2018-04-11
建材・住宅設備・便利グッズ

絶滅危惧種の屋根材、銅板屋根のメリット・デメリット

二荒山神社の屋根も銅板

二荒山神社写真出典

お寺の屋根以外では、ほぼ見かけなくなった屋根材として、「銅板屋根」があります。

 

建築業界では「屋根を銅板で葺ければ一生モノ」と言われていましたが、値段の高さと、陶器瓦とコンビで葺いた時に穴が空きやすくなることから、銅板屋根は一般住宅では見かけなくなりました。

 

しかし、銅板屋根は使い方を間違わなければ非常に耐久性が高い材料です。

 

今日のブログは、建築業界のイリオモテヤマネコと私が勝手に呼んでいる、絶滅危惧種の屋根材「銅板屋根のメリット・デメリット」を書きます。ニャンニャンw。

 

現在、一般住宅で銅板屋根が葺いてあるのは、昭和の豪邸

銅は、神社の屋根に数多く使われたりしていることもありますが、鎌倉の大仏や自由の女神も銅製であることから、耐久性が高いことは証明されています。

 

現在、一般住宅で銅板屋根が葺いてあるのは、昭和40年~50年代に造られた、延床面積60~70坪程度の豪邸であることが多いです。昔から価格が高い銅板で屋根を葺くのはお金持ちと決まっており、右肩上がりの時代だったので、延床面積の広い豪邸が建てられたのでした。

 

40~50年前の一般住宅の銅板屋根が、現存している理由の1つが、銅板のみで屋根を葺いていることだと思います。銅板屋根の古いお宅があったら見てください。屋根は陶器瓦と一緒に葺いているものではなく、銅板のみで葺かれている屋根のハズです。

 

銅板屋根は、陶器瓦(日本瓦)とのコンビで屋根を葺くと、穴が空きやすくなります。陶器瓦と銅板屋根は単体では強い材料ですが、接触させて使うと、かえって寿命が短くなってしまうのです。その理由は、銅板屋根のデメリットで書きます。

 

銅板屋根のメリット

銅板屋根の最大のメリットは、他の金属屋根のように塗り替えの必要が無いことで、メンテナンスコストが掛かりにくいです。

 

正確には、塗り替えの必要が無いというよりは、緑青により塗膜を作りにくいため塗装出来ないのだと思います。銅は、緑青(ろくしょう:銅が自然に錆びて緑色がつくこと)が発生して、それが銅板を覆うことで腐食しづらくしています。

 

銅板は、他の金属屋根と同じく軽い材料なので、瓦のように地震の大きな揺れでも落下する心配がありません。ちなみに瓦も耐震化されていれば心配はありません。

 

銅板屋根のデメリット

銅板屋根の1つ目のデメリットは、「価格が高いこと」になります。銅板屋根の施工費用は、葺き方により異なりますが、一般住宅の平葺きの場合、1㎡あたり15000円~16000円程度(厚さ0.35mm)と言われています。

 

ガルバリウム鋼板屋根で、1㎡あたり5000円~6000円程度(厚さ0.35mm)程度なので、銅板屋根は、ガルバリウム鋼板屋根の約3倍の値段です。

 

銅板屋根の2つ目のデメリットは、陶器瓦(和瓦)と接触させて葺くと、銅板屋根に穴が開きやすくなることです。

 

銅板腰葺き屋根出典

 

「銅板腰葺き屋根」で検索すると、陶器瓦(和瓦)と接触している銅板屋根に穴が開いている写真が数多く出てきます。

 

一般住宅で銅板屋根が少なくなった理由は、この「価格が高いこと」と銅板腰葺き屋根で、「陶器瓦(和瓦)と接触している銅板屋根に穴が開いた事例が数多かったこと」だと思います。

 

また、和瓦屋根に銅板の雨樋を付けると、これまた相性が悪く、銅の雨樋に穴が開くことが多いです。

 

銅板腰葺き屋根で、銅板屋根に穴が開きやすい理由は、瓦の厚みにより「雨水に落差ができること」により、銅板屋根が摩耗すること、また、屋根に積もった砂塵や和瓦を作る時の釉薬の成分が銅板に流れることも、銅板が摩耗しやすくなり、結果として穴が開く理由になっているようです。

 

屋根谷の銅板

また、瓦屋根の水の流れる谷部分には、板金が施工されていますが、この谷板金が銅だと、相性の悪さから20年程度で穴が開くことが多いです。谷板金は、ガルバリウム鋼板かカラーステンレスで葺くのが良い。

 

銅板屋根は単体で葺いた場合で、特にシンプルな屋根形態の時は、耐久性は高いのですが、陶器瓦とのコンビは相性が悪いです。

 

銅板屋根の3つ目のデメリットは、熱により伸縮しやすく、変形しやすいことになります。

 

写真出典

銅板は熱伝導率が高く、温度差で伸縮します。特に一文字葺き等の、小さな銅板を1枚ずつ貼っていく仕上げ方法は、熱伸縮により銅板屋根が変形しやすくなり、接合部が切れるほど伸縮すると、雨漏りの原因になります。

 

また、非常に柔らかい材料なので、屋根にハシゴをかける時に軒樋が凹む可能性があります。柔らかく加工がしやすいのはメリットですが、変形しやすいのはデメリットにもなります。

 

今日のわかった

銅板屋根は、使い方を間違わなければ、高耐久でメンテナンスコストが減らせますが、価格が高いという他にもデメリットがあるため、現在では一般住宅には、ほぼ使われなくなりました。

 

建築物は、様々な材料を組み合わせて出来ています。銅板屋根と陶器瓦屋根という、単体では強い材料同士でも接触させて使うと、かえって寿命が短くなってしまうということもあるので、建築材料の選択には注意が必要です。

 

以前も、銅板についてブログを書いていました。言っていることは首尾一貫しています。こちらもご覧ください。

陶器瓦屋根の銅製雨樋や銅製谷に穴が開きやすいという実話。強い材料同士を組み合わせてもダメな場合がある

 

銅板の屋根、銅という素材の特性については、この資料がまとまっており、とても参考になります。

銅屋根との上手な付き合い方/社団法人 日本銅センター

 

キネマ旬報2017年日本映画ベストワン。橋口亮輔監督の「恋人たち」を観ました。絶望している人たちの、希望への群像劇。地味ですが、とても良い映画なのでおススメします。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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