リフォーム・リノベーション

OJ-house

中古住宅を購入して、暖かく暮らすことを目指した部分断熱リフォーム

当社WEBを見てご連絡頂き、計画がスタートしました。築40年の中古住宅を購入して、古い部分の趣を味わいながら、暖かく暮らすことを目指して、部分断熱リフォーム(断熱改修)をしたお宅のリフォーム事例です。断熱リフォームに加えて、住宅設備交換と外壁塗装リフォームも行いました。

敷地は宇都宮の中心市街地を見下ろす八幡台団地内。東側が開けた見晴らしの良い高台にあります。数年程前、施主のOJさんはこの中古住宅を買って、家族3人で宇都宮市内に越してきました。ベランダやテラス等も入れると70坪近いので、家というより邸宅という雰囲気です。立派な和風門扉のある邸宅は庭も広く、建物も趣のある自然素材や造作部材を使っていたので、その雰囲気が購入のキッカケになりました。

しかし、とにかく寒い家だったようです。要望書には「寒い!寒い!寒い!」と「寒い」という文字が至る所にありました。北関東の住宅に、断熱性能と気密性能を確保する「高断熱・高気密」という考え方が浸透し始めたのが約20年前、1997年の地球温暖化防止京都会議の後からです。築40年の住宅は、それより20年も前の家なので寒くて当たり前なのです。壁を解体してみると薄い50mmのグラスウール断熱材が入っており、床下は無断熱でした。壁の断熱材も気密性が確保されていなかったので、床下から冷気が壁の内側を上昇して、ほとんど効いていなかったと思います。

LDK解体工事完了。
LDK大工工事中。断熱材入れ。
LDK完成。

LDKと水廻りの部分断熱リフォームを行った

しかし、大きな邸宅なので、予算的に全てをリフォームすることはできません。今回はメリハリを付けて、LDKと水廻りを中心に断熱リフォームと住宅設備の交換を行いました。結果として古き良き建築と新しい部分の混在した、落ち着きのある空間になりました。キッチンとダイニングに分かれていた部屋を1つにして、約19畳のLDKとしました。LDKの4面の壁に断熱材を入れ、気密シートを施工して、他の寒い部屋と区画しています。目指したのは、断熱していない部屋に行きたくなくなる暖かいLDK。

キッチン周りにパントリー的な奥行の深い収納を造り付け、LDKに1畳程度の収納も設けて、片付く室内も実現し、断熱性だけではない、「収納の使いやすさによる快適性」も考えて設計しました。

床材は当社では珍しいカリン突板の複合フローリング。既存の2階廊下と同じフローリングを施工して、室内の統一感を出しています。複合フローリングなのに、杉無垢フローリングの倍近い値段なのには驚きました。壁と天井は白い珪藻土仕上げ。造作建具を濃い茶色で塗装して落ち着いた雰囲気としています。

廊下との境壁が断熱ラインになっているため、ドア自体にも断熱材を入れて、かつドア周りの気密性も高めました。既製品の建具では、断熱材を入れることはできません。断熱材を室内建具にいれるのは、造作建具だから出来る仕様です。トイレ、洗面脱衣室、ユニットバスの壁・床・天井にもLDKと同じように断熱材を入れて気密シートを施工して、ヒートショックになりにくい水廻りとしています。窓は、既存の窓の内側には、ペアガラスの樹脂内窓を設置。新設した窓の内側にはハニカムサーモスクリーンを設置して、冬の断熱強化と夏の日射遮蔽ができるようにしました。

気密コンセントボックス。
断熱材と気密シート。
LDK after。キッチンからLDKを見る。壁・天井は珪藻土仕上げ。
LDK after。から庭を見る。
アプローチから玄関ポーチを見る。玄関の引違戸は灰汁抜きして再塗装。既存住宅の意匠を残した。
玄関after。下駄箱は、古い既存の下駄箱の表皮を貼り替えて再生させた。造作家具だから出来る再生である。
玄関after。玄関内部の壁は大谷石を貼った。大谷石は古い無垢材との相性が良い。
トイレbefore
トイレafter。トイレは施主のお気に入りの建材で造った。壁・天井は珪藻土。

最も大切な防水リフォーム

建物外皮の劣化を防止するための外装リフォームは、漏水のあったベランダの防水工事と外装の全面塗装工事を行いました。今まで意匠や断熱について書きましたが、実は住宅リフォームで最も大切なのは防水リフォームであることが多いです。漏水していないことを確認してからでないと、断熱リフォームにも内外装の仕上げリフォームにも進めない上に、ずっと漏水していると、柱や梁も傷みますから、防水リフォームは、何よりも早く行うリフォームになります。

特に古い邸宅は、こだわりのある意匠や材料で造られていることが多く、それが経年劣化して雨漏りの原因になっていることがあります。このお宅もベランダから漏水していました。現代的に普通に造ってあれば、漏水箇所を推測するのはわりと簡単なのですが、現在では行わない施工になっているので、漏水箇所を見つけるにも苦労することがあります。防水工事はとても地味ですが、大切な工事なのでザックリレポートします。

このお宅のベランダの床表面にはタイルが貼ってありました。防水層はタイルの下です。普通の木造住宅のベランダなら、FRP防水やシート防水は表面に露出して施工されているので、防水層の劣化は目視できるのですが、タイルが貼ってあるので漏水箇所が見えません。防水の上にタイルを貼ってはいけません。かつ、ベランダ手摺も鉄骨で、防水と密着しているので、鉄骨の錆が漏水の原因の1つになっていました。

昔は、アルミのベランダ手摺が商品化されていなかったので、光と風が通るように鉄骨で手摺を制作することも多かったのですが、それが錆びて漏水の原因になることが多いのです。

今回は、ベランダの下の軒天部分と1階天井を解体したら、漏水箇所がほぼ特定できたので助かりました。分からない場合は、漏水していると思われる箇所を1つ1つ潰していくしか方法がなく、施主の負担と当社へのプレッシャーが増えるからです。

防水業者と相談し、現状に最適だと考えられるシート防水+ウレタン塗膜の複合防水で施工しました。シート防水とウレタン塗膜防水を併用する、新築では行わない防水仕様です。平坦な面はシート防水が適しており、シートが密着しにくい鉄骨手摺廻りは液体で施工できるウレタン塗膜防水が適しているので、複合防水が良いと考えました。ベランダも2箇所あり、同じタイル仕上げだったので同じ仕様で施工しました。

住まいながらのリフォームだった為、鍵をお借りして昼間作業を行いました。お風呂だけは解体工事完了後、3週間程度で入れるようにしました。

ベランダ防水工事写真。ベランダ床のタイルの上に、カチオンタイトを塗って平らにして、その後、防水下地の接着剤を塗布したところ。
ベランダシート防水完了。新築の防水では行わない、複合防水が始まる。
シート防水の上に、ウレタン塗膜防水を2回施工した。既存下地に合わせて、シート防水とウレタン塗膜防水の複合防水としている。
概要

OJ-house

中古住宅を購入して、暖かく暮らすことを目指した部分断熱リフォーム

所在地
栃木県宇都宮市八幡台
用途・構造
専用住宅 木造2建て
築年数
約40年
設計施工
(有)ヨシダクラフト一級建築士事務所 吉田武志
室内施工床面積
約20坪
屋根
既存銅板屋根のまま
外壁
サッシ交換部分モルタル補修して、全面シリコン塗装
外壁木部
キシラデコール塗装、ウレタン樹脂塗装
ベランダ防水
既存タイルの上カチオン下地、シート+ウレタン塗膜複合防水
室内壁天井
珪藻土仕上げ、大谷石貼り
廊下床
既存無垢フローリングを削って再塗装
LDK床
カリン突板複合フローリング
工期
約3か月
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