2025-09-20
Q1.0住宅小山の家(小山市)
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Q1.0住宅「小山の家」夏の温湿度実測結果──お客様インタビュー:高断熱住宅の夏の暮らしと除湿器活用実例

細長い縦辷り窓以外には、窓の外側に日射遮蔽材が付いている

お引渡しをして3年目の夏を迎えた、Q1.0住宅 「小山の家」。真夏の温湿度変化を実測し「どれくらい快適な室内環境になっているのか?」を確認しました。

概要(実測の目的・期間・特徴)

真夏の温湿度を実測することで良い点を再確認できるだけでなく、さらに快適にするための改善点を浮き彫りにするのが実測の目的です。

温湿度計は、当社が設置したものではなく、お客様が常時設置しているスイッチボット温湿度計です。

2025年8月1日(金)~8月31日(日)の31日間の温湿度データを送って頂きました。

その中から終日最も暑く、最高外気温が40℃を超えた 8月5日 のデータを選び、室内各所の温湿度推移をグラフ化して分析しました。測定期間の全てをグラフ化するのではなく、最も暑い日のみに絞って情報を抽出し、単純化して見やすく整理しています。最も外気温が高い1日を選んでいますので、他の日はより過ごしやすい日であったと言えます。

この住宅は、総2階ではなく下屋のある住宅です。総二階の家と比べて、空気が動きにくい下屋のある住宅は、温湿度を均一にしづらい環境ですが、下記のような快適な環境になっています。

特徴的なのは、新築から3年目の今年の夏から、除湿器を使って湿度を調整している点です。この断熱気密レベルの高断熱高気密住宅でさえ、普通の住宅ほどではないものの、エアコンのみで夏の湿度を快適範囲まで下げるのは難しいのです。

除湿器を導入したきっかけや、実際に使ってみた住み心地について、お客様へのインタビュー内容もあわせてご紹介します。

実測結果

はじめに、ザックリと実測結果をお伝え致します。

2025年8月5日(火)のQ1.0住宅 「小山の家」夏の温湿度実測結果

  • 居室(床下を除くの平均室温:27.2℃
  • 居室(床下を除く)絶対湿度の平均:13.6 g/m³

一般に、夏期の快適な環境は「室温26〜27℃くらい、絶対湿度12〜15g/m³くらい」とされます。本住宅は居室平均室温 27.2℃で快適範囲、居室平均湿度13.6g/m³は、快適範囲の中間値です。冬の実測結果と同じように快適な室内になっていました。

2025年8月5日(火)・小山市の天気と外気温

  • 天候:終日晴れ、雷雨なし
  • 最高外気温:40.8℃(10:15)
  • 最低外気温:27.5℃(5:00)

外気温の変化は次の通りです。
朝5時:27.5℃ → 7時:30.4℃ → 9:45:40.1℃ → 10:15‐11:30:40℃以上が約1時間強続く → 午後14時:39℃ → 17時:36.9℃ → 夜22時:32.4℃ → 23:45:30.7℃

朝7時〜23時45分まで30℃以上。午前中には40℃を超える時間帯もあり、終日非常に暑い日でした。

午前中の10:15分に最高外気温40.8℃を記録した理由は、外部の温湿度計を東面の郵便ポスト上に置いているからです。日の出と共に外気温が上がっていったことが分かります。

外部温湿度計は郵便ポストの上に置いた。ポストは外周壁面から910mm後退している

測定条件まとめ

項目内容
測定期間2025年8月1日 0:00 ~ 8月31日 24:00(31日間)
グラフ作成対象日8月5日 0:00 ~ 24:00(1日間)
天候晴れ・雨なし
対象人数大人2人・子供2人(計4人)
延床面積97.71㎡(約29.6坪)
温熱性能Q値 0.97 W/㎡K、UA値 0.34 W/㎡K、C値 0.5 cm²/m²(断熱・気密性能)
温湿度計設置場所外部1箇所・室内8箇所(合計9箇所)
ドアの取扱基本的に終日開放
日射遮蔽電動外付ブラインド、外付ロールスクリーン、ハニカムサーモスクリーンなどを多層で使用
エアコン冷房1 台(2階ホール壁掛け、10畳用)24.5℃設定。運転は弱風または微風、24時間連続運転。富士通ゼネラル AS-X281L 再熱除湿機能付
エアコン補足床下エアコンは暖房専用としているため、冷房運用には使用していない
送風機夏のサーキュレーター設置は無し
除湿器基本モードは“湿度設定モード”(湿度50%)。就寝時は音を静かにするため運転を弱。現在は2階ホールに設置。三菱 MJ‑PV250WX‑W コンプレッサー式
夏の温湿度測定条件

温湿度計の設置位置

温湿度を測定した9箇所は以下の通り

  1. 外部(東面玄関ポスト上)
  2. 1階キッチン
  3. 1階リビング
  4. 1階玄関ホール
  5. 1階和室床下(南側の床ガラリの下)
  6. 2階ウォークインクロゼット
  7. 2階ホール
  8. 2階子供室
  9. 2階寝室

室内各所の温湿度と外気温グラフ

背景の黄色が日照時間です。日照時間は気象庁小山市のデータです。

日差しと共に、外気温は上昇して7時に30.4℃、10時15分~11時30分までの1時間強が40℃以上、23時45分でも30.7℃の暑い日でした。

一方、オレンジ色の室温は、外気の影響を受けずに、27℃くらいで、ほぼ一定になっています。

1階キッチンの温湿度
1階リビング温湿度
1階玄関
1階和室床下
2階ウォークインクロゼット
2階ホール
2階子供部屋
2階寝室

一日の平均室温について

各部屋の1日の平均室温
各部屋室温推移
  • 上記グラフを見ると、室温は、ほぼ均一であると言って良いと思います。
  • 居室(床下を除く)の平均室温:27.2℃、床下を含んだ平均室温:27.3℃
  • エアコンのある2階ホールの平均室温が26.9℃で一番低く、一番平均室温が高いのが、2階子供部屋の27.7℃です。その差は0.8℃。
  • エアコンから一番遠い1階和室床下(基礎内部)が27.8℃と一番高くなっています。しかし、床下と言えど、平均室温27.3℃から0.5℃高いだけです。
  • 1台のみ稼働している壁掛けエアコンは、2階吹抜けに面するホールの壁に付いています。
2階ホールの冷房用エアコン 富士通ゼネラル AS-X281L 再熱除湿機能付

夏の室温が、ほぼ均一である理由?

吹抜けを含んだ開放的な間取り
  1. 高い断熱・気密性能:温熱性能値は上記測定条件参照
  2. エアコン冷房:エアコンの設定温度と稼働時間は上記測定条件参照
  3. 吹抜けを含んだ開放的な間取り
  4. ドアを、基本的に終日開け放して生活していること
  5. 日射遮蔽していること

これらが組み合わさることで、温度ムラを抑えています。これは、当社の他の施工例でも行われていることです。通常は上記にプラスしてサーキュレーターを置き、冷気を送風することも多いですが、現在は理由があり置いていません。理由はお客様インタビューをご覧ください。

相対湿度と絶対湿度の違い

絶対湿度は室温に左右されずに実際の水分量を把握できるので、湿度管理や結露防止の判断に便利な数値です。

指標意味特徴
相対湿度(RH)その温度で空気が保持できる最大水蒸気量に対して、どれくらい含んでいるかを%で表す温度が上がると下がる/下がると上がる(同じ水蒸気量でも変動する)
絶対湿度(AH)空気1㎥あたりに含まれる水蒸気の質量(g)温度に左右されない。実際の水分量を把握できる

各箇所の絶対湿度の平均値

居室(床下を除く)平均絶対湿度:13.6 g/m³、床下を含めた平均絶対湿度:13.9 g/m³。

本住宅は、居室の平均室温27.2℃、居室平均湿度は13.6g/m³で快適範囲に収まっています。一般に、夏期の快適な環境は「室温26〜27℃、絶対湿度12〜15g/m³」とされます。

1階和室床下の絶対湿度は16.1g/m³です。1階和室床下の温湿度計は、床ガラリ下の基礎内部にあります。この部分のみ絶対湿度が高い理由として、温湿度計の直上に、洗濯物を干している場合があること。また、温湿度計が置いてある位置が建物の端で、他と比べて通気も良くないことが考えられます。床下結露する心配はありません。

各部屋の平均絶対湿度
各部屋の絶対湿度推移

相対湿度について

相対湿度もグラフを作ったので掲載しておきます。

各部屋の平均相相対湿度
各部屋の相対湿度推移

除湿器

お客様が設置している除湿器は、三菱 MJ‑PV250WX‑W。コンプレッサー式除湿器です。

現在は2階ホールに設置。基本モードは“湿度設定モード”(50%)。就寝時は音を静かにするために弱モードで24時間連続運転しています。排水を捨てる回数は1日1回とのことです。

除湿器の効果と使い心地は、下記のお客様インタビューをご覧ください。

今年から設置しているコンプレッサー式除湿器 三菱 MJ‑PV250WX‑W 

お客様インタビュー:高断熱住宅の夏の暮らしと除湿器の活用

温湿度データをお客様に送っていただき、グラフ化して室内環境を把握しました。その上で気になった点を電話でインタビューしました。真夏のQ1.0住宅の住み心地、除湿器を導入したきっかけと、実際の使い心地について伺った内容をご紹介します。

Q1. 室内ドアは普段どのようにしていますか?
A. 2階のトイレ以外は、ほとんど開けています。2階トイレは開き戸で、開けていると寝室に入れないので閉めています。玄関ホールの引き戸は、来客がある場合もあるため、時々閉めることもあります。1階トイレ引戸も開けています。


Q2. 2階子供室の平均室温は27.7℃、寝室は26.7℃と、ホールを挟んで部屋が近いのに1℃違います。理由は何だと思いますか?
A. どちらも入口ドアを開け、ホール天井から空気を入れる個別ファンは回しています。1℃の差は気づきませんでしたが、理由として考えられるのは、ホールに付いているエアコンの両サイドのファンの向きを寝室側にしているからだと思います。以前、寝室が暑く感じたため、寝室側に風が行くように設定しています。


Q3. 居室(床下を除く)の平均室温27.2℃、絶対湿度13.6g/m³です。一般的に快適範囲ですが、さらに温度や湿度を下げたいと思いますか?
A. 特に不快に感じることはありませんので、温度や湿度を下げたいとは思いません。強いて言えば、風呂上りに少し暑いと感じるくらいです。


Q4. 除湿器を導入したきっかけを教えてください。
A. 昨年、少し蒸し暑く感じたので今年購入しました。もともと除湿器に興味がありました。


Q5. 除湿器を導入する前、去年の夏の温湿度はどうでしたか?除湿器を買わずに、エアコンとサーキュレーターで湿度を下げる等の方法は検討しましたか?
A. 去年の温湿度の数字は覚えていませんが、今よりは、少しだけ蒸し暑く感じました。子供が小さいため、サーキュレーターを置くと悪戯してしまうので使えません。ですから、エアコン+サーキュレーターで温湿度を下げる方法は検討しませんでした。冬だけは、脱衣室にサーキュレーターを置いて、浴室の湿気を室内に分散しています。


Q6. 除湿器(三菱 MJ-PV250WX-W)を選んだ理由を教えてください?
A. ネットで調べ、コンプレッサー式がコスパが良く、種類が豊富で一般的な方式だったので選びました。
その中でも、タンク容量が最大24.5Lと多く排水回数が少なくて済むこと、湿度設定ができることが、この機種を選んだ決め手でした。パワフルモードで素早く湿度が下がるのも便利です。
ただし、除湿時、空気は暖められて排出されるので、室温は少し上がるかもしれません。


Q7. 排水はどのくらいの頻度で行っていますか?運転モードも教えてください?
A. 1日1回、朝に捨てています。運転モードは、昼は湿度設定50%モード、夜は音が気になるので弱運転にしています。24時間連続運転です。それで1日1回です。


Q8. 和室床下の湿度がやや高めです。理由は分かりますか?床ガラリは全て開いていますか?
A. 和室床下だけ湿度が高いのは、温湿度計の直上に洗濯物を干すことがあるからかもしれません。夜、洗濯する場合は室内に干しています。(また、和室の温湿度計は基礎内部あり、かつ家の端で通気も良くない場所のため、やや湿度が高いのかもしれません)

1階に7か所ある床ガラリは全て開いています。


Q9. 夏の日射遮蔽はどうしていますか?エアコンをサーモオフさせないように、あえて日射取得する時間を設けたりしていますか?
A. 外付けスクリーンと室内ハニカムは、終日全て降ろしています。エアコンをサーモオフさせないために、あえて日射取得はしていません。

日中は不在が多く、特定の時間帯のみ日射遮蔽材を上げて、日射取得してエアコンを連続運転させるなどの調整が難しいのです。そういう環境なので、完全に日射遮蔽する方がシンプルで良いと考えています。

植栽が良く見えるリビングのFIX窓だけは、景色が良いので、外付ロールスクリーンとハニカムサーモブラインドを開けていることも多いです。

リビングFIX窓。ピクチャーウィンドウで外の景色を絵画のように切り取る

※サーモオフとは、設定温度に達してエアコンの冷暖房運転が一時的に止まっている状態のことです。室温が上がった、または下がった時に、自動的にコンプレッサーが再稼働しエアコンが運転します。日射遮蔽すると、室温が設定温度に達してエアコンが止まりやすくなるため、湿度も下がりにくくなります。上記の話は、あえて日射取得することで室温を上げて、エアコンをなるべく連続運転させることで、湿度を下げることを、していらっしゃるのか?を聞いています。


Q10. 日射遮蔽するとエアコンがサーモオフすると思いますが、長時間サーモオフしていますか?
A. どのくらいの時間サーモオフしているかは分かりません。


Q11. 夏はサーキュレーターを使っていますか?
A. 現在は、子供が悪戯するため置いていません。子供が大きくなったら、なるべく冷気が移動するように、サーキュレーターを使うかもしれません。


Q12. 除湿器はどこに置いていますか?
A. 最初は1階リビングに置いていたのですが、子供たちに悪戯されてしまうので、現在は2階ホールに置いています。

まとめ

  • Q1.0住宅「小山の家」の夏の温湿度は快適範囲にあり、お客様も快適に感じていることが分かりました。
  • この住宅の温熱性能くらいの高断熱住宅であるなら、夏の湿度管理は、日射遮蔽をきちんと行ったうえで冷房して、かつ最適な除湿器を併用すると、簡単に湿度を快適範囲に落としやすいことが分かりました。大きな手間なく室内が快適になるので、良い選択肢の1つだと思いました。

冬の温湿度実測結果

冬の温湿度実測結果は施工例にあります

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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