猫と暮らす家、設計の注意点
現在、猫と暮らす家を設計中。ペットと暮らす家を造るには、ちょっとした経験とコツが必要です。犬と暮らす家の設計は何度か行っており、勝手が分かります。犬と暮らしているので、行動やくつろぎ方、寝床の様子、使って良い材料等も分かるからです。
しかし、猫は飼ったことがないので、行動がサッパリわかりませんでした。家の中でどのようにしているのか?くつろぎ方?キャットウォーク(猫の通路)はどう造れば良いのか?などがさっぱり分からない。ですから、施主にお聞きしながら設計を進めています。1つ言えることは、犬と暮らす家よりも猫と暮らす家の方が、建築が関わる範囲は多いです。
なぜなら、猫は病気や事故を避けるために、室内飼いが多いからです。散歩に行きませんから、室内で運動することになります。猫は床を平行移動するより、上下運動を好みます。上下移動できるキャットウォークを壁に造ったら、旭山動物園の行動展示のように、猫も本能で動けて、見る人も楽しそうです。
上手く建築を使って、人と猫の関係が作れれば、人も猫も面白く快適な室内になりそうだと感じています。施主と話をして感じた、猫と暮らす家の注意すべき点を考えてみます。
猫と暮らす家の注意点は3つ。爪とぎ柱、トイレ、キャットウォーク
爪とぎ柱、通称「猫柱」は必須のようです。今回は写真のように、柱にヒモを巻いて爪とぎ柱を作ろうと思っています。ヒモは定期的に交換できるように考えています。爪とぎ柱を登ると、キャットウォークにつながり、吹抜けから2階に移動できる猫動線を考えています。爪とぎ柱を造らないと、家具や壁で爪を研いで傷を付けてしまうようです。爪とぎ柱は、直径8㎜のマニラロープ(麻縄)を柱にぐるぐる巻き付けて作るのがイイらしいです。
次は、猫のトイレの話。猫のオシッコは強烈な匂いがするので、猫トイレの床と壁を掃除しやすいキッチンパネルで造り、その上にトイレケースを置こうと考えています。水ぶきでき、水分が染み込まない素材です。トイレの猫砂を蹴散らされても、周囲に飛ばないように壁を40㎝程度立ち上げて、掃除しやすい環境を作る予定です。
猫と暮らす家の定番は、上下運動ができるキャットウォークです。壁に木材を固定して、上下運動させることが多いようです。既製品のキャットタワーと呼ばれる床置き型の猫グッズもありますが、家全体を猫が移動できる行動展時的な室内にするには、建築工事で壁に板を埋め込むことが必要です。
猫はなぜ窓から外を見るのが好きなのか?
猫は窓から外を見るのが好きなようです。今回は窓枠を広げて、猫が外を見られるスペースを作ります。窓枠の奥行は、施主に聞いたところ、20㎝あれば、かなり余裕があるようです。このような寸法も猫を飼っていないと分からないところです。なぜ、猫は窓辺に滞在するのが好きなのでしようか?推測するに、野生の名残でエサを探したりしているのかもしれませんし、窓から見える動くものに興味があるのかもしれません。また、冬は暖かい日差しが窓から入ってくるので、心地良いのだと思います。とにかく、猫が滞在できる窓辺をつくることも、猫建築の必須事項のようです。
ダイニングテーブルの上には、キャットウォークを造らない
ダイニングテーブルの上には、キャットウォークを造ってはいけません。猫は身体を舐めて「毛づくろい」をするとき、毛を飲み込むために定期的に吐くようです。ダイニングテーブルで食事をしている時に、上から猫の吐いたものが落ちてきたら、大変なことになってしまいます。猫は吐くという前提なので、壁面のキャットウォークも掃除が必要です。できればハシゴを掛けなくても掃除できる位置のほうが良さそうです。
猫は、花を食べてしまうので、花瓶にはケースが必要
これも施主から聞いた話ですが、猫は棚に置いた花瓶の花も食べてしまうらしいです。だから、本棚の一部にガラスの扉を作り、ショーケースのように中に花を飾る予定です。猫が花を食べるなんて初めて聞きました。予期せぬことをする可愛いプレデターのようです。個体差があり、食べない猫もいるのかもしれません。
猫が脱走してしまうので、玄関ホールにはドアが必要
飼い主が外出する時には、音も無く背後に忍び寄り、玄関ドアを開けるとサッと出て行ってしまうようです。これは外に興味のある若いオスに多い行動なのかもしれません。ですから、北海道の風除室のように、玄関ホールにドアを1つ設けて、そのドアを閉めてから、玄関ドアを開けるという構成にする予定です。
また、室内の開き戸のドアノブもジャンプして開けてしまい、引き戸も前足で開けてしまうようです。ドアを付けても鍵までかけないと、ベテランの泥棒のようにどこでも侵入してしまうようです。まさに小型プレデター。入られたくない部屋には鍵を付けることが必須です。
今回は、ドアにペットドアも付ける予定です。
最後に
猫と暮らす家を設計するのは、初めてなので驚きの連続です。飼い主の意図した仕掛けにも、猫は気に入らないとのって来ないとのことです。また、それが楽しいと。このお宅は、インナーガレージや吹抜けの壁面一杯の本棚など、語りどころはたくさんあるのですが、いまのところ、打ち合わせの半分近くが猫の話です。これも猫と暮らす家の「打合せあるある」なのかもしれません。今回、施主からお借りした本、「へぐりさんちは猫の家」が具体的なキャットウォーク等の写真と具体的記述が多くて参考になっています。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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