2019-09-17
Q1.0住宅宇都宮の家 SH-house(宇都宮市)
インテリア・家具・収納

小さな家こそ、大工と建具屋で造る、造り付け家具が必要な理由

引き戸の鴨居(上枠)に、吊車用の溝を造る高久大工

 

宇都宮市で建築中のQ1.0住宅、SH-houseは延べ床面積24.5坪と小さな家なので、大工と建具屋で造る、造り付け家具(造作家具)が必要で、大工が絶賛施工中であったが、昨日ほぼ完了した。

 

今回はコンパクトで間仕切りもほとんど無い家だったためか、造り付け家具も、同じ種類のモノを含めると17個と多めでした。

 

今日のブログは、「小さな家こそ、大工と建具屋で造る、造り付け家具が必要な理由」を書きます。

 

小さな家に造り付け家具が必要な理由

たくさん造り付け家具が設置された。ここまでが大工の仕事。塗装の後、建具屋がドアや引き戸を付ける。素材を統一して統一感がでる。

 

小さな家に造り付け家具が必要な理由は、小さな家は室内面積、容積が限られるので、あらかじめ適所に造り付け家具や収納を設けておかないと、室内が片付けにくく散らかりがちになり、生活しにくくなるから。

 

特に延床面積が25坪以下の家は、造り付け家具を含めた収納計画に配慮しないと、使いにくい。

 

大きな家なら、造り付け家具や収納がなくても、ウォークインクロゼットのように、一部屋を収納にすることもできるし、家具屋で置き家具を買ってきて設置することも可能だ。

 

しかし、小さな家は狭いので、余った部屋やスペースはないし、小さめスペースに合う「置き家具」を見つけるは至難の業なのだ。

 

その上、小さな家は人と家具との距離が近くなるので、二〇リ、〇ケア等の、安っぽい置き家具を設置してしまうと、その印象がダイレクトに空間を支配する。

 

だから、小さな家こそ、空間に馴染む造り付け家具が必要なのである。

 

造り付け家具の造り方は2通り

造り付け家具の造り方は2通りになる。

 

1つは、家具屋さんに、材料と工賃を一括して依頼する方法である。造り方は基本的に、予め図面を描いておき、室内が石膏ボードの状態になったら現場のスペースを採寸して、家具屋さんの工場で造ってから現場に搬入する。

 

工場で造るので、現場のスペースよりも少し小さめに造り、設置するときに隙間を埋めるという施工方法だ。

 

工場に設置された専用の道具を使うので精度は高い。しかし値段も高めとなる。塗装は、工場で家具塗装を行う場合と、現場で塗装業者が刷毛塗りする場合がある。今回は、造作キッチンは家具工事とした。

 

2つ目は、家具の箱を大工が造り、ドアを建具屋が造るという方法である。これが大工と建具屋が造る、造り付け家具である。

 

材料も工務店が支給するのが普通であり、現場で大工が箱の収納部を造るので、スペースピッタリに隙間なく造ることができる。

 

大工が箱を造った後で、建具屋が家具のドアを設置しする。塗装は現場で刷毛塗りするのが普通である。

 

値段は、家具屋さんに頼むよりも安めとなる。安めな理由は、専用の高価な機械を使わずに造るということもあるだろう。

 

普段、この2者は、大工工事と建具工事をしており、家具屋さんのように固定費が掛かりにくいというのも値段が安めな理由だと思います。

 

造作家具のメリット

造作家具とすると、既製品の家具やドアを使うよりも、ドアと家具の材料を統一できるので、室内に統一感がでるし、部品交換をしながら長く使える。

 

既製品の家具やドアを使ってしまうと、ローコストビルダーのような安っぽい室内に見えてしまうのだ。値段の高めな大手ハウスメーカーも、室内の様子がローコストビルダーと変わらないのは、この既製品の家具とドアが最大の原因である。

 

だから最低限、家具とドアは、既製品(ウッ〇ワンとか、大建工〇とかの建材)を取り付けるのではなく、大工と建具屋と塗装屋で造る、造り付けにするべきだ。

 

既製品は、10年もしないうちに、部品が廃盤になるので、壊れた場合に修理ができなくなくて、全て交換になる場合が多い。

 

例えば、既製品の洗面台を設置すると、水栓(水がでるところ)は10~15年で壊れることが多いが、その時には水栓は廃盤になっているので、合う水栓が調達できず、洗面台を全て外して廃棄し、交換になることが多い。

 

その場合、床から出ている給排水管の位置も変える必要があるから、床の一部を壊すことになるし、鏡の裏面に入れた下地の位置も変わるので、壁の一部も壊すことになる。洗面台を交換すると、洗面所の床と壁の仕上げも「やり替え」になるのはこのためだ。

 

新築時に、安い既製品の洗面台を取り付けても、後々かえって高く付くことが多い。

 

それに対して、造作で洗面台を造ると、室内の統一感がでる上に、水栓等の部品のみの交換が可能になるから、最初は既製品より高くても、メンテナンス費用も安く済むためお得である。

 

洗面台に限らず、既製品の家具やドアの部品も8~10年程で廃盤になるから、修理できる可能性が極めて低くなり、造り付けで造った場合と比べると、メンテナンス費用は高いと考えた方が良い。

 

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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