2016-06-27
住宅探訪

那須町の宮脇檀氏設計の「VILLA 福村」&第一工房 高橋てい一氏設計の白河市立図書館を見学

那須宮脇檀1

6/26日曜日の午後はFacebookで話題になっていた那須町の宮脇檀氏設計の家「VILLA 福村」を見学させて頂きました。

 

住宅を見学できるのは貴重

宮脇檀(みやわきまゆみ)氏という有名建築家が42年前(1974年)に設計した住宅「VILLA 福村」(別荘)が那須町にあり、この度売りに出されたということで、見学する機会を得ました。公共建築は誰でも見学できますが、個人の住宅を見学できる機会は少ないので貴重です。

 

宮脇檀(みやわきまゆみ)氏とは

miyawa

出典

住宅建築業界以外の方は、宮脇檀(みやわきまゆみ)氏について知らないと思いますので、タケペディアがザックリ説明します。

 

日本の近代の住宅建築史には必ず出てくるビッグネーム。まゆみという名前は女性的ですが男性です。代表的な建築作品に打放しコンクリートの箱型構造と木の架構を組み合わせたボックスシリーズがあり、「松川ボックス」は1979年に第31回日本建築学会賞作品賞を受賞しています。

 

今回見学できた那須町の家も、打放しコンクリートの箱型構造と木の架構を組み合わせた住宅です。ちなみに以前勤務していた佐藤秀工務店のある上司には、打放しコンクリートではなく、「生地仕上げコンクリート(きじしあげコンクリート)」と言えと教えられました。「コンクリートを仕上げとする場合は丁寧に扱え」という意味です。

 

宮脇さんは著作も多数あり、私は、「宮脇檀の住宅設計テキスト」と「眼を養い手を練れ―宮脇檀住宅設計塾」の2冊を持っています。講義で語りかけるような文体なのは、宮脇さんが大学の先生でもあったからかもしれません。宮脇檀本

 

宮脇檀氏ウィキペディア

 

林に異物が突き刺してあるような外観

外観は抽象的な造形で目立ちます。街中にあっても目立ったでしょうが、林の中だと余計に目立ちます。良い意味ですが、林に異物が突き刺してあるような存在感です。緑にグレーの四角形と三角形のコンクリートの塊をねじ込み、一部を木造で造った印象です。

 

外観は型枠の精度が高いのが印象に残った

42年前の住宅ですが、型枠の精度も良いように思います。ちなみに型枠のコンクリートパネルは横貼りで寸法は1800×600。42年前のコンクリートパネルは、1800×600が一般的だったのかもしれません。セパレーターは600の真ん中に1段です。600の高さにセパレーター2段だと、セパが多くなりすぎてうるさい印象になったと思います。しかし、セパレーター1段だと、型枠が孕んでしまいそうですが、壁は垂直になっています。非常に慎重にコンクリート打設をしたと思われます。今、よく使われるのコンクリートパネル寸法は、1800×900、900方向にセパレーターは2段でしょう。

 

また、大変な工事だったと思わせるのが屋根。勾配のキツイ屋根下地もコンクリートです。勾配のキツイ屋根を、ガッチリ屋根足場を架けてコンクリートを打設したのです。屋根の水下部分の下は、多分足場でステージを組んで、その上に支保工を建てて、コンクリートと型枠の荷重を支えたのだと思います。施工も大変だったのではないでしょうか?

 

※この建物は、木造でなく鉄筋コンクリート造(RC造とも言う)。

※コンクリートの建物の造り方は、鉄筋を組んだ周りに、ベニアで型枠を設置して、コンクリートを流し込んで造ります。

※型枠セパレーターとは、型枠を保持する金物のことです。コンクリートの建物の表面に小さな丸い窪みが整列しているのが、セパレーターの両側に付くPコン跡。

 

室内は建具で繋がったワンルーム
那須宮脇檀2

木の質感が印象的な階段

 

外からは分かりにくいですが、この住宅は3階建て。1階は、玄関、物置、風呂、トイレ、洗面、階段下に洗濯機まで隠してあれました。2階は小さな居心地の良いリビングとインナーバルコニーに、部屋が2つ。垂直で怖いハシゴを登って3階に行くと、オーディオルームと子供部屋。子供部屋には2人が眠れるベッドが造作してありました。

 

那須宮脇檀3

子供室の造り付けベット。上と下で2人が眠れる

 

1階から3階までの各部屋が建具で繋がっており、建物全体がワンルームのような印象の住宅。部屋を繋ぐ階段の木材も無垢材で造られており、手造り感のある暖かい印象でした。2200万円だそうです。建築好きなお金持ちの方、買ってください。

 

 

白河市立図書館へ

白河図書館1

その後北上して福島県白河市の白河市立図書館へ。これまた有名建築家の第一工房 高橋てい一氏設計。知らなかったのでウィキペディアで調べた。

 

高橋てい一氏氏ウィキペディア

 

外観は、公共建築にしては珍しく白いボックスではなく、屋根は住宅のような寄棟屋根(一部がボックス)。

 

白河図書館2

室内はツタヤ図書館のような白い壁に、焦げ茶の本棚。図書館のインテリアはこれが流行りなのかも。図書館内の勉強スペースは、窓際にあり個室化されていないのが良いです。高校生で満員でした。本棚もデスクの照明も特注だと思います。非常に使いやすそうな図書館で羨ましい。

白河図書館3

薄くシンプルなデスクライト

 

そのあと、図書館そばの田中屋で白河ラーメン600円を食べて帰宅。

白河ラーメン

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

この記事をシェアする
コメント