2017-07-20
リフォーム

リフォームしやすい家・リフォームしにくい家の具体例。全ての家は将来リフォームをするので、新築時の構法選択は木造軸組構法の1択だ!!!

解体しない部屋の床との「取り合い」は、壊さないように慎重に行った。

 

今日のブログは、「リフォームしやすい家」・「リフォームしにくい家」の具体例を書きます。

 

リフォームしにくい家の場合、今回のような床の貼り替え等の軽微なリフォームさえも大変で、追加工事になる可能性があります。

 

私もお客さんも泣きました。

 

部分リフォームの見積は、スケルトンリフォームの見積よりも難しい

柱と梁だけの状態のように、骨組まで解体して行うスケルトンリフォームのような大規模リフォームは、新築に準じて見積ができるので、そんなに難しくはないです。

 

難しいのは、今回のように部屋の1部分のみを壊して、見積の予想と違っていた時です。

 

今回は、床下が充分確認できず、下地の組み方が予想した見積と違っていたのですが、一番普遍性のある木造軸組構法で造られていたら、このようなことにはならなかったです。

 

今日のブログの結論は、新築する場合(中古住宅を買う場合も)、将来必ずリフォームをすることになるので、構法は木造軸組構法(木造在来工法)の1択だという話です。

 

その理由は、普遍性があり地域の職人が対応出来て、下地が見えない場合でも下地木材の組み方が想像しやすいからです。

 

ただし、解体してみたら、想像していた範囲の木材が腐っていたなんてこともあり得ますから、こうなると構法の問題ではありません。

 

しかし、新築する場合や中古住宅を買う場合も、将来必ずリフォームすることを頭に入れて、リフォーム対応しやすい木造軸組み構法で家を建てる、買うことをおススメします。

 

では、見てみましょう。

 

リフォーム依頼の経緯とリフォームの内容

当社のウェブサイトをご覧になった方からメールで依頼を受けて、先週まで約30年前の大手ハウスメーカーの重量鉄骨造の床リフォームを行っていました。

 

リフォームの内容は、リビングと廊下約12坪の床フローリングと床下地の交換を行いました。木造軸組構法なら1週間で完了できる工事でしたが、床を壊して初めて鉄骨造だと分かりました。

 

また、フローリングの上に壁が建っている納まりだったことから解体工事も難しくて、思いがけず追加工事になり4日間工事が延びました。

 

リフォームのキッカケとリフォーム前の状態

これがカラーフロア。断面がベニアのように接着剤で積層されている。フローリングの下にはベニアを下貼りすること必須の床材である。

 

お客様が、リフォーム依頼をしたキッカケは、リビング床のカラーフロア(合板フロア)が劣化してブカブカになっていたこと。

 

歩くと、劣化した部分だけ沈むような状態でした。

 

フローリングが沈むようになった原因は、カラーフロアの下地に、下張りベニアが施工されていなかったこと。

 

根太という木材の上に、直接12㎜とか15㎜のカラーフロアを施工すると、荷重が分散しないので、10年程度で人が良く歩く部分のカラーフロアの積層された接着剤が剥がれてブカブカになってしまいます。

 

だからフローリングの下は、カラーフロア、無垢フローリングに関わらず、基本的に下貼りベニアが必要です。

 

30年くらい前だと、根太の上に直接フローリングを施工していたことも多く、大手ハウスメーカーでも、下張ベニアは施工していなかったのだと思います。

 

カラーフロアの下地に12㎜以上のベニアを貼っておくと、フローリングが部分的に劣化する可能性は少なくなります。

 

無垢のフローリングを使うことが多いので、久しぶりにカラーフロアを使いました。良いグレードのカラーフロアは結構値段が高いです。

 

ちなみに、床下には作業ゴミやコンクリートガラが沢山落ちていたことも驚きでした。30年前は、大手ハウスメーカーも工務店も牧歌的で大らかな時代だったのかもしれません。

 

中古住宅を買ってリフォームする時は、できれば詳細な図面が必要

施主は中古住宅でこのお宅を購入しました。外観は高級感があり綺麗。不動産業者の話によると、新築時は非常に値段の高い住宅であったようです。

 

しかし購入時、図面が全くありませんでした。だから構造も、ハウスメーカー名も具体的には分かりませんでした。

 

中古住宅を買う時は、最低限の図面として建築確認申請書は必要だと思います。

 

できれば矩計図、構造図、部分詳細図等の詳細な図面も欲しいところです。

 

見積時には建物を解体して下地を確認するわけにいかないので、図面が必要

見積時には、建物を解体して下地を確認するわけにいきません。見られる範囲を目視で確認して見積もりすることになるので、図面が無い場合、解体してみたら、「考えていたのと違った!」となる可能性が高くなります。

 

リフォームする場合、詳細な図面が無い場合、目視出来ない下地は、想像の見積しか出来ず、追加工事になる可能性が高くなります。

 

リビングの床下に入れず、床下地が確認できなかった

図面が無かったので、キッチンの床下収納を空けて床下に入りました。

 

床下は、30年前の一般的な木造軸組み構法と同じでした。土の上にコンクリートのピンコロがあり、木製の束が建ち大引きを支え、根太が載り、フローリングがあるという下地です。

 

この時点では、完全に木造軸組構法だと思っていました。

 

後日、白蟻業者に点検で床下に潜ってもらうと、床下の基礎の人通口が木材で塞がっておりリビングの床下地が確認できないばかりか、床下では他の場所にも移動できない造りになっていました。

 

床下に入れるように、床下点検口を3箇所増やして、合計4箇所から床下に入れる見積を提出しました。

 

本来なら床下点検口は、1箇所から床下全てに行けるようにすることが基本です。

 

また、床下の土からの湿気で、床束にカビが発生していたことから、白蟻の防蟻処理をしてから、床下全面に防湿シートを貼る見積としました。

 

床が壊せないので、大工が特殊な壁の際まで切れる際切丸鋸(キワギリマルノコ)を買って対応

床の上に建つ壁。普通の丸鋸だと、写真のように壁際に10㎝程度の床が残る。この後、際切丸鋸を使い、壁際で床にノコ目を入れて撤去した。

 

廊下の床を壊して、初めて床のフローリングの上に壁が建っていることが分かりました。これは、床を慎重に壊さないと、壁まで壊れる可能性があることを意味します。

 

この建物は、床の貼り替えをする場合は、壁と天井も壊してリフォームする前提で造ってあるということです。

 

木造軸組構法なら、壁と床を分離して壊せるので、床のみのリフォーム、壁のみのリフォームが行いやすいのです。

 

壁の端に丸鋸を入れて床を壊す必要があるので、大工が特殊な壁の際まで切れる、際切丸鋸(キワギリマルノコ)を買って対応しました。

 

今回のリフォームでは、この際切丸鋸(キワギリマルノコ)が大活躍しました。というか、この特殊な丸鋸が無ければ、リフォームは仕事が終わらないばかりか、仕上がりも良くなかったと思います。

 

際切丸鋸(きわぎりまるのこ)。

 

 

また、壁の一部から鉄骨柱が見えて初めて、鉄骨造だと分かりました。

 

リフォームがしにくい家の具体例

リフォームがしにくい構法としては、主に2つ。

 

1つは、ツーバイフォー2×4工法(別名:枠組み壁工法)。壁で建物を支える構法なので、1つの壁を撤去するのも難しいと考えなければなりません。間仕切りを変更するようなリフォームには、全く不向きです。

 

2つ目は、ハウスメーカーが建てている木質プレハブ工法。構造の安定についての独自認定がなされています。造り方も独特で、建物の造り方の詳しい情報を他社が取得するのは、ほぼ不可能だと思います。

 

それを改造するということは、構造の安定についての認定を外れる事になりますから、間仕切りを変更するようなリフォームがしにくい構法ということになります。

 

また、今回のような鉄骨造は、室内の下地材を全て撤去して、構造だけにしてリフォームするには向いていますが、床のみ部分的にリフォームするとか、壁のみリフォームするのは向いていません。

 

また、図面の無い住宅もリフォームがしにくい家の代表例です。既に書きましたが、見積時には、建物を解体することが出来ないので、図面が無いと、目に見えない部分は、全て想像の見積になるので、現実と違いが出ることも多いです。

 

リフォームがしやすい家、2つの特徴

リフォームしやすいのは、木造軸組構法の家で、かつ図面が詳細に揃っている家です。

 

中古住宅を買う場合も、この2つをチェックしてください。かつ、2000年以降に建てられた家だと、断熱性能も現行基準並みの家が多いのでおススメです。

 

木造軸組構法が何故リフォームしやすいかというと、既に書いたように、床と壁を分離してリフォームしやすい上に、耐力壁以外であれば、壁を取るといった大胆な間取りの変更が可能だからです。

 

新築時の図面(平面図)を見てみると、壁に筋違いの入っている壁を表す三角印等がついています。それが耐力壁です。

 

こういった図面を見れば難しい事は分からなくても、どの程度の間取りの変更が可能かが分かります。

 

また、木造軸組構法は、日本にある住宅で一番多い構法なので、地元の工務店(大工さん)で施工可能。一番普遍性のある構法がリフォームしやすいのは当たり前の話です。

 

ハウスメーカーで家を建てる場合も、ツーバイフォーや木造プレハブのような住宅でなく、木造軸組構法でかつ、普遍的な造り方の住宅を建てることをおススメします。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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コメント
猫好き

吉田さん、こんばんは 術後、体調は大丈夫ですか? 最近は木造軸組でも、昔ながらの筋交いのみのもの、○○ボードとかを併用するもの、木造軸組でも外断熱とか選択肢は増えている今日この頃ですが、その辺りはどうなのでしょうか? 2×4や木造プレハブはやたら耐震性を強調しておりますが、メーカーの出している数値は信頼がおけるのか疑問に思っています。 震度7に耐えた家とかいうCMも、地面が裏返るような場合だと、果たしてどうなのかと思います。

2017年07月24日
yoshidacraft

猫好きさん、こんばんは。 体調は、まあまあです。減量しようとダイエットしてますが、停滞期です。 酒は、家では飲まないようにしようかと思ってます。 木造軸組構法で多くなっているのは、外周は耐力面材を使って筋違いを無くし、断熱材を柱間に入れやすくする(充填断熱)というものです。当社はこの方法です。 また、柱の外側に断熱材を付加して分厚い断熱としています。 充填断熱と外断熱の論争は終わって、日本のトップランナーの間では、充填+付加断熱の分厚い断熱と、窓に性能の高い樹脂ペアガラスや樹脂トリプルを付けるという流れです。 2×4、木造プレハブ、木造軸組構法も耐震性は高く出来ますが、間仕切り変更を伴うリフォームをするなら、地域の職人が施工しやすく普遍性の高い、木造軸組構法の1択です。

2017年07月25日