【住宅本の紹介】「小さな家のつくり方」は延床面積18~30坪程度の本当に小さな家を建てたい施主におススメな本
「小さな家で、かつ上質な家を建てたい!」と考えている方に、とても参考になる本を見つけたので、ご紹介します。
特に延床面積20坪前後の小さな家は、普通の大きさの家のようにアレもコレもとは出来ないので、「住まい手の考え方や周辺環境を明確化し、取捨選択して整理する」しかありませんが、そこから由来する特徴を分かりやすく、シンプルで温かみのある設計にまとめています。
また、著者である設計者が提唱する「成功する小さな家づくり7つのルール」により一定の法則が与えられ、より素敵で使いやすく見える。
本自体も手のひらに納まるような小さいサイズですが、シンプルで美しく可愛らしい家の写真が多く、一般消費者にも分かりやすい文章になっています。
特に気になった部分をピックアップします。
小さな家の場合は、家に対する固定観念を外して、大胆に取捨選択できると素敵な家になる
住宅業界で「小さな家」と言うと、「延床面積30坪以下の家」を指すのが普通です。
しかし、「小さな家のつくり方」に掲載されている施工事例の中には、延床面積20坪前後の、「より小さな家」の平面プランと完成写真が掲載されているのが特徴。
この本を読むと(写真が多いので見ると)、延床面積20坪前後の小さな家の場合は、大胆に固定観念を外して取捨選択をすると、素敵な家になることが分かります。特に窓や玄関ドアは、その家に合わせたオーダーの開口部が入っていますし、狭くても片付くように家具にもお金が掛かっています。
また、各施工事例には、平面図・敷地面積・各階床面積・工事費の目安(設計料は含まれない)が掲載されています。工事費を延床面積(坪)で割ると、坪単価が出ますので、「小さな家の坪単価は高くなる」ことが分かる。
ちなみに掲載されている延床面積18.3坪の家の工事費の目安は2500~3000万円。小さな家は坪単価で考えず、総額で理解したほうが良いです。
家族人数と延床面積の関係
家族が増えると個室が増えて、個室が増えると、収納と廊下等の移動スペースも増えます。
これは私の考えですが、家族人数に対して、どれくらいの延べ床面積が必要なのかをザックリ書くと、家族3人なら延べ床面積25坪以下で快適に過ごせる家ができます。
家族4人なら27~28坪で快適な家が出来、家族5人だと30坪あると、コンパクトで快適な家になると思います。
成功する小さな家づくりの7つのルール
成功する小さな家づくりの7つのルール( P42から)は、設計に一定の様式を与えています。
相当厳しい条件の敷地での設計を重ねており、かつ、ある程度予算のある施主から依頼される実力があってこそですが、これはマネしたい。
1.土地全体を「家」にする
→囲み塀で生まれるプライベート空間、ビルトインガレージ脇の庭等
2.外空間と内空間をつなげる
→リビング+デッキ+板塀
3.一石三鳥の空間をつくる
→中庭+玄関+リビング、土間+階段+駐車スペース+遊び場
4.光と風を呼び込む仕掛けをつくる
→隣家や道路に面した窓は高さを調整して風や光を呼ぶ
5.目の錯覚を利用する
→小さな家ほど、「造り付け収納」が必要だが、壁面収納には「抜け感」も大切
6.フレキシブルな空間をつくる
→子供部屋は最初は間仕切らない
7.大きな木を1本植える
→たった1本の落葉樹を植えるだけで素敵にみえる。常緑樹は年中落葉しているので、実は手入れが面倒。落葉樹は秋から冬の一時期掃除をすれば良いので手入れは簡単。長いお付き合いになるシンボルツリーは、ヤマボウシやヒメシャラなどの落葉樹がおススメ。
小さな家を上質にする本物の素材
P136からは、小さな家を上質にする本物の素材と題して、小さな家こそ、安い既製品の新建材を使わずに、本物の素材を使うことを勧めている。
小さな家は室内も小さくなり、人間と素材(建材)の距離が近くなるので、上質な素材の良さが分かりやすい代わりに、素材の悪さも感じやすくなる。小さな家で素材が悪いと、家が小さいだけに、より安っぽく見えるのは当然のことです。
著者おススメの素材(建材)も掲載されています。ほぼ私が使っているものと同じでした。
小さな家を建てる方に、参考になると思われる文章の数々
●小さい家であることを踏まえて、収納の奥行を減らしたり、小さなキッチンスペースに合わせたちょうどいいサイズのオーダーキッチンを入れるなどの工夫が大切です。
●小さな家を成功させるためには、なんとなく思い描いていた世間一般の家の概念を頭から外してみる必要があるのです。P32
●玄関と階段室を1箇所でまとめて空間を有効利用。P33
など、小さな家を建てる方に、参考になると思われる文章は多数あります。
小さな家の高断熱・高気密の技術には触れられていませんでした。
小さな家のつくり方は、小さな家の素晴らしさの分かる価値ある本ですが、家の快適性・ランニングコスト・健康を大きく左右する、高断熱・高気密の技術には触れられていませんでした。
小さな素敵な家に、Q1.0住宅の高断熱・高気密の技術がプラスされたら最高ですね。
【更新】栃木県宇都宮市で建てたQ1.0住宅の年間光熱費と、冬と夏の室温の計測結果を公開
ここからは本には載ってない私の考えです。
小さな家の坪単価が高くなるのはなぜか?
小さな家でも大きな家でも、キッチン・お風呂・トイレなどの住宅設備機器があるのは一緒であり、住宅設備機器は総じて値段が高いです。
キッチン200万円、お風呂100万円、トイレ50万円とした場合。
坪単価は、建物の総額を坪数で割るので、設備と仕様が同じであれば、大きい家は坪単価は低く、小さい家は坪単価が高くなります。
また、同じ坪数でも家の形によって坪単価は違ってきます。正方形の真四角な家は、外壁面積が小さくなり、同じ坪数でも凹凸の多い家の外壁面積は大きくなるので、坪単価は高くなります。
小さな家は、メンテナンスリフォーム費用とランニングコストと管理費が安く済んでお得
しかし小さな家は、外壁の面積等も小さいために、15年前後に1度行う外壁塗装リフォームや屋根塗装リフォームの費用が安く、室内も小さいのでランニングコストも少なく、老人になっても掃除する面積も小さいので、大きな家よりも管理はかなり楽であることは、「大きい」と思います。
今日だけキンドル199円です。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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