2018-11-09
住宅探訪

軽井沢に名作住宅が多い3つの理由

絵画のように美しい吉村山荘。樹木の緑がないので良く見えました。

新住協 関東支部の11月研修会は、11/7の午後から軽井沢の一級建築士事務所アトリエカムイ 井野さん の完成間近の現場2軒を見学させて頂く現場研修でした。

 

研修前の午前中は、井野さんの案内で軽井沢の名作住宅・名作建築を5軒巡礼しました。レポートします。

 

軽井沢に名作住宅が多い3つの理由

軽井沢に限らず別荘には名作住宅が多いと言われており、特に軽井沢の別荘地は名作住宅の宝庫です。私は栃木県在住なので、那須の別荘地には何度か行ったことがあるのですが、日本有数のお金持ちが別荘を所有する軽井沢はレベルが違いました。

 

今日のブログは、軽井沢に名作住宅が多い3つの理由を書きます。全くの私見なので「その理由は違うだろ?」とか「こんな理由もあるよ。」という方は、ブログのコメント欄かfacebookにご意見ください。

 

軽井沢に名作住宅が多い1つ目の理由は、別荘を建てて維持できるのは所得の高い方であるから。お金持ちなら上手い設計者及び施工者に発注できて、上質な構造材・断熱材・仕上げ材を使うことができます。

 

2つ目の理由は、軽井沢の別荘地の道路が非常に狭いから。

 

意外に思われるかもしれませんが、軽井沢は特別高級住宅の並ぶ地域も含めて道路幅が狭いことが印象的。他人の別荘住宅を見る時は、基本的に敷地内には入れないので、前面道路から眺めることになりますが、道路が狭い視界に道路が入ってくることが少なく、森の中に住宅が佇んでいるように見えます。

 

道路が広いと、視界に道路や信号、看板や電線等の人工物が入ってきますが、道路が狭いとそれらがほとんど見えません。敷地の広さに対して、道路が狭い状態になっていることが、別荘住宅がより魅力的に見える理由だと思いました。今日掲載した7枚の外観写真にも道路が写っているものは1枚もありません。

 

生活しやすく別荘地の道路を広げてしまうと、軽井沢の魅力は激減してしまうのを、別荘地の管理会社も住民も役所も知っているのだと思います。街中の住宅でも、植栽にお金を掛けると、住宅が良く見えるのと同じ理由です。またブロック塀のような人工の塀も少ないです。

 

3つ目の理由は、一般の住宅地の住民よりも住まい手の経験値が高いから。住まいを2軒以上所有しているのですから、初めて家を建てる人とは経験値が違います。多分、依頼先の決め方も適切で、かつしっかりと情報の整理もできているでしょう。

 

軽井沢聖パウロカトリック教会/アントニン・レーモンド設計

最初に訪問したのが、軽井沢聖パウロカトリック教会。設計はアントニン・レーモンド。レーモンドの建築を見たのは、イタリア大使館別荘@日光、高崎哲学堂、群馬音楽センター@群馬に次いで4つ目。

 

特徴的な屋根形状、軒の水平ライン、外壁の板貼りの朱色と垂木の小口の白が印象的。

 

屋根にボリュームがあるので大きめに見えますが、室内に入ると意外と小さい。数えたら席数は満員で100人程度でした。正面に祭壇があり、視線を天井に向けると、手斧(ちょうな)仕上げの丸太組の力強い架構。

 

出来た当時からあると思われる、丸太のベンチに座ると、何故か落ち着いてしまう。この丸太ベンチの形状と手ざわりが良い。

 

板貼り外壁材、室内の丸太ベンチを含むの無垢内装材、印象的な架構は、長期使用出来る上に、人をリラックスさせる建材なのだと実感した。

 

そして観光地はどこでもそうだと思いますが、日本人2割に対して、中国等の観光客が8割以上。建物前で許可も取らずに中国人が模擬ゲリラ結婚式を挙げていたのは驚き。

 

軽井沢ショー記念礼拝堂とショーハウス記念館/軽井沢で最初の別荘

軽井沢ショー記念礼拝堂。平面も十字架です。

軽井沢聖パウロカトリック教会から歩いて、軽井沢ショー記念礼拝堂とショーハウス記念館へ。キリスト教宣教師のアレキサンダー・クロフト・ショー師が建てた、軽井沢で最初の別荘。

 

「明治18年軽井沢町をはじめて訪れ、翌明治19年に家族を伴って軽井沢町に家を借りて夏を過ごしたアレキサンダー・クロフト・ショー師は、この地を『屋根のない病院』と呼び絶賛しました。そして、自ら明治21年、軽井沢で最初の別荘を建てました。」

 

軽井沢ショー記念礼拝堂は、十字架型の平面に屋根の架構がシンプルに載る。可愛らしい外観でした。

 

軽井沢で最初の別荘、ショーハウス記念館

軽井沢で最初の別荘であるショーハウス記念館は外観のみ。

 

軽井沢の山荘(吉村山荘)/吉村順三設計

ショーハウスから歩いて吉村山荘へ。住宅設計・住宅施工を行う者なら知らない人は居ない、日本を代表する名作住宅です。外観のみですが、初めて見ることが出来ました。

 

日本の住宅の中で一番有名かもしれません。「軽井沢の山荘」と検索すると、この吉村山荘で出てきます。

 

敷地入口にチェーンが掛かっているため、敷地内には入れず、見られる位置から外観を見学しました。

 

2階は4間×4間(7.2M×7.2M)の16坪弱の建物ですが、張り出しているためか、かなり大きく見えました。

 

外観のシルエット、開口の割合、外壁の板貼りが素敵。戸袋があると、より水平ラインが強調されるので外観が整って見えます。

 

美しい絵画のように見える住宅です。

 

観風荘/一級建築士事務所アトリエカムイ

午前中の最後は観風荘。案内してくれた井野さん設計の別荘です。まず急な崖地に建つ住宅であることに驚きます。最初に敷地の等高線模型を作り、計画したとのこと。

 

屋根が印象的ですが、眺めていると普遍性を感じのは屋根の薄さと低さが理由なのかも。気配りが行き届いた、落ち着きのあるとても素敵な住宅でした。

外観だけですが、レポートした住宅以外にも2~3軒素敵な住宅を見学しました。

 

レーモンドの写真集は復刻したようです。今がチャンス。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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