2025-01-29
防水・雨漏り対策
高断熱・高気密住宅
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バルコニーのFRP防水とサッシ取付、どちらを先に施工するのが正解なのか?付加断熱住宅の注意点の1つは防水です

先日のブログは、「付加断熱住宅マニュアルに、バルコニー部の納まり図が掲載されていない」ことについて書きました。

12社の付加断熱マニュアルを掲載しましたが、バルコニー部の納まり図が掲載されていたのは2社のみ。そのうち、サッシの絵が入った納まり図が載っていたのは、1社のみでした。

バルコニーのある住宅が、「付加断熱住宅界隈では、減少傾向にある」とは言え、バルコニーのある住宅が殆どですから、バルコニーの納まり図は掲載されるべき図面だと思います。

私見ですが、「付加断熱住宅マニュアルに、バルコニーの納まり図が掲載されていない理由」は、「付加断熱住宅が、今後一般化していく仕様であり、現在は業界全体に経験値が少ないこと」、なので「掲載してしまうと、漏水事故が多くなる可能性があるから」現在は掲載が少ないのかもしれない、と感じました。

具体的には、充填断熱の住宅と比べて、設計施工が難しい付加断熱住宅に、バルコニーを造ることになると、断熱・気密に防水の要素が加わるので、さらに難しくなり、マニュアル通りに造れない場合は、雨漏りが多くなってしまうかもしれない。と考えて、バルコニーの納まり図が掲載されていない、ということです。

今日のブログは、

  1. 付加断熱住宅の注意点は、防水である
  2. バルコニーのFRP防水とサッシ取付、どちらを先に施工するのが正解なのか?「防水先施工」と「サッシ先施工」ではどちらが良いのか?

について書きます。

付加断熱住宅の注意点の1つは防水である、その理由とは?

真面目に高断熱・高気密住宅を造ろうとすると、どうしても「断熱と気密」を優先してしまい、雨漏り対策(防水)のことは、後回しになる傾向があると感じているので、私はそうならないように注意しています。

同じ内容が、このマニュアルのP31にも記載されており、私の感じていたことは間違いではなかったと安心しました。

上記マニュアルP31の抜粋。下はマニュアルへのリンク

https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/CatalogDetail.do?method=initial_screen&type=clcsr&volumeID=YKKAPDC1&catalogID=7041100000&designID=pro

どういうことか説明すると、付加断熱でない充填断熱のみの家でも、元々バルコニー廻りは「雨漏り事故」が多い箇所なので、付加断熱+バルコニーになると、より雨漏り事故が多くなる可能性があるからです。

付加断熱の家は、充填断熱の家とは、外壁下地の構成が違います。付加断熱は1層多くなるので、バルコニー部だけでなく、外壁下地の全ての部分で、造り方が違うわけです。

付加断熱の家の造り方を、一般的な充填断熱の家と比較すると、付加断熱の家のほうが、倍以上の手間と材料が掛かります。手間の内容は、設計時の付加間柱設置の計画、長い特殊ビスで多数の付加間柱を等間隔に設置すること、その後、隙間が無いように付加間柱間に断熱材を入れることです。

付加断熱とすることで、断熱が分厚くなり、断熱性能は飛躍的に上がり、快適・省エネになります。しかし、工数と材料が多くなるので値段が高くなり、工数が多くなることは、より注意しないと、漏水等の事故も多くなる、ということだと思います。

付加断熱施工中。縦の竪樋下地木材と、掃除道具を吊るす、横の下地木材を入れたところ

さらに説明すると、付加断熱の家は、竪樋の取付金具や外付ブラインド等、外壁面にモノが付く部分全てに、ビスや釘が効く、外壁下地木材を設置しておく必要があります。その分の手間と材料も掛かります。一方、一般的な充填断熱の家の場合は、付加断熱層を設けていないので、元々柱があるところに、外壁材からビスや釘を揉むと効くため、下地木材は最小限で済みます。

付加断熱の家にバルコニーを設置する場合は、さらに防水工事がプラスされます。設計施工の工数も、さらに増えて難しくなります。

最初から、付加断熱の家にバルコニーを付けることが、手間が掛かって難しいことだと分かっていれば、事前に対処できます。

しかし理解していない場合は、計画していない状態で、ベランダ防水などの施工に入ってしまうことになります。そんな状態をマニュアルP31では、「後回しになってしまう」と言っている気がします。

バルコニーのFRP防水とサッシ取付、どちらを先に施工するのが正解なのか?「防水先施工」と「サッシ先施工」ではどちらが良いのか?

上記写真の赤線の囲み文字を見てください。この2017年発行のYKKの付加断熱+樹脂サッシの納まり図では、「開口部(サッシ)をベランダFRP防水よりも先に取り付けてから、防水を施工する」と、「サッシ先施工」で書いてあります。

しかし、現在はFRP防水をサッシ施工より先に行う「防水先施工」が主流になっています。

「防水先施工」とは、下の写真のように、サッシ取付より先に、FRP防水を施工する方法です。

防水先施工。FRP防水完了写真、これからサッシを取り付ける
防水先施工。赤ラインがFRP防水
防水先施工(サッシ後施工)

「防水先施工(サッシ後施工)」と「サッシ先施工(防水後施工)」のどちらも間違いではありませんが、「防水先施工」のほうが、サッシの無い状態で防水が施工できるので、上手く綺麗に防水は施工できます。

逆に、「サッシ先施工(防水後施工)」で、サッシを先に付けて、後から防水を施工すると、サッシ下は高さが無いので、防水職人はベランダに腰を落として、顔をベランダ床面近くにして、サッシ下を覗き込みながら、防水施工する必要があります。

サッシ先施工の問題点は2つ。無理な態勢でサッシ下を覗き込みながら施工するので、そこを上手く施工出来ない可能性があること。もう1つが、サッシのツバの上に、FRP防水を塗布することになり、その取り合いは、経年すると剥がれやすい可能性があり、そこが雨漏り箇所になる心配があることです。

サッシ先施工(防水後施工)

ただし、良いと思われる「防水先施工」も悪い部分があります。防水した後で、サッシを付けるので当然なのですが、2つ上の絵のようにサッシ下の取付釘(ビス)は防水層を貫通します。防水層を釘やビスが貫通するので、その釘廻りは、間違いなく雨漏りしやすい箇所になります。

サッシ下枠もビスで固定するので、釘(ビス)を打つと防水層に穴が空き、雨漏り箇所になる可能性がある
FRP防水とサッシ下枠取り合い。これから釘やビスを打つと防水層を貫通する

釘(ビス)上にシーリング材を塗ることで、対応するのが良いと思いますが、釘(ビス)上のシーリングは劣化して間違いなく切れるので、必ずしも「防水後施工」が良いとは限りません。

サッシ下枠に釘(ビス)を打ってからシールをしたところ

「防水先施工」と「サッシ先施工」、どちらにもメリット・デメリットがあり、こちらが完全に正しいとは言えないのが難しいところです。

ネット上でも、意見が分かれる箇所ですが、私は、サッシが無い状態で綺麗にFRP防水が施工できること、またビス貫通部のほうが雨漏りの可能性面積が小さく、素人でもビス上のシーリングは施工できるので、どちらかと言うと、「防水先施工」のほうが良いと感じます。

当社が加盟している、住宅保証機構(住宅瑕疵担保責任保険会社)のマニュアルでは、サッシ下が120mm未満の場合は、「防水先施工」となっています。

住宅保証機構のマニュアル

https://filebox.mamoris.jp/%E6%96%B0%E7%AF%89_%E5%9F%BA%E6%BA%96%E5%90%8C%E7%AD%89%E4%BB%95%E6%A7%988_%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%8B%E3%83%BC%E4%B8%8B%E7%AB%AF120%E6%9C%AA%E6%BA%80.pdf

シーリングを打つ場合は、必ずその箇所にプライマーを塗り、プライマーが乾いてからシーリングをすることが、シーリングが確実に密着するコツです。

※プライマーとは、シーリング材を建材に接着させるための下塗り材(塗料)。手で触るとベタベタします。

この項の写真は、住宅保証機構の写真を除いて、下記ブログからお借りしました。バルコニーの「防水後施工」と「防水先施工」ではどちらが良いのか?がとても分かりやすく書かれており、必見です。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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