陶器瓦屋根の銅製雨樋や銅製谷に穴が開きやすいという実話。強い材料同士を組み合わせてもダメな場合がある
建築物は、様々な材料を組み合わせて出来ています。単体では強い材料同士でも接触させて使うと、かえって寿命が短くなってしまうということもあります。
軒樋を外したところ。茶色に変色しているのが、瓦から雨水が落ちて傷んでいるところ。瓦の凹んでいるところの水下。穴も開いていた。
陶器瓦屋根の銅製雨樋や銅製谷に穴が開きやすいという話
陶器瓦屋根の銅製雨樋や銅製谷に穴が開きやすいという話は、建築業界でも10~15年くらい前から知られてきた話。わりと最近です。経年した住まいが無くて、陶器瓦屋根の銅製雨樋に穴が開きやすいことが分からなかったのです。原因も未だハッキリと特定されていません。穴が開きやすいという話は、建築関係者でも結構知らない人が居ると思います。
20年程前までは、陶器瓦屋根+銅製雨樋の家は数多く出来ました。陶器瓦と銅製雨樋を使った理由は、家を長寿命にしたいこと。だから、瓦と銅という、長持ちする材料同士を組み合わせたのだと思います。また、古来からある材料である、瓦と銅板を使うと和の雰囲気になります。銅製雨樋は高価なので、使っているお宅は、ほぼ間違いなく高級感ある和風住宅です。
陶器は古墳から出るくらい長寿命。滋賀県で出土した平安時代の緑釉陶器。 滋賀県文化財保護協会さんからお借りしました。
瓦の材料である陶器は、古墳から出土するくらい長寿命ですし、銅製屋根は日光東照宮、名古屋城等の歴史的建造物で用いられ、穴空き事例がでるまでは、「家に銅板を使っていれば、一生物」とか「銅板は末代まで使える」とか言われてきました。分かりやすいところだと、宇都宮の中心である二荒山神社の屋根は銅板です。
現在でも、瓦と銅の建材メーカーでは「瓦と銅製雨樋等の銅製品の相性が良くないこと」の詳細は、お互いの業界批判になってしまうので、公表していないようです。銅製建材メーカーの中の人に聞いたところ、「銅板が腐食しやすいのは、瓦の釉薬が原因なのでは?」と言うと瓦業界を敵にまわすことになるし、原因が確定してないので言えないそうです。「陶器瓦屋根の銅製雨樋や銅製谷に穴が開きやすいという話」をネット検索しても、施工者の現場での経験や意見が殆どです。専業設計者の意見は殆どありません。銅板を使った経験のある設計者は60歳代以上で、その方たちは現在は使っていないでしょう。現在使っているのは有名な方だと、藤森照信さんがいらっしゃいます。
銅製雨樋に穴の開いた理由は、酸性雨の影響では無いようだ
ネット上では、銅製雨樋に穴の開いた理由を、酸性雨の影響だという施工者や建材メーカーが多いのですが、銅製屋根の腐食箇所が以下の3箇所のみに限定されており、銅のメーカー団体である(社団法人 日本銅センターによると)日本の酸性雨はPH4.5~5.8と銅屋根の耐久性に対して問題になるほどではないとのことなので、酸性雨の影響は、ほぼ無いと考えて良いと思います。
傷みやすい箇所は以下の3箇所のみ
1.陶器瓦屋根の銅製軒樋の内側。瓦から雨水が落ちてくる部分。一番上の写真です。
2.陶器瓦屋根の銅製谷部分。屋根瓦の谷のようになっている部分のこと。
3.銅腰葺と陶器瓦屋根接触部分。高級和風住宅の屋根にある銅と瓦が一緒に葺かれている屋根の接触部分。
何軒か陶器瓦+銅製雨樋での樋の穴空きをみましたが、私が見たお宅では20年くらいは穴が開いていません。20年近く異常無しなので、これで耐久性が低いと言うのかは疑問。しかし、ネット情報によると6年で穴の開いた銅製雨樋もあるらしい。ちなみに厚さ0.35の銅板屋根+銅製雨樋の場合は、金属自体は60年くらい持つと言われている。
銅製雨樋に穴の開いた原因は、瓦の釉薬(ゆうやく)による電蝕だと思う
私は、銅腐食の原因は、陶器瓦(釉薬瓦とも言われる)を作るときの色付けに使う釉薬(ゆうやく) の中の金属成分が雨等により流れだし、銅に付着して、電蝕(でんしょく)を起こして、銅が腐食しているのではないかと思っています。電蝕の意味をザックリいうと、異なった金属同士を密着させ、その間に水分(大気中の水分含む)があると、腐食すること。だから、瓦の上を流れた水の溜まりやすい(水に叩かれやすい)3箇所が腐食したと思います。
電蝕(でんしょく): 「電気化学的腐蝕」の略。二種の異なる金属が同時に電解質溶液に接触したとき、金属間の電位差によりイオン化傾向の強い金属から弱い金属に電子が移動、電荷を失った金属原子がイオンとして溶液中に溶け出すことで金属が腐食する現象を言う。(はてなキーワードより)
陶器瓦の場合の銅製屋根及び銅製雨樋の傷みの対策
1.陶器瓦屋根の銅製軒樋の内側。→銅製雨樋で部分補修し、全ての雨樋を架け替える場合は、ステンレスかガルバリウム鋼板の雨樋とする。瓦+銅製雨樋にはしない。
2.陶器瓦屋根の銅製谷部分。→カラーステンレスで谷部分を葺き替える
3.銅腰葺と陶器瓦屋根接触部分。→カラーステンレスに葺き替え。また銅板葺きする場合は接着面を銅板2枚貼りとする。もしくは、タニタの専用商品「酸仕舞」を使う。
最近の銅板はダメだという風潮は残念。住宅に使いたい
銅製雨樋や銅製谷の穴あきが、住宅建築業界に知られるようになってから、屋根材や雨樋に銅を使うことが殆ど無くなりました。銅は値段が高いのに耐久性が無いというレッテルが貼られた感じです。ガルバリウム鋼板に取って代わられました。
ただし、陶器瓦と銅板の相性が悪いだけです。屋根と雨樋の両方を銅板で造ったら腐食も無く長持ちするし、素晴らしい風合いになります。外壁材としても是非使ってみたい材料です。下の写真は外壁と屋根が銅板です。有機的でいいですね。
藤森照信さんのチョコレートハウス。外壁と屋根は銅板。三井住友金属鉱山伸銅さんよりお借りしました。経年すると、緑青(ろくしょう)がふいて、緑色になり味がでますね。
緑青(ろくしょう): 緑青(ろくしょう、Patina)とは、銅が酸化されることで生成する青緑色の錆である。銅青(どうせい)や銅銹(どうしゅう)ともいう。銅合金の着色に使用されたり、銅板の表面に皮膜を作り内部の腐食を防ぐ効果や抗菌力がある。(ウィキペディアより)
銅の耐久性は鎌倉の大仏が保証。自由の女神も銅製。やっぱり銅は長持ちするし味がある。住宅で使いたい。(ウィキペディアより)
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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>陶器瓦(釉薬瓦とも言われる)を作るときの色付けに使う釉薬(ゆうやく) の中の金属成分が雨等により流れだし 色付けしていない瓦なら大丈夫ということでしょうか。
コメントありがとうございます。大丈夫ではないと思います。 釉薬(ゆうやく)の影響と、もう1つ、雨水に打たれやすい部分(高低差のある場所から雨水が落ち、かつ雨水が集まって流れるような雨樋や屋根の谷部分)は、劣化しやすいと思います。