珪藻土(KEISOUDO)の設計面積と実際の施工面積を公開し、けいそうくんフィニッシュワンと実際の塗布面積と価格を比較してみた
先日、宇都宮市の街中で施工中のQ1.0住宅、SH-houseの室内の壁と天井を珪藻土で(KEISOUDO)で仕上げましたが、見積で想定していた珪藻土の数量よりも、かなり多く珪藻土を使うことになってしまい、予定より多くの材料費が掛かって大変でした。
今日のブログは、珪藻土(KEISOUDO)の設計面積と実際の施工面積を公開し、なぜ、設計面積(想定)よりも実際の施工面積(実数)に多くの珪藻土を使うことになってしまったかを考えます。
また、以前使っていたけいそうくんフィニッシュワンと珪藻土(KEISOUDO)の実際の施工面積と価格を比較してみます。
珪藻土に限らず塗り壁の場合、メーカーの示す設計面積よりも、実際の施工面積は狭い範囲しか施工出来ないということが「業界あるある」なのですが、「なぜそのようなことになるのか?」最近の室内塗り壁材の市場傾向も踏まえて、私なりに書きたいと思います。
珪藻土(KEISOUDO)は、粉末でなく練りあがった状態のモノがプラスチック缶に入って現場に来ます
以前は(多分3~4年前までは)珪藻土もセメント袋のような粉末で建築現場に納品されて、それを左官屋が、「たらいのようなプラスチックの大きな丸い容器」に珪藻土の粉末と水を入れて、こんな電動の撹拌機でこねて珪藻土を作っていました。
以前は、下塗り材と上塗り材が別々の20キロ程度の、セメント袋のような粉末で現場に到着しました。その粉末を最初は下塗り材をを練り上げて、室内全体に塗り、乾いたところで上塗り材の粉末を練り上げて、下塗り材が施工された壁や天井の上に塗っていたのです。
セメント袋のような粉末で建築現場に納品されると、雨に濡れると使えなくなるので外に置いておくことが出来ない上に、2つの粉を練ることだけでも大変でした。
珪藻土(KEISOUDO)の場合、あらかじめ工場で練り上げた「下塗り材を兼ねた上塗り材」が1種類のみ、このようなプラスチック容器に入って現場に搬入されます。
現在の室内塗り壁材は、珪藻土も含めて、他のメーカーもそれが主流になっているようです。
なぜ、粉の珪藻土でない、塗りあがった珪藻土が主流になってきたかというと、「素人がDIYしやすいこと」と「粉末の材料を練るという工程が減ることにより、住宅会社側も左官屋にコストダウンをお願いしやすい」からです。
エンドユーザー及び住宅会社が使いやすくなっていることが、珪藻土メーカーの販路拡大の要因にもなっています。
実際には、プラスチック缶に練りあがっている珪藻土が搬入されるようになったので、それを撹拌機で攪拌して、すぐ塗り始めるので「珪藻土を粉から練る」という工程が減ったのです。
珪藻土(KEISOUDO)のプラスチック缶に書いてある「NET18kg/Coverage17-20㎡」という表示の意味は何なのか?
珪藻土(KEISOUDO)のプラスチック缶には、缶ごとに写真のように「NET18kg/Coverage17-20㎡」という表示があります。
UNDER2mmの表示もあり、2mm以下で塗った場合という表記。
まずNET18kgの意味ですが、「NET」(ネット)は「正味の」という意味があり、包んである缶など中身とは関係ない部分を除いた、純粋な内容物の重量だけを指す用語です。
NETを日本語にすると「内容量」が当てはまります。ですから珪藻土の缶に「NET 18kg」と書いてあったら缶の重さを含まない「珪藻土のみが18kg」入っているという意味です。
次に、Coverage17-20㎡の意味ですが、Coverage(カバレッジ)は、影響の及ぶ範囲という意味で、建材の場合は「この18kg缶だと17-20㎡塗れますよ」という意味です。
この表示を要約すると「この1缶は正味18キロで、厚さ2ミリ以下で塗った場合、17-20㎡塗れる」ということになります。
珪藻土(KEISOUDO)を作っているメーカーの株式会社 U-SELECTの石塚さんに聞いたところ、18kg缶の場合、2mm程度の塗布面積で、17-20㎡ということでした。
珪藻土(KEISOUDO)の設計施工面積と実際の施工面積を公開します
SH-houseは、室内全ての壁と天井が珪藻土の左官仕上げ(鏝仕上げ)で、壁と天井の数量は、約198㎡でした。
198㎡÷17㎡(1缶当たりの設計施工面積)=11.6缶。なので、最初は12缶で注文して、施工が始まりました。
1缶あたり約2mm厚さで17㎡-20㎡塗れるということなので、少し余る程度に余裕を見て1缶あたり17㎡で計算して注文しました。
しかし施工してみると、12缶では全く足りずに、結局5缶も追加して、合計17缶を全て使いきりました。
198㎡÷17缶(実際数量)=11.6㎡(実際の施工面積です)
当社の場合、1缶あたり17-20㎡でなく、11㎡程度しか塗れませんでした。
設計面積(想定)では、1缶あたり17㎡塗れるはずだったのに、実際の施工面積(実数)は、1缶あたり11㎡しか塗れなかったということです。なんと、1缶あたり6㎡も少ない。
まとめると、珪藻土(KEISOUDO)の18kg缶、1缶当たりの場合の設計施工面積は、2mm程度の塗布面積で17-20㎡ということでしたが、当社の施工の実際の施工面積は、1缶あたり2mm程度の塗布面積で11㎡ということになりました。
塗った断面を見ると、2mm程度なので厚塗りしたわけではありません。
なぜ、珪藻土(KEISOUDO)の設計施工面積と実際の施工面積が大きく違ってしまったのか?
まず、珪藻土(KEISOUDO)1缶あたり設計施工面積17-20㎡程度塗るには、独特の塗り方と、パータンの付け方があるようです。
まず独特の塗り方とは、石膏ボードの継ぎ目にメッシュテープを貼り、ビス頭と共に、パテ処理した後に、「完全な1発仕上げで、一気に2mm厚さに珪藻土を塗り付けます」
また、1缶あたり設計施工面積17-20㎡程度塗る鏝(こて)のパターンは、鏝ムラのある仕上げのみ。
鏝ムラのある仕上げとは、平らでなく、左官鏝のパターンが付いた仕上げです。
珪藻土(KEISOUDO)のwebにあるようなラフな鏝ムラ仕上げにすると、設計面積17-20㎡程度塗れるそうです。珪藻土は漆喰のように平滑には塗れません。しかし、珪藻土をより平らに近い、プレーンな仕上げにしようとすると、設計施工面積17-20㎡程度は塗れないとのことです。
鏝ムラ仕上げにすることにより、2mmの厚さになる部分と、それより薄くなる部分が混在し、設計面積17-20㎡程度塗れるのかもしれません。
当社では今回、以前使っていた「けいそうくんフィニッシュワン」の仕上げ方のように、一度全体を「薄す―く下ごすり」をしてから、より平滑に仕上げ塗りという施工法にしました。
「珪藻土(KEISOUDO)は、以前使っていたけいそうくんフィニッシュワンの施工法とは全く違い(ここ重要)、下ごすりをせずに一気に2mm程度に仕上げないと1缶あたり設計施工面積17-20㎡の施工は出来ないですよ」と言われていれば、理解できたのですが、このけいそうくんフィニッシュワンとは施工方法が全く違うという説明と、一気に2mm程度に仕上げるという2つの「最重要な説明が無かった」ので分からなかったのです。
当社では、ショールームのけいそうくん仕上げのように、なるべく鏝ムラを出さずにプレーンな感じに仕上げるのを「好み」としており、そのプレーンさを好む理由は、「長年に渡って飽きの来ない仕上がりであり、かつ埃のたまりにくい仕上がり」だからです。
試しに、左官に一気に付けてもらいましたが、平滑に仕上げると、ボードのジョイントが見えてくるような仕上がりになりそうなので、1缶あたり設計施工面積17-20㎡程度塗るには、鏝ムラを付けるしかなく、ヨシダクラフトさんとヨシダクラフトに来る施主の好みではないだろうとのことでした。
また、一気に2mmを付けて、鏝ムラを出した場合でも、ボードのジョイントが見えてくるような仕上げになってしまうので、辞めたほうが良いのではないか?との左官屋の親方からの報告でした。
(この一気に2mmを塗る実験は、仙台に研修中で確認することが出来なかった)
左官の親方と相談した結果、珪藻土(KEISOUDO)を使った場合、当社好みの施工にするには、1缶あたり11㎡程度と考えるのが良いという結論になりました。
ただし、鏝ムラを付けたからといって、足りなかった分の30㎡の差が無くなるかというと疑問があります。というか、設計面積どうりに塗るのは、2mmよりも薄く塗るところを作るという、コツが要るかもしれません。しかしそれは、ボードのジョイントが見えやすくなることでもあるでしょう。
珪藻土(KEISOUDO)とけいそうくんフィニッシュワンの実際の施工面積は、ほぼ一緒だが、1缶あたりの値段は、けいそうくんのほうが、かなり安い
以前使っていた「けいそうくん」のフィニッシュワンの実際の施工面積は、当社仕様の「なるべく平滑に塗った場合」で、珪藻土(KEISOUDO)とほぼ同じ11.5㎡くらいでした。
当社比では、珪藻土(KEISOUDO)と「けいそうくん」のフィニッシュワンの実際の施工面積は、ほぼ同じということになりました。
ケイソウくんのホームページで確認したところ、1缶18キロ入りで、設計の施工面積:約14~16m2ですが、当社の施工事例では、11.5㎡くらいでした。実際の施工面積は、設計面積よりも2.5㎡少なくなるということ。
けいそうくんのホームページ
もう一度おさらいすると、今回、珪藻土(KEISOUDO)とけいそうくんフィニッシュワンの、実際の施工面積と値段を検証したところ、1缶(18キロ)あたり塗れる㎡数は同じであった。
しかし1缶あたりの値段は、以前使っていたけいそうくんフィニッシュワンと比べると、珪藻土(KEISOUDO)のほうが3割程度高くなるので、材料をどれにするのか?考えようと思います。
珪藻土も安さを競う傾向にあるから、注意が必要
クロス仕上げに比べて、値段の高かった「珪藻土を含めた塗り壁」であるが、塗り壁メーカーも売りたいという欲求があり、かつ、造り手及び住まい手も、クロスでない珪藻土を含めた「塗り壁を使いたい」という欲求があるので、塗り壁メーカーも安さを競う傾向にある。
安さとは、「少ない数量をより多く塗れる」ということでもあるので、メーカー側は、塗り方やパターンを特定してでも、より多く塗れるというアピールを「しがち」であり、造り手は、今回のように実際に使ってみないと、様々なことが分からない。
メーカーで出している設計面積でなく、実際の施工面積で材料費を検討し、かつ、施工のしやすさや仕上がりも考慮に入れる必要がある。
11/16(土)~11/17(日)に、宇都宮市でQ1.0住宅の完成見学会を行います
壁と天井全面に珪藻土を塗ったQ1.0住宅。
大工と建具屋で造った造り付け家具で、使い易く片付く室内を実現。
当日は床下エアコンを付けて暖かくしてお待ちしています。
ヨシダクラフトのQ1.0住宅を見学したい方は、こちらからお申込みください。
11/16(土)・17(日) 小さなQ1.0住宅完成見学会のお知らせ@宇都宮市
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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