Q1.0住宅宇都宮三番町の家 SI-house
猫と暮らす大屋根のQ1.0住宅(キュウワン)
大屋根の外観の意味
ヨシダクラフトの事務所の向いに建つ、黒い大屋根の外観が印象的な37坪の住まいです。
敷地は、西と東に道路のある47坪。東側は田川に面しています。南北に4階建てのビルが建つ「ビルの谷間の敷地」なので、南北からの採光は望めませんが、設計の工夫で、眺望と通風も確保できるようにしました。長時間過ごすLDKを見通しの良い田川側に配置、大きな窓と吹抜けを設け、吹抜けからの光を白壁で廻し、明るい室内を実現しています。
西側道路から敷地を見た時に、背景が田川で建物が無いため、シンプルな大屋根でスカイラインを切り、屋根が印象に残る建物にしました。屋根勾配と軒の出の無い、BOX型住宅へのアンチテーゼの意味も込めた外観です。
60代からの住まいは、管理しやすい小さな家が良い
60代からの住まいとして、間取りや機能で心がけたのは、1階で全ての生活が出来るようにすること。段差が無く、適切に手摺を設けて安全な室内にすること。家事動線が短く使い易いこと。大量の本とモノを適切に収納すること。2匹の猫と楽しい生活ができること。
管理しやすいように出来るだけ面積を小さくすることも心がけました。実はインナーガレージと吹抜けを除くと、28坪の小さな家なのです。小さな家で、かつ長期使用できる材料で造ると、よりメンテナンスコストは安く済みます。
付加断熱と床下エアコンで暖かく快適な家
「とにかく暖かい家」がご希望でした。壁を分厚い225㎜の付加断熱として断熱性能を上げ、基礎断熱+床下エアコンとしました。床下に設置した1台の家庭用エアコンで、隅々まで暖かい室内を実現しています。私も宿泊体験しましたが、断熱性の高さから実現した、床下エアコンの快適性が非常に高いのを実感しました。床下エアコンの快適性は、床暖房の比ではありません。顧客満足度も高いので、付加断熱と床下エアコンを基本仕様にすることにしました。
- 熱損失係数
- Q値 1.35 W/m2K (温熱シュミレーションソフトQ-PEX)
- 隙間相当面積
- C値 1.0 cm2/m2 (実測)
独立型ガレージよりも、インナーガレージのほうが面積は小さくなる
外部との連携で心がけたのは、大型バイク3台を収納するバイクガレージを出し入れしやすい道路側の配置とし、かつ室内と上手に繋げること。当初の要望では、バイクガレージは、既製品のイナバガレージで良いとのことでした。しかし検討した結果、イナバガレージ等の独立型ガレージを置くと、普通乗用車2台分の駐車場と洗濯物を干すウッドデッキのスペースが取れないことが分かりました。
既製品の独立型ガレージを置く場合、メンテナンス用に、ガレージと建物の間に人が通れるくらいのスペースが必要なので、建物と一体化されたインナーガレージよりも建物面積が大きくなります。この敷地では、バイクガレージは建物と一体になるインナーガレージとするしかないことが分かり、間取りと建物の形が決まって行きました。ガレージは建物と一体型にしたほうが、スッキリして格好も良くなります。
猫と楽しく暮らす家の様々な仕掛け
この住まいの最重要テーマの1つが「2匹の猫と楽しく暮らす家」。犬と暮らす家は、何度も造ってきましたが、猫と暮らす家は初めて造りました。猫のための建築本を参考にしながら、間取りに合わせて、様々な猫建築アイテム・仕掛けを造りました。
猫は上下移動が得意なので、階段以外でも縦移動が出来ると、旭山動物園の行動展示のように本能的な動きが楽しめます。打ち合わせ時間の約7割が猫の話になり、楽しかったです。打ち合わせ時間のほとんどが猫の話になるのは、猫と暮らす家を造る場合の「あるある」なのかもしれません。
猫が自由に室内を縦移動、回遊できるようにキャットツリー(猫柱)、猫ステップ、猫ドア、猫引き戸、猫窓を設けました。建築業界では、点検や作業のために、高い位置に設けられた狭い通路のことをキャットウォークと言いますが、この住宅のキャットウォークは、ちゃんと猫が歩くキャットウォークです。
猫は窓から外を見るのが好きだというので、猫のための物見台である、猫窓を設けました。付加断熱した住宅は、壁が分厚くなり窓枠の奥行も広くなるので、物見台として都合が良いのです。
楽しい仕掛けばかりでなく、猫の世話がしやすい配慮も行いました。猫のトイレ廻りは、掃除しやすいように床と壁をキッチンパネルで造りました。水を通さず、猫のオシッコやウンチがこぼれても掃除しやすい素材です。猫が壁を傷付けそうな部分は、全てベニアとキッチンパネルを貼り、掃除のしやすさと耐久性を高めています。
断熱性能の高い家を造ると、家全体をワンルームのようにするのが効率的なので、吹抜けがあったほうが良いのです。猫と暮らす家の場合も、階段以外で上下移動が可能になる吹抜けはマストアイテムです。
猫建築について、詳しくはSI-houseのブログをご覧くだい。
本棚は固定棚が美しく見える
当社のお客様は本を沢山持っている方が多く、造り付け本棚を造ることが多いですが、今回の本棚は最大級。写真のようにリビングの吹抜けを介して、1階と2階の壁一面に本棚があります。
1階には本棚とテレビ台と床下エアコンが一体になった造り付け家具が設置され、2階のキャットウォークには本棚と、読書できるベンチが一体になっています。
いろんなお宅で造り付け本棚を造りましたが、棚の高さがそろっていたほうが綺麗に見えるので、固定棚を標準としています。可動棚を付けると、棚の位置がバラバラになり、本棚が雑然と見えるので、なるべく可動棚は付けないようにしています。
低い天井と吹抜けの対比で室内を広く感じさせる
SI-houseでは施主のご理解もあり、初めて天井高2.2Mの家としました。思い切って天井を低くして良かったと感じています。天井を低くしたのは個室と水廻り、天井が低いほうが落ち着く空間になりました。
低い天井のメリットは、室内容積が小さくなるので省エネになる上に、建物高さも低めにできるので、周囲の建物と比較して可愛らしい外観になります。また天井が低いと、電球も安全に交換しやすいです。
2.2Mの低い天井を狭く感じさせないコツは、吹抜けを設けて高い天井も造ること。低い天井と高い天井を造ると、対比で室内が広く感じるのです。また、室内の建具を造作建具にして天井一杯の高さにして、建具の上に下がり壁を設けないこと、窓の上端も天井一杯にして下がり壁を極力無くすことの3つです。下がり壁を無くすと、天井が連続して空間に広がりを感じます。
以前別のお宅で、施主の要望で全ての部屋を2.7Mの高い天井にしたことがあるのですが、全く室内が広く感じませんでした。天井高さが均一なので、空間にメリハリが無く、天井が高く感じないのです。天井を高く感じさせるコツは、低い天井と高い天井(吹抜け)の両方を設けることで間違いありません。
素朴でシンプルな材料を使用
施主のSIさんは、機能や耐久性が、そのままデザインになっているようなシンプルな材料が好み。私も同じです。
例えば、外壁やウッドデッキの木材は、色付のオイルステイン塗装を提案しましたが、わざとらしく色を付けるのは違和感があるとのことで、ウッドロングエコ塗装になりました。ウッドロングエコは自然な風合いに仕上がるので気に入り、定番の塗料になりそうです。
また、吹抜けの天井は、下地に使うラワンべニアに透明オイルを塗って使うことを提案しました。茶色いラワンべニアの天井はレトロな雰囲気です。たくさんの要素を、シンプルになるように整理を重ね、建物が完成しました。
Q1.0住宅宇都宮三番町の家 SI-house
猫と暮らす大屋根のQ1.0住宅(キュウワン)
- 所在地
- 栃木県宇都宮市三番町
- 用途・構造
- 専用住宅 木造軸組構法2階建て
- 仕様
- 長期優良住宅
- 設計施工
- (有)ヨシダクラフト/ 設計協力: (有)枝川設計
- 敷地面積
- 156.95㎡(47.48坪)
- 延床面積
- 123.43㎡(37.34坪)
- 熱損失係数
- Q値1.35 W/m2K(温熱シュミレーションソフト Q-PEX)
- 隙間相当面積
- C値1.0 cm2/m2(実測)
- 屋根
- ガルバリウム鋼板立ハゼ葺き
- 外壁
- ガルバリウム鋼板、一部米杉ウッドロングエコ塗装
- 室内壁
- 珪藻土クロス
- 天井
- ラワンべニア自然塗料仕上げ、珪藻土クロス
- 室内床
- パインフローリング
- 玄関ドア
- 東欧木製高断熱玄関ドア
- サッシ
- 樹脂サッシ LOW-Eペアガラス(準防火地域対応)
- 基礎内断熱
- 立上りA種押出法ポリスチレンフォーム3種50㎜+スカート断熱材910㎜
- 壁断熱
- 高性能グラスウール断熱材16K厚105+付加断熱厚120 合計225㎜
- 天井断熱
- グラスウールブローイング300㎜
- 換気システム
- 第1種全熱交換型換気扇