大工と建具屋で造る、造り付け家具の扉が入る前の様子をレポート
大工と建具屋で造る、造り付け家具の扉が入る前の様子をレポート
宇都宮市で建築中の小さなQ1.0住宅、SH-house。今日のブログは、大工と建具屋で造る、造り付け家具の扉が入る前の大工工事の様子を、家具ごとに1つずつ説明します。
扉が入る前までが、大工の仕事。
この後、塗装屋が塗装を行い、建具屋が扉を取り付けます。
扉が入ると室内の印象がまるで変わりますが、扉で中の様子が見えなくなるので、その前の様子のレポート。
昨日の朝は、塗装屋の親方に、開口一番「家具が多いなぁ(塗るところが多くて大変だなぁ)」と言われてしまった。
小さな家を使いやすくするには、家具と収納が命なのである。その理由はこちらのブログをご覧ください。
キッチン背面のリビング家具
キッチン背面のリビング家具は、一体に見えるが、3つの家具(箱)で構成されている。
1つが、床下エアコンが収納される、集成材カウンターまでの高さが1.1Mの家具。カウンター下に1枚の引き戸が入り、粉河の木製レールの上を動いて飾り棚となる。
また、その下には格子戸が納まり、中には床下エアコンが設置される。
2つ目が、レンジフード裏の床からの高さ1.1Mの開き戸。中は4段の可動棚が納まる。
3つ目は、その上に載る、透明ガラス引違い収納。リビングから見て飾り棚のように使う。
3つの家具には、これから建具(ドア)が入るので、印象が違うものになる。
キッチン背面のパントリー的収納
パントリー(Pantry)とは、キッチンの一部、あるいはキッチンに隣接して設けられる小さな部屋もしくは収納スペースである。 食品や飲料のほか、日常使う頻度の少ない調理器具や什器類をストックするために利用される。
小さな家の場合は、小部屋を設けるのは難しいので、パントリー的な大容量収納を設けることにしている。
寸法幅90㎝×高さ2.37M×奥行60㎝の収納である。奥行が60㎝あるので、かなりの大物も入るから便利である。棚板の奥行は45㎝。
両開き戸が付く。
今回、全ての両開き戸の取っ手は、施主の希望で、定番のステンレスでなく木製になっている。これも経年変化がどうなるのか?楽しみである。
キッチンの背面収納(食器棚+家電)
キッチンが造作キッチン(ぞうさくきっちん)のため、背面収納も造り付けた。
下は扉の付かないオープンな棚で、レンジ等の家電が入る。
上はガラスの引違戸が付く食器棚。
ちなみに造作キッチンのキャビネットも、スパイスラック以外は、扉と抽斗の付かないオープンキッチンである。キッチンの床には、ステンレスの切り板が貼られて、ラフに使える仕様とした。
1人4役の玄関収納(下駄箱+コート掛け+帽子入れ+傘掛け)
玄関ドアを開けると、左側に幅≒1.7M×高さ2.4M×奥行55㎝の大容量の玄関収納が付いている。扉は、両開き戸2つが並ぶ。
靴やコート、傘や帽子を部屋まで取りに行くのは面倒なので、玄関収納は、窓を潰してでも大容量にしている。
この玄関収納は、内部に下駄箱+コート掛け+帽子入れ+扉内側の傘掛けという4つの役割を持ち、この収納のお陰で、片付く玄関も実現している。
小さな家は狭いので、1つで何役も兼ねる家具や収納を、できるだけたくさん造るのが理想だ。
扉には革靴をカビさせない通気穴を開けて、扉の外側には姿見も付けた。玄関の採光は玄関ドアから取っている。
トイレ収納
便器の背面には、引違戸の収納が設置された。
この収納内部には、換気扇が付きトイレの換気を行う。
通風できるように、引違戸には4つの穴が開けられる。
収納とは関係ないが、トイレを入ると、左右に手摺を設置した。向かって左は、手を置く場所であり下には2連のペーパーホルダーが付く。手摺兼用の紙巻き器設置場所である。
右側は大工が削った手摺である。手摺も既製品を使わないほうが、普遍性が出る。既製品の場合、手摺の金物で設置した年代がわかることがあるからだ。
トイレと洗面所の床はコルクタイル。
洗面化粧台
洗面化粧台、両開き戸内部のキャビネットの底板には、ステンレスが貼られる。
施主の選んだ大きめの洗面ボウルが付き、3面鏡のミラーキャビネットが付く。洗面化粧台とミラーキャビネット幅は90㎝と大きめ。
洗面脱衣室の吊り戸収納
1坪の洗面脱衣室には、収納を設けるのは難しい。
その場合は、洗濯機上に吊戸棚を設ける。奥行40㎝、高さ90㎝で両開き戸が付く。
1階本棚
1階の本棚は、アップライトピアノの隣に設置する。固定しない本棚である。
当社の施主は、本棚を造り付けることが、ほとんどである。他社と比較すると、これも珍しいことだと思う。
2階本棚
階段を上がると、2階には、窓下に3つの本棚が固定される。高さは共通の77㎝。奥行は30㎝の本棚が2箇所、35㎝の本棚が1箇所。
35㎝の本棚上のカウンターには、オーディオがセットされる。
クローゼット収納
このようなクローゼット収納が、寝室を含めて3か所ある。
以上がSH-houseのザックリとした家具と収納の説明である。
昨日から室内の木部の塗装が始まった。
室内の大工工事が完了すると、次は塗装工事となる。
SH-houseでは、壁と天井は左官が珪藻土を塗るが、その前に珪藻土と取り合う(密着する)木部の塗装を完了させておくのだ。
珪藻土を塗った後に塗装工事をすると、珪藻土に塗料がにじんでしまうので、工程が逆になることはない。クロスの場合も、先に木部の塗装は完了させておく。
ちなみに、既製品の建材を使うと、塗装済もしくは木目シートで出来たイミテーションの木材を使っているので、塗装の工程はない。しかし、とても安っぽい仕上がりになる。これがハウスメーカーやローコストビルダーの家である。
塗装工事後の工程
木部塗装が完了すると、左官が珪藻土を塗り→建具屋がドアを設置して→塗装屋が再度ドアを塗装しに来て→トイレ等の住宅設備を設置した後→クリーニングが入り→クリーニングして綺麗になった後の、フローリングと階段の塗装をして、室内の工事がほぼ完了となる。
塗装屋の親方に指摘されたように家具が多めであるが、小さな家を使いやすくするには、造作家具を適所に設ける必要がある。
Q1.0住宅の断熱性能の高い家の適所に、家具と収納が納まって初めて使いやすい家となる。
これらの家具に建具屋が扉を付けると、全く雰囲気が変わるのでまたレポートします。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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