入居1年目の冬は、床下の基礎コンクリートを確実に乾かすという点からも、10月もしくは11月から3月の5~6ヵ月間程度、床下エアコンは24時間付けっぱなしにしてもらっている。基礎コンクリートが乾かないと、床下のカビの原因になるからである。
Q1.0住宅の場合、真冬の朝、無暖房でも室内気温は、19度以上になっていることが殆どなので、2年目からはエアコンの連続運転をしている人は少ない。必要に応じて、帰宅後から就寝前まで暖房しているようだ。
冬のQ1.0住宅の暮らし方は、こんな感じ。
Q1.0住宅、床下エアコンによる各室温状況と素足での暮らしぶり
冬の朝、無暖房時の室温変化はブログにしました。
Q1.0住宅(キューワン住宅)の無暖房状態での夜から朝にかけての外気温と室温の変化をカメラに収めた
昼間、南面の各部屋の大きな窓は、ハニカムサーモスクリーンを降ろさずに日射取得して太陽熱を室内に取り込み、昼間の不在時は各部屋の入口ドアを開けておき、室温の均一化を図る。日没後、帰宅したら窓のハニカムサーモスクリーンを降ろして室内の熱を、窓から外に逃がさないようにする。南面窓からの日射熱を暖房機代わりに上手く使うということだ。
帰宅後、個室が寒く感じたら、共用部分とダクトで繋がる個別に付けた換気扇を廻して、共用部の暖気を各個室に入れてもらう計画である。バックアップとして、2階ホールの冷房用壁掛けエアコンを暖房で使う。
夏は窓を確実に日射遮蔽して、2階ホールの壁掛けエアコンで冷房する
この住宅の冷房設備容量は、2304.4W(2.3KW)である。そのため冷房用エアコンは定格能力が2.8KWの壁掛けエアコンを選定した。エアコン1台で全館冷房する予定である。
エアコン機種は、富士通のノクリアX。この壁掛けエアコンを2階ホールの壁に付ける。
初めて使うエアコンだが、2つの特徴からこの機種を選んだ。
1つは、エアコンの左右に デュアルブラスターと呼ばれるサイドファンが付いており、 冷気を天井付近に持ち上げられること。冷たい空気は重たいので床面に溜まりやすいが、天井付近まで持ち上げられるようだ。富士通の技術窓口の方に聞いたところ、 デュアルブラスター は、持ち上げたままの設定に出来るとのことである。
デュアルブラスター により吹き上げられた、2階ホール天井面付近の冷気を、天井に付けた各部屋ごとの換気扇で、それぞれに配る計画である。
各個室の壁に換気扇を付けて冷気を取り入れることも考えたが、部屋に換気扇の音が入りやすくなるため、天井にダクトを設けて各部屋に配ることにした。静音タイプの換気扇を選んだが、2階ホール天井には3部屋分3台の換気扇があるので、同時に動かすと2階ホールはある程度の音はする。
また、2階ホールのエアコンの冷気は吹抜けから1階リビングに落ちるように設置されているので、1階LDKも涼しい。1階に落ちた冷気の1階個室への送り方は、2階個室と同じようにLDK天井に付けた換気扇である。
夏の不在時には、2階ホールの冷房をかけた上で、各個室のドアは開いておき、不在のうちに室温をなるべく均一化してもらう予定。
小屋裏に冷房室を造り、2階個室に冷気をダクトで送る「小屋裏冷房」も考えたが、小屋裏に部屋を造る建築費用が勿体なく、キチンとした階段を造らないと登るのが億劫になりそうだし、かつ清掃等で、わざわざ天井の低い小屋裏に上がるのが面倒だし、高齢になると面倒に大変さが加わるだろうと予測して、その計画は「無し」とすることにしました。このお宅の計画のほうがシンプルだと思う。
このエアコンの2つ目の特徴は、再熱除湿モードがあること。
エアコンの「再熱除湿」は、冷房のように室内の温度を下げることなく、湿度だけを下げる機能。 梅雨の時期や雨の日など、ジメジメしているけど、気温は肌寒く感じるという場合に使うと効果的だと言われています。
ただし、複雑なものは壊れやすい傾向がある。このエアコンの左右の送風設備のような、一般的ではない動作をする機械は部品点数が多めになることもあり、壊れやすさの原因になることもあるかもしれない。
このQ1.0住宅の夏の涼しい暮らし方
南面の大きめ窓は、冷房期の日射がある時には窓外側の外付スクリーンを全て降ろし、かつ室内側のハニカムサーモスクリーンも降ろして、確実に日射遮蔽してもらう計画。
夏は冬とは逆で、日射熱を窓から入れないことが最重要となる。
東面2階の1箇所の腰窓も、日射のある時間帯はハニカムサーモスクリーンを降ろす。不在時はもちろん、在宅時もである。不在時は各部屋の入口ドアを開けておき、室温の均一化を図る。Q1.0住宅のような超高断熱住宅は、普通の家と比べると、窓の日射取得と日射遮蔽だけで、住まい手が室温を制御しやすい利点もある。
ベランダを設けないため(これもベランダを設けない理由があるのだが)、吹抜窓の外付スクリーンは外から操作出来ない。この部分だけは、外付電動ブラインドとなる。
2階の冷房用エアコンは、シーズンを通し24時間運転で試してもらう予定である。
全館空調システムではなく、エアコンは2台で、かつ市販品を使うのがベター
常識として暖かい空気は軽くて上に溜まりやすく、冷たい空気は重くて下に溜まりやすい。つまり、暖房を考えると冬は1Fにエアコンがあったほうが良いし、夏を考えるとエアコンは2Fにあったほうがいい。エアコンは暖房と冷房、各1台の2台が無難だと考えている。上記したように、2階の冷房用エアコンで計画したモノを、バックアップとして暖房用としても使えるからだ。
今回も、そのとおりに計画した。
暖房用の床下エアコンは、床の表面温度が室温+2度くらいになってとても快適。だから床下エアコンとしている。室温が20度だと床表面温度は22度となるので、表面温度の高い床暖房よりも快適である。
床下エアコンの快適性はブログにしました。
私が設計施工した断熱性能Q値1.35、C値1.0のお客さんのお宅に宿泊した感想と室内温度
かつエアコンは、会員になった業者しか扱えないような特殊な全館空調システムでなく、どんな業者でもメンテナンスと交換ができる市販品のエアコンを設置するのがベターだと考えている。
誰でも買える市販品のエアコンなら値段も安く、10~15年後に故障しても普通に直せるし、部品が無い場合はエアコン1式の交換ができる。故障時に、運悪く建てた住宅会社が倒産や廃業していても、市販のエアコンなら、他社でも問題なく修理や交換が出来ます。
室内ドアや家具等の木質建材は、オリジナルを造作することにより、既製品を排除して廃盤になる可能性がなく、修理が効いて長く使えることになるが、反対にエアコンに代表される「機械モノの住宅設備」は、将来の修理や交換を考えて、誰もが修理・交換しやすい設備を使うのがベターだと考えている。
エアコンと換気システムも分けるのがベター
エアコンが全館空調システムになっており、換気システムも一体になっているモノがある。エアコンと換気システムは、必ず修理と交換が発生することから、分けたほうがベターだと考えている。確実に、別々に修理と交換が出来るからだ。
沢山のエアコン室外機が設置されている高断熱住宅は、偽物なのか?
Q1.0住宅のような超高断熱住宅にすると、1軒の家を6畳用エアコン1台で暖めることが出来るため、必要最低限のエアコンを設置するのが合理的であり、各部屋にエアコンを設置する必要が無くなる。
エアコンが減れば、買い替え費用も少なくなるし、室外機が無くなるから家の周りもスッキりする。
有名ハウスメーカーが群雄割拠し、快適性の高さを競い合う、お近くの住宅展示場に行ったら、各住宅のエアコン室外機の数を数えてみてほしい。
断熱性能が高く躯体で快適性の裏付けが取れていれば、多くの室外機が並ぶことは考えにくい。だから室外機が多いハウスメーカーは依頼先から外すのが良い。営業マンやwebが、エコや快適性を謳っていても、ローコストで快適に暮らせる可能性が極めて低いからだ。
地球温暖化対策をすべき現在、一番分かりやすいところで、エアコンの台数が少なくて済む、超高断熱住宅に暮らすのが良いと思う。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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