栃木県の冬の気候の特徴「放射冷却」と「断熱性の低い寒い家」が、「冬期の死亡リスク全国1位」の理由だった!
下野新聞2018年11月29 日で、「冬季の死亡リスク栃木県がワースト 慶応大教授が調査、住環境など影響か 」という記事がありました。
ザックリ記事内容を要約すると、
- 栃木県の冬季(12~3月)死亡リスクは全国1位。
- 栃木県の死亡リスクが高い理由は、朝晩の冷え込みが厳しい特徴的な気候や、断熱性能の低い住環境などが要因
- 冬季死亡増加率が最も低いのは北海道で10・3%。栃木県の冬期死亡リスクワースト1位の要因は寒暖の差が厳しいのに、高断熱高気密住宅と言われる暖かい家が普及していないこと
下野新聞の記事内容を引用しながら、住宅の設計施工をしている立場の私がコメントします。
冬季の「死亡リスク」栃木県がワースト1位は栃木県民にはショックな数値
本県(栃木県)の冬は寒暖差に注意-。慶応大理工学部の伊香賀俊治(いかがとしはる)教授が28日までにまとめたデータによると、本県の冬季(12~3月)死亡リスクは全国1位。朝晩の冷え込みが厳しい特徴的な気候や住環境などが要因とみられ、12月を前に寒さ対策に万全を期す必要がありそうだ。
寒さで血圧が上昇しやすい冬季は全国的に死亡者が増える。伊香賀教授は厚生労働省の2014年人口動態統計に基づいて月平均死亡者数を比較し、「冬季(12~3月)死亡増加率」を算出。本県の冬季は1995・5人で4~11月の1596・7人に対する増加率は25・0%となり、全国で最も高かった。
表を見ると、栃木県の冬期死亡増加率は25%で、全国平均の17.5%を7.5%も上回る。
一番死亡リスクが低いのは寒い北海道、寒い青森県も死亡リスクは低い。寒い地域なのに死亡リスクが低い原因は、高断熱高気密住宅と言われる暖かい家が普及しているからである。
ちなみに高断熱高気密住宅は、光熱費も低く抑えられるのが特徴である。
※冬期死亡増加率とは、
冬季死亡増加率とは、12月から3月の4カ月間の月平均死亡率を、4月~11月の月平均死亡率で割り、100をかけた値。出典は国の人口動態調査(2014年度)
栃木県の「冬期の死亡リスク」が高い理由?
背景として伊香賀教授が挙げるのは「山岳部を除いて晴天が多く、放射冷却現象で明け方にかけて冷え込みが厳しい」本県の冬季の気候。「昼間は比較的暖かいためか高断熱住宅が普及せず、夜間から朝の室温が下がって健康に影響を及ぼしているのではないか」と分析する。
栃木県では「おじいちゃん、おばあちゃんが冬に布団から出てこないので見に行ったら、死亡していた」という話をよく聞く。これは全国的にある事象だが、その頻度が高いことが実証された。
寒暖差のある特徴的な気候と、高断熱高気密住宅と言われる暖かい家が普及していないからという記事内容に同意。
その理由として、栃木県は昼間、日射が豊富な為、暖かく過ごせることが多いことが、高断熱高気密住宅が普及していない原因だということにも激しく同意。しかし朝晩は急激に冷え込むので、この寒暖差と高断熱高気密住宅が普及していないことが、冬期死亡増加率全国1位の根本原因になっている。
次は、栃木県の冬の気候の特徴である「放射冷却」について説明します。
栃木県の冬の気候の特徴「放射冷却」と「寒い家」が、「冬期の死亡リスク全国1位」の理由だった
「放射冷却」とは、冬の晴れて風が無い夜間に、地表の冷え込みにつれて気温が下がる現象。
昼間は、太陽からの熱が強いので、太陽の熱が地面を暖めています。夜間は、太陽からの熱はなくなり地面から熱は逃げていきます。そうなると地面の温度は下がり、地面と接している空気の温度も下がって、明け方に一番気温が低くなります。これが放射冷却です。
栃木県の冬は、昼間は日射が豊富で暖かいのですが、夜間は放射冷却で寒くなり、寒暖の差が大きくなります。
これが栃木県の気候の特徴であり、暖かい高断熱高気密住宅が少ないこと相まって「冬期の死亡リスク」が高い理由になっている。
栃木県の気候が分かりやすくグラフになっているモノを見つけました。
寒暖の差が大きい内陸性気候-(PDFファイル,850KB) – 栃木県
高断熱高気密住宅の普及率が高い北海道や東北の寒冷地は冬期死亡リスクが少ない
冬季死亡増加率が最も低いのは北海道で10・3%。寒冷地である東北地方の各県も“ワースト10位”には入っていない。全国平均は17・5%で、本県は7・5ポイント上回る。伊香賀教授によると、13年の本県の高断熱住宅普及率は30・7%。一方、北海道は85・0%、青森県は70・5%で「寒冷地でも室内が暖かく保たれていることが冬季死亡増加率の低さにつながっている」とみる。
ただし、高断熱高気密住宅といっても、寒い家もあるのが現実です。
では、どのような断熱性能の家だと間違いないのでしょうか?
暖かく死亡リスクの低い新築住宅を建てたいなら、住宅会社に「断熱性能は「HEAT20」のG2レベルにして」と依頼するのが無難
高断熱高気密住宅といってもピンキリです。
高断熱高気密とは、このような断熱性能だと定義されているわけではないので、「とても寒い家でも、高断熱高気密住宅だ」と業者に宣伝されると消費者は鵜呑みにしてしまいます。
そこで、この断熱性能の家なら間違いなく暖かいという住宅の仕様を教えます。
高断熱住宅の性能は、「HEAT20」のG2レベルになっていれば、暖かい家だと言えます。
これから新築する方は、住宅会社に暖かい家を依頼するときは、「断熱レベルはHEAT20のG2レベル。気密性能は1 ㎡/㎡以下でお願いします」と依頼すると具体的であり、間違いはありません。その対応で、住宅会社や設計事務所の高断熱・高気密住宅を造る実力も分かります。
これから暖かい家を建てたい方は、こちらもご覧ください。
断熱性の高い家のメリットは、省エネと暖かさだけでなく、「間取りの自由さ」と「小さな家でも大きく暮らせること」
栃木県の冬期死亡増加率、死因は心疾患や呼吸器系疾患が目立つ
本県の冬季死亡増加率を死因別に見ると、心疾患や呼吸器系疾患が目立つ。循環器内科学が専門の苅尾七臣(かりおかずおみ)自治医大教授は「寒暖差は急激な血圧変動をもたらし、心筋梗塞などの要因になる」として、注意を呼び掛けている
風呂や洗面脱衣室、トイレ等で起こりやすいヒートショックは「浴室の死神」とも言われており、交通事故者数よりも多いので注意が必要です。
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日本人の半分がヒートショックという言葉自体を知らないのでビックリしたという話
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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